アメリカにみる情報社会の新構図

情報経済論 論文
1998年 9月18日 提出
専修大学 経済学部 経済学科
E08−0636D宇多良隆
アメリカに見る情報社会の新構図
<本論文の構成>
序章
第1章 新通信法の意義と官民一体戦略
第1節 新通信法とは
第2節 新通信法がもたらすもの
第3節 政府の役割
第2章 激化する競争
第1節 通信産業の競争
第2節 AT&TとBT(ブリティッシュテレコム)の提携について
第3節 オンラインビジネスについて
第3章 インターネットが生む新世界
第1節 インターネットの可能性
第2節 日本のこれからの課題
第3節 情報民主主義について
第4章 企業経営における情報化
第1節 リエンジニアリングとは
第2節 2つのケーススタディ
第3節 情報技術がもたらす効率性
終章
1
序章
現在、世界全体が情報化し、ボーダレス化しているのは誰の目にも明らかである。この
ような世界の潮流に日本も対応していかなければならない。ボーダレスの必然性の下で、
日本がこれからどのような環境におかれるかを情報ツールの発祥の地であるアメリカの現
状を参考にして、それを日本にスライドさせて検証してみたい。
この論文の流れを説明すると、1章の「新通信法にみる官民一体戦略」においては、ア
メリカで96年に制定されたこの法律を契機に情報技術をさらに有効に使うため「競争の
促進」がもたらされ、政府がしっかりと具体的な政策で民間を導いていることを述べる。
2章「激化する競争」ではボーダレスな競争というものがどの分野でどのように起こっ
ているかを、電信電話分野からその電話回線を使用するオンライン・ビジネスまで調べて
みた。
そして、3章の「インターネットが生む新世界」では、前章までの電信電話企業などの
ある意味ハード面的なものを受けて、実際ソフトとなりうるインターネットというものが
可能とする世界を検証している。この章のものは将来的なものが多く、展望や課題を多数
含んでいる。
4章の「企業経営における情報化」では、実際に情報技術で生産性に上がった企業経営
について情報経済論の講義でもふれたリエンジニアリングというものを情報技術の導入と
いう視点から効率的なシステムを探ってみた。
この論文はレポーとならないように論理を重視したつもりである。論理とはつながって
いることであり、1章から4章までつながっている流れを重要として終章で結論を出して
いる。
2
第1章 新通信法の意義と官民一体戦略
第1節 新通信法とは
アメリカの新通信法は正式には「96年米国通信改革法」という。これ以前には193
4年通信法と MFJ(修正同意審決)という枠組みにより通信産業は構成されていた。
MFJとは司法省の反トラストへの基準であり、1984年にはこれによりAT&Tと
いう世界最大の通信サービス会社が分割された。この時、RBOC(地域電話会社)は地
方独占を認められた一方で、長距離通信・高度情報サービス・ケーブル TV ならびに製造へ
の進出が規制された。
しかし、技術革新によりテレコム圏が急速に拡大し1国の国内通信市場はグローバル市
場においてのローカルという性質となってきた。こうした時代の中で、グローバルな事業
展開を念頭に置いた原則自由の市場環境が必要ということで88年の NTA(商務省全米通
信情報庁)が発表した報告書「テレコム2000」が「AT&Tの分割はアメリカの国際
競争力にネガティブな影響を与えており国際競争力の強化のためには RBOC の規制を撤廃
する必要がある。
」との考えを示唆した。このように政府によるこの産業を効率的に規制す
ることは技術革新のスピードを考えれば不可能であるとの見解が主流になっていった。
このような時代背景のもとに成立したのが新通信法である。まずは新通信法の内容をま
とめてみたい。
①地域電話市場への競争導入
②ユニバーサル・サービス
③地域電話会社の別分野への新規参入
④ケーブル TV 事業の料金規制緩和
⑤放送事業社の所有上限規制の緩和
⑥わいせつ/暴力番組への規制
ここでは①−③を注目したい。①については、これによりすべての州の地域への参入障
壁は撤廃される。また FFC(連邦通信委員会)が市内市場が競争状態にあるかどうかを
チェックする。②ユニバーサル・サービスとは国民へ公平なサービスを提供するために
地域格差を是正する手段である。③地域電話会社(RBOC)の新規参入であるが、ま
ず長距離サービス(近距離市外通話地区の LATA 間サービス)への参入では、RBOC
はFCCに自社サ−ビスエリア内の長距離通信サービスの提供を申請することができ、
FCC は次の4条件を満たしているかを申請後90日以内に決定する。
(a) 施設ベース(固定電話の配線設備があること)の競合事業者の存在が可能であるこ
と。
(b) 相互接続条件(14項のチェックリストの条件を満たすこと)
。
(c) 公共の利益に合致していること
3
(d) 司法省への訪問
以上のことである。この場合3年間は本体ではなく分離子会社によって提供されなけれ
