江藤英博,鈴木弦

ESTRO 報告記
末藤大明,江藤英博,鈴木弦,早渕尚文
2010 年 9 月 12 日~16 日の期間,スペインはバルセロナで ESTRO が開催され,4 名で参
加させていただきました.私,末藤は隔年で参加し,今回が 4 回目の ESTRO でした.先
の 2 回は私のみの演題発表でしたが,前回は淡河先生と私で 2 題,今回は私,江藤先生,
鈴木先生の 3 題と徐々に演題発表数も増加し,久留米大学放射線治療センターは徐々に世
界に羽ばたいてきています(図 1).ESTRO は放射線治療の分野では世界で二番目に大きく
由緒ある国際学会としてしられ,私が入局した頃は,放射線治療で海外学会など夢のまた
夢という雰囲気だったのを懐かしく思います.今回の ESTRO は,前向き試験の報告が数
多くあり,個人的にはドイツのグループが発表していた,二次発癌の危険が言われる
Hodgkin 病で放射線治療の線量を落とす臨床試験の結果に興味を覚えました.留守中,治
療センターを守っていただいた淡河先生,服部先生,渡邊先生ならびに医局・同門の先生
方大変有難うございました.大変勉強になった学会で,参加した 4 人とも大満足でした.
堅苦しい話はこれくらいにして,恒例の道中記とさせていただきます.
1) 語学力
早渕教授とは別便でスペインに行きましたので,教授以外の 3 人に行きの飛行機で屈辱的
なことがありました.我々3 人が横並びで着席すると,CA さんが飛んできて甲高い大声で
ぎゃーぎゃーまくし立てます.うるさかったので Yes! Ye--s! Yes! と生返事をしていると,
上 司 ら し き チ ー フ パ ー サ ー ま で も が や っ て き ま し た . Can you understand my
speaking・・・・? どうやら非常席に着座していたようで,緊急脱出時の手伝いをしても
らうには語学力が足りないと言いたい模様.3 人そろって数列後ろのお客さんと交代させら
れました.英語力のなさを痛感しましたが,安全,脱出としつこく言われたので,嫌みを
込めて Is this plain safety?と聞いた所,Of course!と即答されました.一部周りの客が爆笑
していました.
学会で英語に耳が慣れたためか,帰りの飛行機では座席を変えさせられるという屈辱を受
けることなく帰国することができました.私は爆睡しておりその事実に全く気がつきませ
んでしたが,帰りの飛行機内では急患が発生した模様で,医者を捜す機内放送がありまし
た.見事に江藤先生が対応されたそうです.さすが病棟医長です.お礼に記念品をもらわ
れたそうです.鈴木先生は帰りの飛行機で眠れなかったそうですが,機内放送に気がつか
なかったそうです.一体どういうことかしらん.
2) 小旅行
学会会場にいるばかりが学会でなく,少しは観光するくらいのゆとりが必要だと早渕教授
の有り難いお言葉に甘え,電車で半日程度の小旅行をすることにしました.後の半日はバ
ルセロナ観光です.
スペインキリスト教の聖地とされる Montserrat(モンセラット,モンセラ)を目的地に
設定しました.一時間に一本しかない電車に乗り,途中登山電車かロープウェイで
山頂に行くことができます.折角なので行きは登山電車,帰りをロープウェイにし
ました.登山電車では,800 メートル程度の標高を 15 分程度で登ります(山の標高
は 1236m).傾斜が強く,車体自体も斜めに造ってあります.ケーブルカーと思っ
ていたら,江藤先生がケーブルではなく,歯車式(ジッパー式)だと興奮していまし
た.モンセラはのこぎり山という意味で,礫岩など岩石からなっており,遠くから
みるとまさにのこぎり歯のようです.山頂は非常に大きな修道院があり,エスコラ
ニア少年合唱団による歌声が神聖さに輪をかけます.これはウィーン少年合唱団よ
り歴史ある少年聖歌隊とのことで,合唱が始まると千人を超える人々が教会に詰め
かけていました.あまりのすばらしさに,世界遺産に違いないと思っていたら,登
録されていないとのこと.教授は現地で知り合った女性と写真に収まりご機嫌でし
た(図 2).モンセラでは鈴木先生が迷子になってしまいました.こんな時のためにと
携帯を持参していたはずですが,ならしてもお出にならず,仕方ないので帰りのロ
ープウェイ乗り場まで行きましたがいらっしゃいません.待てども待てども姿はみ
えず,乗るはずだったロープウェイは我々を置き去りに出発していってしまいまし
た.帰りの電車に間に合うかしらとはらはらし,全館放送をかけてもらうかと考え
出した頃,汗だくの鈴木先生が走ってこられました.教授を待たせたと自責の念か
ら山の中腹まで走っていったそうです.結果的に無事に帰ることができたからよし
としました.
