SS12 第 10 回 - アクラス日本語教育研究所

SS12
第 10 回
MrJ 共生学習プロジェクト
2012 年サマースクール
報告書
現地運営メンバー:村上 徹也、G.スウリ、増田 匠
派遣メンバー:荒井 舞、堀内 千波、C.バゾ、関内 彩佳、今井 智絵
企画:MrJ プロジェクトチーム
主催:新モンゴル高校(在ウランバートル市)
後援:双日国際交流財団、ACA-AQUA
2012 年 8 月 18 日・詩の朗読大会後
2012 年 10 月 8 日作成
~
目
次
~
1. 2012 年サマースクール実施概要
1.1. サマースクールとは・・・P2
1.2. 新モンゴル高校について・・・P2
1.3. MrJ について・・・P2
1.4. 2012 年実施概要・・・P2
2.授業報告
2.1 日本留学試験対策・・・P4
2.2 詩・・・P7
2.3 歌・・・P10
2.4 コミュニケーション・・・P13
2.5 考える日本語・・・P16
2.5.1 人権班・・・P17
2.5.2 環境班・・・P21
3. アクションリサーチ(AR)
3.1 各班活動報告・・・P24
3.2 発表会・・・P26
4.イベント
4.1
4.2
4.3
4.4
4.5
ごみ拾い・・・P27
スポーツ大会・・・P27
スピーチコンテスト・・・P28
詩の朗読大会・・・P28
終了式・・・P29
5.編集後記・・・P29
期間中に訪問した桜美林大学の学生と
スポーツ大会 バスケットボールの様子
1
1.2012 年サマースクール実施概要
1.1. サマースクールとは
. モンゴル・ウランバートルにある新モンゴル高校を舞台として、
「互いに学び、伝え合い、共に生きる未来を創
造していく」ことを目的とした日本語共生学習である。
今年度で第 10 回目となるこの活動は、日本の大学生が中心となり新モンゴル高校 2012 年 5 月卒業生を対象に
日本語の授業や指導をしていくものである。授業は日本留学試験対策、詩や歌、日本語を通してモンゴルの社会
問題を調査・行動をする AR(Action Research)などがある。特にこの AR はサマースクールの特徴と言えるだろ
う。これらの活動を通し、①日本留学希望者の日本語の総合力の向上、②日本留学中に発生する様々な問題に対
処できる力を養うこと、③異文化交流を通じ、地球市民としての自覚を深め、その資質を磨き合うことを目指す。
また留意する点として、このプロジェクトは、日本の大学生がモンゴルの高校生に「日本語を教えに行く」と
いうものではなく、両者がというプロセスを通して、両国の若者育成、共生のための新しい価値の協働創造を目
指すものである。参加者は「共生学習」というキーワードを常に意識し、活動している。
1.2. 新モンゴル高校について
新モンゴル高校は、日本留学経験のあるジャンチブ・ガルバドラッハが、日本の高校をモデルとしてカリキュ
ラムを作成し、2000 年 10 月 5 日に創立された日本式の高校である。新モンゴル高校の特徴は、卒業生に対し国
費留学および新モンゴル高校のスポンサーからの奨学金を受給して私費留学の機会があることだ。留学生は年々
増加しており、2012 年 4 月までで合計 199 名が日本の大学で学んでいる(私費留学生 86 名、国費留学生 113
名)
。また、日本だけでなくロシア、中国、アメリカ、トルコなどへも留学生を送っている。
1.3. MrJ について
このサマースクールの実施団体は、[MrJ」である(名前の由来はモンゴル(Mongol)と日本(Japan)との間
に虹(Rainbow)を架けるという意味から)
。サマースクールは 2003 年の開校当初から 2006 年にかけて、新モン
ゴルの支援団体 NGO アクアと東京国際大学の学生が主体となり活動していたが、2007 年より NGO アクアは後
援者となり、メンバーも一大学に限定されず広く募集されるようになった。現在では日本人学生、社会人、新モ
ンゴル高校卒の留学生から構成されるメンバーで活動している。これらのメンバーは現地活動を行う①派遣メン
バー、教材の作成などの②後方支援メンバーに分かれる。
1.4. 2012 年実施概要
2012 年度のサマースクールは、荒井舞(名古屋大学大学院 1 年)、堀内千波(明治大学 3 年)、バゾ(信州大
学 4 年)の 3 名が例年通りの派遣メンバーとして参加した。また、2012 年 9 月から新モンゴル高校日本語科教
員となる関内彩佳(2011 年東京国際大学卒)
、今井智絵(2012 年桜美林大学卒)も派遣メンバー枠で参加した。
また上記に加わり、MrJ 理事の村上徹也(NGO アクア)
、スウリ(新モンゴル高校教員)
、増田匠(新モンゴル高
校教員)が運営に携わった。上記メンバーは基本的に 2012 年 6 月に卒業した生徒の授業を担当した。
その他、米国からボランティアで参加している高橋晃(サンディエゴ大学)とモンゴル人教師が下級生の授業
を担当した。
今年度は以下のように活動を行った。
5月
派遣者決定
8月
現地活動
6~7 月
事前準備
9月
報告書作成
(顔合わせ、教材作成、授業案作成)
11 月
報告会(予定)
2
2012 年サマースクールは 2012 年 7 月 30 日から 8 月 23 日までの 4 週間実施した。現地でのスケジュール細
は以下のとおりである。
3
メンバーはサマースクールの柱である「共生学習」を念頭に置き活動を行った。また、6 月に日本で行われたミ
ーティングで「視点を増やすきっかけづくり」という目標を決め、それにも基づきながら授業や活動を組み立て
ていった。
2.授業報告
サマースクールでは、日本留学試験対策授業(読解、聴解、聴読解、記述)、詩、歌、コミュニケー
ション、考える日本語を行った。詩、歌、コミュニケーションは日本語の総合能力の向上のため、また
日本留学の準備の意味も含めた授業であった。
「考える日本語」は AR のための事前学習という位置づ
けであり、先生方が人権と環境に分かれ授業を行った。
2.1. 日本留学試験対策(関内、今井、堀内、バゾ、荒井、増田、スウリ)
(1)記述(荒井・スウリ)
<概要>
全 9 回の授業のうち、1,2 回目をスウリが、残りの 7 回を荒井が担当した。1、2 回目は今までの復習を中心に
行った。
3 回目の前半には、まず、
「試験」と「ルールの重要性」を知ることを目的にガイダンスを行った。3 回目後半
~4 回目は代表的出題パターンの解答例を分析した教材(別紙参照)を使用し、文章の構成を解説した。また、
文章作成の前に下書きを行うよう指導した。5 回目以降は全員で下書きをし、文章を個人で完成するというパタ
ーンを繰り返した。最終回は論理的思考の練習として特性要因図をグループで作成させる傍ら、クラス分けテス
トの返却と個人面談を行った。
現時点では語彙を増やすことが重要と考え、電子辞書は使用させた。
<良かった点>
・文章の構成にはルールやセオリーがあることを教えることができた。
・パターンを覚えることにより、効果的な文章構成が行えるようになった生徒も見られた。
・下書きを行うことにより、記述して行くうちに論点がずれてしまう傾向を抑えることができた。
・個人面談を行うことにより、サマースクールの前と後で自分の記述がどのように変化したか、弱点は何かを伝
えることができた。
<改善点>
・下書き、教材配布・板書をなぜ行うのか、それらを記述にどう活用するのかを最初から明確にし、繰り返し言
った方がよかった。
・クラス分けテスト、最終テストの両方で、記述の点数が加点されないのであれば、両方とも同じ問題を解いて
もらった方が、各人で自己の成長を感じてもらうことができたかもしれなかった。
・日本と同様、モンゴルでも作文は「自由記述」が多いと感じられたので、記述対策以前にルールのある作文を
書かせる練習が必要と感じた。
(英作文のクラスや課題でも可)
・全体的に受験と受験勉強に不慣れのため、試験そのものだけではなく、試験前の心構えやテクニックなども指
導する必要があると感じた。
(2)読解(堀内•BAZO)
<概要>
読解問題の精読、解き方のポイント、時間の意識、語彙の強化を目的に授業を行った。
4
特に解き方のポイントを身につけるために、どうしてその答えを導きだしたのか明確にさせることを意識した。
両クラスとも、内容の分野がかぶらない程度に短文復問、長文から出題。テキストは竹クラスが、スコアアッ
プと速攻トレーニング、松クラスは速攻トレーニングのみより出題。途中から、黒板の半分を重要語彙のメモ用、
もう半分を問題の解説用とわけて使用。
竹クラスは、問題によっては、読めない漢字を認識するために問題文をよんでから解説を始めた。
両クラスとも、各生徒が何を解けていないか、どこまで文章理解できているかを把握するために、解説で、答え
だけを聞くのでなく、答えの根拠をのべさせるようにした。
事前に漢字テストにでる一覧を張り出し、毎時最後の10分間は用意した漢字テストと、前回の授業で取り上
げた重要な漢字を黒板に書き出し、答えさせた。
宿題はテキストから、毎回3問以上だし、答えと根拠を記載するようにさせた。あわせて、前回漢字テストで間
違えた漢字の意味を調べ、10回かいてきてもらった。
<良かった点>
•モンゴル人と日本人のペアを生かすために、毎時間二人で授業に取り組むことができた。
•竹クラスと松クラスの理解度に差があるため、それぞれの弱点がうめられるようにテキストを上手く使った。
•漢字テストをすることで漢字に対しての拒否反応を軽減させ、勉強しようとする意識がついた。
•勉強へのやる気が漢字テストの勉強や、宿題の内容に大きく影響し、それが(漢字テストは特に)テストの点
につながっていた。
•自分達の良くない所は、すぐに次の授業で軌道修正した。
•生徒との距離を保ちながらも、学生目線で自分達の経験を伝えることができた。
•右往左往した部分があるが、一貫して自分達の伝えたいことは維持できた。
•宿題を多くだした
<改善点>
•日本での準備不足で、モンゴルにきてぎりぎりまで授業準備をすることが多かったので、渡航前に、根拠を持
って授業の狙いややり方を反映させた授業案を作成する
•解説にとまどり、時間をかけすぎてしまう傾向があったので、各問題どのくらい時間をかけるか事前にもっと
明確にしておく
•ペアで授業に入る前に、お互いの役割分担を明確にしておく
•授業後の引き継ぎが甘い部分があったので、毎回できるだけ早く引き継ぎの時間をとり、具体的な反省をする
•宿題に完成度に差があったため、宿題のやり方を具体的に丁寧に提示する