ばならない。しかし自社サービスエリア外の長距離通信サービスは直ちに提供が可能と
なる。
次に機器製造事業分野への参入である。RBOCは自社サービス内での LAT 間サービ
ス提供が認可されれば、機器製造業事業を開始できる。なお3年間は分離子会社による。
ただし、通信機器メーカーとのハードウェア及びソフトウェアの共同設計・開発・製造
に関する研究などは直ちに行うことを可能にする。
<新通信法の狙い>
新通信法の狙いは「競争の促進」であり、その背景として「コンピューター・ビジネ
ス及びインターネットがもたらした改革」ということである。競争の促進はアメリカ各
界各層の多くが目指すところであり、MFJ の規制撤廃が今回の主な目標であると言える。
しかしローカル市場の現状を冷静に見ると競争の進展の可能性はあるものの現実には
RBOC の独占状態にある。新しい産業の振興・メディア融合を促進する観点から本法に
より新規参入のインセンティブを与える、その業界が次のステップに進めるように競争
の枠組みを作るということが主旨である。自由な活動を禁止(規制)するのではなく条
件を明示し、それをクリアすれば自由を与える手法は日本も大いに学ぶべきであろう。
また非規制産業であるコンピューター関連のビジネスの高成長と昨今のインターネッ
ト(これも非規制のネットワーク)の爆発的普及が、規制下にある通信の世界を揺り動
かした。通信においても規制を取り払うことで、新しいアプリケーションの台頭と新し
い産業の成長を実現することを狙い、通信法の改正が企画されたという背景がある。
第2節 新通信法がもたらすもの
新通信法のインパクトについて重複する部分もあるとは思うが以下のようにまとめて
みた。
①地域電話会社の長距離通信市場への参入
②国際競争力の強化
③異業種間の合併・提携の活発化
④通信周辺機器の需要増
①に関しては MFJ の解除を通じて地域電話会社が市内の競争状況の出現などの条件を
満たせば長距離通信市場に進出できる点である。地域通新事業は分割しても独占が
残ることから分割よりも市内と長距離の垣根をはずすという統合が時代の流れであ
るという判断であり、通信と放送の融合というマルチメディア時代への対応である。
4
②情報スーパーハイウェーの法整備によって NII(全米情報インフラ)の推進という国
家的事業を展開しやすくする。また、料金、サービスの競争を通じて経済活性化を
達成する点も目的と言える。GII(グローバル情報インフラ)を大義名分にしたアメ
リカ企業の日欧アジアへの進出への支援体制の構築である。
(詳細は3節で)
③については、巨大メディアの誕生をはじめ異業種間の合併提携が活性化して産業再
編成が加速する点である。AT&Tが通信サービス、通信機器、情報サービス部門
に会社を3分割し、MCI コミュニケーションズが衛生事業に参入し、ベルアトラン
ティックとナイネックス両者が合併に合意し、さらにウォルト・ディズニー社が ABC
テレビを買収したにはこれから起きる国際的なメガトレンドの第1幕にすぎない。
未来志向のマルチメディア時代の枠作りと言えよう。
④情報メーカーが今回の最大の受益者とも言われている。長距離、市内、ケーブル TV
各分野の自由か、相互参入によって新規投資は拡大し競争の進展によって市場の格
段の拡大が期待できる。例えば、コンピューター・パソコン・サーバー・ソフトウ
ェア・交換機・伝送機器・半導体・デバイスに至るまで大きな需要喚起要因が存在
する。市場活性化によりアメリカは現在から2・3年後にかけて機器市場は生産ベ
ースで2倍に拡大するとの見通しまである。
第3節 政府の役割
経済活動において政府の果たす役割というものはかなり重要であることは言うまで
もない。現代の政府の関わりに関する見解は、発展途上の産業の立ち上げを官民一体
となって行うことに見られるいわゆる大きな政府活動であり、産業が軌道にのったら
小さな政治で官は規制緩和等で手を引きながらその産業の市場を競争市場に移行させ
活性化させるということがあげられる。この第三節では上記のようなことを踏まえて、
新しい産業である情報分野にアメリカの政府がどのように関わっているのかを述べた
い。
<クリントン政権のGII戦略>
21世紀に高度な情報社会が出現することは明らかである。情報産業と通信産業の
融合したマルチメディア産業の規模は2000年までに1兆ドルに達し、インターネ
ッタとケーブル TV の加入者は共に4億人へと急増するとみられている。この動きへの
クリントン政権の世界戦略は明快である。ゴア副大統領は新通信法の制定に関して「こ
れで GII を推進するアメリカ国内の法整備ができた」と歓喜したという。アメリカが
スピディーに対応した世界戦略 GIIを詳しく説明したい。
GII(Global Information Infrastructure)はゴア副大統領が21世紀のアメリカ
社会に発展を支えるインフレとして1993年に提唱した「情報スーパーハイウェー
構想」を正式にアメリカの情報通信政策として位置づけた NII の世界版である。これ
5