3) バルセロナ観光+α
半日は,江藤先生,鈴木先生,教授でバルセロナ市内観光にいかれました.バルセロナは
スペインの首都マドリードよりも観光資源に富み,観光客が最大の都市だそうです.美術
館だけでも,ピカソにダリ,ミロなど芸術音痴の私でも聞いたことがある人々を排出した
地域です.前日夕方に寄ったサクラダファミリアでの人の多さと,高所恐怖で辟易してい
たこともあり,即物的でお酒が嫌いでない私はスパークリングワイン工場へ見学と試飲に
行きました.日本で調べた情報ではバルセロナ近郊にはゴドルニウ(Codorniu),トーレス
(Torres),フレシネ(Fierxenet)の 3 社がワイナリー見学をしており,駅から近いフレシネ社
に予約しました.フレシネは日本でもみかけますが,シャンパン(厳密にはシャンパーニュ
地方ではないので,CAVA という)メーカーです.作り方はシャンパンと同じで,数種類の
葡萄を配合し,瓶内二次発酵させるようです.降りる駅を間違え夕方遅めに着いたため,
英語のコースは終了していました.仕方なくドイツからの修学旅行生と一緒にドイツ語コ
ースで回りました.工場の洞窟内発酵所?に入ると発酵ブドウのあまーいアルコール香が
皮膚から吸収されそうで,そこにいるだけでうっとりいい気分(図 3).ドイツ語で何を言っ
ているかちんぷんかんぷんだったけど,説明してくれた女性の彼氏さんが日本語勉強中と
のこともあり,色々と教えてくれました.葡萄農場と工場見学が終わると試飲です.ドイ
ツの修学旅行生達は未成年のようで,ブドウジュースを一杯ずつのんで撤収していきまし
た.私は試飲のネグロに始まり,上記女性一番のおすすめ CAVA で舌鼓をうち,日本から
持参したおつまみを頬張り,30 年以上瓶内発酵したものなど日本未発売の CAVA をたらふ
く飲んでぐでんぐでん.どうやってホテルまで帰り着いたか・・・まあ,治安の悪いスペ
インでスリや追いはぎにあうこともなく無事に帰ることができて何よりでした.因みに日
本での販売代理店はサントリーとのこと.日本のサントリービール工場見学より良かった
と褒めちぎってきました.ワイナリー見学は初めてだったので,受付で聞いてみると当日
300 人以上が見学したそうですが,日本人を含めてアジアからは私一人だった模様です.海
外ではメジャーな観光コースなのかもしれません.世界中にワイナリーツアーがあります
ので,先生方も海外に行かれた際には是非試みられてください.
4)その他
個人的に,海外学会で恒例としている散髪にも行きました.これまでは間違ってホモ専門
店で散髪してもらったり,入れ墨屋さんで切ってもらったりと苦難の連続でした.スペイ
ンでは日頃見慣れた青赤白の三層構造が床屋のマークであり,日本同様に散髪後の洗髪と
いう流れであまり面白くありませんでした.18 ユーロと日本より割安でした.海外で散髪
すると,現地人っぽい髪型となるのか,今回も散髪直後に旅行者から道を聞かれました.
スペインまで行き,いべり子豚を食べず,フラメンコと闘牛をみることができなかったの
が若干の心残りですが,街角に点在しているバルでたくさんのアルコールを摂取すること
ができました(図 4,5).
以上,学会報告記とさせていただきます.学会自体の記述より,一日観光した記載の方が
多くなってしまいました.人間の記憶とは楽しかったものを誇張して覚えるものです.当
然ですが遊んだ以上に勉強してきたつもりです.次回は服部・辻先生も演題を出してくれ
ることを祈ります(二年前にスウェーデンに行った後,次は自分で演題出すと言った事は覚
えていますよ).今回 ESTRO で学んだ多くの事々が我々の臨床に反映されますように.