事業再生士補(ATP)資格試験 2009/11/8 法律 問題1) DDS(デット・デット・スワップ)が金融検査マニュアル上において、資本的劣 後ローンとして自己査定上資本と同様とみなすことができる条件またはその契約に 含まれるべき内容として、間違っているものを一つ選択してください。 ① DDSが合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画と一体になって行われていること。 ② 債務者にデフォルトが生じた場合、金融機関の資本的劣後ローンが優先的に弁済を受 けること。 ③ 資本的劣後ローンについての契約が、金融機関と債務者との間で双方合意で締結され ていること。 ④ 金融機 関に 対して 、債 務者が 財務 状況の 開示 を行い 、債 務者企 業の キャッ シュ ・フ ローへ一定の関与をできる権利を与えていること。 ⑤ 債務者の約定違反により、資本的劣後ローンが期限の利益を喪失した場合には、債務 者が当該金融機関の有する全ての債務について、期限の利益を喪失すること。 事業再生士補(ATP)資格試験 2009/11/8 法律 問題2) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 破綻回避を図るための手法の一つとして、債務者と債権者が任意に協議を行う私的整 理が挙げられる。私的整理では合意に達した債権者の債権だけがカットの対象となる。 従って、債権者との交渉という点では、金融機関や取引先といった利害関係者に対し 支援を要請することになる。 ② 特定調停法による手続開始の条件として定められる特定債務者とは、支払不能に陥る おそれのあるもの若しくは事業の継続に支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済 することが困難であるもの又は債務超過に陥るおそれのある法人または個人をいう。 ③ 特定調停法では、債権者会議を開く必要がなく、特定調停を行う調停委員会を組織す る民事調停委員として、事案の性質に応じて専門的な知識経験を有する者が調停委員 となり、これに裁判官が加わった調停委員会が調停を斡旋する。そのため公平な立場 で判断する第三者が存在し、またスピーディーに手続を実施することができる。 ④ 特定調停法に基づく手続きにより達した当事者間の合意の効力は、当事者間のみであ る。 ⑤ 債務者本人または債務者に依頼された弁護士が特定調停法を裁判所に申し立てた時を もって、貸金業者の債務者への取り立て行為は規制される。 事業再生士補(ATP)資格試験 2009/11/8 法律 問題3) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 民事再生手続は手続開始の申立権を債務者と債権者に認めている。通常は、債務者自 身が申立てを行なうことが一般的であり、破産手続き開始の原因となる事実が発生す る恐れがある場合に限り債権者からの申し立ては許可される。 ② 民事再生手続きにおいて、申立棄却事由として、「費用の予納がないとき。」、「裁判所 に破産手続または特別清算手続きが係属し、その手続によることが債権者の一般的利 益に適合するとき。」、 「再生計画案の作成もしくは可決の見込み、または、再生計画の 認可の見込がないことが明らかなとき。」、 「不当な目的で申立がなされたとき、または、 申立が不誠実になされたとき。」などが挙げられる。 ③ 民事再生法の場合、従業員が有する労働債権は一般優先債権に分類されるため、民事 再生手続外で随時弁済される。そのため従業員及び労働組合は、労働債権以外の債権 を持つ場合を除いて再生手続に何ら関与することはできない。 ④ 通常の再生債権については、やむを得ない理由がない限り債権の届出期間内の届出を 失念してしまうと、原則として再生計画の認可決定の確定後免責対象となり失権して しまうので留意が必要である。 ⑤ 民事再生法は、特にその適用対象を限定しておらず、自然人、会社、公益法人等が含 まれる。基本的には、中小企業の適用を想定して作られたものではあるが、大企業の 適用を制限しているものではないため、その使いやすさから大規模な上場会社の倒産 などにおいても、民事再生法が申請されている事例が見受けられる。 事業再生士補(ATP)資格試験 2009/11/8 法律 問題4) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 会社更生手続において、更生手続の開始後は、原則として、更生債権などは更生計画に定 めるところによらなければ、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除 を除く)をすることは出来ない。 ② 会社更生手続の一つの特徴として、経営責任、株主責任が厳格に問われ、通常はその地位 を失うことが挙げられる。すなわち、経営者は事業経営権及び財産処分権を失い、裁判所 が新たに選任した更生管財人が事業経営権や財産処分権を行使する。また、債務超過であ る場合には、通常 100%減資により株主はその地位を失うことが通常である。 ③ 従業員の給料債権は、更生手続開始前からの期間によって扱いが異なる。手続開始前6ヶ 月間については共益債権のため更生手続外での弁済を受けることができるが、6ヶ月を超 える分については優先的更生債権とされ、通常の更生債権よりは優先的に弁済されるが、 更生担保権よりも順位は劣る。 ④ 会社更生法下において更生手続開始前の債権は大きく共益債権、更生債権、更生担保権に 分けられるが、弁済の優先順位は更生担保権、更生債権、共益債権の順である。 ⑤ 2009 年よりDIP型会社更生手続(経営者の退任を前提としない手続)が事例として見 られるようになったが、これは会社更生法自体の改正によるものではなく、東京地裁の運 用基準の改定として行われているものである。 事業再生士補(ATP)資格試験 2009/11/8 法律 問題5) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① プレパッケージ型手続きとはスポンサー企業を予め選定することにより迅速な再生を 可能とするものである。民事再生手続、会社更生法で用いられる。 ② プレパッケージ型手続きとは、スポンサー企業との間で支援方法や金額などの詳細に ついてあらかじめ合意しておく倒産手続きであるが、主要債権者との合意は不要であ る。 ③ プレパッケージ型民事再生手続においては、債務者企業の経営陣は原則的に引き続き 経営にあたる。会社財産の処分権も有することができるので、一層の早期再建が可能 になる。 ④ 近年、DIP型会社更生手続きが導入された。これは、従来の会社更生法の運用にお いては旧経営陣が管財人に選任されることはなかったが、当手続きは旧経営陣の一部 を改めて管財人に選任するため、債務者にとって利便性の多い会社更生法を利用でき るものとして注目を集めている。 ⑤ プレパッケージ型手続きにより混乱を招くことなく事業を継続できるため、事業資産 の劣化を食い止められる可能性は上がる。 事業再生士補(ATP)資格試験 2009/11/8 法律 問題6) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 破産法による手続は、裁判所が選任した破産管財人が裁判所の監督のもとで進める手 続きであり、公平、公正な清算を行うことで利害関係人の利害を適切に調整すること を目的としている。また株式会社における破産手続開始原因は、支払不能と債務超過 の2種類とされている。 ② 中小企業の場合は会社の債務に対して社長が連帯保証をしている場合も多く、債務の 弁済が困難な場合、法人の破産手続と同時に社長個人の破産手続が申請される場合が ある。 ③ 破産手続における申立権者は、原則的に債権者または債務者であり、債務者が自ら破 産を申立てることを自己破産という。対して、債権者が破産手続開始の申立をする場 合には、その有する債権の存在および破産手続開始の原因となる事実を疎明しなけれ ばならない。 ④ 法人の場合は清算により解散することになるが、個人の場合は破産宣告決定後、さら に免責決定を得ることで経済的に再起を図ることができる。すなわち、支払不能の債 務者に対し、債権者の権利関係を適切に調整し、債務者の財産等の適正かつ公平な清 算を図ることが目的である。ただし浪費等の理由により、免責が許可されない場合も ある。 ⑤ 破産手続が開始決定されたあと、例外なく事業者が行う事業は廃止され、事業を継続 または再開することは許されない。 事業再生士補(ATP)資格試験 2009/11/8 法律 問題7) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 従業員の移転に伴う労働継承については、事業譲渡では会社間の合意と従業員の個別 の合意が必要となる。したがって、営業の譲受会社と労働者は個別に譲受会社の労働 条件による労働契約を締結することになる。 ② 事業譲渡は、合併のような画一的な組織的契約とは異なり、通常の売買契約であると いうことが大きな特徴である。