により世界の大学や研究所を結んでいるネットワーク、インターネットを模範に、誰
でもどこからでも必要な情報を手に入れることができる情報基盤、つまり地球規模の
デジタル・ライブラリーが整備され、世界経済に数千億ドルの経済波及効果が出ると
説明されている。さらに「民間投資の奨励」
「競争の促進」
「ネットワークのオープン・
アクセスの保証」
「ユニバーサル・サービスの確保」
「柔軟な規制の枠組み」という5
原則が定められている。
しかし、このGIIがアメリカの国益の沿った計画であることは言うまでもない。
以下に簡単にまとめてみる。
①アメリカのもっとも強い情報通信産業の世界制覇の基盤づくり。
②アメリカ国内での競争の激化によるインセンティブの高さを海外進出というレールをひ
くことによってより規模の大きなものにする。世界市場での国際競争力の強さでシェア
の拡大を目指す。
③国際標準化、ディファクトスタンダード戦略。アメリカ国内のルールを国際的に認めさ
せる試み。
このように政府は民間の企業が新しい分野や市場で公平かつスムーズに活動できる環境
を作るという役割をになっているということがよく分かっていただけたと思う。最終目的
をはっきりと明示するいわゆる帰納法的戦略であると言えるかもしれない。
<ネットプレックスにみる払い下げ(?)>
もう一つのパターンを紹介したいと思う。政府がその産業の立ち上げにおいて援助し、
民間という列車のためにレールをひいて駅もつくり何とか客が集まるようにする。そして
時間がたつにつれその民間だけで運営できるようになるとその設備は民間に払い下げられ
るという例を説明したい。
今アメリカでもっとも急成長している地域がネットプレックスと呼ばれる地域である。
どの州にあるかというと、首都のワシントンに隣接するバージニア州のフェアファックス
群がそれに当たる。アメリカのおける急成長地域を年代順にならべれば、70年代の北カ
ルフォルニアの「シリコンバレー」
、80年代のノースカロライナ州の研究開発型団地「リ
サーチ・トライアングル」
、そして90年代の「ネットプレックス」とハイテク産業をベー
スにした地域的隆盛が特徴とされている。
このネットプレックスがどのように発展したかを考察すると、シリコンバレーがスタン
フォードとの産学協同路線で成長したのと比較してもネットプレックスの方には一流大学
との強い絆というものは見てはとれない。この地での求心力は大学ではなく国防総省なの
である。アメリカ国防計画自体が技術のソフト化や軍民両有技術に重点をシフトしており、
ソフト開発やシステム設計、情報通信に豊富な研究費、援助金が周辺企業へ国防総省から
6
交付されてきたのである。つまり企業群が外部委託を増やす国防総省を取り囲んだのであ
る。さらに冷戦後の軍民転換や政府の規制緩和、民間イニシアティブ進行ムードなどが功
をそうして経済活動は拡大を続けている。
これらを払い下げと表現するのは適切でないのかもしれないが、ハイテク技術の官から
民への移動は明らかであろう。このようにアメリカの政府の役割として「目的地を明示す
る」
「技術を提供する」という事がわかっていただけたと思う。
第2章 激化する競争
第1節 通信産業の競争
ここで、1章で説明した新通信法によってどのような競争が通信業界で行われはじめた
かについて述べる。
規制が緩和されることによって競争がもたらされることは容易に想像がつくが、競争の
なかでアメリカ通信業界においてなにが起きているかというと、それはずばり提携や合
併・買収(M&A)である。新通信法という業界再編や企業のリストラという環境変化が
事業を拡大する大きなチャンスなのである。現実に、SBCとパシフィック・テレシス、
ベル・アトランティックとナイネックスは合併に合意している。そして何といってもAT
&TとBT(ブリティッシュ テレコム)の提携がある(詳しくは次の節で)。このように
様々な組み合わせの可能性がある。
上記のものは長距離通新事業への進出に照準を合わしているが、つぎにケーブルTV事
業を優先する独自の路線を歩む例を見る。USウェストはケーブル TV 事業3位のコンチネ
ンタル・ケーブルビジョン社を108億ドルを投じて買収した。もちろん新ケーブル TV 事
業の強化が買収のねらいである。USウェスト社はイギリス1位のケーブル TV 会社テレウ
ェスト社を所有するなど、通信と放送の融合に熱心である。新通信法による規制緩和によ
って合併が促進され、スケールメリットによる生き残り策が模索されている。
第2節 AT&TとBT(ブリティッシュテレコム)の提携について
1節で見たようなアメリカ国内合併の動きというのは新通信法が制定された96年頃の
ことである。98年に入るとどの企業も世界という規模で事業を考えはじめている。その
典型的な例として、7月26日のAT&TとBTとの提携発表があげられる。
国際通新事業で最大のライバル同士だった両者の提携の背景には世界通信自由化が予想
以上のスピードで進み、投資負担が巨額化し始めたことがある。競争に対応して、AT&