•漢字テストの勉強を全くやってこない生徒が見受けられたので、漢字テストや宿題をやってこない生徒に、も
っと早い段階で働きかけをする
•竹クラスでは特に、難しい単語の解説はできるだけ、的確な例を事前に用意しておく
•宿題の解説がノートを通してだけでは不十分なところがあったので、授業語の補習の時間をとる
•解説時、なるべき形容詞は少なくし端的な言葉を使う
3)聴読解(関内・増田)
<概要>
全 9 回の授業を増田先生と分けあいながら進めていった。教科書は、スコアアップと速攻トレーニングを用い
た。回数を重ねるうちに生徒の苦手な問題のタイプや質問パターンの把握におもきをおいた。関内は、サマース
クール以後も新モンゴル高校で働くので、秋スクールでの勉強も考え、生徒の実態把握に努めた。また一度解い
た・聴いた問題は、もう一度同じ問題にあたった時に解けるようにと細かく解説を加えた。CD をもう一度聴き、
5
問題用紙にある図や説明とスクリプトを読み合わせしながら照らし合わせた。消去法を一番大事に説明していた
ので、話の順を追うと同時に違うもの、答えになる可能性がないものを削ぎ落としていくやり方を繰り返し行っ
た。後半は、近年多く出題傾向にある問題パターンと生徒たちが苦手とする質問パターンを組み合わったところ
を教科書から探し、多く解くようにした。
<よかった点>
・回数を重ねることで生徒の苦手問題形式が分かったこと
・竹組については、松組に追いつくぐらい正答数が上がり、正当率が安定してきた生徒増えたこと
・長音などは、聞こえてくる音と文字が異なるので、どちらも取り上げながら授業できたので良かった
<改善点>
・過去問を研究し、問題の種類や話題、質問パターンの傾向などをよく事前に研究すべきだった
・教科書を研究し、日本留学試験当日に実際の問題を解いていけるよう、過去問の傾向を踏まえながら問題の解
き方(解答を導き出す手順)をよく研究し、説明できるようになっておくべきだった
・松組の生徒のレベルに対応した授業を展開するためには、より生徒一人ひとりの能力を把握する必要がある。
間違えた問題を聞き、研究し初見の問題を多く用意すれば良かった
・松、竹両クラスにおいて、クラスの下位に焦点を当て、みんなが解けるようになることをめざしていたが、松
組においては、真ん中よりやや上の人に焦点を当てながら授業を進めるようにしたほうが良かった
・松組では、テンポ感がとても重要になると感じた。ガツガツ速いテンポで進めても良かったのかもしれない
・宿題にしている単語調べについて、ノートの使い方が個々によってまちまちで、後で見返しにくいノート作り
なってしまっている人もいた。ノートの書き方も指導しても良かった。
(4)聴解
(今井・増田)
<概要>
松クラスでは「情報整理の仕方」
、竹クラスでは「聞いて予想すること」を中心テーマに据え授業を行った。
授業ではテーマ別に行った。
(下記表参照)また、2 回に 1 回本番と同じ形式(15 問)のテストを行った。
授業では様々な手法を取り入れた。問題を解いて解説するだけでなく、問題文からディスカッションに広げた
り、よく使われる語彙を導入するなどした。また、先生自身の言語学習方法やテストのストラテジーなども講義
した。
回
内容
1
会話文(友人)
2
会話文(フォーマル)
3
説明文
4
社会・経済
テスト
○
○
回
内容
テスト
5
理科
6
言語・文化
○
7
心理
○
8
接続詞
○
<よかった点>
・ 生徒に「何ができなくて、どうしたらできるのか」という問題提起・意識づけができた。
・ 先生の言語学習方法は様々な学習方法を提示する機会になった。
・ 語彙を多く導入することができた。
・ ペアとなる二人がお互いの授業を見学し、相手のやり方を把握していた点。これにより、相手が得意そうな
部分を任せて、より効率的に授業が進められた。
・ 聴解のポイントの他、勉強方法も取り入れられた。
・ シャドーイングの宿題を少しだけ入れられた。
・ メモを取る量が増えた。
6
<改善点>
・ 宿題を多く出す。宿題をしてきているか確認する方法も考える。
・ 解説方法の改善。試験や教材のポイントをおさえた研究が不可欠である。
・ テーマだけでなく、問題形式で教えるのもよい。
・ 何を行うかよりもどう行うか・どのように導入を行うかが大事である。
・ 機材の取り扱いの下準備不足が見受けられた。
・ 二人で事前のカリキュラム作成を行えれば、より効果的に効率的に行えた。
・ シャドーイングを毎回義務付けることで、家庭学習の時間を増やすことができた。
・ 宿題量が少なかった。
・ 生徒にのびを実感させる授業スタイルを行えばよかったかもしれない。例えば、最初と中間で同じようなテ
ストを行い、伸びを見せる。そうすることで自信をつけさせることができたかもしれない。
2.2 詩
(関内、今井、堀内、バゾ、荒井、村上)
<狙い>
詩を通して、背景にある日本の文化や価値観を学ぶ。また朗読をすることで、生きている日本語を楽しみなが
ら、ただの文ではなく、詩を自分のものにしていくことを目的として授業を行った。
(1)たべもの
(関内)
<概要>
中江俊夫の『たべもの』を扱った。これは、小学校 1 年生の教科書に掲載されている。オノマトペを通して、音
を楽しむというねらいで読み聞かせから授業を始めた。日本語には、擬音語と擬態語がある。本作では、擬音語
が用いられていた。音でたべもののかたさやはごたえ、噛んでいる時の音、温度、よく作物が育ったのかどうか、
おいしそうかどうか、を文字化したものであるということを取り上げた。生徒の理解が見られたのち、自分の好
きなものやよく飲み、食べるもの、モンゴルの料理名を使って、オリジナルの文を作成した。生徒の文には、コ
ーラのペットボトルを開けるときや食べている時の音やラーメンなどの熱いものを冷ます時の音を書いていた。
書いた後は、発表の時間にした。発表では、文字にできない音を出していてその食べ物の様子や食べている時の
様子が伝わった。またこの授業では、松・竹組にそれぞれ特徴があり印象的だった。松組では、日本語上級者が
多いため、音を文字化しにくいと消極的な生徒が多かった。一方、竹組では、取り組みにくそうにしている生徒
もいたが全体的に積極的に取り組んでいた。授業の最後には、擬態語も紹介した。
<よかった点>
・日本語には、音を文字化する特徴があると知れた
・オノマトペには、人の気持ちも入っていることが理解できた
・日本語が必ずしも上達していなくても取り組める授業だった
<改善点>
・午後の時間は眠くなりやすいので、1 時間内でメリハリが必要
・詞の内容が簡単なので、創作に多く時間をかけてもいいかもし
れない
・来年は、擬態語を使った人の心情を詠む詞を見つけ、取り上げてみたい
・日本語は、誰でも創作しやすくオリジナルの言葉が生み出せる言語だと言うことを強くだすと面白みが増すか
もしれない
・松、竹組に限らず他学年で行ってもいいかもしれない
7
(2)わたしと小鳥と鈴と
(今井)
<概要>
金子みすゞの「わたしと小鳥と鈴と」を取り上げた。個人として好きな詩であると同時に、人間を含めたいき
ものの多様性を理解してほしいという思いからこの詩を選んだ。
最初に先生が朗読した。詩の内容については登場人物それぞれができることとできないことを書きだし比較した。
また詩の最後にある「みんなちがって
みんないい」の意味を「みんな違うとは?」「みんないいとは?」の 2
点に分け考えた。さらに作者の金子みすゞ本人の生涯を取り上げ、時代背景なども解説した。最後にクラス全体
で朗読した。特に松クラスでは 3 連ある詩を 1 連ずつ、3 名が読むというアクティビティも行った。
<よかった点>
•登場人物のできることを考えるワークは内容の理解が深まりよかった。
•金子みすゞの生涯は反響が大きく、取り上げた意味があった。
<改善点>
•授業の目的をはっきりさせる。
「みんな違うとは?」「みんないいとは?」はゴールがあいまいすぎて難しい。
•朗読するときのポイント、どのように読むかも解説する。詩の朗読大会に向けた準備となる。
•短い詩なので、もう一つくらい同じ作者の詩を取り上げてもよい。
(3)生きる(堀内)
<概要>
谷川俊太郎の「かっぱ」と「生きる」を取り上げ、
「かっぱ」では詩のリズムを楽しむこと、
「生きる」では詩
の意味を考え、それぞれの『生きる』
『生きているということ』を考える授業構成を心掛けた。
簡単に谷川俊太郎について説明してから、
「かっぱ」では、単語ごとに分けた教材を用意し、どこで区切って
読むのか生徒同志で考えあった。その後、文の意味を解説してから、読む練習をした。
次に「生きる」では、まず先生が一回朗読し、詩の全体を感じてもらってから、それぞれの連の解説に入った。
内容理解等を中心に、精読をした。それに合わせて、詩の読み方も解説し、最後に全員で、一人1文、グループ
ごとに1連という方法で朗読をさせた。
宿題で、自分なりの『生きる』を考え提出してもらった。
<良かった点>
•詩の意味を考え、人の朗読に意識的に耳を傾けながら、朗読をすることにより、読み終わった時の独特な一体
感を感じることができた。
•日本語の詩、独特のリズムや音の響きを楽しむことができた。
•様々な視点から見た『生きているということ』を考え、自分なりの『生きていること』
しいては、自分自身を見つめるきっかけができた。
<改善点>
•誤植があったので、事前チェックを徹底する。
•詩が次のページにいっても、見開きになるよう調整する。
•2つの詩の時間のかけ方を、事前に細かくつめておく。
(4)山頂から(Bazo)
<概要>
小野十三郎の山頂からという詩を取り上げた。最初は信州大学の日本語の教師の朗読したのを聞かせた。その後、
8
自分も変わった朗読をした。そして、学生の皆さんに朗読してもらい、意味の解説 を一緒にした。学生たちは
モンゴルの春や日本の春の雰囲気を比較しながら授業をやった。授業中には校長先生が日本からのお客さんと一
緒に見学した。その 際、学生は詩の朗読をして見せた。授業後半では、質問にみんなで一緒に考えて答えて行
き、絵なども描きながら授業を行っていった。授業の目的として日本の景色の雰囲気を少しでも味わうことであ
った。
<良かった点>
・日本とモンゴルの五月の景色を比較することができた。
・朗読方法を学生たちに自由にしてもらって良かったと。
・学生たちは少しでも日本の景色の雰囲気を味わうことができた。
<改善点>
・語彙の解説する時にモンゴル語にするため、苦労したところがあった。語彙解説を事前にしっかり準備してお
く。
(5)川柳(荒井)
<概要>
川柳を江戸時代、日中戦争・太平洋戦争時代、現代の 3 時代からそれぞれ 3 首ずつ、計 9 首を取りあげ、その
