事業再生士補(ATP)資格試験 2012/11/18 法律 問題1) DDS(デット・デット・スワップ)が金融検査マニュアル上において、資本的劣 後ローンとして自己査定上資本と同様とみなすことができる条件またはその契約に 含まれるべき内容として、間違っているものを一つ選択してください。 ① DDSが合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画と一体になって行われていること。 ② 債務者にデフォルトが生じた場合、金融機関の資本的劣後ローンが優先的に弁済を受ける こと。 ③ 資本的劣後ローンについての契約が、金融機関と債務者との間で双方合意で締結されてい ること。 ④ 金融機関に対して、債務者が財務状況の開示を行い、債務者企業のキャッシュ・フローへ 一定の関与をできる権利を与えていること。 ⑤ 債務者の約定違反により、資本的劣後ローンが期限の利益を喪失した場合には、債務者が 当該金融機関の有する全ての債務について、期限の利益を喪失すること。 事業再生士補(ATP)資格試験 2012/11/18 法律 問題2) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 特定調停法は、支払不能に陥るおそれのある債務者等の経済的再生に資するために、特定 の債務者と債権者が当該金銭債権債務に係る利害関係の調整を促進する事を目的としてお り、民事調停法の特例として裁判所の調停手続のもとで行われる。 ② 特定調停法による手続開始の条件として定められる特定債務者とは、支払不能に陥るおそ れのあるもの若しくは事業の継続に支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済すること が困難であるもの又は債務超過に陥るおそれのある法人をいう。 ③ 特定調停法では、債権者会議を開く必要がなく、特定調停を行う調停委員会を組織する民 事調停委員として、事案の性質に応じて専門的な知識経験を有する者が調停委員となり、 これに裁判官が加わった調停委員会が調停を斡旋する。そのため公平な立場で判断する第 三者が存在し、またスピーディーに手続を実施することができる。 ④ 特定調停法に基づく手続きにより達した当事者間の合意の効力は、当事者間のみならず第 三者にも及ぶことが同法の特徴である。 ⑤ 特定調停法においては、会社更生法や民事再生法とは異なり経営支配権に関する規定がな い。そのため特定調停法は現経営陣が継続して経営にあたることを前提としていると考え ることができる。 事業再生士補(ATP)資格試験 2012/11/18 法律 問題3) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 民事再生法の特徴としては、会社更生法と比較して再生手続開始後も手続拘束される関係 者の範囲が限定されていることがあげられる。そのため特定少数の債権者との交渉が再建 のキーポイントになる場合などにおいて迅速な手続が可能となるスキームといえる。また 現経営陣が引き続き経営に当たることが前提となっている点も特徴といえる。 ② 民事再生法には、簡易再生手続の規定を設けることで手続の迅速化が図られている。簡易 再生手続は、届出総債権のうち裁判所が評価した額の5分の3以上に当たる債権を有する 届出再生債権者が、書面により再生計画案について同意し、かつ、再生債権の調査・確定 手続を経ないことについて同意している場合、ただちに再生計画案決議のための債権者集 会の招集決定が可能となる。 ③ 民事再生手続下における再生手続開始前の債権には、大きく分けて共益債権、一般優先債 権、再生債権がある。一般優先債権とは一般の先取特権その他一般の優先権がある債権の うち共益債権以外を指し、手続開始決定前の雇用関係に基づく労働債権はこれに該当する。 一般優先債権は、再生手続に関係なく弁済を受けることができる。 ④ 民事再生法において別除権とは、担保権の実行を再生手続外で行い、債務者所有の担保権 の目的財産から優先的に弁済を受けることのできる地位のことである。ただし、担保権の 実行によっても弁済の受けられない不足額については、担保権行使の代償として債権残額 が切り捨てられることになるため、留意が必要である。 ⑤ 民事再生手続の終結は、監督委員または管財人が選任されていない場合は、再生計画認可 の決定が確定したときに裁判所が終結の決定を行う。監督委員が選任されている場合は、 再生計画が遂行されたとき又は再生計画認可の決定が確定した後三年を経過したときに、 申立てまたは裁判所の職権で終結の決定を行う。管財人が選任されている場合は、再生計 画が遂行されたとき又は再生計画が遂行されることが確実であると認めるに至ったとき、 申立て又は裁判所の職権で、終結の決定がなされる。 