Tはアメリカ地域通信会社やアメリカ CATV 大手の買収合意など、地域会社やアメリカ国
内の新興勢力への対抗に懸命。BTも欧州市場でドイツ・フランス・イタリアや北欧に合
7
併進出し、5千億近くの投資をしている。
<WTO通信自由化合意について>
世界的通信自由化を可能にしたWTO通信自由化について語句解説的に補足説明してお
きたい。世界貿易機関(WTO)は国別の規制が多く残っていた通信自由化問題で、94
年5月に基本通信グループの会合をスタートした。97年2月には参加69カ国・地域が
最終合意に達した。その後各国で推進手続きが進み、98年2月に合意が発効されている。
日本の場合、日本通信電話(NTT)と国際電信電話(KDD)以外の第一種電気通信事業
者に対する外資規制を撤廃。アメリカも外国通信会社による自由通信会社への100%出資
を事実上認めた。欧州各国の通信自由化も進んだ結果、資本の移動を阻む壁は従来に比べ
格段に低くなった。
<国際戦略強化の「起爆剤」>
AT&TはこれまでにほんのKDDなどと企業連合「ワールドパートナーズ」を国際展
開の主軸に据え、BT中心の「コンサート」やドイツ・フランステレコム連合の「グロー
バル・ワン」に対抗してきた。中でもBTへの対抗意識は強く、企業ユーザーの獲得など
で激しいつばぜり合いを演じてきた。
それが一転して提携に踏み切った背景には二つの会社のトップの強い意志がある。昨年
末に外部からAT&Tの会長に招かれたマイケル・アームストロング氏は「より強力な国
際同盟の必要性」を強調。メンバー企業の結びつきの弱いワールドパートナーズにかねて
より不満を漏らしていた。一方BTもアメリカMCIコミュニケーションズの買収計画が
アメリカワールドコムとの競争に敗れ、あっけなく挫折し世界最大市場のアメリカで強力
なパートナーを見つけない限り「コンサート」の空洞化が避けられなくなっていた。長期
的な成長展望を描くには、ともに海外戦略を推し進めるための「起爆剤」が必要だったわ
けである。
<日本国内の反応>
アメリカAT&TとイギリスBTによる「強者連合」の誕生で直ちに影響を受けそうな
のは、AT&T主導の企業連合「ワールドパートナーズ」のメンバーに入っている国際電
信電話(KDD)である。AT&Tはワールドパートナーズを99年末で解消する方針を
明らかにした。KDDは新連合に日本側のパートナーとして参加していく方針を提案して
いく予定ではあるが、BTはかねてより日本電信電話(NTT)に提携を働きかけている。
国際展開で自主独立路線を掲げるNTTの動静が焦点となりそうだ。
ワールドパートナーズやコンサートといった従来の国際通信における提携の枠組みは、
表面的な華々しさとは裏腹に、新規ユーザー開拓やインターネットなど新サービス分野で
の戦略性に乏しかった。そのためNTTもKDDも特定の企業や企業連合と排他的な提携
8
を結んでこなかった。
しかし、世界の有力企業を顧客に抱えるAT&TとBTが国際通信部門の事実上の合併
と言える提携に踏み切ったことで、日本の通信会社も顧客の獲得という点で無視すること
はできないであろう。
<国際通信を巡る世界主要通信会社の提携関係>
︵今回の提携︶
・ATT(米)
・KDD(日)
・ユニソース
欧州グループ
スイス
新会社設立
ワールド・パートナーズ
BTグループ(コンサート)
・ブリティッシュテレコム
(BT 独)
・MCI(米)
オランダ
スウェーデン
・シンガポール テレコム
グローバル・ワン
・テルストラ(豪)
・ドイツテレコム(独)
・フランステレコム(仏)
・スプリント(米)
NTT
第3節 オンラインビジネスについて
もう少し細かい視点で通信業界をみると、一番競争が激しいのがオンラインビジネスと
言われるインターネットサービスビジネスである。
第1章でもふれたアメリカのバージニア州「ネットプレックス」には多くのパソコン通
信サービス業社やインターネット・プロバイダーがひしめき合っている。
当地のアメリカ・オンライン社は利用者が1年前の200万人から500万人に急増し、
コンピュサーブ社を抜いて業界トップになった。パソコン通信業界2位となったコンピュ
サーブ社は96年4月に株式を公開した。3位のプロデジー社の場合は出資したIBM社
と小売業大手のシアーズ社が自社持ち株全部を売却するなど華やかにみえるこの業界も問
題が山積みしつつあり、赤字企業も珍しくない。これらパソコン通信サービス会社が抱え
る難題の一つがインターネット・ビジネスとの顧客の取り合いである。要するにユーザー
がパソコン通信会社と通さずにインターネット・プロバイダーと契約すれば、低コストで
9
バラエティに富むサービスが受けられる。この結果パソコン通信サービス業社はインター
ネット接続専門のビジネスを積極的に開始している。
具体的にわかりやすい例として、一時ウィンドウズ95でブームを巻き起こしたマイク
ロソフト社をだしてみたい。
業界ではマイクロソフトとインテルによる「ウィンテル」と呼ばれている市場支配を終
わらせたいという気運が強い。そこで発展してきたのはネットスケープ社やサン。マイク