歌の意味を考えてもらった。時代や国が違っても考え方に大差ないことや、内容は日常の些細な情景をうたって
いることを通して、日本の古典に親しんでもらった。
授業の目的は日本の古典に触れてもらうことだけではなく、自分とは異なる時間・空間に存在する事象を考え
る時、自分の基準をその時間・空間に合わせる感覚を身につけてもらうことでもあった。そのため、授業の最初
には目をつぶってもらい、携帯電話やインターネット、テレビ、クルマなどの先端技術のない時代にタイムスリ
ップしてもらった。
最初は歌を聞き、単語の意味を確認した後、歌全体でどのような情景を表現しているかを当ててもらった。最
後には全員で歌を一緒に読んだ。
<良かった点>
・なぞときのように読み進め、最後には現代の自分達と変わらない感情が答えになっているなど、日本の古典に
対して親近感がわいた。
<改善点>
・技術のない時代は想像できても、社会性まで想像することが難しかった。
(特に日中戦争・太平洋戦争時代)
(6)塔和子詩集、「嘔吐」「師」
(村上 )
<概要>
「考える日本語~人権」に関連付けて、ハンセン病で隔離された療養所で詩作を続けた塔和子さんの作品より2
選を取り上げた。共通語の言葉を使っていても、意味合いや重さは全くちがい、次元すら異なることを知るって
もらい、「共感なくして理解は深まらない」ことを認識してもらった。また、共感度を高めながら朗読の質を上
げてゆくことも意識した。
①目を閉じて聴く~イメージをわかせる~ひとことの言葉で表す
②目を開けて聴きながら読む~わからない言葉の確認
③音読練習
④1分与えて朗読練習
・特に注意したい語彙の解説
9
・発問で考えてもらいながら内容把握、作品鑑賞
<よかった点>
・ なぜ人は人に上下優劣をつけ、馬鹿にして笑えるのか?それをただ悪いと否定するので
はなく、なぜなのかという問題意識が持てるようになった。
・
「理解が深まれば読み方は変わる」ことが伝えられた。
<改善点>
・竹クラスでは語彙の解説や内容把握に時間がかかり、
「嘔吐」1作品しか扱えなかった。
・松では2作品が扱えたものの、朗読に充てる時間を十分に作り出せなかった。指名して数名に読ませる余裕が
必要。
・内容の深い作品は、その場で感想を訊くよりも一日置いて鑑賞文を書かせたほうがよい。
・一回一回の授業で何が学べたのか、学生に自問自答させ、書くことで自己点検できるようにしたほうがよい。
学生自身のやりがいを高めるだけでなく、教える側も効果的な工夫ができる。
・以前は「朗読・表現」として、声に出して読むことの効果・味わいを大切にしてもらい、そのうえで自分の表
現を深めてゆくことを試みた。ここ数年、
【朗読コンテスト】が行われているので、
「朗読」の面白さや効果を教
授側ももっと認識できるようにしたい。
2.3. 歌(関内、今井、堀内、バゾ、荒井、村上)
(1)栄光の架橋
(今井)
<概要>
ゆずの「栄光の架橋」を用い、授業を行った。夢をあきらめず、前に進んでほしいという応援の気持ちを読み
取るのが目的だった。まず歌を聞き、それから語彙の確認等を行った。それから、歌詞の場面について考えた。
また、この曲が広く認知されることとなった 2004 年アテネオリンピック体操男子の実況映像を見せ、どのよう
な思いがあるか考えた。最後に感想と「この曲を聴かせたい人」を考えた。
<よかった点>
・ ゆっくりしたテンポで歌いやすい曲だったのですぐに歌えていた。
・ この時ロンドンオリンピックが開催されていたのでアテネオリンピックの話題はタイムリーで生徒を引き付
けることができた。また、日本でのオリンピック中継など文化についても伝えることができた。
<改善点>
・ 目的に合わせ、歌詞についてもっと考える。
・ 東日本大震災につなげる。
(この曲に関する震災の話があったのだが、出展が確認できず披露できなかった。)
・ 授業の目的にもよるが、アーティストについて話すことで生徒の日本への関心を高めることができると思う。
(2)福笑い(堀内)
<概要>
シンガーソングライターの高橋 優の詩を取り上げた。福笑いを説明するための導入として、今の日本のなり
たい顔ランキングを取り上げ、1000年前の美しい女性はどのようだっただろうかと疑問を投げかけてから、
手作り福笑いを見せた。最後に古くから続く正月にする遊びとしてどう意味が込められているかを説明した。
次に、歌を流し、歌詞の穴埋め(その際に歌詞が書かれている実際の PV を使用)
、語彙の確認、内容理解に
入った。
最後に、歌詞にある「笑う門には福来る」を説明し、全員で唄った。
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<良かった点>
•聞き取りやすいリズム、分かりやすい歌詞であったため、竹クラスも松クラスもそこまで理解度に差がでなか
った。
•多くの生徒がこの曲を気に入り、口ずさんでくれる程になった。
•歌の歌詞を理解するだけではなく、日本の文化にふれることができた。
•ことわざについて触れることができた。
•歌手についても少し取り上げ、その他の楽曲もおすすめしたので、日本の歌手に興味をもってもらうきっかけ
ができた。
•「これから辛い事があっても、笑って乗り切ろう」というメッセージを理解してもらうことができた。
<改善点>
•授業前に、自分のパソコンが機器に接続可能か調べておく。
•歌詞穴埋めのための詩の次に、語句解説のための文章という並びにするベきだった。
(3)約束の場所 (関内)
<概要>
Chemistry の「約束の場所」を取り上げた。あまりまだモンゴルでは知られていないアーティストにしたいと思
ったことと、前向きで明るい内容の歌詞で、テンポは速くなく歌いやすいという 3 つの観点から選曲した。授業
は、歌詞の内容に合わせ、設問を立て、記入し、発表するという流れで行った。生徒の話を聞いていると「姉が
留学試験に受かるのを願ったことがある」
「おばあさんの具合が良くなることを願ったことがある」や「10 年生
の時、英語の試験勉強をあきらめなければ良かった」
「6 月の日本留学試験前にもっと頑張れば良かった」など思
い思いのエピソードを話す時間になった。最後は、みんなで歌った。
<よかった点>
・生徒の過去のエピソードがきけたこと
<改善点>
・単調な授業になってしまった。歌えるようになることをねらいに置き、歌の練習を多くしても良かった
・ことばの説明と歌詞を通じた生徒自身の経験に関する問いに多くの時間を割いたことで、歌う時間が少なくな
った
・次回は、歌詞を重視しながらも音楽もインパクトのある曲を選びたい
・歌詞は、比喩表現や慣用句が多く、説明するのに時間がかかってしまった
→モンゴル語との語彙シートを作るか、そういう表現がない楽曲を探すようにしたい
(4)Rising Sun(Bazo)
<概要>
最初は学生たちに歌を聞かせてもらい、その後一人ひとり朗読させてもらった。朗読させる際に、朗読したと
ころの意味を学生に説明してもらった。間違っているところなどあったらみんなで修正しながらやって行きまし
た。全体を朗読し、意味の説明が終わった後、全員で歌を 3 回唄いました。
<良かった点>
・リズムの早い歌を選んで良かったと思います。学生たちは声を大きく元気で歌っていました。
・歌の意味も今後、学生たちの努力をアップさせることができたと思います。
・両方のクラスでは理解度の差がほとんど出ませんでした。
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・授業中に学生たちは日本の文化についての質問をたくさんしたりしていました。
<改善点>
・テキストに語彙解説を入れておく。
・授業前にCDプレイの調整を調べておく。
(5)歓送の歌(荒井)
<概要>
日本留学を目前にした生徒に対し、この歌を通して、ご両親がどのような思いで育て、送ろうとしているのか
を感じてもらうことを通じ、相手の立場になって考えることを学んでもらうことを目的とした。
最初2回聞いてもらったあと、みんなで意味を確認し、最後にもう2回、聞いてもらった。
<良かった点>
・短く、難しい単語の少ない歌であったため、比較的容易に意味を理解することができたと思う。
<改善点>
・年齢が若いせいか、まだ両親の心を理解できるまでには至らなかった。
(6)「テルーの唄」~ゲド戦記挿入歌~(村上)
<狙い>
*歌詞の鑑賞を通じて、いろいろな人の立場や心情を察し、共生意識を高める。
*言葉の使い方が美しく、覚えやすく歌いやすい歌を選曲。
*その日の授業のうちに覚えて歌ってもらう。
<内容>
・まず聞き流す~イメージをわかす~情景や心象をひとことで表現する
・2 回目は、穴埋め書き取り
・設問を見ながら 3 回目を聴く~穴埋めの解答
・設問を確認しながら、歌詞鑑賞
・それぞれの感想を訊く
・最後にまた歌を聴く(一緒に歌う)
<よかった点>
・歌詞の解釈で、
「誰がどこでどうした」という項目ごとに各連で整理しやすいように比較一覧表を作成したが、
このような整理の仕方は読解においても役に立つ。
・歌手の発声、発音がしっかりしているので、学生は言葉を聴き取りやすかった。
・
「孤独」というものが、モンゴルと日本では随分趣も意識も異なるということが見えた。
<課題と反省>
・モンゴルの若者はラップを好み、ディスコで踊る。アップテンポな曲で、明るく快活な音楽が好きである。そ
れを承知で、スローで物哀しげな Wisper Song を取り上げてみた。学生は、
「さびしい」
「かなしい」と口にした
が、そこから深めてゆくのが大変だった。
・出席していた学生たちのほとんどは、
「孤独感」を感じた体験がなかった。いや、孤独という意識や感覚がど
うもちがうようであった(これについては、車で 600 ㎞ほど走行した南ゴビまでの旅で氣づかされた)【言葉の
意味を知ること】と【言葉の意識・感覚がわかるようになること】に隔たりがあり、それを自覚することの難し
さを知った。
・モンゴルで好まれる詩や歌を味わい、モンゴルの人たちの指向性を考察しておくとよい。
12
2.4. コミュニケーション(関内、今井、堀内、増田、バゾ、荒井、村上)
(1)病院でのコミュニケーション(関内、堀内)
<概要>
「病院で」をタイトルに、病院のかかり方から薬のもらい方を学ぶことを目的に授業を進めた。導入として、
日本語でいう身体の部位の穴埋めと、病院の分野の説明をいれた。その後、病院に着いて診察券を渡すところか
ら、処方箋をもらい薬局で薬を受け取るところまでをシュミレーションした。
その後、擬態語や語彙の説明もいれながら、症状の説明等を違うパターンにおきかえた。
