最高裁が州外企業に関する州法管轄権を制限

訴訟関係
July 2011
最高裁が州外企業に関する州法管轄権を制限
2011 年夏季休廷前、米国最高裁判所は、McIntyre Machinery, Ltd.対 Nicastro 事件に裁定を下した。本裁定は、ニュ
ージャージー州で発生した英国メーカー製機械の使用による負傷事件について、製造者責任(“PL”)を訴えた
個人の訴訟に対し、管轄法を誤っているとして、米国最高裁がニュージャージー州最高裁判所の裁定を覆したも
のである。
同事件の被告は、英国の金属スクラップ切断機メーカーの J. McIntyre Machinery, Ltd(“マッキンタイア社”)で
ある。原告の Robert Nicastro 氏は、同社切断機を使用し、ニュージャージー州で重傷を負った。マッキンタイア
社は、ニュージャージー州には所在せず、米国の資本関係のない販売代理店を通して同機械を販売した。代理店
はしかし、可能な限りマッキンタイア社の指示に従っていた。また、マッキンタイア社幹部は米国での見本市等
に参加していたが、これらはニュージャージーでは開催されておらず、同社は米国、ヨーロッパで特許を持って
いる。同社は一般的に米国での販売を希望しているが、広告その他から、ニュージャージー州を特に対象にした
様子はない。同州に存在する同社の機械は 4 台とされている。
これらにより、最高裁裁判官のうち 6 人は、個人の提起した訴訟において、外国法人であるマッキンタイア社に
対する管轄法がニュージャージー州法となるのは誤りであるとした。根拠については 6 人の裁判官内で合意に達
していないが、ケネディー裁判官はロバーツ、スキャリー、トーマスの各裁判官と多数派意見書を、ブレヤー裁
判官がアリトー裁判官との合同意見書を提出し、ギンスバーグ、ソトマイヤー、ケイガン各裁判官は反対を表明
した。
上記の多数派意見書は、米国憲法の適正手続き条項上、個人に対する管轄権は、通常、被告がその州で能動的に
事業活動する意思にある場合、州法による恩恵と保護を与えるべく適用されるもの、と述べている。また、PL 事
件には、この一般的な規則が適用されるとしている。ここでは特に、製品を商業流通に乗せるだけ、特定の州に
製品が結果的にたどり着くということだけでは、その地での責任が発生するには不十分としている。被告の商品
流通という行為は、当該州を特に対象としていることによって州法の管轄になるのであり、一般的な規則として、
被告が製品の到達を予想し得るのみでは管轄権は発生しないということだ。更に、事実はマッキンタイア社の米
国市場への販売意思を示しているが、ニュージャージー州市場を対象として、「目的を持った事業活動」が行わ
れたとは見えない、とも述べている。
この多数意見には含まれないブレヤー裁判官の意見書では、本件の事実が厳格な規則を設定してしまうことが適
切ではないとし、本件は、昨今管轄権法に関して話題となっている問題(例えばネット販売と管轄法等)からは
外れていることも指摘している。彼は、州法が適用されるには、単に製品 1 点が州内で販売されただけでは不充
分であるとし、最終的には当該州に到達するという知識を持って商業流通に乗せること以上の「何か」が必要で
ある、という意見を支持している。彼は又、「目的を持った事業活動」の解釈を含め、適正手続きとして、被告
にとって公平であることが必要であることを強調した。更に、これらの見解は、全国的に事業を展開している大
企業と、少量の製品を代理店販売している中小企業とでは異なる点にも触れている。
マッキンタイア事件は、米国の個人と外国企業間の PL 事件における立件根拠を制限したものとして、注目すべき
裁判である。ここでいう「外国」とは、州外、及び、国外を指す。本裁定で 9 人中 6 人の最高裁裁判官が明確に
示しているのは、例えメーカー側が当該州への製品の流通を予想していたとしても、製品が単に州へ入ったこと
だけでは、州外企業に対して、その州法の管轄とはしない、ということである。本裁定により、その他の裁判所
で係争中の事件も、却下が進むものと思われる。しかし、個人訴訟に関する管轄権は、今後も事実によって異な
るものとなり、微妙な状態の継続が見込まれる。
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