そのため、事業譲渡の対象となる資産や負債を契約で 自由に選択でき、また有機的一体化された組織の売却により売買価格を高くできるこ とが、事業譲渡の長所である。 ③ 事業譲渡は、個々の資産負債を時価で譲渡、譲受したものとして課税所得を計算する。 第三者取引の場合には、そこに恣意性が無い限りにおいて、原則として交渉で決めた 価額が税法上の時価と認められるが、同族会社間など特殊関係者間の取引の場合は、 専門家など第三者が算出した価額など、客観的に時価と認められる価額を時価とする。 ④ 事業譲渡においていわゆる簡易事業譲渡の要件を満たせば、株主総会の特別決議では なく、取締役が2名以上の場合は過半数の取締役の決定(取締役会設置会社の場合は取 締役会決議)で足りることになるが、事業の譲渡側の要件としては、事業の重要な一部 の譲渡について、譲渡対象資産の帳簿価額が、譲渡会社の総資産の20%以下の場合 か、もしくは譲受側が譲渡側の特別支配会社(総株主の議決権の100分の90以上を 支配している相手方の会社)の場合とされている。 ⑤ 事業譲渡は対象とする資産・負債を契約により個別に自由に選択して行われるが、合 併と同様組織法上の行為として扱われ資産・負債や権利義務等を包括的に移転させる ことから、個別の譲渡に対して対抗要件を具備する必要はない。 事業再生士補(ATP)資格試験 2009/11/8 法律 問題8) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 合名会社は株式会社とは合併できない。 ② 会社の営業時間内であれば、株主や会社の債権者は、いつでも合併契約に関する書面 の閲覧を求めることができる。 ③ 会社合併を行う場合には、通常株主総会の特別決議及び債権者保護手続が必要になる が、会社更生法下の更生計画に従う合併の場合は、両方とも必要ない。 ④ 吸収合併存続会社において、吸収合併契約の承認に株主総会の特殊決議や総株主の同 意は不必要である。 ⑤ 会社合併の場合には、合併前の権利義務関係は、そのすべてが当然に合併後の会社に 承継される。そのため合併前の会社が有している権利義務関係についてはなんら追加 手続を行う必要もなく合併後の会社に引き継がれ、また合併前の会社の労働者の地位 (労働契約上の権利義務関係)も、合併後の会社に当然に承継されるのだが、行政法規に 基づく許認可について合併によって当然に承継されるかどうかは、行政法規の規定に 基づくことになるので、留意が必要である。 事業再生士補(ATP)資格試験 2009/11/8 法律 問題9) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 会社分割とは、企業が事業の一部を切り離し、新会社として独立させたり他の企業に 承継させたりする制度である。会社分割は組織法上の行為として扱われ、企業の資産・ 負債や権利義務等のうちその事業に関する部分を包括的に移転させることができる。 事業リストラの一環として行われる手法の一つにあげられる。 ② 新設分割には、分割会社が1社である場合と、複数の会社が分割会社となり、共同し て1社を設立する「共同新設分割」という場合もある。 ③ 会社分割は合併と同様、簡易分割の制度が存在している。分割する資産・負債が一定 の要件を満たす程度に少額である場合に、分割元の会社では株主総会決議を省略する ことができる。 ④ 会社分割のデメリットとして、手続の煩雑さがあげられる。すなわち、民事再生手続 や会社更生手続のどちらのスキームにおいても手続が省略化されず、債権者保護手続 や反対株主の株主買取請求権などの会社法所定の手続を踏む必要がある。 ⑤ 株式会社が新設分割をする場合において、新設分割設立会社が持分会社である場合に は、新設分割計画について株主総会の特別決議が必要である。 事業再生士補(ATP)資格試験 2009/11/8 法律 問題10) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 株式の譲渡制限が付されている会社の株式の譲渡にあたり、当該会社に対して譲渡承 認の請求を出すことができる。その請求を承認しない決定を会社が行った場合で、か つ譲渡予定者が会社に対して対象株式を買い取るように請求された場合、会社には対 象株式を買い取る義務がある。 ② 非公開会社であり、取締役会設置会社においては、取締役会の承認を得ないで行った 譲渡制限株式の譲渡であっても、株主全員の同意がある場合には、譲受人は会社に対 して名義書き換えの請求をすることができる。 ③ 買収防止策の一環として、重要な自社の株式の譲渡について、ライセンス契約や代理 店契約などの重要な契約に対してチェンジオブコントロール条項が付されている場合 がある。