リチウム中毒と腎性尿崩症 - 沖縄県立南部医療センター・こども医療

内科合同カンファレンス
南部医療療センター GIM 2011/3/3
2年年⽬目 研修医 浦⼭山耕太郎郎
⾺馬原史⼦子
症例例: 58歳 男性 ⾎血圧低下・発熱
現病歴:
精神科病院に30年年間の⼊入院歴あり、2010年年6⽉月より障害者
⽀支援施設に⼊入所中の⽅方。⼊入所時より歩⾏行行時のふらつきがあ
り、ヘッド・ギアを装着されていた。腹痛・腹部膨満・⾷食
欲低下で7⽉月に近医総合病院にて精査されるも⼤大きな異異常は
認めなかったとのことだが、その後も症状持続していた。
当院受診する3週間前(2010年年10⽉月中旬)より徐々に歩⾏行行
困難となったため、内服薬調整⽬目的で⼊入院歴のある精神科
病院に⼊入院となった。⼊入院後、⾷食欲低下と著明な体重減少
を認めたため、経管栄養を開始された。
受診の数⽇日前より腹部膨満、嘔吐があり。その後、40度度の
発熱、⾎血圧低下を認めたため、当院救急搬送となった。
症例例: 58歳 男性 ⾎血圧低下・発熱
既往歴:
#統合失調症(?)精神科病院に⻑⾧長期⼊入院歴あり
#精神発達遅滞
幼少期に発熱後からおかしくなった。知能とし
ては名前が漢字で書ける程度度だった。
#腸閉塞塞
10年年前に⼿手術歴あり、詳細不不明。定期的なガス
抜きをされている。
症例例: 58歳 男性 ⾎血圧低下・発熱
慢性的な便便秘に対して
精神科より
!  
アローゼン(緩下剤) 2g/2
!  
フマル酸クエチアピン 100mg/4
!  
ラクツロース
!  
塩酸リチウム 600mg/3
!  
パントテン酸600mg/3
!  
塩酸エピナスチン 20mg/2
!  
⿇麻⼦子仁丸 !  
リスペリドン 1mg/1
!  
タフマック (消化酵素剤)
!  
トリアゾラム 0.25mg/1
!  
⼤大建中湯
頻尿尿に対して
!  
ジメチコン (腸内ガス除去剤)
!  
塩酸プロピベリン(抗コリン薬)
その他
!  
ファモチジン 10mg 2T/2
症例例: 58歳 男性 ⾎血圧低下・発熱
バイタルサイン:
BP:85/50mmHg HR:74/分 RR:24/分 BT:38.1℃ SpO2:98%(室内気)
来院時⾝身体所⾒見見: 眼球結膜充⾎血なし 瞳孔両側2.5mm、対光反射両側乏しい
⼝口:⼝口腔内乾燥あり、不不潔
頚部:項部硬直あり、頚部リンパ節腫脹なし、甲状腺腫⼤大なし JVP↑なし
⼼心⾳音:整、雑⾳音なし 呼吸⾳音:整、左右差なし、蓄痰⾳音あり
腹部:膨満 軟 BS↓ 肝脾腫なし
背部:脊椎や背部に叩打痛なし、仙⾻骨部に1度度の褥瘡あり
四肢:⾜足背動脈触知可、浮腫なし、末梢あたたかい
直腸診:便便潜⾎血陰性、肛⾨門括約筋トーヌス減弱なし
前医より尿尿道カテーテル留留置あり、希釈尿尿流流出している
症例例: 58歳 男性 ⾎血圧低下・発熱
神経学的所⾒見見
意識識:GCS E4V3M5 亜昏迷状態
脳神経学的所⾒見見は指⽰示に従えず。EOMはスムーズ。
顔⾯面⿇麻痺なし。
四肢⿇麻痺ははっきりしない。
感覚は不不明だが、疼痛刺刺激に左右差なし。
深部腱反射はすべて亢進あり、異異常反射なし。
まず⾏行行う初期対応
と鑑別は?