事業再生士補(ATP)資格試験 2012/11/18 法律 問題4) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 会社更生法の場合、担保権について別除権がなく、原則的に更生手続に従うことになる。 そのため、債権者の権利関係が複雑に絡み合っている場合に利用しやすく、大規模な再建 を行わないと再建計画が構築できない場合に向いているといえる。 ② 会社更生手続は、多数の関係者の利害を調整するため、その手続は、民事再生法と比較し て厳格かつ複雑である。そのため時間と費用が多くかかる点は考慮しなければいけない。 ③ 会社更生法下において更生手続開始前の債権は大きく共益債権、更生債権、更生担保権に 分けられるが、弁済の優先順位は更生担保権、更生債権、共益債権の順である。 ④ 更生計画案の決議要件としては、民事再生法下の再生債権の場合は議決権者数 (人数)と議 決権額(金額)の要件の両方を満たさなければいけないのに対し、会社更生法下の各種債権 については、更生債権・更生担保権いずれも金額要件のみであり、人数要件は存在しない。 また民事再生法とは異なり、会社更生法では債務超過でなければ各種株主も議決権を有す る。ただし会社更生法が適用される会社は通常債務超過のため、株主が議決権を有する ケースは少ない。 ⑤ 更生手続が廃止される場合とは、決議に付するに足りる更生計画案の作成の見込みがない ことが明らかになったときや更生計画案が否決されるなど更生が困難なとき、更生手続開 始の原因となる事実のないことが明らかになったとき、更生計画認可決定後に更生計画が 遂行される見込みがないことが明らかになったときがある。 事業再生士補(ATP)資格試験 2012/11/18 法律 問題5) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① プレパッケージ型手続きとはスポンサー企業を予め選定することにより迅速な再生を可能 とするものである。民事再生手続、会社更生法で用いられる。 ② プレパッケージ型手続きとは、スポンサー企業との間で支援方法や金額などの詳細につい てあらかじめ合意しておく倒産手続きであるが、主要債権者との合意は不要である。 ③ プレパッケージ型民事再生手続においては、債務者企業の経営陣は原則的に引き続き経営 にあたる。会社財産の処分権も有することができるので、一層の早期再建が可能になる。 ④ 近年、DIP型会社更生手続きが導入された。これは、従来の会社更生法の運用において は旧経営陣が管財人に選任されることはなかったが、当手続きは旧経営陣の一部を改めて 管財人に選任するため、債務者にとって利便性の多い会社更生法を利用できるものとして 注目を集めている。 ⑤ プレパッケージ型手続きにより混乱を招くことなく事業を継続できるため、事業資産の劣 化を食い止められる可能性は上がる。 事業再生士補(ATP)資格試験 2012/11/18 法律 問題6) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 破産法による手続は、裁判所が選任した破産管財人が、裁判所の監督のもとで進める手続 きであり、公平、公正な清算を行うことを目的としている。 ② 法人における破産手続開始原因は、支払不能と債務超過の 2 種類である。支払不能とは、 債務者が弁済期の到来した債務を一般的かつ継続的に弁済できない客観的状態であり、支 払停止の状態も、支払不能と推定される。債務超過とは、債務者が、その債務につき、そ の財産をもって完済することができない状態をいう。 ③ 株式会社の破産手続の申し立てを行うことができるのは、債権者及び当該会社の取締役で あり、当該会社の株主は別途債権を有していない限り申立を行う権利がない。 ④ 破産手続が開始決定されたあと、原則的に事業者が行う事業は廃止されるが、裁判所の許 可を得て事業を継続することもできる。 ⑤ 破産法における財団債権は、破産債権に優先して弁済される。給料債権については、破産 手続開始前6か月間のものは財団債権に分類され、それ以外の給料債権は優先的破産債権 に分類される。 事業再生士補(ATP)資格試験 2012/11/18 法律 問題7) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 会社法において、事業の全部の譲渡、事業の重要な一部の譲渡、他の会社の事業の全部の 譲り受けの際には株主総会の特別決議が必要である。 ② 事業譲渡は対象とする資産・負債を契約により個別に自由に選択して行われるが、合併と 同様組織法上の行為として扱われ資産・負債や権利義務等を包括的に移転させることから、 個別の譲渡に対して対抗要件を具備する必要はない。 ③ 事業譲渡の場合には、契約の相手方が議決権の90%以上を保有している特別支配会社と の契約である場合には、事業の全部の譲渡等であっても株主総会の特別決議は不要であり、 取締役会設置会社の場合は取締役会決議で足りる。 ④ 設立後2年以内に会社において、その成立前から存在する財産であって事業のために継続 して使用するものの取得価額が、当該会社の純資産額5分の1以上のときには、いわゆる 事後設立として、株主総会の特別決議が必要となる。 ⑤ 上場会社等有価証券報告書を提出している会社は、最近事業年度末日の純資産額の100 分の30以上の減少もしくは増加するか、または最近事業年度の売上高の100分の10 以上の減少もしくは増加が見込まれる事業の譲渡もしくは譲り受けの際、臨時報告書を提 出する必要がある。 事業再生士補(ATP)資格試験 2012/11/18 法律 問題8) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 会社合併の形態は、新設合併と吸収合併の2種類がある。吸収合併とは、会社が他の会社 とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に 承継させるものをいい、新設合併とは2以上の会社がする合併であって合併により消滅す る会社の権利義務の全部を合併により設立する会社に承継させるものをいう。 ② 企業再建の局面で合併が使われる場合とは、スポンサー企業が再建対象企業を合併する場 合や、再建対象企業グループ内でのグループ再編の手段として用いられるのが一般的であ る。 ③ 会社合併を行う場合には、通常株主総会の特別決議及び債権者保護手続が必要になるが、 会社更生法下の更生計画に従う合併の場合は、両方とも必要ない。 ④ 2社間の会社合併の場合には、合併当事会社のうちどちらか一方の会社の国内売上高合計 額が200億円超でかつもう一方の会社の国内売上高合計額が50億円超の場合は、いわ ゆる親子会社や兄弟会社でない限り、公正取引委員会にあらかじめ合併に関する計画を提 出する必要がある。 ⑤ 会社合併の場合には、合併前の権利義務関係は、そのすべてが当然に合併後の会社に承継 される。そのため合併前の会社が有している許認可についてはなんら追加手続を行う必要 もなく合併後の会社に引き継がれ、また合併前の会社の労働者の地位(労働契約上の権利義 務関係)も、合併後の会社に当然に承継される。 事業再生士補(ATP)資格試験 2012/11/18 法律 問題9) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 事業リストラの一環として行われる手法の一つに、事業譲渡があげられる。会社更生手続 や民事再生手続内で採用を検討されることも多いが、手続開始後は更生計画や再生計画外 での会社の事業の全部の譲渡や重要な一部の譲渡が一切できなくなるので留意が必要であ る。 ② 事業譲渡は対象とする資産・負債を契約により個別に自由に選択して行われるが、譲渡す る資産・負債や権利義務等を契約内で指定し一括移転させることになり、個別の譲渡に対 して対抗要件を具備する必要がある点に留意する必要がある。 ③ 事業譲渡のメリットには、早期に優良なスポンサーを確保できた場合に、他の会社法上の 事業リストラスキームと比較して迅速に行いやすい、ということが考えられる。その一例 として、新会社を設立してそこに優良な事業のみを事業譲渡し、不採算事業や過剰債務を 旧会社に残す、いわゆる第二会社方式がある。 ④ 事業譲渡については、会社法上「事業の全部の譲渡」、「事業の重要な一部の譲渡」、「他の 会社の事業の全部の譲受」などの場合、株主総会の特別決議が必要である。 ⑤ 従業員の移転に伴う労働継承については、事業譲渡では会社間の合意と従業員の個別の合 意が必要となる。したがって、営業の譲受会社と労働者は個別に譲受会社の労働条件によ る労働契約を締結することになる。 事業再生士補(ATP)資格試験 2012/11/18 法律 問題10) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 株式譲渡制限のある株式会社において、承認なく譲渡制限株式を取得した者からの承認請 求については、株式会社はその承認を拒否することができる。しかし、承認を拒否した場 合には、その譲渡制限株式を承認なく譲渡した元の株主に、買戻しを指示しなければなら ない。 ② 会社法における「自己株式の消却」において、株式会社は、消却する自己株式の種類およ び数を決定(取締役会設置会社では、当該決定は取締役会の決議事項)して、自己株式を 消却することができる。なお、自己株式の消却を行うためには、当該株式を取得したうえ で消却を行う必要がある。 ③ 株主権の主なものには、経営参加権、利益配当請求権、残余財産分配請求権などがある。 