表 - 帝装化成

2013 年 2 月号
TEISOKASEI
2013 年
TEISOKASEI NEWS
2 月号
VOL.50
企画・発行:㈱帝装化成 四日市技術研究所
掲載している記事の無断使用を禁じます。
〈URL〉http://www.teisokasei.com〈E-mail〉[email protected]
昆虫トピックス
ヒメヒョウホンムシ
TEISOKASEI NEWS 2012 年 12 月号の【昆虫トピックス】は寒くなると現れるチャバネトゲハネバエについてのお話でしたが、それに
引き続き今回も寒くなると現れる虫を紹介したいと思います。
今回の主人公は、甲虫の仲間でヒメヒョウホンムシ Ptinus clavipes (Panzer, 1792) という虫です。この虫は、体長は 2.3~3.3mm で、Brown
spider beetle の英名のとおり茶色くて脚や触角が長く、雄と雌で形が異なるのが特徴です(図 1、2)
。世界各地に分布し、乾燥した食品や
穀類、種子類などを好むようです。成虫は秋から翌年の春にかけて、特に 1~3 月の厳寒期に出現します。古くから家屋害虫として知られ
ていますが、生態はまだよくわかっていません。
私は過去にこの虫の調査を行ったのですが、
その時
に少々興味深いことを発見しました。調査は 2006 年
に大量調理施設の中と外で行いました。
その時の調査
結果を図 3 にまとめてみました。それによると 2006
♀)に集中的な捕獲が確認できます。しかし、同年 6
1mm
1mm
年 2 月(4 個体:3♂1♀)と同年 3 月(5 個体:3♂2
月にも 1 個体(♀)の捕獲があったのです?!この虫
捕獲個体数
図 1 ヒメヒョウホンムシ ♂
は厳寒期に出現が多くなりますので、初夏に捕獲があっ
図 2 ヒメヒョウホンムシ ♀
たのは非常に珍しいことと言えます。ただし、後で文献
6
5
4
3
2
1
0
内部
外部
を調べてみたところ、本種が 8 月にライトに飛来した記
録がありました(長尾、1969)
。ですので、この虫は目
立たないだけで実は 1 年中見られる虫なのかも知れま
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
2006年
図 3 大量調理施設の内部と外部におけるヒメヒョウホンムシの捕獲個体数
せんね。また、本種は家屋害虫と呼ばれるだけに建物の
内部でよく発見されるのですが、この時の調査では、外
部でも内部と変わらないくらいの捕獲がありました。さ
らに私は 2006 年 2 月の小雪が舞うとても寒い日に、調
査地横の乾燥した砂地で、石の下に潜む 1 組の雌雄を目撃しました。これらのことから、本種は建物内だけでなく野外でも普通に生息し
ているように思われました。どうでしょうか、謎に包まれていた彼らの生態の一部が明らかになったような気がしませんか?もし皆さん
にそう思って頂けたなら幸いです。
(T. S)
参考文献
長尾 悟(1969) ヒメヒョウホンムシ四国においての記録, 昆虫と自然, 4(12)
:2.
酒井雅博(2001) コウチュウ(鞘翅)目 ヒョウホンムシ科:154-170, 宮澤 宏, 原色ペストコントロール図説 第Ⅴ集, 509p,
社団法人日本ペストコントロール協会, 東京.
吉田敏治・渡辺 直・尊田望之(1989) 図説 貯蔵食品の害虫, 第 2 版, 268p, 全国農村教育協会, 東京.
マダニ媒介性の新型感染症
厚生労働省は 2 月 13 日、
マダニが媒介するウイルス感染症
「重症熱性血小板減少症候群」
(SFTS)
により、新たに二人の死亡が確認されたと発表しました。患者は愛媛県、宮崎県の成人男性で、
昨年秋に死亡したとのことです。 SFTS は、中国で 2009 年ごろから発生が報告されていたウイ
ルス感染症で、国内では、山口県の成人女性一人が昨年秋に死亡していたことが、今年 1 月に初
めて確認されました。ただし、二人の男性から検出されたウイルスの遺伝子配列の一部は、中国
のものとは異なり、山口の女性から見つかったウイルスと似ていたことから、日本にもともとい
たウイルスに感染したという見方が強いそうです。
マダニの仲間にかまれたり、患者の血液や体液と接触したりして SFTS に感染すると、発熱や嘔
マダニの 1 種
吐(おうと)
、血小板の減少などの症状が現れます。有効性の確認されているワクチンや治療薬は今のところありませんので、かまれない
ことが最も重要です。したがって、草むらや藪に入る際は、なるべく肌を露出させないよう心掛けましょう。今はまだ良いですが、マダ
ニの活動が活発になる春頃からは特に注意が必要です。厚生労働省の見解では、報告が増えたのは見過ごされていた症例に注意が集まる
ようになったためで、流行が急に広まっているわけではないということですが、アウトドア好きの方には少し怖いニュースですね。野山
へ行く際は気を付けましょう。もし万が一マダニにかまれた後に発熱などの症状があったら、速やかに医療機関を受診しましょう。
(T. S)
自然にやさしい総合生物害防止システム
Symbiosis with Nature