tweet!アドバイザー 広島の魅力をASEANへ発信! 独立行政法人 中小企業基盤整備機構 中国本部 海外販路開拓シニアアドバイザー 和田直子 1.はじめに 今回は、中小企業の海外展開支援の一環として昨年度から取り組んでいる「インバウンド・ 海外展開促進プロジェクト」について、その活動内容や今後の展開についてご紹介したいと 思います。本プロジェクトでは、タイからHOME&FOODチャンネルのオーナーかつタレント であるリッティチャイ・サイスワン氏やジャーナリスト、企業家の方々などを広島に招聘し、タイ をはじめASEANで放映するTV番組の撮影や新聞・雑誌向けの取材、ビジネスマッチングな どを行いました。 2.インバウンド・海外展開促進プロジェクトの概要 本プロジェクトは、リッティチャイ・サイスワン氏が代表取締役を務めるタイのTV番組制作 会社 Hobby Television Network㈱とタイアップし、広島県内の中小企業を紹介すると共に、魅 力的な観光地やホテル、飲食店などにもフィーチャー(feature)したTV番組を制作。タイをは じめASEANにおいて番組放映することにより、ASEANからの観光客を誘致し、実際に広島 の食やモノの良さを実感していただくことで、中小企業の認知度向上を図り、輸出や進出の 促進に繋げていこうとするものです。撮影を通して、タイ及びASEANの方々に広島の魅力を PRし、広島の良さを理解してもらうことで、今後の中小企業の進出に関して、受け入れられ やすい環境づくりの一端を担うことを目指しています。 旬レポ中国地域 2015 年 8 月号 1 3.インバウンド・海外展開促進プロジェクトの目的 本プロジェクトは、タイをはじめとするASEANから広島への観光インバウンドを強化すること、 及び、県内中小企業のASEANへの海外展開を促進することを目的として実施しています。 海外展開支援 ブランディング 海 外 展 開 に取 組 むうえで、大 きな課 題 の一 つに「ブランド力 」があります。今 後 、タイ、ASEANに海 外 展 開 、また取 組 み強 化 しようとする中 小 企 業 のため に、メディアを活 用 した知 名 度 アップやブランド構 築 等 、現 地 で受 け入 れ易 い環 境 づくりを目 指 します。 ビジネスマッチング 海 外 展 開 においてビジネスパートナーと成 り得 る企 業 家 を招 聘 、広 島 の企 業 とのマッチングを行 い、今 後 の海 外 展 開 を円 滑 、かつ、効 果 的 な取 組 みが出 来 るような関 係 づくりを目 指 します。なお、中 小 企 業 の選 定 においては、中 小 機 構 のサポート先 はもとより、連 携 するJETRO広 島 、地 域 支 援 機 関 のサポート 先 も選 定 し、JETRO広 島 と各 々の支 援 メニューの提 供 を行 います。 観光インバウンド(観光誘致PR) 観 光 誘 致 PR 広 島 県 内 の観 光 名 所 を巡 る旅 番 組 を制 作 、衛 星 放 送 局 True visions の人 気 番 組 である「HOME&FOODチャンネル」で放 映 し、観 光 客 の誘 致 を図 りま す。観 光 誘 致 のPRに関 しては、地 域 の行 政 ・支 援 機 関 ・観 光 協 会 等 と連 携 し、 各 地 域 の観 光 ・地 域 資 源 を情 報 発 信 する面 的 な活 動 と位 置 づけ、地 域 での展 開 を図 ります。 旬レポ中国地域 2015 年 8 月号 2 なぜタイなのか アジア人 観 光 客 は、全 般 的 に日 本 食 とショッピングを目 的 として来 日 するケースが 多 いのですが、タイの観 光 客 の特 徴 としては、日 本 の四 季 を体 感 したい人 たちが他 の 国 と比 べて多 く、また日 本 の歴 史 や伝 統 文 化 体 験 などの人 気 も非 常 に高 いため、今 回 の番 組 では、神 楽 やミュージアム等 を取 り上 げました。