<良かった点>
•日本の病院に学生がいった時の基本的な対応を学び、日本で病院にいくことのハードルが低くなった。
•通常の日本語の授業では学ぶ事ができない知識を学んでもらえた
<改善点>
•説明が長く、生徒が飽きてしまう瞬間があったので、授業案時にもっと調整をする
•もっとリアルにシュミレーションするために本当の処方箋や診察券を用意してもよかった
・痛みを訴える表現をおなかと頭痛に限らず、より多くの言い方を用意すれば良かった。
・国民健康保険にあたるものについて調べ、留学生が各一般的にどのようにすればいいのかなど病院に行くまで
の手はずも調べればよかった。
・ 語彙シート作成に病院での痛みの訴え方や具合の悪さを訴える表現しか載せていなかったので、薬の用法を
聞くときなどの言葉も入れても良かった。
(2)電話での会話
(今井・関内)
<概要>
電話を用いた「問い合わせる」
、
「予約する」
、
「(遅刻の旨を)謝る」三つの場面を取り上げた。
「問い合わせる」
では、営業時間と場所をたずねた。
「予約する」では、美容院の予約を行った。「(遅刻の旨を)謝る」では、ア
ルバイト先の際と友だちとの際と 2 種類行った。この授業の特徴は、インフォメーションギャップを取り入れた
ワークシートを用い、駅へ忘れ物の問い合わせや歯医者、レストランや居酒屋の予約を行う練習を取り入れたこ
とである。教科書のダイアログを音読するのではなく、ダイアログを模倣し発話し、ワークシートに従い、必要
な情報を相手から引き出す練習を取り入れることで、コミュケーションの場面が再現できた。
<よかった点>
・電話の会話のマナーやルールについて学ぶことができた
・生徒が積極的に口を動かしていた。
・ワークシートを用い、役を分けることで、実際のコミュニケーションに近い状況を作り出せた。
・
「謝る」では、連絡すれば遅れてもいいというわけではないことを忘れずに話せた。
<改善点>
・内容を詰め込みすぎた。1 時間であれば 2 項目程度にし、ていねいに行うとさらに良くなると思う。
・マナーやルールのポイントを強調する。そのための事前整理は大切。
・電話に使う語彙を授業の最初に導入する。
・必要な情報を長いコンテクストの中から聞きだす、抜き取る作業は、日本留学試験の聴読解や聴解にも役立つ
と思うので、日留試の試験対策授業でも活用したい。
13
(3)メールでのコミュニケーション
(増田・今井)
<概要>
「メールの書き方」をテーマに授業を行った。メールにはルールやマナーがあるが、留学生には学ぶ機会がな
く失礼と感じるメールを送ってしまうことが多いと感じたのがテーマに取り上げた理由である。
授業では、
「友人とのやりとり」
「先生とのやりとり」の 2 パターンに分け、それぞれ悪い例を提示した。提示
には教科書のほか先生のスキットでお互いがどのように感じるか表現した。その後メールの改善案を考えながら
ルールやマナーに気付けるような流れにした。メールの改善案にはプロジェクターとスクリーンを使用し、実際
のメールを見せながら解説した。
<よかった点>
・ 生徒に身近な話題を使うことで興味を引くことができた。また、提示方法にスキットを使ったのも興味を引
くことができてよかった。
・ 悪い例を提示してから改善案を考える授業内容は、生徒からメールのルールやマナーを引きだすことができ
よかった。
・実際に先生に書かせる宿題を出すことで、授業が生活に役に立つということを実感させることができた。その
ほかにも先生とのやり取り、日本人の友達とのやり取りにおいて、授業で学んだことを使用している生徒が見受
けられた。このように「実際の社会で役に立つ授業」というのがコミュニケーションの授業の目的にそえていた。
・プロジェクターで実際のメールを見せることで、生徒の興味を引いていた。
<改善点>
・ 授業内だけでなく、実際に使うところまでフォローする。
・ 良いメールの例をいくつか用意しておく。
(特に竹クラス)
・ 今回はシチュエーションを用意したが、生徒自身が書きたい人にメールを書かせてもよいのではないか。
・授業前打ち合わせ不足だった。
・より生徒の立場にあったシチュエーション作りが必要だった。
(4)日本とモンゴルでの違い(村上・バゾ)
<概要>
会話のやり取りから、モンゴルと日本の意識や発想のちがいを発見することと、日本の礼儀作法や日本的コミ
ュニケーションを理解することをきっかけにして、自分のコミュニケーションを見直してみることを狙いとする。
内容は、各場面でモデル会話を見せ、状況把握してもらう。
A.「遅刻してしまったら」
・時間厳守、時間前集合などが日本では当然のこととして前提になっていることを認識。
・遅刻している人を待っている様子を見せ、どんな気持ちでいるかを知る。
・遅刻した杉田君のどんなところが問題だったかを考える。
B.「ご馳走になったら」
・
「さようなら」の語感を知る。
・日本では、お礼の挨拶が一回だけではないことを知る。
C.「電話でお願いする」
・電話の基本作法としての表現を身につける。
・電話でお願いするリンさんのどんなところが問題だったかを考える。
・保証人の直筆サインの了承をもらったリンさんがこれからする作業をワーク。
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<よかった点>
・日本人+モンゴル人留学生というペアでモデル会話を見せることができたので、学生は内容をすんなり理解で
きた。
・留学生の先輩の自然な会話を見て、感心している学生もいた。
・各場面で、モンゴル人留学生にテーマに関連する留学時の失敗談を話してもらったが、体験談だけに説得力が
あり、学生も真顔で聞き入っていた。
・難しい語彙や表現を、モンゴル人留学生に解説してもらうようにしたのでスム-ズに進行した。
・最後に入れた「電話でのお願い・お礼・ご報告の作法」、
「郵送でのお願いの作法」で、実際に2通の封筒を使
い、宛名書きなどをしてもらったが、宿題にならず時間内に提出してもらえた。3つの場面があり、やや駆け足
の感があったがポイントは伝えられた。
<改善点>
・モデル会話の役割練習やロールプレイを、たくさん学生にさせる時間がとれなかった。これらが余裕を持って
入れられれば、伝えたいポイントの深い理解や定着が可能となろう。
・学生がどこまで理解・把握したか、理解したことがどう行動に現れるかをチェックする時間をとったほうがよ
い。
(5)江戸しぐさからみる日本でのコミュニケーション(バゾ・荒井)
<概要>
日本の古い慣習である「江戸しぐさ」を取りあげ、日本人のコミュニケーションは何の上に成り立っているの
かを考えてもらった。まずは「江戸しぐさ」を説明し、次にイラストを見せ、具体的な事例を紹介した。最後に、
モンゴルの風習を出してもらい、モンゴルと日本の同じところ、違うところを考えてもらった。
<良かった点>
・イラストだったため、わかりやすかった。
<改善点>
・もう少し事例数が多い方が良かった。
(6)あいさつと面接対策(増田・荒井)
<概要>
日常のマナーを根幹とし、面接対策を行った。その際に重要になってくる挨拶や返事というのを特に意識して
いた。
<良かった点>
・授業終了後、生徒がマナーを持って先生の部屋に入ることができるようになった。また SS 終了後の学内選抜
時における面接の際、生徒が授業内で学んだことを実践していた。
・生徒がよくメモをとっていた。今後必要な能力という認識を生徒が持つことで、生徒の集中力を引き出せる。
<改善点>
・授業前打ち合わせが不足していたため、面接でありそうなシチュエーションを効果的に盛り込むことが不十分
であった。
・生徒が良くメモをしていたものの、先生側として重要な点をよりピックアップして提示する必要があった。
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2.5.考える日本語(高橋、スウリ、関内、今井、堀内、増田、バゾ、荒井、村上)
<概要>
考える日本語とは、サマースクール後半にあるARのための導入授業である。そのため知識の導入と問題意識
を高めることが主たる目的となる。この授業では、大きく「環境」と「人権」の2つのテーマに分かれ、ワーク
ショップなどを行いながら、他の授業とはまた別の形で取り組まれる。
授業計画として、まず全体の導入の授業を行った。その後「環境」と「人権」の授業を交互に行い、最後に両
領域のまとめの授業を行った。
まず、導入の授業報告から掲載する。
(導入)私たちの知っている3.11
(スウリ)
<授業の流れ>
・日本語で考える「考える日本語」の意義と説明(5 分)
共生への学び、エンパワーメントについて
・
「東日本北巨大地震」について現実を知る (30 分)
パワポ(当時の新聞、雑誌の写真、映像、そしてその後一年間の復興について)
・DVD「チェルノブイリ 25 年 知られざる真実」15 分
「ウクライナーの少女の歌」鑑賞
・先輩の話(東北の大学に留学中の学生に話をしてもらう(1 時間)
岩手オユー、宮城にいたチムカ、福島TJ先輩が話をした。バイト先のコンビニで地震の翌日に働いて感じたこ
と、地震後に帰国せず日本でボランテイア活動に関わった先輩の話を聞いた。
・
「東北巨大地震から最も学ぶべきことは何か?」グループ討論、発表(1 時間)
・6つのグループに分かれて討論(20 分)
・発表 1 グループ 5 分(35 分)
・まとめの話
(15 分)
<概要>
経済発展というキーワードを元に、全世界が目指している発展のモデルに疑問を持って考えてみる。便利、あ
りがたいはずの電気であるのに、一瞬にして私たちの健康に決定的な影響を及びした例がこれである。大量消費、
大量生産型の経済モデルに疑問をもって立ち止ってみる時がきたのではないか。持続可能な発展とは何だろうか。
東北巨大地震による被害は、地震だけではなく、原子力発電所の爆発自然災害による放射能の被爆は人口災害
と言っていいだろう。人間の産物が人間を破滅させることになっている。それが「核」である。核といえば、核
戦争もその一つで恐ろしいものである。
「平和」を考える上で世界の国々の協力、人々がみな幸せに暮らすこと
を考える上で、生命を失うこと、人体への遺伝的影響など最も大切な健康を害す、子供たちの未来を奪うこれら
の恐ろしいものを私たちが作っているのである。
3.11 は自然を大切にする心、私たちが目指すその発展のモデルなどをもう一度考え直すためのきっかけとなっ
たのではないだろうか。忘れてはいけないし、伝えていくことで防げることだ。人の命の尊さを考え、知らない