症例例: 58歳 男性 ⾎血圧低下・発熱
初療療医のProblem List
初療療医の鑑別
初期治療療
#発熱
#敗⾎血症
• 
⽣生⾷食全開
#⾎血圧低下、ショック
#ショック
• 
抗菌薬投与
#意識識レベル低下
#悪性症候群
#嘔吐、腹部膨満、蠕動低下
#髄膜炎
#⼝口腔内乾燥、不不潔
#イレウス
#湿性咳嗽、膿性痰
#肺炎
#尿尿量量多い
#頭蓋内病変
#四肢腱反射亢進
症例例: 58歳 男性 ⾎血圧低下・発熱
尿尿検査
CBC/⽣生化学
WBC
9500/μl
BUN
52mg/dl
pH
8.0
RBC
294万/μl
Cre
2.7mg/dl
⽐比重
1.006
Hb
9.9g/dl
CRP
17.45mg/dl
潜⾎血
(+ー)
Ht
31.7%
MCV
108fL
Plt
蛋⽩白定性 ­−
159mEq/L
糖
­−
22.6万/μl K
6.1mEq/L
RBC
1-4/HPF
AST
41IU/L
Cl
129mEq/L
WBC
<1/HPF
ALT
81IU/L
Ca
9.3mg/dL
髄液検査
LDH
256IU/L
Mg
4.0mg/dL
細胞数
1/μl
CPK
166IU/L
総蛋⽩白
38mg/dl
CK-MB
24IU/L
糖
106mg/dl
T-Bil
0.5mg/dl
クロール 154mg/dl
Na
レントゲン
頭部/胸部/腹部CT
Problem List
ショック
敗⾎血症
Hypovolemia
イレウス
発熱
頻呼吸
炎症反応↑
⼝口腔内乾燥
多量量の希釈尿尿
⾼高Na
⿇麻痺性VS絞扼性
⼿手術歴
嘔吐、腹部膨満
⼩小腸ガス、鏡⾯面像
肺炎
湿性咳嗽、痰
その他
9ヶ⽉月以上続く、⾷食思不不振
意識識障害
髄膜炎、頭蓋内病変
四肢腱反射亢進
腎機能低下
Cre↑ ⾼高K ⾼高Mg
精神科疾患
精神発達遅滞
統合失調症?
多量量の精神科薬内服(フマル酸クエチアピン、塩酸リチウムなど )
症例例: 58歳 男性 ⾎血圧低下・発熱
精神科疾患
ショック
敗⾎血症
?
肺炎
嘔吐
薬剤多い(リチウム、
リスペリドンなど)
意識識障害
Bacterial
translocation疑い
多尿尿?
??
Hypovolemia
?
??
⿇麻痺性イレウス
腎機能低下
??
症例例: 58歳 男性 ⾎血圧低下・発熱
#敗⾎血症、肺炎
痰培・⾎血培からE.coliが検出!
抗菌薬継続⾏行行い、解熱し感染コントロールはできてきたが、、
⾎血圧は100/50mmHg程度度で推移。
1⽇日の尿尿量量は6000mL〜~5000mLだった。 感染の原因としてはイレウスによる嘔吐があり、誤嚥性肺炎を起こしたも
のと思われる。また、⻑⾧長期に渡る⿇麻痺性イレウスの既往があり、
bacterial translocationからの菌⾎血症とも考えられた。
#イレウス
NGチューブ留留置し、絶⾷食にて経過観察とした。
外科にコンサルト⾏行行い、CT所⾒見見上明らかな閉塞塞機転はなく、病歴からも
⿇麻痺性イレウスと診断した。積極的な排便便コントロール・ガス抜きを⾏行行い、
腹部症状は改善した。⾷食事開始後も嘔吐は認めなかった。イレウスの原因
として、痰培からE.coliが検出されていることもあり、糞線⾍虫・CDtoxin
についても検査おこなったが陰性であった。
症例例: 58歳 男性 ⾎血圧低下・発熱
#敗⾎血症、肺炎
痰培・⾎血培からE.coliが検出!
