影山泰子さんとの対談 今回の夏の例会では、ミニ・コンサートに加え、当

影山泰子さんとの対談
今回の夏の例会では、ミニ・コンサートに加え、当協会会員で、現在ローマ在住、ローマ
歌劇場のオフィシャル・カメラマンとして活躍中の影山泰子さんを迎え、その活動内容等
を中心に、イタリアオペラ界の現況について語って頂きました。
彼女は、武蔵野音楽大学音楽学部声楽科を卒業された後渡伊、故永竹由幸氏の秘書を務め、
永竹氏が某誌に連載されていた記事の写真を撮っている内にカメラに目覚め、彼の死後、
ミラノ・スカラ座アカデミー音楽院舞台写真コースへ入学、そこを優等で卒業され(コース
受講時代に撮られた写真が、翌年の同コース公募写真に選ばれたそうです)、この道に入ら
れたのです。
コース受講時は、“何故、日本人がこんなところに!?”という様な目でも見られたそうで
す。このコースの最大の特徴は、スカラ座で実際に上演されるオペラのゲネプロが撮影勉
強の対象になるという点で、他の受講生に比較し、今迄オペラを勉強してきたことが生か
され、音楽がよく分かっている分だけ撮影するポイントが良いと、評価されたとの事でし
た。
この事が契機となり、彼女は2014年、ローマ歌劇場のオフィシャル・カメラマン研修
生に選ばれ、又同時に、その年に行なわれた同歌劇場の日本公演、及び日本公演に同行し
た世界的指揮者リッカルド・ムーティ氏の日本公演中のオフィシャル・カメラマンを勤め
る事となったのです。
リッカルド・ムーティ氏はこの日本公演後、残念ながらローマ歌劇場と縁を切ってしまい
ましたが、その原因に関し、巷間に伝えられる音楽的な問題だけでなく、彼の家族(特に娘)
が絡んだ金銭的な問題も有ったそうです。
いずれにしても、日本公演での実績等が評価され、彼女はローマ歌劇場のオフィシャル・
カメラマンとなるのですが、当時、同歌劇場には、28年間その地位にあるカメラマンが
在籍していました。ところが、ある公演で、プログラムを作るに当っての写真を選ぶ際、
彼女と、その従来のカメラマン氏が撮った写真を、撮影者名を隠して作成スタッフに自由
に選ばせたところ、殆どが彼女の撮った写真になってしまった、その事が契機で従来のカ
メラマン氏は退職、彼女がその地位を引き継ぐことになったのだそうです。実際、現在の
ローマ歌劇場の公演プログラム掲載の写真は、殆どが彼女の撮影したもので、写真の横に
は、“YASUKO KAGEYAMA”と明記されています。
ところで、ご多分に漏れず、イタリア各地の歌劇場は財政難に苦しんでおり、“ミラノスカ
ラ座以外の歌劇場では、何が起こっても不思議はない。”とまで言われているそうです。実
際、名門のジェノバ カルロ・フェリーチェ劇場は一旦閉鎖に追い込まれ(その後幸いなこと
に復活したそうです)、フィレンツェの歌劇場は、殆ど活動停止の状態だそうです。又、観
客も高齢化が目立ち、このような現状を考えると、“お先真っ暗”と言っても過言ではない
かもしれません。しかし、歌劇場当局も自助努力を重ねており、幼稚園児に対するオペラ
鑑賞等、積極的に新しい聴衆を育てる試みも行われているとの事でした。
悲観的な要素は甚だ多いのですが、自分達の、舞台芸術として最高の財産というべきオペ
ラの未来を切り開いていくイタリア人の英知と行動を信ずる、との結論が得られたお話で
した。
岡
部