ものに目を向けてまずは知ることが大切である。そのあと、それを伝え、同じ過ちを繰り返さないことが平和を
築く一つのキーワードである。
<生徒の発表の感想>
発表で挙げてもらった意見の中には「
『まず知る、そして伝えること』が大切だと思った。3.11 の起こった後
に日本人が取った行動は素晴らしかった。混乱するのではなく、停電や断水への備えなど避難や災害に関する準
備が素晴らしいし、そのような知識を教育として教え込んでいるということがわかった。モンゴルだったらどう
16
だっただろうか。
(防災知識(災害訓練、教育))、日本人が互いに一つになって『困難を乗り越える団結の意識
が強い』ということが先輩の話を通してわかった。
」という意見があった。
また、モンゴルにおける偏った情報の流出の問題も上がった。それらの情報を通して正しい判断ができる能力
がこれから必要になるということも挙げられていた。その他、自然災害の力は強いが、人間は団結して自然を愛
すれば人間のほうが強いし、平和を愛して尊敬すれば不可能はないという感想もでた。
今後の課題として、新しく建設が進むモンゴルにおいて建築の安全性を重視すること、避難知識、防災知識の
強化、原子力発電所のおそろしさを知り、安全な代替エネルギーを開発するなどの課題が残るということも挙げ
られた。
2.5.1 人権班
(1)子ども~カンボジアのゴミ山の少女・ベトナムのストリートチルドレン~
(関内)
<概要>
導入後の最初の授業だった。このテーマを取り扱うに当たり、子どもの一番の特徴は、夢の大小に関わらず夢
や願いを持てる年代であると言うこと、夢を見るために、夢を現実に近付けられるよう、教育を受けられること
だと考えた。そして、夢を語るためにその年代に合った育ち方があると考えた。授業は、8 月 1 日と早い日程だ
ったので、これから約 1 カ月続くサマースクールのことも考え、アイスブレキングから始めた。
1 コマ目は、自己紹介も兼ねたアイスブレイキングとして、一人約 1 分~1 分半で夢を話してもらった。一通
り終わった後は、話された夢について触れながら、2 コマ目につながるように夢はいつから持ち始めたのか訊ね
た。そして、世界には多くの子どもがいるが他の国の子どもの様子を次のコマで見て行こうと締めくくった。
2 コマ目は、カンボジアのゴミ拾いをしながら家族の生計を支えている女の子の VTR 教材を視聴した。
3 コマ目は、ベトナムのストリートチルドレンとして生活していたところをシェルターに保護された女の子の
VTR 教材を視聴した。どちらの与えられていた VTR 教材を見ていても、どちらの少女も将来を語る上では、学校
に行く、読み書き算数ができるようになることは最初の一歩のように言っていた。
3 コマ目後半では、VTR の感想も含め、その日に学んだことをグループ討議してもらい、発表してもらった。
「自分たちはラッキーだ」「モンゴルにもゴミを拾ったり、親元から離れて生活している子どもたちがいる」「自
分たちには何ができるのか考えなくてはいけない」
「他人に伝えるところからはじめたい」という内容があった。
<よかった点>
・夢を話したことで、この授業を通して普段勉強する意義を見出す時間が持てたこと
・知ってしまった事実に対し、自分たちは動かなくてはいけないという意見が聞けたこと
・高校生に外国語で 40 分もの長編番組を見るのはとても大変なので、20 分~25 分以内に編集したこと
・卒業生の力を借りて、語彙シートを準備できたこと
<課題と改善点>
・感情に訴えるだけでなく、数値を見せながら訴えられる教材もあると良かった
・貧困に遭遇している事実に対して、国連などはどのように働きかけているのか問題を解決しようとしている取
り組みも紹介しても良かった
・貧困になったその国の歴史をきちんと調べ、盛り込まなければなかった
→貧困は、その人たちが悪いわけではないということを理解してもらうため。
また、歴史の中に登場する人物や政策、他国との関係を見せることで貧困の仕組みを考えることになる。
→テーマは子どもが、貧困には多くの問題が絡み合っていて、生徒たちの専門分野とどこかしら重なる、つなが
るところがあることを見せられると良かった
・VTR は新しいものを探したい
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(2)先進国の貧困~ホームレス~
(高橋)
<狙い>
「ホームレス」に対しての問題意識の喚起と理解。日本、アメリカとの比較から自国モンゴルの問題について考
える。
<概要>
DVD「ホームレスから社長に」鑑賞:DVD の内容にそった質問項目を事前に用意。学生は DVD 鑑賞しなが
ら質問事項に記入していく。鑑賞後、DVD の内容をどれだけ理解できたかを確認した(3時限目)
。4時限目は
4グループに分けそれぞれ教材(p12~17)にそった質問事項堪える作業。その後、各グループから代表の発表。
その後、私の作成した「ホームレスの国別比較」の表を元にまず、日本とアメリカの比較、その後、モンゴル
のホームレスを考えた。
<よかった点>
DVD をただ見るだけでなく質問事項を用意したのがよかったと思う。内容の理解度が深まったと思う。ホー
ムレスの国際比較は日本、アメリカの考え方、原因、ホームレスの年齢・構成などの違いが学生の興味を引いた
ようだ。
モンゴルのホームレス、特に子供が多いことが指摘された。最近、子供のホームレスが少なくなったのは経済
が発展したからですか?との質問に何人かの学生が真っ向から否定したのには驚いた。子供がビジネスの犠牲、
売買されていると言う。本当かどうか分からないが衝撃的だった。
<課題と改善点>
クラスが狭く学生で一杯なので移動が難しく暑くグループを作るのに時間がかかった。クラスの始まる前にグ
ループ分けをしておいたほうがいい。
(3)少数先住民
~アイヌの人々~(関内)
<概要>
アイヌを取り上げるというよりも先住民族のひとつという考えでこの授業を行った。1 コマ目は、立教大学 ESD
研究センターで発表されている「ティフ星人はパセリを食べる」のパセリをモンゴルでも採れるニンジンに内容
を変えて行った。2 コマ目は、歴史的事実を日本のアイヌを例に北海道が作成した VTR を視聴した。その後は、
先のワークショップを用い、個人で意見まとめ発表する時間を設けた。
<よかった点>
・日本は単一民族ではなく、アイヌという民族がいたことを知ってもらえた
・ワークショップという模擬体験をしながら勉強できたこと
<課題と改善点>
・VTR 教材をギリギリに変えたので、語彙シートや教科書が間に合わなかった
・教科書作成の前に何をねらいに取り上げたいのか考え、教科書作成者と授業者とでよく話し合う時間があった
方がいいと思った
・大和民族、江戸幕府、明治時代~現代の政府が行った行為、取っている政策をよく勉強するとともに先住民族
がいた他国の政策や考え方も勉強した方が良かった
・アイヌに対して「かわいそう」
「アイヌ特有文化を広めた方が良い」
「大和民族はよくない」などの意見が出て
いたので、アイヌだけでなく、先住民族全体の中のアイヌ、先住民族に対する日本の対応方法を一つの例として
取り上げた話ができれば良かった
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(4)差別~えたと呼ばれた人々~
(荒井)
<概要>
午後からの授業の下準備として、生徒には朝一番にくじを引いてもらった。×を引いた生徒は首から×のカー
ドを下げ、席を教室の隅に移動させ、会話は×同士だけと制限させた。昼食時にカフェテリアで×を引いている
生徒とひいていない生徒の会話を厳しく注意したところ、×を引いた生徒は自ら×を引いた生徒同士だけで固ま
って昼食を取るようになった。授業の最初には、朝から何をやったのかを確認した。
授業内容は具体例として「えた」を取りあげた。まずはえたが生まれた背景や社会性を説明し、受けた差別だ
けではなく持っていた権利(年貢の免除など)も説明した。その後、職業差別から世襲によって身分差別になっ
ていった経緯を説明した。
教材は NHK「その時歴史が動いた」を3回に分けて鑑賞・確認した。教材を振り返りながら、悪いこととわ
かっていても、なぜ差別が長く続くのかを考えてもらった。その後、生徒に現在のモンゴルにはどのような差別
があるか、差別がなくなるにはどのようにしたらよいかを挙げさせた。「差別は悪いこと、やってはいけないこ
と」で終わらせたくなかったので、法によって規制すればよいという意見が出た時点でアファーマティブ・アク
ションを取りあげ、法律を作るだけでは差別は解消しないことを説明した。
最後に、
「今ある差別をなくすためにはどうするか」をテーマに GW を行った。
<良かった点>
・差別の実体験をしてもらった。
・日本のしかも昔の差別を考えるだけではなく、モンゴルの差別や、今ある差別に対して自分達がどのようにし
ていかなければならないかを考えさせることができた。
<改善点>
・えたを教材にしなくてもよいと思った。
(時間的・空間的に離れ過ぎているので、実感しにくい)
・差別の実体験をさせたが、時間的・授業設定的に中途半端であった。
(教材なしで差別の実体験をもっと長時間行ってから、差別について考えた方が良かった。)
・GW が少なかった。
・アファーマティブ・アクションへ持っていくまでに時間がかかり過ぎた。
(5)まとめ~ハンセン病・生涯という事例から~
(村上)
<狙い>
・人権とは、何をどう考えるものなのか?学んできたことで、何が問題かを考える。
・人権と環境という柱で学んだことの共通の根源的問題点を探る。
<授業内容>
問いかけ:
●あなたができることとできないことを、チェックシートに記入。
→あなたができると回答したことが、ことごとく許されない人がいることを知る。
(障碍があったら、寝たきりだったら、ハンセン病患者だったら・・・と問う)
→あなたはできるが、その人たちはできないという現実をどう思うか、自身に問いかける。
●「人の役に立つ」とはどんなことかを、思いつくことを記入。
→それらをあなた自身ができるかどうかをチェック。
→では、障碍があったら、寝たきりだったら、ハンセン病患者だったらどうか考える。
→「人の役に立つ」とはどんなことかを改めて考える。
日本と世界におけるハンセン病の歴史概略
19
●ハンセン病がどんな病気か、宿題をしてきた学生に発表してもらう。
●日本において、注意したい点を絞って走り読み。
・
「外見のみの判断~化けもの扱い」
・
「コレラと同類と判断~移るから危険」
・
「国家の政策として~ハンセン病の絶滅=ハンセン病患者の絶滅」何を間違ったか?
