須釜淳子 - 日本褥瘡学会

第11回日本褥瘡学会学術集会 ワークショップ8
須釜 淳子
金沢大学医薬保健研究域保健学系 教授
金沢大学医薬保健研究域保健学系・教授
東京大学大学院医学系研究科
アドバンストスキンケア(ミスパリ)寄付講座 客員教授
アドバンストスキンケア(ミスパリ)寄付講座・客員教授
圧迫・ずれ力排除の原則
褥瘡の定義とケアの原則
褥瘡の定義
褥瘡
定義
身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間の軟部組
織の血流を低下、あるいは停止させる。この状況が
一定時間持続すると組織は不可逆的な阻血性障害
に陥り褥瘡となる(日本褥瘡学会
に陥り褥瘡となる(日本褥瘡学会2005)。
)。
ケアの原則
1.骨突出部に加わる外力の大きさの減少
2.外力の持続時間を減少
外力 持続時間を減少
危険因子の評価と看護計画(圧迫、ズレ力の排除)
危険因子の評価
基本的動作能力
「できない」
圧
病的骨突出
「あり」
迫 (外
圧迫、ズレ力の排除
関節拘縮
「あり」
皮膚湿潤
「あり」
栄養状態低下
「あり」
組
力)
織
耐
久
浮腫
「あり」
性
栄養状態改善
リハビリテ シ ン
リハビリテーション
スキンケア
褥瘡予防 管理ガイド イ
褥瘡予防・管理ガイドライン
褥瘡の予防・発生後のケア
慢性期褥瘡の局所治療
体圧分散用具:Clinical Questions
<予防>
褥瘡発生率を低下させるために体圧分散マットレスを使用する
ことは有効か
高齢者の褥瘡発生予防にはどのような体圧分散マ トレスを用
高齢者の褥瘡発生予防にはどのような体圧分散マットレスを用
いたらよいか
急性期患者の褥瘡発生予防にはどのような体圧分散用具を用
いたらよいか
周手術期患者 褥瘡発 予防 は
周手術期患者の褥瘡発生予防にはどのような体圧分散用具を
ような体圧分散用具を
用いたらよいか
<治療>
褥瘡(d1,d2あるいはD3~D5)の治癒促進には、どのような体
圧分散用具を使用するとよいか
体 分散用具 関す
体圧分散用具に関するCQと推奨
推奨
項 目
推 奨
①
褥瘡発生率を低下させるには、体圧分散
マットレスの使用は有効か
②
高齢者の褥瘡発生予防にはどのような体圧
高齢者
褥瘡発生予防にはど ような体圧 2層式エアマットレスの使用が勧められる
層式
ト
使用が勧められる
分散マットレスを用いたらよいか
上敷静止型エアマットレスを使用してもよい
③
④
⑤
体圧分散マットレスの使用は褥瘡発生率を低下させる
A
B
C1
圧切替型エアマットレスを使用してもよい
C1
フォームマットレスを使用してもよい
C1
急性期患者の褥瘡発生予防にはどのような 低圧保持エアマットレスを使用が勧められる
体圧分散用具を用いたらよいか
ローエアロスベッドを使用してもよい
B
C1
上敷圧切替型マットレスを使用してもよい
C1
交換静止型エアマットレスを使用してもよい
C1
周術期患者の褥瘡発生予防にはどのような 術後には圧切替型エアマットレスを使用が勧められる
体圧分散用具を用いたらよいか
褥瘡(d1,d2あるいはD3~D5)の治癒促進
には、どのような体圧分散用具を使用する
とよいか
推奨度
B
術中にはマットレス以外に踵骨部、肘部等の突出部にゲルまたは粘弾性パッドの
使用が勧められる
使用が勧められる。
B
大腿骨頸部骨折術後にはフォームマットレス、ビーズベッドシステムを使用しても
よい
C1
D3~D5褥瘡または複数部位の褥瘡の治癒促進には、空気流
動型ベッドまたはローエアロスベッドの使用が強く勧められる
A
d2以上の褥瘡の治癒促進には、上敷静止型エアマットレス、マット内圧自動調整
機能付交換圧切替型エアマットレス、低圧保持用上敷エアマットレス、2層式エア
ッ
を使用
もよ
マットレスを使用してもよい
C1
d1褥瘡の治癒促進には、上敷静止型エアマットレスを使用してもよい
C1
ハンモック現象
マットレスカバーに伸縮性がない場合
骨突出部位にハンモック現象がおこる
沈む・包む機能が阻害
接触面積減少
カバ の有無と沈み込み量
カバーの有無と沈み込み量