ロシステム社である。前者は会社を設立して1年でホームページを閲覧するためのソフト
(ブラウザ)開発で市場の75%のシェアを確立した。そしてこの会社は自社のインターネ
ット製品とマイクロソフト製品とは機能面で圧倒的な差があると自負するほどである。後
者にあってはプログラム言語の JAVA を開発し爆発的に売れている。この売れ行きについ
て同社は2000年までに150億ドルの市場規模に成長するとみている。
この業界が他の業界に比べて競争が激しいのは、動きが活発なベンチャー企業が業界の
ほとんどを占めているということが言える。
第3章 インターネットの世界
この章では、実際にインターネットが与える影響というものを検証したいと思う。
第1節 インターネットでなにができるか
次に我々の視点に立って実際にインターネットでなにができるのかを考えてみたい。日
本におけるインターネット普及率は1995年の「ウィンドウズ95」の発売を契機に急
速に伸び、96年末のユーザー数は530万人と言われており、2000年には3200
万人に達すると予想されている。
これまで主流だったパソコン通信は画像や音声がリアルタイムに楽しむことの出きるイ
ンターネットに押されつつあり、94年にはアスキーと日経MIXがサービスを廃止した。
インターネットの有効性にいち早く注目したのは企業であった。一つは社内LANをイ
ンターネットに接続して使う「イントラネット」といわれているものでOA化をさらに促
進する武器としての利用である。
(詳細は4章で)もう一つは、新たなビジネスチャンスを
インターネットそのものに見出そうとするもので、ショッピングモールの開設やホームペ
ージ場での広告展開などがあるが、まだ利益を生み出す段階には至っていない。ちなみに
インターネット広告の市場規模は現在で40億、2000年の予測で200億円と言われ
ており、広告業界全体の5兆円からすると微々たるものである。
これらにビジネスを支えるための電子マネーは現在、様々な実験が続いている。電子マ
ネーにはICカード型の他に、ネットワーク場で決済できるようにする「支払い指示型」
、
貨幣価値がネットワーク場を移動する「ネットワーク型」があるが、この二つのうちどち
10
らがスタンダードになるかはこれからの実験次第である。
インターネットの持つ機能の中で大きな要素の一つが情報検索である。しかし、検索さ
れるべきデータベースの整備が我が国では遅れており、図書館や博物館のデジタル化は進
められているものの成果を十分に利用できるようになるにはまだまだ時間がかかりそう出
る。
政府や地方自治体のインターネットを通じた情報公開も徐々に進められている。大蔵省
では上場企業に義務づけられる有価証券報告書の提出をオンライン化し、閲覧もインター
ネットで行うこととし、2000年の実現に向けて実験を開始した。
第2節 日本のこれからの課題
欧米ではマルチメディアが実験段階を終えて商品化が推進されている分野も少くはない。
少しオーバーな表現をすれば自宅の一台のパソコンを駆使すれば世界中に向けてのビジネ
スが可能になったのである。日本に関しては郵政省の審議会の答申「21世紀の知的社会
への改革に向けて」が発表された。また、自治省も地域のマルチメディア・ネットワーク
の構築に本腰を入れはじめたという情況が続いている。
ではアメリカのマルチメディア・サービスが発達した理由を考え日本の課題と考えてみ
たい。
①通信インフラが整備されていること。
②CATVが62%と高普及(日本は5%)を有すること。
③パソコンのLAN接続率が52%(日本の6倍)と高いこと。
④ベンチャー企業に有利な税制になっており、マクロソフト、インテル、ジェネラル・
マジック各社などの急成長を支えたこと。
⑤政府規制が緩く、自由競争が徹底していること。
⑥政府が情報通信ハイウェー及び NII(全米情報インフラ)構想を打ち出し、その実現を
推進していること。
⑦マルチメディアに合った料金体系が構築され、通信コストが安くて使い勝手がよいこ
と。
⑧ハリウッドを中心に娯楽産業が発展しているためコンテンツやソフトが充実している
ということ。
これらの項目は徐々にではあるが改善されてきているのは確かである。特に電話料金な
どは各社値下げ競争を行っている。しかし十分とは言えないのが実状であり、特に政府に
よる民間を誘導する力に大きな課題があるように思われる。次の節ではその政治にインタ
ーネットという情報化が与えるインパクトを検証してみたい。
第3節 情報民主主義について
11
アメリカのマルチメディア事情、インターネット・アプリケーションというと、ビジネ
スや企業情報あるいは家庭での端末のユーセッジ(使途)に話題が集まりがちであるが、
インターネットの及ぼす衝撃というのはそのレベルにとどまらず政治体制そのものを変革
する原動力になろうとしている。情報民主主義は、①国民が政治情報を知る権利、②情報
使用権と呼ばれるもので情報の独占を防ぎ自由に使用させる権利、③プライバシーの権利、
