SF小説 「不思議な枕」第3部:神々のてんご 著者:角茂谷 繁 22章 (かくもだに・しげる) 神々のてんご ある日、二柱の神様は次のような会話をされた。 神A「わてら神様は永遠の命があるさかい、毎日が退屈でんなあ。」 神B「そやなあ。なんぞおもろい事はないやろか。」 神A「ちーとばかし、人間共にてんごしてみまへんか。」 神B「そうしまひょうか。わては、幽界に漂うとる人間の魂に乗り移って、おもろ い事をやらせまひょうか。」 神A「ほなら、わては人間界に降臨して、人間共をおちょくりまひょうか。」 神B「そうしまひょう。人間共が難儀するさまを、笑ろうてやりまひょうや。」 神A「楽しみでんなあ。ほんなら、また会いまひょう。」 著者の注:「てんご」とは大阪弁で「いたずら」を意味する。 神Aは本作品の著者・角茂谷繁に次のような話をした。なお、神Aは大阪弁で話 したのであるが、21世紀の標準日本語に翻訳して以下に記載する。 神Aの話: 私は神Aである。最近、角茂谷繁君が「不思議な枕」と題する素晴しい小説を書 いていることを発見した。私は、「本小説は奇想天外で面白いばかりではなく深い 思想を含んでおり、人類の未来に対する指針も明確に示している。本小説はこのよ うに極めて優れているので、ノーベル文学賞にも充分に値する。」と考えている。 従って、私は著者の角茂谷君に依頼して、本小説に登場させてもらった次第である。 現在、本小説は第3部に進行中である。読者諸君の中には、第1部と第2部を読 んでいない者やそれらの内容を充分には理解していない者も少なくないであろう。 そこで、本小説のこれまでの荒筋をここで復習してみよう。第1部の1章と2章に 記載されているように、角茂谷繁(かくもだに・しげる)君は昭和18年(西暦194 3年)2月11日に、徳島県板野郡撫養町(現・鳴門市)に生まれた。角茂谷君は 地元の工業短大を20才で卒業して、鳴門工業研究所に就職し、そこで平凡な研究 生活を送った。平成15年(2003年)2月11日に、角茂谷君は60才になり 定年退職している。 1 第1部の5章に記載されているように、平成15年5月3日に、角茂谷君は鳴門 市にある「夢屋」という薬膳料理屋に昼食を食べに行った。昼食には30分ばかり 時間があったので、角茂谷君は「夢屋」で仮眠を取った。枕には、月が2ケある奇 妙な風景が描かれていた。30分後に起こされて昼食を食べたが、周囲の様子は少 し変であった。 読者諸君は、「自分達の生きている世界は唯一である。」と考えているだろう。 しかし、真実は諸君達の世界の他に、無数の世界が同時に存在しているのである。 専門用語では、これらの世界は「パラレル・ワールド」と呼ばれている。諸君達の 世界と少し違った世界にも、諸君達は同時に存在しているのである。 読者諸君達の地球には、天然の月は1ケしか存在していないだろう。本小説の第 1部・7章で説明されているように、このような世界は「単月世界」と呼ばれてい る。7章に記載されているように、角茂谷君は平成15年5月3日の仮眠中に「単 月世界」から天然の月が2ケ存在している別世界に移動した。この世界は「対月世 界」と呼ばれている。諸君達の「単月世界」では、平成15年は西暦2003年で あった。しかし、角茂谷君が移動した「対月世界」では平成15年は西暦1960 年であった。その違いは、「単月世界」では昭和天皇は第2次世界大戦の敗戦後に は退位しなかったけれど、「対月世界」では昭和天皇は第2次世界大戦の敗戦直後 に退位したからである。 もちろん、無数の「パラレル・ワールド」には、諸君達の世界以外にも「単月世 界」は他にたくさん存在しているし、「対月世界」も角茂谷君が移動した世界以外 にも他にたくさん存在している。また、天然の月が存在しない「無月世界」や、n ケ存在する「n月世界」(ただし、nは3以上の整数)も同時にたくさん存在して いる。図 22-1 に、無数の「パラレル・ワールド」の存在形態を示した。 無数の単月世界 無数の対月世界 無数の無月世界 無数のn月世界 (n≥ 3) 角茂谷君が行っ た対月世界 角茂谷君の移動 読者諸君が住ん でいる単月世界 図 22-1.