抗菌薬継続⾏行行い、解熱し感染コントロールはできてきたが、、
⾎血圧は100/50mmHg程度度で推移。
1⽇日の尿尿量量は6000mL〜~5000mLだった。 感染の原因としてはイレウスによる嘔吐があり、誤嚥性肺炎を起こしたも
のと思われる。また、⻑⾧長期に渡る⿇麻痺性イレウスの既往があり、
bacterial translocationからの菌⾎血症とも考えられた。
#イレウス
NGチューブ留留置し、絶⾷食にて経過観察とした。
外科にコンサルト⾏行行い、CT所⾒見見上明らかな閉塞塞機転はなく、病歴からも
⿇麻痺性イレウスと診断した。積極的な排便便コントロール・ガス抜きを⾏行行い、
腹部症状は改善した。⾷食事開始後も嘔吐は認めなかった。イレウスの原因
として、痰培からE.coliが検出されていることもあり、糞線⾍虫・CDtoxin
についても検査おこなったが陰性であった。
症例例: 58歳 男性 ⾎血圧低下・発熱
#敗⾎血症、肺炎
痰培・⾎血培からE.coliが検出!
抗菌薬継続⾏行行い、解熱し感染コントロールはできてきたが、、
⾎血圧は100/50mmHg程度度で推移。
1⽇日の尿尿量量は6000mL〜~5000mLだった。 多尿尿?
感染の原因としてはイレウスによる嘔吐があり、誤嚥性肺炎を起こしたも
のと思われる。また、⻑⾧長期に渡る⿇麻痺性イレウスの既往があり、
bacterial translocationからの菌⾎血症とも考えられた。
#イレウス
NGチューブ留留置し、絶⾷食にて経過観察とした。
外科にコンサルト⾏行行い、CT所⾒見見上明らかな閉塞塞機転はなく、病歴からも
⿇麻痺性イレウスと診断した。積極的な排便便コントロール・ガス抜きを⾏行行い、
腹部症状は改善した。⾷食事開始後も嘔吐は認めなかった。イレウスの原因
として、痰培からE.coliが検出されていることもあり、糞線⾍虫・CDtoxin
についても検査おこなったが陰性であった。
多尿尿
→1⽇日の尿尿量量が3000ml 以上
尿尿中浸透圧が290mOsm/Lを
超える
「浸透圧性利利尿尿」
糖尿尿病、利利尿尿薬、腎不不全、
尿尿細管障害など
超えない
「⽔水利利尿尿」
中枢性尿尿崩症、腎性尿尿崩症、
⼼心因性多飲による多尿尿など
**尿尿崩症では⾎血清ナトリウムが142mEq/L以上のことが多く、
⼼心因性多飲では137mEq/L以下のことが多い。
CBC/⽣生化学
症例例: 58歳 男性 ⾎血圧低下・発熱
尿尿検査
WBC
9500/μl
BUN
52mg/dl
pH
8.0
RBC
294万/μl
Cre
2.7mg/dl
⽐比重
1.006
Hb
9.9g/dl
CRP
17.45mg/dl
潜⾎血
(+ー)
Ht
31.7%
MCV
108fL
Na
159mEq/L
糖
­−
Plt
22.6万/μl
K
6.1mEq/L
RBC
1-4/HPF
AST
41IU/L
Cl
129mEq/L
WBC
<1/HPF
ALT
81IU/L
Ca
9.3mg/dL
U-Na
71 mEq/L
LDH
256IU/L
Mg
4.0mg/dL
U-K
17.2 mEq/L
CPK
166IU/L
Li+
2.29mEq/L
U-CL
54 mEq/L
CK-MB
24IU/L
TSH
2.488μU/ml
T-Bil
0.5mg/dl
FreeT4
0.55ng/dL
蛋⽩白定性 ­−
S-浸透圧 343mOSM/kg
U-浸透圧 253mOSM/kg
多尿尿
→1⽇日の尿尿量量が3000ml 以上
尿尿中浸透圧が290mOsm/Lを
超える
「浸透圧性利利尿尿」
糖尿尿病、利利尿尿薬、腎不不全、
尿尿細管障害など
超えない
「⽔水利利尿尿」
中枢性尿尿崩症、腎性尿尿崩症、
⼼心因性多飲による多尿尿など
**尿尿崩症では⾎血清ナトリウムが142mEq/L以上のことが多く、
⼼心因性多飲では137mEq/L以下のことが多い。
中枢性尿尿崩症
• 家族性
• 特発性 (⾃自⼰己免疫?)