Izaka S, et al: Influence of the “hammock effect” in wheelchair cushion cover on mechnical loading
over the ischial tuberosity in an artificial buttocks model. J of tissue viability. 2009, 18:47-54
マット内圧と体圧
120
底付き発生
100
底付き発生
80
18mmHg
36mmHg
60
40
20
0
仰臥位
30度
45度
70度
側臥位
エアマットレス内圧の違いによる5つの体位における接触圧の比較
須釜淳子、真田弘美、稲垣美智子、伴真由美、永川宅和、
金沢大学医療技術短期大学部紀要、19、83-88、1995
毎日の体圧分散寝具確認方法
異常発見時 ポンプの確認
④
③
②
①
①電源スイッチ:電源が切(off)
点滅は異常
②マット内圧:患者の体重との不適合
③波動切り替え:ギャッチアップ時等、必要時電源が切(off)
④ポ プと
④ポンプとエアチューブとの接合部の外れ
ブと 接合部 外れ
異常発見時 マットレス本体の確認1
シ ツを外す
シーツを外す
さらにマットレスカバ を外す
さらにマットレスカバーを外す
異常発見時 マットレス本体の確認2
1.上敷きマットレスを、直接
ベッドフレーム上に設置
2.天地逆に設置
一部のセル部分のみ沈み込みが激しい
異常発見時 エアチューブの確認1
チューブの巻き込み
CPR用コネクターの外れ
異常発見時 エアチューブの確認2
エアセルとチ
エアセルとチューブの接合部の外れ
ブの接合部の外れ
体圧分散寝具 使用期限
体圧分散寝具の使用期限
ウレタンフォームマットレスの劣化と体圧分散
劣
体 分散
劣化の指標:マットレス凹部の最深部距離
購入後5~10年経過したマットレス66枚の平均凹部距離
・平均10.7±6.0mm
平均
・側臥位とベッド上座位(ヘッドアップ72度)において、
劣化が強いほど最大体圧が有意に上昇
(p 0.05)
(p<0.05)
松原康美:ウレタンマットレスのヘタリと体圧分散効果の調査 月刊ナーシング
松原康美:ウレタンマットレスのヘタリと体圧分散効果の調査、月刊ナ
シング、27(11):88
27(11):88-93,
93, 2007
体圧分散機能 pressure redistribution
•Immersion
沈める
•Envelopment
包む 身体の凹凸に対する順応性
包む:身体の凹凸に対する順応性
接触面積
拡大
•Change in areas of contact over time
これらの性能を示す指標と測定法の開発
接触領域を変化
Immersion
×
Envelopment ×
IImmersion
i
○
Envelopment ×
IImmersion
i
○
Envelopment ○
体圧分散 ットレスの性能と褥瘡発生
体圧分散マットレスの性能と褥瘡発生
沈む
Pressure
包む
圧の接触領域を経時的に変化
圧迫
Pressure
ulcer
Extrinsic Factors
外的要因
↑
↑moisture
湿度
↑friction 摩擦
↑shear ずれ
Intrinsic Factors
内的要因
↓malnutrition 栄養の低下
↑age 加齢
↓low blood pressure 血圧の低下
Tissue
Tolerance
褥瘡発生
組織耐久性の
低下
Other Possible Factors その他の仮説因子
Interstitial fluids 組織液
Emotional stress 情緒ストレス
Smoking 喫煙
Skin temperature 皮膚温
Braden, B. J., Bergstrom, N.: A conceptual schema for the study of
the etiology of pressure sores, Rehabil. Nurs., 12(1), 8-12, 1987.