・
「法制化により~偏見と差別を助長=隔離へ」
・
「治療薬ができても続いた隔離政策」なぜ続いてしまったか?
・
「隔離政策に終止符が打たれたのは 1996 年(平成 8 年)」
・
「らい予防法が廃止されても偏見と差別はなくならぬ現実」なぜなくならないか?
●日本財団のハンセン病根絶の取り組みを紹介
・2010 年患者数は 20 万人を切る
・2011 年ハンセン病の制圧ほぼ達成(人口 1 万人あたり 1 人未満:未制圧国はブラジル一国)
●詩で学んだ塔和子さんについて、改めてふれる。
盲ろうという重複障碍当事者のメッセージから考える。
→東大教授の福島智氏のことばに耳を傾ける。
(30 分ほどの番組を 3 場面に分けて読み取りながら、考える)
孤独って何? 何が人を孤独にさせるのか?
障害って何? 障害を誰が定義しているのか? 改めて定義してみると?
生きている価値って何?
障害当事者になってみる擬似体験
●目隠しで乾杯
●目隠しで障害物歩行
●口パクの読み取り
●手話体験
授業の感想作文
<よかった点>
・未就学ろうあ高齢者の映像を用意していたが、無理に行
わず、感想文を書かせる時間に使った。参加者全員が感想文を書くことができ、提出してくれた。
・感想文を読む限り、狙いとすることがほぼ達成されたと感じられた。学生たちの意識が開かれ、何とかしなけ
ればと言う想いに火がついたように思う。
・擬似体験は盛り上がるし、実感できる。学生たちも積極的に手を挙げた。
<課題と改善点>
・留学生が作成してくれた語彙シートを学生がどこまで活用しているか、確認する余裕がなかった。
・チェックシートを使うところで、最終的に「社会に役に立つことの意味」や「社会のお荷物と考えてしまう意
識」について触れられなかった。ハンセン病と障碍について取り扱った後に、再び戻って考えをまとめる時間を
作ればよかった。
・ハンセン病は非常に衝撃的なので、授業に入る前に自分で調べて来るよう宿題を課した。しかし、調べて来た
のは 2,3 名であったので、実際の画像や映像を見ていない。調べて来た学生はショックを受け、そのうちの一
人は私に悲痛な気持ちになったと吐露したほどだった。彼を含む宿題をしてきた人たちが真剣な表情で説明して
くれ、ほかの学生たちは聴き入ってある程度はわかったようだったが、調べて来た人との差は歴然であった。宿
題の徹底をすべき(授業中に本氣で叱り、学生たちも真剣になった。このように一喝したり、活を入れたりする
時間が必要かもしれない)
20
2.5.2
環境班
<狙い>
考える日本語環境班では、現在ある環境問題の中から生徒が関心を持っているトピックを選び授業を行った。
アクションリサーチにつなげること、また今後自身で考えていけるような内容で授業を組み立てた。授業内では
知識を詰め込むのではなく、ビデオやディスカッション、ロールプレイなどを行い、体験・実感し自分の頭で考
えられる方式を取った。
(1)エネルギー
(今井)
<概要>
環境問題の中で「エネルギー」を取り上げた。現在、エネルギーは人間の生活に欠かせないものとなっている
が、その重要性や国のエネルギー政策について考えることを目的とした。エコクイズや家電の電力使用量クイズ
といった楽しめるアクティビティを交ぜながら、エネルギー関連のグ
ラフを読み取るグループワーク、モンゴルのエネルギーの問題を考え
るグループディスカッションを行った。また、今井が以前留学してい
たアイスランドでのエネルギーについて「国の利点を用いたエネルギ
ー政策」として紹介した。最後に「私はモンゴルのエネルギーを○○
したほうがいいと思う。そのために私は~」という文を埋め、自身も
アクションを起こしていくことを確認した。
<よかった点>
・ エネルギーの重要性や国のエネルギー政策について考えるという目的は達成できた。
・ 緩急まぜた構成で生徒が飽きずに授業に取り組んでいた。
・ グループワークやディスカッションはモンゴル語可にし、発表を日本語にしたことで活発な意見交換ができ
た。
・ 発表の機会を増やすことで普段発表しない生徒が発表をしていた。発表しやすい雰囲気もよかった。
・ 授業のレベルが生徒に合っていた。特にグラフを読み取るワークは少し難しい程度で、生徒が一生懸命挑戦
していた。
<改善点>
・ エネルギーの危機を示すインパクトのある内容が欲しい。例えば映像などを用いる。
・ 表面的ではなく、もっと深く考えられるような内容がよい。目的を変更する必要性がある。
・ サポートをしてくれる先生へ事前に授業内容と動きの説明をする。
(2)公害(堀内)
<概要>
導入として、
「発展」ときいて思い浮かべるキーワードを付箋にできるだけかき、ボードに並べてからグルー
プ分けをした。それを、各グループに発表してもらった。
次に、
(事前に宿題として出しておいた)世界の環境問題の歴史を穴埋めし、その歴史が産業革命後、イギリ
スから始まったことを説明した。
中国の大気汚染のビデオ(10分弱)を鑑賞した。見ながらテキストの質問に答え、その後答え合わせをした。
休憩を挟んでから、日本の水俣病に関する映像を鑑賞し、グループごとに映像の内容を整理しながらテキスト
の答えの質問の答え合わせをした。
最後にモンゴルの公害を学ぶために、ホンゴル郡をとりあげた記事を読んだ。今まで、3つの映像で共通する
21
ことは何かという質問を投げかけ、公害における問題点を見出した。
宿題として、何を今回学んだかを提出してもらった。
<良かった点>
•公害の問題が経済発展と密接にリンクしていることを再確認できた。
•公害の問題は、ただ環境が汚染され、人々が健康被害に苦しんでいるだけではなく、一般市民と政府の食い違
いから被害が拡大し、知識不足からくる差別が生まれていることを理解してもらえた。
•ただ人間は経済発展をもとめて環境を汚しているだけでなく、解決•改善しようと頑張っている人々を知っても
らうことができた
<改善点>
•準備不足でモンゴルで大幅改正する等したので、もっと早い段階から同じテーマを担当する先生にもアドバイ
スをもらう。
•色々な内容を詰め込みすぎてしまうので、
「何を教えたいか」という目的を明確にし、テーマをより絞ってから、
授業の具体的な内容を考える。
•ある考え方の押しつけの授業にならないように、心掛ける。
•導入で何をやりたいか、どういうところでサポートしてほしいかを立ち会う先生に、明確に伝えておく
•盛り上がったとしても、最高どのくらいまで導入に時間がかけられるか明確に把握しておく。
(授業案の時間設
定をしっかり作る)
•生徒の発表がだらだらと続いてしまったので、事前に発表の仕方や注意を伝えておく。
•宿題の答え合わせを順番に解説しなかったため、生徒が混乱してしまったので、解答欄に数字をつけ、わかり
やすくする。
•中国に関するビデオの内容で難しい部分が多かったので、短い時間でとめて何問かずつにわけて、解答をさせ
る。
•黒板計画を事前にたて、黒板を有効に使う
(3)ごみ問題 (バゾ)
<概要>
最初は授業を導入した。学生たちに現在のモンゴルにある多くの社会問題を取り上げてもらい、その中ゴミ問
題をやるという形で導入をした。その後、ウランバートル市のゴミ問題の事情をスライドで見せた。スライドで
は、1990 年代のウランバートル市の写真を見せ、現在のウランバートル市と比較して見せた。また、ウランバ
ートル市のゴミ処理の過程を見た。次に先進国の事例として東京都の町田市のゴミ事情をビデォで見た。日本の
町田市がゴミを最終的に処分するまでの過程を分析させてもらい、また、ウランバートル市の特徴やゴミ問題の