なお、日 本 政 府 観 光 局 のデ ータによると、2014 年 に来 日 されたタイ人 渡 航 者 数 は 65 万 7,600 人 (前 年 比 45%増 ) で全 体 の 6 位 、現 在 来 日 される観 光 客 の国 別 人 数 では、ASEANの中 で最 も多 い国 となっています。その方 々に広 島 の魅 力 を発 信 していきたいと思 っています。 4.インバウンド・海外展開促進プロジェクトにおける中小機構の役割 本プロジェクトにおける中小機構の役割は、下記のとおりです。 海外展開の啓発と促進 ◇ 本企画を地域に展開し情報発信することで、これまで海外展開に障壁があると 感じていた地方の企業の啓発、発掘に取組みます。 ◇ 中小企業の海外展開を効果的、かつ、持続的に取組めるように、課題となる知名 度、ブランド力向上の環境作りに取組みます。 地域ブランド創出による地方創生 ◇ 地方のものづくりや食文化、観光等の地域・観光資源を活用した商品開発、周遊 ルート形成等の観光プログラムの開発において「ふるさと名物応援事業」を活用 した地域創生、地域ブランド創出等の取組みを支援します。 ◇ 国内外の販路開拓支援の施策を並行して実施、地方から域外への販路開拓支援 に取組みます。 行政・支援機関との横断的な連携 ◇ 海外展開支援における専門家が不足している地方において、本企画スキームが 地方の行政・支援機関の支援施策となるよう取組みます。 ◇ 個々の行政・支援機関はもとより地域間の連携も視野に入れ、横断的に地域が連 携できるよう取組みます。 旬レポ中国地域 2015 年 8 月号 3 5.インバウンド・海外展開促進プロジェクトの活動内容 本プロジェクトでは、これまでに PartⅠ・PartⅡとして、撮影を2回実施しました。 PartⅠの企画では、2014 年 11 月 18 日(火)~21 日(金)の間、「自転車によるぶらり旅」をテ ーマとして広島市・廿日市市宮島町・尾道市を舞台に番組制作を行いました。タイ及びASEA N諸国の方々に2つの世界遺産はもとより、瀬戸内の豊かな自然を活かした食文化やものづく りについて、中小企業を訪問し、様々な体験をしながら広島の素晴らしさを発信して、観光客誘 致に繋げることを狙いとしたものです。 PartⅡでは、2015 年 5 月 25 日(月)~29 日(金)の間、安芸郡府中町、山県郡北広島町、呉 市、府中市にフィーチャー(feature)し、広島のものづくり、歴史、文化、そして代々受け継がれ てきた民俗芸能を体感しながら、広島の素晴らしさを情報発信できるよう番組制作に取組みま した。 TV番組については、Hobby Television Network㈱の企画制作で実施し、リッティチャイ・サ イスワン氏がメインMCでレポートしてくださいました。TV番組以外にもタイの三大紙である Prachachart Business News の経済面編集長でもあり、自転車専門誌 Cycle World Magazine 編集長のナタピット・ウォンサンガ氏も同行出演いただき、各地で取材を行い、広島特集の記 事をシリーズで掲載いただきました。PartⅡでは、ナタピット・ウォンサンガ編集長に加えて、 Thansettakij Newspaper のパタガーン・チェンノイ編集長にも参加いただき、TV番組からだけ でなく、現地の新聞や雑誌などを通して広島の魅力を発信していきます。 リッティチャイ・サイスワン氏 Hobby Television Network㈱ 代表取締役 自ら司会・タレントを務めた番組制作も行っている。衛星テレビ放 送局True visions ※ の9つのチャンネルのオーナーであり、その 中でも一番人気のあるチャンネルが「HOME&FOOD」という、 住まいや食などを主なテーマに健康や観光、ビジネスなどに関 する情報番組。 