• 続発性
外傷、脳外科⼿手術、腫瘍、炎
症性疾患など下垂体後葉葉の障
害によるもの
腎性尿尿崩症
• 家族性
• 続発性
腎疾患
薬物
リチウム
デメクロサイクリン
アムホテリシン
確定診断は⽔水制限や⾼高張⾷食塩⽔水負荷試験、AVP負荷試験などの検査が必要.
中枢性尿尿崩症
• 家族性
• 特発性 (⾃自⼰己免疫?)
• 続発性
外傷、脳外科⼿手術、腫瘍、炎
症性疾患など下垂体後葉葉の障
害によるもの
腎性尿尿崩症
• 家族性
• 続発性
腎疾患
薬物
リチウム
デメクロサイクリン
アムホテリシン
確定診断は⽔水制限や⾼高張⾷食塩⽔水負荷試験、AVP負荷試験などの検査が必要.
⽔水制限試験とAVP負荷試験
時間(分)
0
30
60
90
120
150
180
210
0
30
60
90
120
体重(kg)
37.8
37.6
37.6
37.4
37.2
37.2
37.2
37.0
37.0
36.8
36.6
36.6
36.6
尿尿量量
60
60
150
40
220
Uosm
225
200
204
191
181
192
207
213
212
212
45
182
200
Posm
299
299
300
299
301
AVP(pg/ml)
8.1
7.2
3.4
6.7
8.3
⽔水制限開始
300
299
AVP負荷
⽔水制限試験:
尿尿崩症では、尿尿量量減少せず、尿尿浸透圧も上昇せず、⾎血漿浸透圧は増加する。
中枢性では、AVP→、腎性ではAVPが⾼高値である。
AVP負荷試験:
中枢性では、尿尿量量減少し、尿尿浸透圧は上昇する。
腎性では、尿尿量量は減少せず、尿尿浸透圧も上昇しない。
精神科疾患
薬剤多い(リチウム、
リスペリドンなど)
ショック
敗⾎血症
?
肺炎
嘔吐
意識識障害
Bacterial
translocation疑い
慢性リチウム中毒
腎性尿尿崩症
Hypovolemia
?
⿇麻痺性イレウス
腎機能低下
と、ここで・・
リチウムって何だっけ??
⽔水兵リーベの
リーですよ!!