このうち、経営参加権は共益権、利益配当請求権と残余財産分配請求権は自益権に属する。 共益権とは、会社の経営に参加出来る権利のことであり、間接的に株主の利益になる権利 である。また、自益権とは、会社から直接経済的利益を受けることができる権利である。 ④ 個別契約上の制限(チェンジ・オブ・コントロール)とは、企業の主要株主の異動や、経 営陣の交替の際に、取引先とのライセンス契約や代理店契約等の重要契約が終了したり、 長期債務の即時返済が発生したりするような仕組を、当該契約に盛り込んでおくことであ る。 ⑤ 株式は、譲渡契約を締結し、株券発行会社の場合は、譲渡人から株券の交付を受けること により取得することができる。ただし、譲渡する株式が、譲渡制限株式の場合には、株主 総会の特別決議(取締役会設置会社においては取締役会)において、譲渡が承認されなけ れば、譲渡人の株式の取得は会社に対し対抗できない。 事業再生士補(ATP)資格試験 2012/11/18 法律 問題11) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 新株予約権つき社債とは、株式を一定の条件で取得するための権利である新株予約権を付 与された社債のことである。新株予約権とは、株式を一定の条件で取得するための権利で あり、新株予約権を行使すると、社債部分の金額がそのために払い込まれたとみなすよう に発行条件を定めることができる。 ② 公開会社でない会社においては、定款変更により会社の発行する株式の総数・発行可能株 式総数を増加させる場合、発行済株式の5倍を超えて増加することができる。 ③ 非公開会社では、新株発行についての募集事項に関して、常に株主総会の特別決議によっ て定めなければならない。 ④ 株式発行のデメリットとして、旧来の株主がそのまま残ってしまうことがあげられる。そ のため企業再建のスキームにおいて、旧来の株主にも責任を負わせるべきと判断される場 合には、既存株式を減資により消却し、その上で新株発行により必要資金調達額を増資す るという、増資と減資との組み合わせが多く用いられている。 ⑤ 事業リストラの一環として行われる手法の一つに、新株発行があげられる。企業再建にお いては、過年度に生じた欠損の精算、新スポンサーへの議決権の移行及び旧株主に対して 責任を課すという目的を同時に達するために、第三者割当による新株発行増資と旧株式の 消却、及び欠損填補のための減資を同時に行うスキームが私的整理・法的整理を問わず一 般的に利用されている。 事業再生士補(ATP)資格試験 2012/11/18 法律 問題12) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 事業リストラの一環として行われるM&Aの過程で利用される手法として、株式交換と株 式移転がある。株式交換の具体的な手法は、ある会社の株主が有していた株式を完全親会 社になる会社がすべて取得し、対価として完全親会社になる会社の株式等を当該会社の株 主に交付することで、2社間で100%親子関係を創設するものである。また株式移転の 具体的な手法は、完全親会社となる会社を新規設立し、完全子会社となるある会社の株主 が有している株式を新設会社がすべて取得し、対価として新設会社の株式を当該会社の株 主に交付することで、完全親会社を新設する点で株式交換と異なる。 ② 株式交換・株式移転については会社法上原則として株主総会の特別決議、債権者保護手続 きを必要とし、また反対する株主は会社に対して株式買取請求権を有する。ただし、会社 更生法に基づく更生計画内及び民事再生法に基づく再生計画内で行われる場合には、特別 決議及び保護手続は不要であり、また株式買取請求権もないと規定されているため、更生 計画及び再生計画の成立により実行可能となる。 ③ 甲社が丙社を完全子会社にするための株式交換の場合、丙社の株主に、対価として甲社株 式以外の財産を与えることも可能であるため、丙社の株主が全て甲社の株主になるとは限 らない。 ④ 株式交換は、完全親会社となる会社の株主にとって会社組織上の重大な変更である。また、 持株比率が変動することもあるので、その会社の株主は株式交換に反対して、株式の買取 りを請求することができる。 ⑤ 合併と異なり、株式移転によっては、株式移転完全子会社の権利義務の一切は、当然に株 式移転完全親会社に包括的に承継されるわけではない。 事業再生士補(ATP)資格試験 2012/11/18 法律 問題13) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 会計上の資産として計上されない特許権や商標権などの知的財産権は法務・財務デューデ リジェンスにおける対象となるが、会計上の価値が認められないので、その有効性や有効 期限の確認、譲渡(売却)の金額や可能性についても検討する必要はない。 ② 法務デューデリジェンスの目的は、 「対象企業あるいは事業自体が持つ法的側面からのリス クを調査すること」、「事業再生スキームに係わる法的側面からの障害事由の有無を把握す ること」、「事業再生スキームの成立・実行のために必要な手続を確認すること」の3つの 目的に集約されると考えられる。 ③ 不動産デューデリジェンスは目的や期間、予算、物件のタイプ等の要因によって、調査項 目や調査範囲が異なることから、デューデリジェンスの目的と評価価値が持つ意味を理解 した上で、実務に取り掛からなくてはならない。そのためには、投資リスクの把握、リス ク軽減とリスク回避手段の案構築、適正投資価格の把握、投資効率の向上を踏まえた調査 を行う必要がある。 ④ 企業では、実際はすべての活動において何らかの形で法律が関連しているといっても過言 ではない。そのため、法務デューデリジェンスの調査対象エリアは訴訟案件のような直接 的な事項だけでなく、企業活動全般が該当しうることになる。 ⑤ 環境デューデリジェンスとは、環境影響、汚染状況を入念に調査し、適正に評価すること である。例えば、汚染土壌の売買の場合、土壌の汚染状況を知らずに購入すれば、買主が 多大な負債を被ることとなる。それを回避するためには、買主側が、購入しようとする土 地の汚染状態を事前に調査し、適正な価値を評価する必要がある。 事業再生士補(ATP)資格試験 2012/11/18 法律 問題14) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 取締役などの会社役員が、悪意または重大な過失により第三者に損害を与えた場合には、当該 第三者に対しても損害賠償などの責任を負う。し かし、この責任については、取締役などの会 社役員の個人破産手続などにより免責が認められる。 ② 役員の責任に基づく損害賠償請求権の査定の裁判の制度において、民事再生法は、再生債務者 が申立を行わない場合には、再生債務者に代わって、再生債権者も保全処分や損害賠償請求権 の査定の申立を行うことを可能として、役員に対する責任追及を実現できるように配慮してい る。 ③ 会社に対する取締役の責任が、取締役間の特殊な関係からその追及がなされず、その結果、会 社すなわち株主の利害が害された場合などにおいて、株主に、会社の権利を代表し、行使して、 取締役に対して訴えを提起することを認めた制度を株主代表訴訟制度という。 ④ 経営者責任としてその他金銭的に負う責任としての連帯保証は、特に中小企業において多く見 受けられる。会社が法的倒産手続の申し立てを行うことで債務の履行が不可能になるため、連 帯債務者として債務の履行が必要になる。 ⑤ 取締役は、会社経営の担い手として広範な権限を有すると同時に、善管注意義務や会社への忠 実義務を負担し、会社や債権者などに対しても責任を有する。このように取締役の責任は、民 事上の責任のみならず、 「業法違反」や「法人税法違反 」などの場合には、その態様や事業の規 模、被害額などに応じて、刑事上の責任を負うことがある。 事業再生士補(ATP)資格試験 2012/11/18 法律 問題15) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 小規模個人再生では、手続の簡易化のため、管財人、監督委員、調査委員も選任すること はできない。ただし、裁判所の補助を行う機関の必要性は存在するため、個人再生委員と いう機関が設けられている。個人再生委員は、裁判所が必要と考える場合にのみ選任され、 その職務は、 「再生債務者の財産および収入の調査」、 「再生債権の評価に関する裁判所の補 助」、「適正な再生計画案作成のための勧告」に限定される。 ② 給与所得者等再生では、再生計画案に対する再生債権者の決議はなされないから、弁済計 画による弁済がその収入に照らして法律の定める要件を満たすものであることが、客観的 に確認できなければならない。また、再生計画の弁済期間は、原則 3 年間(最長 5 年間) である。 ③ 個人債務者が持家を失うことなく、経済生活の再建を図ることができる手続として創設さ れたのが、 「住宅資金貸付債権に関する特則」である。住宅資金貸付債権についての再生計 画の条項、すなわち住宅資金特別条項の対象となる再生債権は、住宅の建設もしくは購入 に必要な資金だけであり、住宅の改良に必要な資金の貸付にかかる債権は認められない。 ④ 給与所得者等再生では、再生計画認可決定が確定した場合において、債権調査手続で確定 した無担保再生債権に対する再生計画に基づく弁済総額が、再生計画認可決定時に破産が 行われた場合の配当総額を下回り、または可処分所得による最低弁済額条件の要件を満た さないことが明らかになったときは、債権者の申立てにより、再生計画を取消すことがで きる。 ⑤ 住宅資金貸付債権に関する特則において、住宅ローン以外を目的とする担保権が、住宅に 設定されている場合には、特別条項(期限の利益回復方式、弁済期間延長方式など)を定 めることはできない。 事業再生士補(ATP)資格試験 2012/11/18 法律 問題16) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 会社がある従業員に対して別の会社へ出向することを求める際、当該従業員が、会社が提 示した出向先・出向条件等を含めてその出向に同意した場合、その同意を出向における「個 別的同意」という。 ② あらかじめ就業規則またはその一部である出向規程又は労働協約等で、会社が従業員に対 して出向を命じることができること、出向を命じられた従業員は出向する義務があること、 その他出向条件等が定められているときは、従業員はそれらの規則・規程を前提にして入 社しているとみなし、これを出向における「包括的同意」という。 ③ 出向の場合は、その命令に対し従業員の同意は必ずしも必要とはしないが、就業規則や労 働協約に出向に関する規定を定めていない場合も原則的に同意は必要としない。 ④ 転籍の場合、従業員が従前に勤務していた企業との労働契約は終了し、転籍先の企業に労 働契約の全てが移転する。出向との大きな違いは、出向は出向元との労働契約関係が継続 するが、転籍は転籍元との労働契約関係が完全に消滅することになる。従って、転籍した 労働者の労働条件は、転籍先の会社が定めるものとなる。 ⑤ 出向は、長期の出張と類似する点があるが、出張の場合、出張先にはその社員に対する業 務の指揮命令権はなく、出張社員と出張先との間には雇用関係は発生しない。また、労働 時間や休日などの労務管理上の規定は出向先の就業規則が適用されるが、定年・退職金制 度などの労働契約上の地位に関する事項については、出向元の就業規則が適用される。 事業再生士補(ATP)資格試験 2012/11/18 法律 問題17) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 整理解雇は経営者側の都合により行われ、また会社のほうが労働者よりも強い立場にある。 判例上は、整理解雇の有効性には厳格な要件が必要であると取り扱われており、例えば、 人員削減自体の必要性、会社側の解雇を回避するための努力の程度、解雇対象者の人選の 妥当性、労働者に対する説明責任が要求されている。 ② 整理解雇・人員削減自体の必要性とは、人員削減をしなければ会社が倒産に至ってしまう という「倒産回避説」、今のうちに人員削減をしておかないと近い将来会社が危機的状況に 陥る可能性があるという「経営不振打開説」、そして危機的状況は予測されないが、生産性 向上のための「生産性向上説」の3つの側面から説明される。 ③ 整理解雇回避のための努力とは、他の措置を何も講じずにいきなり人員整理に会社が走っ ていないかどうかがポイントになる。たとえば、希望退職・早期退職の募集や配置転換、 賃金引き下げやワークシェアリングの実施実績などが考えられるが、会社として整理解雇 は極力避けてきたが、最後のどうしてもやむを得ない手段であったかどうかが判断基準と なる。 ④ 整理解雇対象者の人選の妥当性とは、たとえば従業者に対しての労働力としての評価や労 働者への生活の影響の程度などが判断基準として考えられる。ところが、整理解雇を行う というのは会社が危機的状況であることが多いので、緊急の場合は基準を設けずに整理解 雇を推し進めることも可能である。 ⑤ 労働者に対する説明責任については、整理解雇の必要性とその内容(規模、時期、方法) について納得を得る説明をしなければならないことをいう。また、労働協約に整理解雇に ついての諸条件を明記されている場合は、当然に被使用者と労働組合と協議をするべきで ある。 事業再生士補(ATP)資格試験 2012/11/18 法律 問題18) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 会社分割の際、雇用契約を分割対象とするかどうかについては、会社法上、個々の労働者 の意思の有無は要件として特に明記されていない。そのため、労働者の権利を保護すべく、 会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(労働契約承継法)が制定されている。 ② 分割会社は、分割計画書等を株主総会開催日 2 週間前までに分割業務に主として従事して いる従業員、主として従事してないが引き継がれる会社に転籍する従業員、及び労働組合 に対して、対象者を分割計画書に記載されるかどうか、異議を申し出ることの出来る期限 日、申出の方法、などの事項を書面で通知する必要がある。 ③ 労働契約承継法上、会社分割に際し承継させる事業に関連して、労働者をその事業に主と して従事する者(主務職員)と主務職員でない者とに分類している。 ④ 労働契約承継法上、主務職員と認められた労働者については、分割計画書等において労働 契約の承継する旨の記述がある場合、会社分割の効力が発生した時には、労働者の同意を 得ることなく労働契約は承継される。 ⑤ 労働契約承継法上、主務職員と認められた労働者については、分割計画書等において労働 契約の承継する旨の記述がない場合においても、その業務の重要性から、会社分割の効力 が発生した時には、労働者の同意を得ることなく労働契約は承継され、異議申立権は無い。 事業再生士補(ATP)資格試験 2012/11/18 法律 問題19) 金融検査マニュアルの貸倒引当金について、間違っているものを一つ選択してくだ さい。 ① 正常先に対する債権に係る貸倒引当金については、債権の平均残存期間に対応する今後の 一定期間における予想損失額を見積ることが基本である。予想損失額の算定に当たっては、 少なくとも過去3算定期間の貸倒実績率又は倒産確率の平均値に基づき、過去の損失率の 実績を算出し、これに将来の損失発生見込に係る必要な修正を行い、予想損失率を求め、 正常先に対する債権額に予想損失率を乗じて算定する。 ② 要管理先に対する債権のうち、債権元本の回収及び利息の受け取りに係るキャッシュ・フ ローを合理的に見積もることができる債権については、当該キャッシュ・フローを各金融 機関の回収リスクを勘案し、その分のプレミアムを乗せた利子率で割り引いた金額と債権 の帳簿価額との差額を貸倒引当金とする方法がある。 ③ 要管理先の大口債務者については、DCF法を適用することが望ましいが、将来キャッ シュ・フローを合理的に見積ることが困難なため、やむを得ずDCF法を適用できなかっ た債務者に対する債権については、個別的に残存期間を算定し、その残存期間に対応する 今後の一定期間における予想損失額を見積ることが望ましい。 ④ 要注意先に対する債権に係る貸倒引当金については、貸倒実績率又は倒産確率に基づく方 法を用いる場合、債権の平均残存期間に対応する今後の一定期間における予想損失額を見 積ることが基本である。ただし、要注意先に対する債権を信用リスクの程度に応じて区分 し、当該区分毎に合理的と認められる今後の一定期間における予想損失額を見 積ってい れば妥当なものと認められる。 ⑤ 償還条件については長期の期限一括返済となっており、金利については赤字の場合利子負 担が生じない等配当に準じた金利設定になっている劣後ローンは、十分な資本的性質があ ると認められると考えられる。このように、償還条件や金利等の借入条件が資本に準じた 借入金は、十分な資本的性質が認められる借入金として当該借入金を資本と見做した上で 債務者区分の検討を行うことになる。 事業再生士補(ATP)資格試験 2012/11/18 法律 問題20) 以下の内容において、間違っているものを一つ選択してください。 ① 産業再生機構は、 「産業の再生」及び「不良債権の処理の促進による信用秩序の維持」を目 的として設置されたが、企業再生支援機構は、主として「地域経済の再建」を図り、併せ てこれにより「地域の信用秩序の基盤強化」にも資することを目的としている点で違いが ある。 ② 企業再生支援機構では、事前相談から支援や買取等決定までの一連の手続きに係る費用は、 案件によりケースバイケースであり、案件の内容に応じて、別途手数料を請求される場合 がある。期間については、支援決定まで概ね 1 ~ 3 ヶ月程度以上は見込んでおく必要があ る。 ③ 企業再生支援機構が公的な役割を担っている以上、透明性の確保等の観点から機構の情報 は公開していくべきとの考えから、支援を決定した事業者については、要請があれば、債 権買取り等の決定時まで公表を延期することはあるが、機構の出融資・債権買取りの有無 にかかわらず、企業名は公表される。 ④ 事業再生に当たり債権者に債権放棄等の負担を求めるような場合には、経営者・株主に相 応の責任が求められることが基本である。しかし、(1)当該経営者が事業継続に必要なノウ ハウ等を有している、(2)当該事業に必要な販路、仕入れ先等との関係維持に、当該経営者 の人的関係が不可欠である、といった事情がある場合等には、関係者の理解が得られるこ とを前提として、ケースバイケースで対応することもある。 ⑤ 企業再生支援機構は株式会社であるが、業務に必要な資金について、借入金及び社債によ り調達することとしている。また、機構であっても株式会社の形態であるため、これらの 借入金及び社債については、日本国政府による保証はない。
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