洗浄・消毒・滅菌 1. 洗浄・消毒・滅菌とは 洗浄:目に見える汚れ、血液、タンパク物質など有機物を除去すること。 消毒:微生物が感染症を惹起しえない水準まで殺滅、または減少させること。 滅菌:芽胞を含む、全ての微生物を殺滅または除去すること。 2. スポルディング分類 クリティカル 処理方法 消毒液など 滅菌 ・高圧蒸気滅菌(オートクレーブ) 患者の無菌組織に直接 器具 器材 ・ガス滅菌(エチレンオキサイド 挿入されるもの ガス:EOG) ・メス、血管内カテーテ ・過酸化水素低温プラズマ滅菌(ス ルなど テラッド) セミクリティ 滅菌もし ・グルタラール(ステリハイド®) 患者の粘膜に直接接触 カル器具 くは高水 ・フタラール(ディスオーパ®) するもの 準消毒 ・過酢酸(サナサイド KG®) ・内視鏡、気管支ファイ ・高濃度(1000ppm(0.1%)以上) バーなど 次亜塩素酸ナトリウム溶液(ピュ ーラックス®、ミルクポン®) 中水準消 ・次亜塩素酸ナトリウム溶液 毒 ・アルコール(消毒用エタノール®) ・ポピドンヨード(®) ノンクリティ 洗浄もし ・第 4 級アンモニウム塩(オスバ 患者の健常皮膚に接触 カル器具 くは低水 ン®) するもの 準消毒 ・グルコン酸クロルヘキシジン(ヘ ・聴診器、血圧計カフ、 キザック AL®) 松葉杖、車椅子など ・両性界面活性剤(®) 1 細菌 真菌 ウイルス 小型*1 中間*2 ○ ○ ○ × ○ ○ ○ × △ × ○ 増殖型 結核菌 芽胞 高水準 ○ ○ ○ 中水準 ○ ○ 低水準 ○ × ○有効、△菌種により有効または無効、×無効 *1 脂質膜(エンベロープ)を持たない小型サイズ *2 脂質膜を持つ中間サイズ 4. 消毒剤一覧 (表は次ページ、引用:感染防止のための消毒剤使用マニュアル 2009.丸石製薬) ○・・・有効, △・・・十分な効果が得られない事がある(報告により評価にバラつきがみ られる), ×・・・無効 ―・・・該当しない, ○・・・使用可, △・・・注意して使用, ×・・・使用不適 ☆・・・効能・効果はないが、使用している報告がある *1 脂質を含まない小型サイズ:アデノウイルス、コクサッキーウイルス等のエンテ ロウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス等 *2 脂質を含む中間サイズ:インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス等 *3 HBV・HCV:評価にバラつきがみられる記載があるものは 80vol%エタノール、70vol% イソプロパノール、ポビヨンヨードであり、当該記載により推定されるものを含 めて△とした。 2 微生物 細菌 分類 高 水 準 消毒剤 一 般 細 菌 M R S A 緑 膿 菌 ・ セ パ シ ア ・ セ ラ チ ア 等 対象物 真菌 結 核 菌 芽 胞 糸 状 真 菌 酵 母 真 菌 ウイルス 小 型 サ イ ズ 中 間 サ イ ズ H B V ・ H C V * 1 * 2 * 3 人体 H I V 手 指 皮 膚 創 傷 部 位 器具 結 膜 内 視 鏡 金 属 器 具 環境 非 金 属 器 具 床 ・ 壁 ・ 病 室 等 ド ア ノ ブ ・ 手 摺 等 血 液 ・ 体 液 ・排 泄 物 と 等 の 有 機 物 グルタラール ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × × × × ○ ○ ○ × × × フタラール※ ○ ○ ○ ○ △ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × × × × ○ ○ ○ × × × 過酸化物系 過酢酸※ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × × × × ○ △ △ × × × アルデヒド系 ホルマリン※ ○ ○ ○ ○ △ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × × × × × △ △ △ △ × 塩素系 次亜塩素酸ナト リウム ○ ○ ○ △ △ ○ ○ ○ ○ ○ ○ △ △ △ △ × △ △ △ △ △ エタノール ○ ○ ○ ○ × ○ ○ △ ○ △ ○ △ ○ × × × ○ ○ × ☆ × イソプロパノー ル ○ ○ ○ ○ × ○ ○ × ○ △ ○ △ ○ × × × ○ ○ × ☆ × アルデヒド系 アルコール系 アルコール系 配合剤 第4級アンモニ ウム塩系配合 剤 中 水 準 エタノール・イソ プロパノール (消毒用エタプ ロコール) エピケア ○ ○ ○ ○ × ○ ○ △ ○ △ ○ ○ × × × × × × × × × ウエルパス ○ ○ ○ ○ × ○ ○ △ ○ △ ○ ○ × × × × × × × × × クロルヘキシジ ングルコン酸 塩・エ タノ ール (マスキンエタノ ール) ビグアナイド系 配合剤 ヨウ素系 ヨウ素系配合 剤 ○ ○ ○ ○ × ○ ○ △ ○ △ ○ △ ○ × × × ○ ○ × ☆ × ○ ○ ○ ○ × ○ ○ △ ○ △ ○ × ○ × × × ○ ○ × ☆ × ウエルアップ ○ ○ ○ ○ × ○ ○ △ ○ △ ○ ○ × × × × × × × × × ワードケアハン ドローション 0.2% ○ ○ ○ ○ × ○ ○ △ ○ △ ○ ○ × × × × × × × × × ウエルアップハ ンドローション 0.5% ○ ○ ○ ○ × ○ ○ △ ○ △ ○ ○ × × × × × × × × × ヨードチンキ・希 ヨードチンキ ○ ○ ○ ○ △ ○ ○ ○ ○ △ ○ × ○ ○ △ × × × × × × ポビド ンヨ ード (ポピラール) ○ ○ ○ ○ △ ○ ○ ○ ○ △ ○ ○ ○ ○ ○ × × × × × × ポロクサマーヨ ード(プレポダイ ン) ポロクサマーヨ ード・イソプロパ ノール(プレポダ インフィールド) ○ ○ ○ ○ △ ○ ○ ○ ○ △ ○ ○ ○ ○ ○ × × × × × × ○ ○ ○ ○ △ ○ ○ ○ ○ △ ○ × ○ × × × × × × × × クレゾール石ケ ン液 ○ ○ ○ ○ × △ ○ × △ × × △ △ × △ × △ △ △ △ ○ フェノール ○ ○ ○ ○ × △ ○ × △ × × △ △ × × × △ △ △ △ ○ フェノール系 ビグアナイド系 低 水 準 第4級アンモニ ウム塩素 両 性 界面 活 性 剤系 そ の 他 クロルヘキシジ ングルコン酸塩 (マスキン) ベンザルコニウ ム塩化物(ヂア ミトール)ベンゼ トニウム塩化物 アルキルジアミ ノ エ チ ルグ リシ ン塩酸塩(ハイ ジール) ○ △ △ × × △ ○ × △ × × ○ ○ ○ × × ○ ○ ○ ○ × ○ △ △ × × △ ○ × △ × × ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ ○ × ○ △ △ △ × △ ○ × △ × × △ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ ○ × 色素系 ア ク リノ ー ル水 和物 ○ △ △ × × × ○ × × × × × × ○ ○ × × × × × × 過酸化物系 オキシドール ○ △ △ × △ ○ ○ △ △ × △ × × ○ ○ × × × × × × 薬用石けん液 トリクロサン 石ケン液 - - - - - - - - - - - ○ ○ × × × × × × × × 3 5. 手術室管理の医療器材の返却ルート ・ 滅菌をする物品は、現場(病棟、外来、透析室)で消毒剤を用いた一時洗浄 は行わない。 ・ 明らかな血液・体液汚染がある場合、流水で流し落とした後、手術室へ持っ ていく。 ・ 手術室では、有機物を除去した後、必要な消毒・滅菌を行う。 6. 