「パラレル・ワールド」の存在形態 2 無数のパレレル・ ワールドの集合 なお、私・神Aは以下の事実を明確に指摘しておきたい。すなわち、角茂谷君は 2008年に「不思議な枕」の第1部と第2部を発表した。一方、村上春樹君は2 009年に「1Q84」と題する小説を発表した。「1Q84」でも、月が2ケ存 在する「別世界」が登場するようだ。このように、角茂谷君の「不思議な枕」と村 上君の「1Q84」とは発想が似ている。しかし、「不思議な枕」の方に、先行性 があることは明白である。 葦原の国 中つ国 大麻山 猿又村 淡路の国 中央構造線 山猿村 小猿村 木の川 粟の国 吉野川 ヤマト村 海部の国 木の国 亀島 那賀の国 熊の川 熊の国 眉山 鮎喰川 図 22-2. 西暦1-4世紀における、「対月世界」・日本国の徳島県、大阪府、奈 良県、および和歌山県付近の地形と地名。(青線は当時の海岸線) さて、「不思議な枕」第3部では、私と神Bとが行った「てんご」の顛末が記載 される予定である。そこで、我々の「てんご」の時代的・地理的背景を説明してお きたい。我々が人類に接触した時代は西暦1-4世紀で、場所は「対月世界」の日 本国における徳島県、大阪府、奈良県、および和歌山県であった。当時の地図を図 22-2 に示す。当時は、徳島県は「粟(あわ)の国」、「那賀(なか)の国」、及び 「海部(かいふ)の国」に分かれていた。大阪平野は「葦原の国」と、奈良盆地は 「中つ国」と呼ばれていた。和歌山県の紀ノ川流域は「木の国」と、熊野川流域は 3 「熊の国」と呼ばれていた。当時の海は、現在の海岸線(図 22-2 の黒い線)よりず っと平野の奥(図 22-2 の青い線)まで進入しておった。 「不思議な枕」の第2部・18章で記載されているように、「エテ公の駕籠屋」 の一人がブラックホールに吸い込まれて、何兆年も漂っていた。私はこの猿に乗り 移って、粟の国の大麻山(おおあさやま)の麓にあった猿神の社に、猿神の姿で降臨 した。降臨した時期は、西暦元年であった。西暦元年に降臨した理由は、角茂谷君 が「不思議な枕」第3部を執筆する際に、年代を分り易く記述するための配慮であ った。 最後に、「不思議な枕」第3部で登場する主な神々と人物を以下に紹介しよう。 彼らの殆どは第1部と第2部で既に登場している。括弧内には、初めて登場した章 とその当時の名前を記載する。 猿又彦の命・本名は神A(17章から登場したエテ公の駕籠屋の一人に乗り移 る。)、神B(1章から登場した著者・角茂谷繁に乗り移る。)、日巫女・後の天 照の命(5章から登場した夢野香里:夢屋の女将)、イスラエル人ヨセフ・別名は 徐福(8章から登場したアラジン選手)、亀島の神主・米吉(1章から登場した角 茂谷米三:繁の祖父)、五瀬の命(3章から登場した佐伯真一:米三の戦友)、伊 波礼彦(いわれひこ)の命・後の神武天皇(1章から登場した灰田光次郎:米三の戦 友にして義兄)、イエス・キリスト(2章から登場した坂東秀樹:繁の友人)、マ グダラのマリア(10章で名前が判明したブット女史)、亀島の娘・シズカ(1章 から登場した亀田静香:繁の妻)、青年A・本名は片大(2章から登場した片岡大 吉:繁の友人)、青年B・本名は細末(7章から登場した細川末男:繁の友人)、 船長シンドバッド(1章から登場した片岡鶴吉:大吉の父)。 著者・角茂谷繁からのご挨拶。 「神Aさん、拙著「不思議な枕」に対してご丁寧なご紹介をいただき誠に有難うご ざいました。その上に、拙著に対して身に余るお褒めのご評価をいただき、大変光 栄にぞんじます。貴殿のご期待に背かないように、第3部の執筆に邁進いたします ので、今後共よろしくご指導ご鞭撻をお願い申し上げます。さて、読者の皆様、大 変お待たせいたしました。拙著「不思議な枕」第3部を、次章(23章)より順次 発表いたしますので、是非ご期待下さい。」 以下は、23章に続く。 (22章は、2011年7月25日に執筆完了。) 4
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