事情を考えながら、ゴミを最終的に処分するまでにどのようなシステムを導入したら、ウランバートル市のゴミ
問題が解決できるのか?学生たちにそのシステムを作ってもらった。そして全部で 4 つのグループに発表させて
もらい、前半をまとめて休憩した。
後半に入ってグループごとに紙を配り、ゴミ問題によってできている社会問題を取り上げてもらった。また、
自分たちがゴミ問題を解決するために日々の中でできることを書いてもらった。前半と後半の学生たちグループ
ワークの結果をまとめ、学生たちにゴミ問題を自分にも関係する大切なことであることを伝え、これからゴミ問
題に関心を持ち、その思いを自分の行動に出せるようにすることを伝えた。
特に、全体のまとめとして最後のスピーチに力を入れて 10 分程度のスピーチをした。
<良かった点>
・ウランバートル市と日本の事情を比べることができて良かったと思う。
22
・日本の事情を知ることによって、他国のゴミ事情についても知ることができたと思う。
・町田市のゴミ処理のビデォは日本語が分かりやすかった。
・授業の目的を達成したと思う。学生たちはゴミ問題に関する意識が高くなったと思う。
・ゴミ問題はゴミの問題だけではないということが理解できたと思う。
・学生たちはゴミ問題の解決に貢献することを約束したことが良かったと思う。
<改善点>
・スライドやプロジェクトなどの設置を授業前・休憩中に準備しておけば良かった。
・また、グループ分けするのにも時間がかかった。
・予定通りの時間に進んでいないため、省略する部分もあった。時間の調整をよく考えてからする方が良いと思
う。
・グループワークの発表の仕方やルールを事前に詳しく決め、説明した方が良いと思う。
(4)まとめ(増田)
<概要>
生徒はこの授業までに様々な素晴らしい提言をしてきていたが、そこに①相手の立場の考え、②現実性という
2点が足りないように見えた。そこでこの授業では上記2点を学ぶために、「ゲル地区の大気汚染」というテー
マでロールプレイを実施した。
<良かった点>
・グループによっては生徒がなりきっていた。
・宿題を見る限り、上記2点が伝わった人には伝わっていた。
<改善点>
・ロールプレイをする際、生徒自身の役割の把握不足が見られた。役割を把握するために新聞記事と指示カード
だけでなく、映像等を見せることでより深い把握を促せることができたはずだ。
・協力していただく先生方との打ち合わせ不足があり、先生方にご迷惑をかけ、かつ効果的な授業が行えなかっ
た。
・ただ楽しいという授業に半分なっていた。
・授業後フォローが特に必要となってしまった。
最後に「まとめ」の授業も行った。
(まとめ)自分がアクションを起こすには(増田)
<概要>
考える日本語のまとめとして、①すべての問題はつながっている、②誰かではなく自分がするんだという2点
を目的とし、授業を行った。①のために、
「世界がもし100人の村だったら」というワークショップを使用し、
②のために、
「人生マップ」の作成をした。
「人生マップ」とは、生まれたときから今までをマインドマップのよ
うに、紙に書くことである。
<良かった点>
・
「世界がもし100人の村だったら」により、つながりもそうかもしれないが、世界における自分の状況とい
うのが意識づけできたように見えた。
・人生マップを作成することで、生徒個人におけるキーワードの発見、また受験時で必要となる自分の過去の整
理という点が行えた。
・人生マップ終了後、
「私にとってのキーワードは_____です。私はこれから_________をします。」
23
という形で宣言させたことで、よりキーワードを意識できたのではないか。
<改善点>
・先生方との打ち合わせ不足
・
「世界がもし100人の村だったら」の際、考える日本語で学んだことを取り入れればよかった。
3.アクションリサーチ(AR)
アクションリサーチ(AR =Action Research)とはサマースクールの大きな特色のひとつである。松・竹組がモ
ンゴルにある社会問題について調査し、それに対し行動を起こすことである。この活動を日本語を通して行うこ
とに AR の大きな意義がある。AR での学びはサマースクールだけに終わらず、生徒らが留学生となった後の活
動にも大きく影響してくる。数年前には、サマースクール参加者が中心の A5 という団体が生まれ、障碍者を扱
う映画の翻訳を行いウランバートルなどで上映会を行っている。
サマースクールでは、松・竹組全員に「考える日本語」の授業を通して社会問題の導入を行う。その後、障碍
班(担当:今井)
、子ども班(担当:関内)
、環境班(担当:堀内)、インフラ班(荒井、バゾ)の 4 つに分かれ、
班ごとに調査・行動内容の計画、そして最終日の AR 発表の準備を行った。今年度の特徴は新たに「インフラ班」
を取り入れたことである。これはモンゴルでインフラが大きな問題となっていること、そしてインフラ関係の知
識があるメンバーがいたことから取り入れられた。
3.1. 各班活動報告
子ども(関内)
<概要>
当初は、子ども・高齢者班として区分されていた。しかし、対象が広すぎると判断しどちらか絞るようにする
ところから始めた。結果、子どもに絞ることになった。子どもの中でも都市部などに生活する生活環境が良いと
思われる子どもと仕事を持ち、厳しい生活を強いられている子どもの比較に焦点を充て、校外調査、インタビュ
ーに出た。実際、バスで 15~20 分ぐらいする場所へ移動してみると、店番や物売り、荷物運びをしている子ど
もが多くいた。しかし彼らは夏休みなので手伝っているということで、普段は学校に通っているということだっ
た。現実を目にすることで、生徒たちは、調査内容や発表内容にブレが出たようだった。そこで出かけた感想を
出し合っていると、まだまだ厳しい生活をしている子どもがいるというステレオタイプだったという気付きが得
られたことを確認できた。また親の存在について、新たに問いが生まれた。それをきっかけに 1 期生の先輩が勤
めている子ども発達相談センターへ出かけ、ブリーフィングを受けてきた。最終的に発表では、都市部と校外の
子どもの比較だけの Action 部分だけになってしまった。そこから Research し、考察する部分がなかった。班員
は、他班より多くまとまるのに少し苦労するところがあった。
<よかった点>
・校外に出て Action したことをきっかけに子どもに関して、問題点が生まれる機会になった。
・先輩の会うことで、キャリアプランのモデルになったのではないかと思う。
・グループでどのようにすれば進んでいくのか協力、協同の方法を学ぶ機会になった。
・親の存在意義やあり方を考えることで自身の親に尊敬、感謝の気持ちを持てたのではないか。また、自身が将
来誰かの親になったときの理想像をイメージできたのではないか。
<改善点>
・見たもの、感じたことを言語化させる文字化させる練習を AR 以前から取り入れた方がいい。短い日数では、
深いことを話し、また Action に出かけるところまでいかない。
24
・ある一つのテーマ、トピックに興味を持つ生徒が多くいるのであれば、同じテーマのグループに A と B 班を
作るなどしても良いかもしれない。
・朝の授業から欠席しがちなメンバーが数人いたのでメンバー内に軋轢が生じた。「メンバー全員参加」が絶対
のルールだったのか確認すべきだった。
・AR のような形態の授業は、サマースクールのみならず通常の授業でも行えるようカリキュラムを組めるよう
したい。
(日本の学校で言う、総合や LHR、学活の授業に相当するような授業を設置してはどうか?)