医療器材各論 器材 方法 血圧計 洗浄 備考 水またはぬるま湯を浸した (消毒する場合) (消毒) ガーゼ等で清拭する。腕帯が 消 毒液 を浸 したガ ーゼ等 で清 拭 乾燥 汚れた場合は、中の空気袋を 後、水またはぬるま湯を浸したガ 取り出し、外布のみ中性洗剤 ーゼ等で拭き取る。 で洗う。 ・低水準消毒薬 ・熱水消毒 ・消毒用エタノール(本体以外) ・0.05%次亜塩素酸ナトリウム溶液 体温計 洗浄 (腋窩) 消毒 ・消毒用エタノール 乾燥 聴診器 (洗浄) ・消毒用エタノール 消毒 乾燥 ガーグル 洗浄 ベースン (消毒) 膿盆 ビニール袋で覆う。 (消毒する場合) ・熱水消毒 乾燥 ・0.1%次亜塩素酸ナトリウム溶液 洗浄 ・熱水消毒 消毒 ・0.1%次亜塩素酸ナトリウム溶液 乾燥 尿器・ 洗浄 便器 (消毒) (消毒する場合) ・0.1%次亜塩素酸ナトリウム溶液 乾燥 陰部洗浄 洗浄 用ボトル 乾燥 4 包交車 洗浄 高頻度接触表面(ハンドル、 (血液、体液が付着した場合) (消毒) 取っ手、台上など)は、1 日 有 機物 を物 理的に 除去し た後 、 乾燥 1 回消毒用エタノールで清拭 0.1%次亜塩素酸ナトリウム溶液で する。 清拭し、さらに水拭きをする。 経管栄養 洗浄 (容器) (容器/消毒する場合) 容器(ボ 乾燥 週 1 回交換する。 ・熱水消毒 トル型)・ (チューブ) ・0.05%次亜塩素酸ナトリウム溶液 チューブ 毎日交換する。 (チューブ) ・ディスポ 加湿器 洗浄 (タンク) ・熱水消毒 (室内) 消毒 水道水は毎日交換する。 ・0.05%次亜塩素酸ナトリウム溶液 乾燥 (気化フィルター) 週 1 回、歯ブラシで表面をこ すり洗いする。 6 ヶ月毎に交換する。 浴槽・ 洗浄 シンク 乾燥 酸素 洗浄 7-14 日毎に定期的な洗浄・消 ・熱水消毒 加湿器 消毒 毒が必要。 乾燥 加湿器の水は滅菌精製水を ・0.05%次亜塩素酸ナトリウム溶液 使用し、継ぎ足ししない。 酸素 洗浄 マスク (消毒) 乾燥 ディスポが望ましい。 (消毒する場合) 噛むなどして傷が付いた場 ・0.05%次亜塩素酸ナトリウム溶液 合は破棄する。 (滅菌) 鼻カニュ ディスポ ーラ 延長 ディスポ (消毒する場合) チューブ ・0.05%次亜塩素酸ナトリウム溶液 バッグバ 洗浄 (オートクレーブ対応製品) (オートクレーブ非対応製品) ルブマス 消毒 ・オートクレーブ滅菌 ク 乾燥 (滅菌) 5 ・0.1%次亜塩素酸ナトリウム溶液 喉頭鏡/ 洗浄 (オートクレーブ対応製品) ・熱水消毒 ブレード 消毒 ・オートクレーブ滅菌 ・0.1%次亜塩素酸ナトリウム溶液 乾燥 (滅菌) 喉頭鏡/ 洗浄 ハンドル (消毒) (消毒する場合) ・消毒用エタノール 乾燥 バイトブ 洗浄 ロック・ (消毒) エアウェ 乾燥 イ 滅菌 スタイレ 洗浄 ット (消毒) 安価な製品はディスポ。 ・オートクレーブ滅菌 噛むなどして傷が付いた 場 合は破棄する。 ・オートクレーブ滅菌 乾燥 滅菌 人工呼吸 洗浄 (滅菌する場合) ・熱水消毒 器の蛇管 消毒 ・オートクレーブ滅菌 ・0.1%次亜塩素酸ナトリウム溶液 (気管) (口腔) ・使用毎のディスポ ・洗浄、乾燥 乾燥 (滅菌) 吸引 チューブ 吸引瓶 洗浄 (消毒する場合) 乾燥 ・熱水消毒 ・0.05%次亜塩素酸ナトリウム溶液 超音波 洗浄 薬液、薬液カップ、蛇管は患 (霧化室、カップホルダー、薬液 ネブライ 消毒 者毎に交換する。 ザー 乾燥 カップ、少量霧化キャップセット、 マスク) ・熱水消毒 ・0.05%次亜塩素酸ナトリウム溶液 (本体、作用槽内) ・消毒用エタノール、1 日 1 回 *1 (方法):必要に応じて実施 *2 消毒・滅菌前には必ず洗浄し、付着した有機物を洗い落とす。 *3 熱水消毒:80℃・10 分間 *4 次亜塩素酸ナトリウム溶液は、20 分間以上浸漬させる。浸漬不可能な物は十分に清拭 する。金属は腐食するため、後で空拭きをする。 6
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