④情報参加(アクセス)権で政府の重要施策決定やデータベース構築への参加をさしてい
る。以上4つから構成されており、
「議会の透明な公開性を前提にした、情報手段の多様化
による政治情報の国民への適切なアクセス」と解釈できる。
<メディア選挙について>
アメリカでは政治家の命とも言える選挙においてもマルチメディア化が進んでいる。
元々アメリカ下院は単純小選挙区制だから地元有権者の多様なニーズを吸収する仕組みと
言える。だから、所属政党の党拘束はないし、地元の有権者や企業べったりの地元優先の
政策指向となる。選挙区を代表できるのが議員一人だけだから現職有利が確立している。
それも今後はCATVとインターネットが普及することによって議員と有権者が一対一で
対話できるようになる。彼らのニーズが瞬時に判明するから大多数の意見を尊重していけ
ば圧倒的に選挙に強くなる。族議員も官庁との絆以上に地元の利益代表として誕生し、育
成される。投票者の半分以上を獲得しなければならないことから金がかかるようになる。
大統領選挙でも全候補者がインターネットにホームページを開設し、情報提供や問い合
わせに応じていた。中には、ボランティア運動員の募集を行っている候補もいたそうであ
る。このような点において「政治は夢を先行させるから、現実の効果よりも候補が最先端
の電子政治を実現しているというイメージ効果が大事」と分析されているほどだ。議会に
はインターネット議連が結成され、上院議員の四人に三人は電子メールを活用する。
日本では各政党が競ってホームページを開設している。小選挙区制度との因果関係は不
明だが、新しい政治参加スタイルを求めていることは確かだ。各党の事務局とも有権者の
政党離れを防ぎきる情報を的確にインプットし続ける作業で手いっぱいというところであ
ろう。課題は電子選挙運動を想定していなかった公職選挙法との絡みで、電子メディア利
用の普及に向けての法制度が未整備の状態にある点だ。
<議会の改革>
アメリカの議会の情報化は次の二つの点で注目されている。
①議会活動のガラス張り、いわゆる、情報公開の徹底。
②議会の改革であり、巨大化した議会の情報化や機構、特に委員会の統廃合、スタッフ
の削減。
前者は年間千本以上の法案ならびに解説レポート、審議議事録などが有権者がインター
ネットをとうして無料で手に入れることのできる。アメリカ議会図書館の俗称「トーマ
12
ス」サービス・システムがそれである。それも日本からインターネット経由でリアルタ
イムで入手可能だ。その点、日本国民が国会の予算委員会議事録を入手するのにいかに
面倒かを考えれば、
「情報鎖国日本」と世界から言われているのもしょうがないところだ。
更にアメリカでは議会中継がCATVを通して24時間放映されている。
後者に関しては、議会改革として本会議場、委員会、議会会館と結ぶマルチメディア
の活用や電子化システムの整備である。これにより「密室会議」
「国体政治」を防げると
し、後々は選挙の在宅投票も夢ではないと言われるほどだ。
<アメリカの目指す電子政府と日本の課題>
第1章でも述べたが、クリントン大統領は92年の選挙公約として「2001年まで
に全米のすべての家庭、学校、企業、公共施設に光ファイバー網を引いて、NII(全
米情報インフラ)を推進する」と発表した。また、それに関連してゴア副大統領もしば
しば情報公開の徹底ならびに、「電子政府」の実現について言及している。つまり、多方
面で実現すれば国民はわざわざ役所に出向く必要はなくなり、インターネット上の電子
化した情報で用件を済ますことができるということである。
アメリカでは「連邦情報公開(自由)法」が1966年に制定されており、現在はC
IAを含む約60の政府機関が「フェドワールド」サービスで情報を一般にインターネ
ット上で公開している。それも内外無差別で透明性が高い。日本においても情報公開法
の制定の動きはあるが実にスローである。アメリカにおいては、日本はアメリカに次ぐ
インターネット大国に浮上するという見方があるようだが、インフラ整備上その前にや
るべきことは多い。例えば第1にデジタル分野での知的所有権の保護、第2に情報公開
法の制定、第3にマルチメディア・サービスの推進を阻害する規制の緩和、第4に電子
選挙に適するように公職選挙法の見直し、第5にインターネット利用者のネックである
データ通信料金の引き下げである。
「情報民主主義」先進国アメリカでの教訓を生かし情報革命と政治革命をいかに調和
させるかである。さすれば、アメリカ型の地元優先、地方分権主義、現職有利、大衆政
治志向という流れれと、都市と地方という枠を越えた「情報豊民」と「情報貧民」の格
差の出現という2つの流れができるであろう。
第4章 企業経営における情報化
3章でインターネットをはじめとするマルチメディアの可能性について考察してみたが、
どれも本当に有効であるかどうかがなかなか結果に出ない、試行錯誤というか実験段階で
あり理想とまで言ってもよいかもしれないものである。ここでは実際に結果として出てい
て、もっとも情報通信を的確に使用したとされている。企業による情報インフラの整備に