リチウムとは・・
リチウムとはアルカリ⾦金金属の1つである1価の陽イオン
である。リチウムイオン(Li+)を含むリチウム塩は、最
も古くから有効性の知られていた向精神薬の1つである。
⽇日本では古くより「抗躁病薬」として使⽤用されている。 双極性障害の治療療のほかにも⼤大うつ病や統合失調症で易易
怒怒性など感情障害の治療療としても広く使⽤用されている。
炭酸リチウムは治療療に有効な治療療域が⾮非常に狭い薬で、
有効⾎血中濃度度(治療療域)は0.6~∼1.2mEq/Lであると⾔言われ
ているが、1.0mEq/Lを超えると⾶飛躍的に副作⽤用が出現
する確率率率が⾼高くなる。
リチウム中毒
リチウムの服⽤用量量が増加や、脱⽔水状態によって尿尿細管か
らのリチウムの再吸収が増加すると、脳中リチウム濃度度が
上昇して神経細胞の興奮やシナプス伝導を抑制して中毒症
状を発現するといわれている。
軽症〜~中等症
悪⼼心・嘔吐
下痢痢
⾷食欲の低下
⼝口渇
腹痛
かすみ⽬目
めまい
眼振
⾔言語不不明瞭
傾眠
焦燥感
錯乱
せん妄状熊
振戦
深部腱反射の亢進
運動失調
筋強剛
筋緊張の亢進
重症
昏睡
痙攣発作
ミオクローヌス
失神、低⾎血圧
循環不不全
乏尿尿、⾼高体温
リチウム中毒
その他
T波の平坦化
脚ブロック
Ⅰ度度房室ブロック
徐脈
洞洞停⽌止
⽩白⾎血球増多
甲状腺機能低下症
甲状腺腫
副甲状腺機能亢進症
Ca↑、Mg↑
体重増加
⾎血糖上昇
リチウム中毒
リチウムイオンは脳に移⾏行行するのには時間を要し、いったん
⼊入ると出ていくのにも時間を要する。
したがって⾎血中濃度度は脳中濃度度を必ずしも反映せずに、⾎血中
濃度度が治療療域よりわずかに⾼高い程度度であったり、治療療域にあっ
ても中毒症状が⽣生じることがある。
リチウム中毒
リチウムイオンは脳に移⾏行行するのには時間を要し、いったん
⼊入ると出ていくのにも時間を要する。
したがって⾎血中濃度度は脳中濃度度を必ずしも反映せずに、⾎血中
濃度度が治療療域よりわずかに⾼高い程度度であったり、治療療域にあっ
ても中毒症状が⽣生じることがある。
また、慢性中毒では⾎血液透析法によって⾎血中濃度度が低下して
も、脳中濃度度は中毒を⽣生じる閥値以下になかなかならず、中枢
神経症状が数⽇日~数週間持続することがある。
リチウム中毒の治療療
補液
脱⽔水やナトリウム⽋欠乏によるものが多いため、⽣生理理⾷食塩⽔水の補液で
尿尿量量を確保し、リチウムイオンの排泄を促す。また電解質の補正やボ
リュームコントロールなど全⾝身管理理をおこなう。
⾎血液透析
急性中毒であれば、リチウムイオンの⾎血中濃度度を下げ、中枢への移
⾏行行を防ぐ意味があるが、慢性であれば⾎血中濃度度を下げても脳内濃度度を
下げることができないため、何度度も繰り返しおこなう必要がある。
(適応)
①腎不不全がある ②輸液負荷に耐えられない
③重度度の中枢症状がある
④急性中毒の場合は⾎血中濃度度≧4mEq/L
慢性中毒の場合は⾎血中濃度度≧2.5mEq/L
今回2.29mEq/L
リチウム誘発性腎性尿尿崩症
リチウム塩を⻑⾧長期服⽤用している患者の12~30%に
腎性尿尿崩症が⽣生じる。
普段は⼝口渇・多飲によって症状がマスクされてい
るが、飲⽔水の管理理や保護室への隔離離などをきっかけ
に脱⽔水および⾼高ナトリウム⾎血症が⽣生じて、この障害
が気づかれることがある。
腎性尿尿崩症の治療療
!   サイアザイド系利利尿尿薬
!   ⾮非ステロイド系抗炎症薬
!   DDAVP
たいていは可逆的でリチウム塩を中⽌止すれば