このような場合、実質的に株式の異動に制限が課せられていることにもなり、 支配権獲得を目的とする株式の売買にあたり、当該条項の削除などの交渉が必要とな る場合も考えられる。 ④ 譲渡制限株主からの買取請求に応じて、会社がその株式を買い取ることとした場合、 そのために必要な株主総会の特別決議において、売主たる株主は、原則として議決権 を行使できる。 ⑤ 譲渡制限株式の株主からの承認請求及び買取請求に対し、会社は指定買取人を指定し て、当該株式を買い取らせることができる。 事業再生士補(ATP)資格試験 2009/11/8 法律 問題11) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 新株予約権つき社債とは、株式を一定の条件で取得するための権利である新株予約権 を付与された社債のことである。新株予約権とは、株式を一定の条件で取得するため の権利であり、新株予約権を行使すると、社債部分の金額がそのために払い込まれた とみなすように発行条件を定めることができる。 ② 公開会社でない会社においては、定款変更により会社の発行する株式の総数・発行可 能株式総数を増加させる場合、発行済株式の5倍を超えて増加することができる。 ③ 非公開会社では、新株発行についての募集事項に関して、常に株主総会の特別決議に よって定めなければならない。 ④ 株式発行のデメリットとして、旧来の株主がそのまま残ってしまうことがあげられる。 そのため企業再建のスキームにおいて、旧来の株主にも責任を負わせるべきと判断さ れる場合には、既存株式を減資により消却し、その上で新株発行により必要資金調達 額を増資するという、増資と減資との組み合わせが多く用いられている。 ⑤ 事業リストラの一環として行われる手法の一つに、新株発行があげられる。企業再建 においては、過年度に生じた欠損の精算、新スポンサーへの議決権の移行及び旧株主 に対して責任を課すという目的を同時に達するために、第三者割当による新株発行増 資と旧株式の消却、及び欠損填補のための減資を同時に行うスキームが私的整理・法 的整理を問わず一般的に利用されている。 事業再生士補(ATP)資格試験 2009/11/8 法律 問題12) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 事業リストラの一環として行われるM&Aの過程で利用される手法として、株式交換 と株式移転がある。株式交換の具体的な手法は、ある会社の株主が有していた株式を 完全親会社になる会社がすべて取得し、対価として完全親会社になる会社の株式等を 当該会社の株主に交付することで、2社間で100%親子関係を創設するものである。 また株式移転の具体的な手法は、完全親会社となる会社を新規設立し、完全子会社と なるある会社の株主が有している株式を新設会社がすべて取得し、対価として新設会 社の株式を当該会社の株主に交付することで、完全親会社を新設する点で株式交換と 異なる。 ② 株式交換・株式移転については会社法上原則として株主総会の特別決議、債権者保護 手続きを必要とし、また反対する株主は会社に対して株式買取請求権を有する。ただ し、会社更生法に基づく更生計画内及び民事再生法に基づく再生計画内で行われる場 合には、特別決議及び保護手続は不要であり、また株式買取請求権もないと規定され ているため、更生計画及び再生計画の成立により実行可能となる。 ③ 甲社が丙社を完全子会社にするための株式交換の場合、丙社の株主に、対価として甲 社株式以外の財産を与えることも可能であるため、丙社の株主が全て甲社の株主にな るとは限らない。 ④ 株式交換は、完全親会社となる会社の株主にとって会社組織上の重大な変更である。 また、持株比率が変動することもあるので、その会社の株主は株式交換に反対して、 株式の買取りを請求することができる。 ⑤ 合併と異なり、株式移転によっては、株式移転完全子会社の権利義務の一切は、当然 に株式移転完全親会社に包括的に承継されるわけではない。 事業再生士補(ATP)資格試験 2009/11/8 法律 問題13) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 会計上の資産として計上されない特許権や商標権などの知的財産権は法務・財務 デューデリジェンスにおける対象となるが、会計上の価値が認められないので、その 有効性や有効期限の確認、譲渡(売却)の金額や可能性についても検討する必要はな い。 ② 法務デューデリジェンスの目的は、「対象企業あるいは事業自体が持つ法的側面から のリスクを調査すること。」、「事業再生スキームに係わる法的側面からの障害事由 の有無を把握すること。」、「事業再生スキームの成立・実行のために必要な手続を 確認すること。」の3つの目的に集約されると考えられる。 ③ 不動産デューデリジェンスは目的や期間、予算、物件のタイプ等の要因によって、調 査項目や調査範囲が異なることから、デューデリジェンスの目的と評価価値が持つ意 味を理解した上で、実務に取り掛からなくてはならない。そのためには、投資リスク の把握、リスク軽減とリスク回避手段の案構築、適正投資価格の把握、投資効率の向 上を踏まえた調査を行う必要がある。 ④ 企業では、実際はすべての活動において何らかの形で法律が関連しているといっても 過言ではない。そのため、調査対象エリアは訴訟案件のような直接的な事項だけでな く、企業活動全般が該当しうることになる。 ⑤ 環境デューデリジェンスとは、環境影響、汚染状況を入念に調査し、適正に評価する ことである。例えば、汚染土壌の売買の場合、土壌の汚染状況を知らずに購入すれば、 買主が多大な負債を被ることとなる。それを回避するためには、買主側が、購入しよ うとする土地の汚染状態を事前に調査し、適正な価値を評価する必要がある。 事業再生士補(ATP)資格試験 2009/11/8 法律 問題14) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 取締役などの会社役員が、悪意または重大な過失により第三者に損害を与えた場合に は、当該第三者に対しても損害賠償などの責任を負う。しかし、この責任については、 取締役などの会社役員の個人破産手続などにより免責が認められる。 ② 役員の責任に基づく損害賠償請求権の査定の裁判の制度において、民事再生法は、再 生債務者が申立を行わない場合には、再生債務者に代わって、再生債権者も保全処分 や損害賠償請求権の査定の申立を行うことを可能として、役員に対する責任追及を実 現できるように配慮している。 ③ 会社に対する取締役の責任が、取締役間の特殊な関係からその追及がなされず、その 結果、会社すなわち株主の利害が害された場合などにおいて、株主に、会社の権利を 代表し、行使して、取締役に対して訴えを提起することを認めた制度を株主代表訴訟 制度という。 ④ 経営者責任としてその他金銭的に負う責任としての連帯保証は、特に中小企業におい て多く見受けられる。会社が法的倒産手続の申し立てを行うことで債務の履行が不可 能になるため、連帯債務者として債務の履行が必要になる。 ⑤ 取締役は、会社経営の担い手として広範な権限を有すると同時に、善管注意義務や会 社への忠実義務を負担し、会社や債権者などに対しても責任を有する。このように取 締役の責任は、民事上の責任のみならず、「業法違反」や「法人税法違反」などの場合 には、その態様や事業の規模、被害額などに応じて、刑事上の責任を負うことがある。 事業再生士補(ATP)資格試験 2009/11/8 法律 問題15) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 民事再生法の適用対象は、会社更生法の場合が株式会社に適用が限定されているのと は異なり、法人その他の社団・財団だけでなく個人にも適用することが可能である。 ただし、個人で利用するには手続面が複雑で負担が重く、また担保権が別除権として 保護されてしまうことから、民事再生法内で小規模個人再生、給与所得者等再生、住 宅資金貸付債権に関してそれぞれの特則が定められている。 ② 小規模個人再生の利用要件は、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込み があることと、再生債権の総額(住宅資金貸付債権及び別除権により担保されている 金額等を除く)が5,000万円以下の債務者とされている。 ③ 給与所得者等再生とは、小規模個人再生の利用対象者のうち、定期的に安定した収入 を得る見込みのある者を対象として、その可処分所得の2年分以上の額を返済原資と することを条件に、手続きの簡素化を目指したものだが、再生債権者による再生計画 案の決議は省略することはできない。 ④ 給与所得者等再生の利用要件は、小規模個人再生の利用要件に加えて、給与又はこれ に類する定期的な収入を得る見込みがある者であってかつその額の変動の幅が小さい と見込まれる者とされている。 ⑤ 住宅資金貸付債権の特則とは、債務者がローンの返済を遅滞している場合、一定の弁 済をすることで債務者が喪失した期限の利益を回復し、弁済期の繰り延べが認められ るという手続きである。