よる「生産性の向上」というものについて述べていきたい。
13
第1節 リエンジニアリングとは
1980年代に入ると、アメリカ企業を取り囲む環境は一層厳しくなった。石油危機や
ドル高を契機に、日本のはじめとする低コスト・高品質の海外製品の流入、一方では国内
でも技術革新や規制緩和などを通じて産業の垣根を越えた低コストの新規参入者が相次ぎ
多くの産業で競争が激化した。業績改善を求める機関投資家の圧力もあり、多くの企業が
コスト削減・生産性の向上・品質やサービスの改善を迫られるという状況ができあがり、
経営戦略と組織の抜本的な再構築、いわゆるリストラクチャリングに着手した。
多くの企業はまずダウンサイジング(減量経営)と呼ばれる人員削減策に着手し、一部
の組織と事業の統廃合や売却、大規模なレイオフに新規採用の凍結、早期退職奨励制度の
実施、パートタイム労働者の採用増加と様々な手段をとった。
ダウンサイジングと平行して、やや長期的な視点から競争戦略と組織を見直す経営革新
の動きも広がった。まずは、多くの大企業では自らの本業ないし強い競争力を持つ分野に
経営資源を集中する、コア・コンピタスの確立という動きが広まった。多角化した事業部
門は整理され、現在、収益を上げている事業や子会社も本業に集中するために売却された。
これがM&Aブームの背景と言われている。また同様の目的から業務を外部の企業に委託す
るアウトソーシングも流行している。その範囲は総務的な仕事はもとより採用・人事から
販売、研究開発、製造までにおよび、研究開発だけで工場を持たない製造業の会社まで出
現している。
その上で、今までの仕事と組織のあり方に根本からメスを入れようとするリエンジニア
リングが流行した。従来、仕事は分業と専門化をベースに組みたてられ、開発や生産、販
売などの業務はそれぞれの職能部門が他とは独立して担当していたが、その結果分業が行
き過ぎ、それを管理・調整する巨大で複雑な管理機構が必要となり、意思決定も遅れると
いう弊害が目立つようになった。また、伝統的な大量生産システムに変わって、市場の変
化により柔軟に対応できる新たな開発・生産方法へと転換する必要も高まった。
これを可能にしたのは経営の情報化の占めるところが大きいと言われている。80年代
半ばからアメリカ企業の情報関連投資は急増し、現在では生産者耐久設備投資の20%をも
占めるようになった。すでに最高峰に合ったパソコン普及率はさらに上昇し、しかもその
相互が結び付けられネットワークとして利用されるようになった。これによって会社内外
の工場やオフィス間の情報の流れは緊密になり、製品開発のスピードアップや生産工程、
在庫管理、部品調達方法の改善が可能になった。オフィス内部でも、情報の仲介者であっ
た一部の中間管理職が不要になるなどの直接の人員削減効果に加え、意志決定権限の分与、
アウトソーシングや分社化などの組織改革も容易になった。
次の節で具体的に情報化によるリエンジニアリングの例を見ていき、どのように生産性
の効率が図られたかを述べたい。
14
第2節 2つのケーススタディ
情報化によるリエンジニアリングの例を見ていきたいが、ここでの例は情報経済論であ
げられたものをそのまま使いたいと思う。この論文は情報経済論のまとめの意味もあるの
でその点においては許していただきたい。
リエンジニアリングにおけるキーワードとして、「根本的」「抜本的」「劇的」「プロセ
ス」という4つがあることを先に述べておきたい。
<IBMクレジット>
このIBMクレジットはIBMによるコンピュータ、ソフトウェア、サービスの販売に
伴う融資を行う会社である。この会社の初期の経営は、融資を要請するIBMの現場のセ
ールスマンからかかってくる電話は会社の会議室にいる14人の1人が取り、案件を書類
に記入する。次に誰かが会議室の上にある信用部門に書類を持っていきスペシャリストが
情報をコンピュータに入力し、借り手の信用度を調査する。その結果を書類に記入しビジ
ネス・プラクティス部門に渡す。この部門では要請書類に特記事項が加えられ、プライシ
ング担当者に届く。ここでは顧客に請求する適正な金利を決定するために、データをコン
ピュータのスプレッドシートに打ち込み、金利を記入し別の書類と共に事務部門に回し、
そこですべての情報を信用状にして現場の販売代理業者に送るというものである。このプ
ロセスにかかる時間は6日から2週間と非常に長いものとなってしまう。
これを改善するにあたって、問題は業務やそれを遂行している人にあるのではなく、部
門間の受け渡しにあり、変革するのは個々のステップではなくプロセスなのであった。I
BMクレジットは信用調査係やプライシング担当者などのスペシャリストをゼネラリスト
に代えた。実際に4人のスペシャリストのしている仕事は1人のゼネラリストでできると
いうことが判明したのである。今までのような部門間の書類の受け渡しをする代わりに、
始めから終わりまでの全作業を案件処理担当者と呼ばれる人1人が担当する。また、案件