正常に戻ることが多いが、リチウム塩の中⽌止
後に⻑⾧長期間持続することがある。
リチウム誘発性腎性尿尿崩症
今回の症例例では…
リチウムのもう⼀一つの合併症として腎性尿尿崩症が 隠れていた。
慢性リチウム中毒が進⾏行行し、徐々に⾷食欲低下し精査
されたが器質的なものはないとしてそのまま経過観察
とされていた。その後、⾷食欲はどんどん低下していっ
たが、多飲⽔水は変わらずあったために脱⽔水の症状は マスクされていた。
そこに、いよいよ⾷食欲低下が進み経管栄養が開始され
たことで、事実上の⽔水分制限となったために⾼高度度脱⽔水
となり急激にリチウム中毒が増悪することとなった。
⼊入院後経過
⼗十分な補液を⾏行行い、リチウムの値は4病⽇日めの
採⾎血にて2.29mEq/L→0.59mEq/Lまで低下し
た。
またリチウム中毒によると考えられる⾷食欲低下
に関して、全⾝身状態改善後、⾷食事摂取できるよ
うになった。
腎性尿尿崩症に対して、インドメタシン座薬とサ
イアザイド系利利尿尿剤投与し、尿尿量量は依然多尿尿で
はあるものの、3000〜~4000ml/⽇日が2500ml/
⽇日程度度に減少した。飲⽔水励⾏行行により、電解質や
⾎血圧は維持できたため、第31病⽇日に前医へ転院
となった。 治療療開始後の尿尿量量と浸透圧
5000
350
4500
300
4000
250
3500
3000
200
2500
150
2000
1500
100
1000
50
500
0
0
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
尿尿量量
尿尿浸透圧
こわいねー
気づかないと⼤大変だねー
Take Home Message
v  リチウムは多彩な症状を呈
するので注意が必要.
v  今症例例において定期的な腎
機能や⾎血中濃度度の評価が必
要であった。
軽症〜~中等症
悪⼼心・嘔吐
下痢痢
⾷食欲の低下
⼝口渇
腹痛
かすみ⽬目
めまい
眼振
⾔言語不不明瞭
傾眠
焦燥感
錯乱
せん妄状熊
振戦
深部腱反射の亢進
運動失調
筋強剛
筋緊張の亢進
重症
昏睡
痙攣発作
ミオクローヌス
失神、低⾎血圧
循環不不全
乏尿尿、⾼高体温
リチウム中毒
その他
T波の平坦化
脚ブロック
Ⅰ度度房室ブロック
徐脈
洞洞停⽌止
⽩白⾎血球増多
甲状腺機能低下症
甲状腺腫
副甲状腺機能亢進症
Ca↑、Mg↑
体重増加
⾎血糖上昇
ちなみに…
ちなみに…
みなさまお馴染みのリチウム電池ですが、、
⾷食べてもリチウム中毒にはなりません!!
ちなみに…
みなさまお馴染みのリチウム電池ですが、、
⾷食べてもリチウム中毒にはなりません!!
が!
リチウム電池は放電能⼒力力が⾼高く、
電池の寿命がきれるまで⼀一定の電圧
を維持する特性があり、誤って飲み
込んだ時は消化管の中で放電し、
30分から1時間という⾮非常に短時間
でも消化管の壁に潰瘍を作ってしま
うことが報告されています。
ここはどこかわかりますか?
世界遺産:ウユニ塩湖
ウユニ塩湖の地下には、かん⽔水(塩分を含んだ⽔水)に溶けた
リチウムが⼤大量量に眠っている。
世界の埋蔵量量の約半分に相当し、電気⾃自動⾞車車48億台以上の
バッテリーをまかなう量量に匹敵する。
現在、世界最⼤大のリチウム資源の権益獲得を⽬目指して、 ⽇日本を含む各国が働きかけを強めている・・・
ボリビア政府は2014年年ごろの事業化を⽬目指すと発表して
おり、開発がはじまるとこの美しい⾵風景は、 みられなくなる?
⾒見見えなくなる前に1度度⾏行行きたいですね。。
おしまい