この特則によれば、抵当権の実行を防ぐことが可能である。 事業再生士補(ATP)資格試験 2009/11/8 法律 問題16) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 会社がある従業員に対して別の会社へ出向することを求める際、当該従業員が、会社 が提示した出向先・出向条件等を含めてその出向に同意した場合、その同意を出向に おける「個別的同意」という。 ② あらかじめ就業規則またはその一部である出向規程又は労働協約等で、会社が従業員 に対して出向を命じることができること、出向を命じられた従業員は出向する義務が あること、その他出向条件等が定められているときは、従業員はそれらの規則・規程 を前提にして入社しているとみなし、これを出向における「包括的同意」という。 ③ 出向の場合は、その命令に対し従業員の同意は必ずしも必要とはしないが、就業規則 や労働協約に出向に関する規定を定めていない場合も原則的に同意は必要としない。 ④ 転籍の場合、従業員が従前に勤務していた企業との労働契約は終了し、転籍先の企業 に労働契約の全てが移転する。出向との大きな違いは、出向は出向元との労働契約関 係が継続するが、転籍は転籍元との労働契約関係が完全に消滅することになる。従っ て、転籍した労働者の労働条件は、転籍先の会社が定めるものとなる。 ⑤ 出向は、長期の出張と類似する点があるが、出張の場合、出張先にはその社員に対す る業務の指揮命令権はなく、出張社員と出張先との間には雇用関係は発生しない。ま た、労働時間や休日などの労務管理上の規定は出向先の就業規則が適用されるが、定 年・退職金制度などの労働契約上の地位に関する事項については、出向元の就業規則 が適用される。 事業再生士補(ATP)資格試験 2009/11/8 法律 問題17) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 整理解雇は経営者側の都合により行われ、また会社のほうが労働者よりも強い立場に ある。判例上は、整理解雇の有効性には厳格な要件が必要であると取り扱われており、 例えば、人員削減自体の必要性、会社側の解雇を回避するための努力の程度、解雇対 象者の人選の妥当性、労働者に対する説明責任が要求されている。 ② 整理解雇・人員削減自体の必要性とは、人員削減をしなければ会社が倒産に至ってし まうという「倒産回避説」、今のうちに人員削減をしておかないと近い将来会社が危機 的状況に陥る可能性があるという「経営不振打開説」、そして危機的状況は予測されな いが、生産性向上のための「生産性向上説」の3つの側面から説明される。 ③ 整理解雇回避のための努力とは、他の措置を何も講じずにいきなり人員整理に会社が 走っていないかどうかがポイントになる。たとえば、希望退職・早期退職の募集や配 置転換、賃金引き下げやワークシェアリングの実施実績などが考えられるが、会社と して整理解雇は極力避けてきたが、最後のどうしてもやむを得ない手段であったかど うかが判断基準となる。 ④ 整理解雇対象者の人選の妥当性とは、たとえば従業者に対しての労働力としての評価 や労働者への生活の影響の程度などが判断基準として考えられる。ところが、整理解 雇を行うというのは会社が危機的状況であることが多いので、緊急の場合は基準を設 けずに整理解雇を推し進めることも可能である。 ⑤ 労働者に対する説明責任については、整理解雇の必要性とその内容(規模、時期、方 法)について納得を得る説明をしなければならないことをいう。また、労働協約に整 理解雇についての諸条件を明記されている場合は、当然に被使用者と労働組合と協議 をするべきである。 事業再生士補(ATP)資格試験 2009/11/8 法律 問題18) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 会社分割の際、雇用契約を分割対象とするかどうかについては、会社法上、個々の労 働者の意思の有無は要件として特に明記されていない。そのため、労働者の権利を保 護すべく、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(労働契約承継法)が制定され ている。 ② 分割会社は、分割計画書等を株主総会開催日 2 週間前までに分割業務に主として従事 している従業員、主として従事してないが引き継がれる会社に転籍する従業員、及び 労働組合に対して、対象者を分割計画書に記載されるかどうか、異議を申し出ること の出来る期限日、申出の方法、などの事項を書面で通知する必要がある。 ③ 労働契約承継法上、会社分割に際し承継させる事業に関連して、労働者をその事業に 主として従事する者(主務職員)と主務職員でない者とに分類している。 ④ 労働契約承継法上、主務職員と認められた労働者については、分割計画書等において 労働契約の承継する旨の記述がある場合、会社分割の効力が発生した時には、労働者 の同意を得ることなく労働契約は承継される。 ⑤ 労働契約承継法上、主務職員と認められた労働者については、分割計画書等において 労働契約の承継する旨の記述がない場合においても、その業務の重要性から、会社分 割の効力が発生した時には、労働者の同意を得ることなく労働契約は承継され、異議 申立権は無い。 事業再生士補(ATP)資格試験 2009/11/8 法律 問題19) 金融検査マニュアルの貸倒引当金について、間違っているものを一つ選択してくだ さい。 ① 正常先に対する債権に係る貸倒引当金については、債権の平均残存期間に対応する今 後の一定期間における予想損失額を見積ることが基本である。予想損失額の算定に当 たっては、少なくとも過去3算定期間の貸倒実績率又は倒産確率の平均値に基づき、 過去の損失率の実績を算出し、これに将来の損失発生見込に係る必要な修正を行い、 予想損失率を求め、正常先に対する債権額に予想損失率を乗じて算定する。 ② 要管理先に対する債権のうち、債権元本の回収及び利息の受け取りに係るキャッ シュ・フローを合理的に見積もることができる債権については、当該キャッシュ・フ ローを各金融機関の回収リスクを勘案し、その分のプレミアムを乗せた利子率で割り 引いた金額と債権の帳簿価額との差額を貸倒引当金とする方法がある。 ③ 要管理先の大口債務者については、DCF法を適用することが望ましいが、将来 キャッシュ・フローを合理的に見積ることが困難なため、やむを得ずDCF法を適用 できなかった債務者に対する債権については、個別的に残存期間を算定し、その残存 期間に対応する今後の一定期間における予想損失額を見積ることが望ましい。 ④ 要注意先に対する債権に係る貸倒引当金については、貸倒実績率又は倒産確率に基づ く方法を用いる場合、債権の平均残存期間に対応する今後の一定期間における予想損 失額を見積ることが基本である。ただし、要注意先に対する債権を信用リスクの程度 に応じて区分し、当該区分毎に合理的と認められる今後の一定期間における予想損失 額を見積っていれば妥当なものと認められる。 ⑤ 償還条件については長期の期限一括返済となっており、金利については赤字の場合利子負 担が生じない等配当に準じた金利設定になっている劣後ローンは、十分な資本的性質があ ると認められると考えられる。このように、償還条件や金利等の借入条件が資本に準じた 借入金は、十分な資本的性質が認められる借入金として当該借入金を資本と見做した上で 債務者区分の検討を行うことになる。 事業再生士補(ATP)資格試験 2009/11/8 法律 問題20) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 企業再生に関連の深い公的機関の一つに、整理回収機構(RCC)がある。整理回収 機構は当初住専や破たん金融機関からの不動産・貸付債権等を受け皿機関として引き 取り、不動産の処分や貸付債権の管理・回収を行うことを目的として設立された。 ② 整理回収機構を利用する債権者側のメリットは、「メイン寄せの動きが出ることによ る再建の遅れの回避」、ならびに「債権者間の取扱いが公平に取扱われる。」、かつ、 「再生対象債権の債権者区分の上位遷移が図られる。」などが挙げられる。 ③ 整理回収機構が信託機能を活用したスキームの一つとして挙げられるのが、 「金外信託 方式」である。整理回収機構は、金融機関から、債権者間の調整等の業務を受託し、 債権者合意に至った場合は、当該債権について入札を実施、落札者と金外信託契約を 締結する。整理回収機構はその資金を持って金融機関から債権を購入し、再生計画等 を実施する。 ④ 整理回収機構の企業再生スキームを利用した再建計画に基づく債権放棄において、債 権者が計上する債権放棄損は、無税償却の基準を満たさない。 ⑤ 整理回収機構の企業再生スキームを利用した再建計画に基づく債権放棄等において、 債務者側は、再生計画成立を持って「再生計画認可等に準ずる事実」に該当し、資産 の評価損益を計上して、期限切れの欠損金を青色欠損金に優先して損金算入すること ができる。
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