処理を助ける新しい洗練されたコンピュータシステムを導入した。ほとんどの場合、この
システムは案件処理に必要な指示を与える。本当に難しい場合は信用部門やプライシング
部門などのスペシャリストからの助けを受けることができる。案件処理の担当者とスペシ
ャリストはチームを組み一緒に働くので、ここでも仕事の受け渡しはない。
これによって処理時間は4時間に縮まり、人数を増やさず(実際には削減している)に
扱う案件数は100倍となった。
<コダック>
ここであげる例は、コダックが激しい競争に対応するために創造した、製品開発のプロ
セスである。
15
製品開発のプロセスとして、いくつかのステップと順々に進めていくやり方と同時に平
行していくやり方がある。コダックの場合は後者をデータベースを導入して効率的なもの
にした。このデータベースには毎日技師に仕事が集められ、それぞれの仕事が一つにまと
められる。そして設計に携わる人は毎朝このデータベースを調べ、前の日の誰かの仕事に
よって、自分のところや設計全体に問題が発生していないかどうかをチェックする。もし
問題があれば、何週間も無駄な仕事をする前に問題を解決することができる。さらにこの
技術を使うことで、製品設計担当者が最初のプロトタイプの形を変えるとすぐに製品担当
の技師もその工作機械の設計を始めることができるようになった。
これにより製品開発期間は従来の半分となり工作機械と製造コストは25%削減するこ
とができた。
第3節 情報技術がもたらす効率性
今やアメリカ企業は情報通信革命の成果をどうやって企業内に取り込めばよいか、その
方法を明確に自覚しはじめたようである。Eメールによってコミュニケーションをスムー
ズにし、データベースの充実により多くの情報を共有できるようになった。この形が生産
性の向上に大きく貢献していることに疑いを持つものはいないであろう。
Eメールによって何日もかかっていたことを数分でできるようになり、誰か1人に会う
努力で何百人の仲間にアクセスできるのである。デジタル化された情報がかつてないほど
大量に、スピーディーに、そして安価に企業内の部門間の壁、上司・部下の壁を飛び越え、
企業と社会の枠、供給側と消費側の境界、そして国境さえ越えて行き来している。
Eメールはアメリカ企業の抱えている「情報問題」
、つまり製造現場、従業員間、部と部、
課と課、工場と工場、取引先企業との間、そして企業と顧客の間のコミュニケーションが
うまくいかないという点を解決したのである。
一方、データベース・ウェアハウスというコンセプトを説明すると販売状況・経理・人
事・技術・マーケット情報など、企業活動に関わるあらゆるデータを集中的に集め、必要
に応じて誰でも情報を取り出せるように設計されたデータベースの倉庫である。会社経営
に関わるすべての情報をこのデータベース・ウェアハウスの中に蓄積しようというもので
ある。そしてこのシステムの構築はEメールやLANなどのイントラネットシステムと並
んで、アメリカ企業の情報処理、意思決定の仕組みに極めて大きな変化をもたらしつつあ
る。その変化の内容を一言で言うならば、
「意思決定の分権化の進展」ということになるで
あろう。個々の職場が他の職場や会社全体の情報を持っていないという弱点のために、戦
略的な意思決定のほとんどすべてを会社の中枢部に委ねざるおえなかった。アメリカの「現
場」が日本ほど柔軟に対応できない理由の一つはここにあった。この「現場」の弱さを補
うのにデータベースが果たした役割というのは大きい。データベース・ウェアハウスは会
社全体の情報が同一のプロトコルでどの部署からも容易にアクセスできるように構築され
16
ているため、どの「現場」からも全社的情報を入手できるようになった。しかも情報をな
るべくビジュアル化し、専門部署以外の人にも簡単にメッセージが伝わるような工夫もさ
れている。このためアメリカ企業における意思決定の大幅な分権化が可能になったのであ
る。また、ピラミッド型の位階型組織の構造が大幅にフラット化し、意思決定のスピード
が飛躍的に高まった。
終章
17
以上のことから、日本の情報化社会の新潮流についてまとめる。まず、技術という視点
から見ると
①デジタル化
コンピュータの普及に伴い情報を不連続的な信号値に直して取り扱うデジタル技術が
一般化する。
②ネットワーク化
通信ネットワークの充実により、コミュニケーションが容易になり、より多くの情報
を入手することができる。
③大容量化
情報通信技術の発達に比例するように扱う情報量も増大する。
④マルチメディア化
メディアは音声・画像・データの3つの情報要素を統合するようになる。
⑤ダウンサイジング化
情報技術がもたらす効率化。人員削減の傾向も出てくる。
このような技術的なトレンドをベースとして、次の5つの新しい流れが日本に出てくる
と思われる。
①通信と放送の融合
②コンピュータと通信ネットワークの融合
③ディファクト・スタンダードによる垂直的統合化
④市内通信と長距離通信市場の垣根の撤廃
⑤国内市場と国際市場のボーダレス化
これらを結論として終わりたい。
18