テレビ業界のほか、飲食業界にも深く精通しており、 タイでFC展開をされている大手飲食 チェーンが多く所属するフード・フランチャイズ・インスティテュートの共同創設者兼副所長 でもあります。 ※ True visions は、タイ国内に2千2百万人以上の契約者を誇る国内で一番人気の高い衛星放送局で、トゥルコー ポレーショングループ傘下の有数企業の一つとされています。 旬レポ中国地域 2015 年 8 月号 4 タイでのTV放映について PartⅠで撮影された番組は、当初HOME&FOODチャンネルのみで放映する予定でしたが、 サイスワン氏のご尽力により地上波の9チャンネルで毎回第1回目を放映し、その後HOME &FOODチャンネルで週に数回ずつ放映することになり、今年5月から放映がスタートしまし た。 タイでのメディア報道 今回のプロジェクトにおいては、TVだけでなく、現地の新聞や 雑誌など他のメディアを通じて広島の魅力を発信しています。 6.今後の取り組み 今後も番組の放映は続く予定ですが、広島県域に限定せず、拡大して取り組んでいくこと も検討しています。また、日本旅行業協会や広島県観光連盟、各地方自治体とタイアップしな がら広島へのパッケージツアーの企画を立案し、実際にタイ現地から観光客を誘致していくこ とにも取り組んでいく予定です。 7.最後に 今回は、インバウンド・海外展開促進プロジェクトについてご紹介いたしました。このように 観光インバウンドに取り組むということは、サービス産業の輸出(外貨収入を得ること)の発展 にも繋がっていくことでもあります。広島県内の地域産品の良さを外国の方々に実感していた だき、広島を効果的にブランディングしていくことができれば、海外で展開しやすくなり、販路 の開拓も期待できます。 本プロジェクトは、海外へ商品を売り込みたい日本のものづくり企業や、日本に興味を持っ てくださっているタイ側の企業など参画されている方々、皆様にとってWin-Winなスキーム で進めていけるように企画しました。タイでの放映も開始されているので、その効果が最善の ものになるように今後もフォローアップしていきたいと思います。 旬レポ中国地域 2015 年 8 月号 5 今後インバウンドに本格的に取り組んでいくためには、各観光地や、ホテル、ショップなど、 受け入れ側の方々にも外国人に対応できる体制を整えていただいたり、最低限英語でのホ ームページ(できれば他の言語でも)などを整備していただくことが必要になってきます。 そ れと同時に、海外展開を希望されている企業の方々にも、販促資材やホームページなどを英 語で制作(できれば他の言語でも)していただいたり、海外からの来客や問合せに対応ができ る体制を整えていただかなければなりません。 今後は、できるだけ皆様の海外展開をスムーズに進めていけるように、そのような取り組 みのサポートにも力を入れていきます。そして、これから広島ブランドを世界で確立していけ るように皆様と一緒に努力していきたいと思っています。 和田 直子 プロフィール 広島県出身。米国へ高校・大学留学後、国内で通訳・翻訳業務を経験。 その後、NZ へ再留学。卒業後に現地進出企業等のサポートに1年間従事 した後、渡仏し契約コンサルタントとして、アジア・欧州・アフリカの政府関係 機関や企業の戦略立案・マーケティング業務を担当。 2003 年にグローバルマーケティング会社を設立し、国内では、経産省 JAPAN ブランド事業などで海外プロデューサーとして、日本の文化や伝統工芸品な どの海外 PR や市場調査・販路開拓支援の経歴も持つ。その他、アパレル、自動車部 品、建材、天然資源など幅広い販路開拓支援実績を有する。 経済産業省 中国経済産業局 広報誌 旬レポ中国地域 2015 年 8 月号 Copyright 2015 Chugoku Bureau of Economy , Trade and Industry. 6
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