障碍(今井)
<概要>
障碍班ではまず、障害者について知るために法律を調べたり街頭で障碍者に対する意識調査を行った。その結
果から「障害者の自立」をテーマに置き、特に車いすや足に障害を持つ人にインタビュー調査を行った。調査後
のアクションとして障碍者が自立のために作成しているアクセサリーなどを校内で販売した。担当としては、最
初に法律を調べることで障害者の種類やどのような権利を持っているのか知ってもらうことを第一に挙げた。そ
の後は生徒の意見を日本語でまとめたり、気になる部分を「どう思う?どうして?」と問いかける形で指摘した。
<良かった点>
・班のまとまりがあり、生徒が自主的・積極的に動いていた。
・早い段階から調査に出かけ、実際に障碍者に会うことができた。
<改善点>
・生徒とコミュニケーションをとり、することを把握して事前の許可などの根回しを行う。
・担当の先生がどの程度参加するか考える。今回はあまり介入なかったため何をしているか把握しづらかった。
環境班(堀内)
<概要>
テーマを「水」に設定し、とくに「水の節約」に重点をおき進めていった。リサーチでは、近くの川の周辺を
歩いたり、普段話の聞けない水道局にインタビューにいったり、下水道施設を見学したり、それらがどのよう
にすべて自分達の使う水に直結しているかを知る事で、モンゴルが抱える問題に個人がどういうアクションが
できるか考えた。
同世代の若者に少しでも毎日の水を大切につかってもらおうと、アクションを3つおこなった。まず
facebook で、ある NGO 団体が作った水に関する問題提起の映像を目標200人にシェアしてもらい、コメント
をもらう。実際、目標数以上の人々から反響をもらった。2つ目に、普段の歯磨きでどのくらいの水を消費し
ているか調べ、映像を作成。歯磨きの仕方として、水を流しっぱなしにする•止めながら手で水をすくう•コッ
プを使うの3パターンを行った。3つ目に、誰が一番水を節約して歯を磨く事ができるかコンテストを開催し
た。
<良かった点>
•理想論で終わらず、一人一人が何ができるか具体的に考えようとしていた。
それが最終的にはコップ一杯の水にたどりつき、メンバー自身の生活を見つめ直すきっかけにも
なった。
•みんなで協力してやろうという気持ちをもち続け、適材適所で効率よく分担していた。
•最初は「次に何したらいいか」と受け身の姿勢だったが、だんだん自分達でやりたいことを
提案するようになった。
25
<改善点>
•女の子ばかりで、雰囲気が仲良しグループになってしまうことがあったので、厳しく接する時とのメリハリを
つける。もしくは、男子生徒が混ざっていてもいい。
•意見の強い子や、日本語が上手い子に流れが常に向いてしまっていたので、その他の生徒のやる気を常に換気
する必要がある。
•何度いっても、インタビューの際遅刻者がでるので、厳しい態度で注意する。
インフラ班(荒井・バゾ)
<概要>
インフラ班はゲル地区の生活改善をテーマに行った。まず、ゲル地区にて住民200人に現在の問題点をアン
ケート形式にて聞き取り調査を行った。アンケートの結果、ゲル地区の問題はゴミ(収集車・収集回数・労働者
の不足、制度の不備)
、道路(予算、用地)
、大気汚染(家庭用暖房器具からの排気)、があることがわかった。
そこで、水道局、ごみ収集業者、新型ストーブ販売会社、当該地区を管轄する行政(ホロー)へ行ったところ、
各ホローによって管轄地区の生活環境が異なっていることがわかったので、運営が良好と思われるホローへの聞
き取り調査もおこなった。結果として住環境を改善するには、問題への意識、問題を解決しようとする意志と行
動の3点が不可欠であることがわかった。
<よかった点>
・実際に生徒たちで不特定の地域住民にアンケート調査を行ったこと。
・意見の違いにより生徒同士の衝突がみられたが、生徒たちだけで解決したこと。
<改善点>
・テーマが広い班(インフラや環境など)は、最初にテーマの中の何を取り上げるのか具体的に絞り込まないと、
調査が散漫になりやすい。
・
(テーマを絞り込み切れなかったこともあるが)生徒たちだけで「目標の設定」
「目標を達成するための計画作
成」「期日までに終わらせるための実行(役割分担)と計画修正」までには至らず、先生の指示を仰がなければ
行動できない面がみられた。
3.2. 発表会(荒井)
<概要>
対象は 3 年生全員。アクション・リサーチ(以下 AR)にて調査・行動したことをまとめ、発表することによ
り、プレゼンテーション能力を向上させるのが目的である。
<良かった点>
・発表者だけではなく班全員を壇上にあげた。
・賞状を班で 1 枚ではなく、サイズを小さくして全員に渡した。
<改善点>
・演者に対する経過時間掲示の連絡が至らなかったため、演者が経過時間を見ていなかった。
・準備不足のため、開始時刻が遅くなった。
・ビデオ機材の準備が間に合わなかった。
・他の先生方の指示が不徹底だった。
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4.イベント
本サマースクールの目的として日本語の総合的な学習が挙げられる。そのため授業外の時間を使い、多くのイ
ベントが開催されている。今回は高橋先生がサマースクール参加 10 周年となり、歓迎会及び 10 周年記念会が盛
大に行われた。また、高橋先生と一緒にモンゴルを訪問された奥様、そしてそのお姉さまによる書道教室が行わ
れた。以下では、SS 派遣メンバーが担当したイベントの報告を載せる。
4.1. ゴミ拾い
(関内)
<概要>
新モンゴル高校付近のセレブ川にて全校生徒参加のゴミ拾いを 4 時間ほど行った。AR 全体活動の一つとして、
現場体験をすることが目的である。
<よかった点>
・生徒の積極性が良く、最終的なゴミの量として 1 トントラック一台分となった。
<改善点>
・下級生教師の方に、ゴミ拾いの意義や先生としての意識を考
えてもらう。下級生教師の中にはモチベーションが低く、生徒
をひっぱていくということができない方もいた。
4.2. スポーツ大会
(堀内)
<概要>
(競技種目)綱引き •障害物競走 •バスケットボール
綱引き
ゴミ拾い終了後のトラック
準備:綱引き用の縄
•クラス対抗
障害物競走
準備:風船×グループ数、イス2脚、縄跳び2本、ミニコーン5個×2、バスケットボール×2個、
マット運動用のマット×2、笛(体育教師がもっていなかったので、関内先生のものを拝借)
•クラス対抗、1グループ5人(男子2人、女子3人)
•スタート→でんぐり返し2回→(男子)足に縄跳びをまき、うさぎ跳びでミニコーンをジグザグに進む(女子)
縄跳びをしながらミニコーンをジグザグに進む→フリースローからシュートを入れる→ドリブルでスタート地
点に戻ってくる。
•アンカーのみバケツの上に座り、風船が割れるまで空気をいれ、破裂した後に、スタートに戻る。
バスケットボール
準備:バスケットボール、笛
•クラス対抗(人数がたりないところは合同チーム)
•総あたり戦
<良かった点>
•大きなけが人もなく、生徒の授業だけではみることのできない一面が見られた。
•とても盛り上がった。
<改善点>
•(障害物にて)最終ランナーのゴールは、風船を割ったらなのか、スタート地点まで戻ってからなのか、選手
27
が把握できていなかったので説明を徹底する。
•(バスケットボールにて)次はどこが試合なのか、後何試合あるのか等が把握できず、昼食時間がとりづらい
ので、即席で張り出すとわかりやすい。
•前日のゴミひろいに参加できなかった生徒はスポーツ大会にでれないというルールを、生徒に事前に強調して
伝える。
•出席がかなりとりづらく、何時までにこない生徒は欠席等を先生同士に共有しておく。
4.3. スピーチコンテスト
(今井)
<概要>
サマースクールに参加している全学年の生徒を対象に行った。人前で話す機会を設けるのが主な目的である。
今年は 7 つのテーマについてスピーチ原稿を募り、上級生・下級生の先生方で審査を行った。その中の優秀者 6
名がスピーチを行った。3 名の審査員が審査を行い、1~3 位・入賞者を決め表彰した。
<よかった点>
・ スピーチの発表者に日本人の先生が効果的に指導していた。
・ テーマが多く様々な内容があって楽しめた。
・ 先生方の努力で観客の生徒もある程度集まっていた。
<改善点>
・ スピーチ原稿について、指定の用紙があるのか、提出はいつまでか、どこに提出
するかなど下級生の先生方とも共有しておく
・ スピーチ原稿の審査について下級生の先生方と打ち合わせておく
・ スピーチを読む人の発表方法(原稿を返却するだけでは不十分)
・ 原稿募集、スピーチ発表者の決定、当日の運営など、スケジュール立てと早めの
行動が大切である。
スピーチコンテスト優勝者
・ スピーチは録画する。
4.4. 詩の朗読大会
(バゾ)
<概要>
松・竹組を対象に、詩の授業でならった詩を、生徒自身が感じたものを発表しあった。
<良かった点>
・元気に詠む人、静かにかつ力強く詠む人、様々な詠み方を見ることができた。
<改善点>
・募集を早くし、生徒に準備時間を確保してもらう。今年度は、募集が遅れ、AR などで忙しくて、準備がしっ
かりできていない生徒もいた。
・来年度は参加者(観客も含める)を検討した方がいい。今年度も 3 年生のみなので、全体の数は少なかった。
・今回の大会では、テキストにある詩と自分が作成した詩を朗読すると指定したが、詩の選択を自由とすればよ
かったと思う。
4.5. 修了式
<概要>
サマースクール課程を修了したことを確認するとともに終了させる式である。5 階で行われる。本年は、下級
生・上級生共に皆勤賞を設け、下級生では、最優秀賞、優秀賞、演奏功労賞、上級生にはクラス分けテストと最
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終テストの伸び率でみた Development 賞を定めた。生徒は日本語レベルアップの成果を披露するための出し物
をする。また、本年は、10 周年と言うこととお辞めになる先生がいらしたので、盛大に行い、これからもサマ
ースクールが続いて行くこと、発展していくことを願った。
<良かった点>
・多くの生徒に表彰状を送れたこと
・多くの生徒が仲間の表彰に拍手をしていたこと
・モンゴル人、日本人ともにサマースクールだけの先生だけを中心に舞台の上に上がる機会を作れたこと
<改善点>
・生徒の成果発表は、日本語に関わるものを行うように徹底させる
・音が流れるかはきちんと事前にリハーサルを設け、確認すること
・出し物が他クラスと被らないよう、担任の先生同士が情報交換できる場をつくるようにする
・皆勤賞は、締め日をハッキリさせておく
・司会の言葉はもっと量を増やしたとしても、会の進行ができるように全て次第をいうような中身にすること
⇒司会の人が紙を持てるよう、カバーが必要
・リハーサル、備品の管理などは、午前中の AR 発表会と協力できるようにしておく
AR 発表の様子
皆勤賞受賞者(修了式)
5.編集後記
この報告書は、今年度のサマースクールにご支援ご協力いただいた各機関・関係者のみなさまに活動内容を報
告するために作成した。特に、助成金をいただいた双日基金様、NGO アクア様にはこの場を借りて御礼申し上
げたい。
今年度のサマースクールに関わったメンバーが各活動について「概要」
「よかった点」
「改善点」の 3 点につい
て振り返り執筆したのが本報告書である。サマースクールの活動が多岐に及ぶこと、また、メンバーの思いから
莫大な量になってしまった。しかし、この報告書を読めば 2012 年のサマースクールが分かる、といった内容に
なったと思う。
今年度サマースクールは 10 周年を迎え、変革の時期に差しかかっている。10 年間サンディエゴから来てくだ
さった高橋先生が今年度を持ち「卒業」となることをはじめ、直近 3 年間のサマースクールを支えた増田匠先生
も退職された。
そして、
新たに着任した 2 名の日本人教師がサマースクールを引き継いでいくことになっている。
体制は変わっても、サマースクール・MrJ のキーワード「共生学習」を軸に、これからも参加生徒・派遣メン
バーの双方が学び合い、成長しあえる場になることを願っている。
(新モンゴル高校日本語教師・今井 智絵)
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