フランスの社会保障制度の中 の家族部門 社会保障制度の中の家族部門 ➔同部門はフランス家族政策の60%を管理する。ちなみにフランスの家族政策の予 算は、家族が受けるあらゆる支援措置を考慮し、すべての分野を合わせると国内総生 産高(GDP)の4~6%に当たる。 家族手当 (その手当数は20余りに達する)は、以下の5つのカテゴリーに分かれてい る。 •乳幼児受入れ手当て(PAJE):3歳未満の子供のある家庭に2009年度で120億ユーロ 近くが支給された。この乳幼児受入れ手当ては非常に柔軟で、家族か仕事かの自由選択 と組合わされてこの政策軸の基本を構成する。 •大家族 : 家族数全体の18%だが、扶養対象の子供の40%に、そして支給される手当て全体 の43%に対応する。フランスの制度では家族の大きさにより支給額が変わる。このようにし て家族の大きさによる負担の違いを考慮する。これは今では出産奨励の政策というのではな く、むしろ貧困化防止の政策である。子供が一人の家族のおよそ三分の一が支給を受けてい るが、これはむしろ低収入家族、障害児、単親家族を対象とするものである。 •家族の住宅手当 : 支給額は低収入である点と、家族が大きくなると急速に増大する。家族手 当部門は、フランスの住宅政策全体の4分の3に当たる実質的な支給を行っている。このシス テムは再配分をめざすものだ。 •単親手当て : 単親は家族全体の 18% に対応し、家族手当の 20% を受給し、未払い扶養義 務回収援助を受ける権利がある。 •家族の貧困化対策 : 社会的な保護を目標とし、再配分を推進することによりフランスの貧困児 童の割合が 27.7%から配分後は 7.7% に達する。(出典:Unicef) 社会活動が、国家サービス及び設備により実施され、金銭的配分を補足している。フランス社 会保障制度中で最大の部門である。同部門の年間予算は現在では40億ユーロ近くに達しており、 2012年には50億ユーロに達すると見込まれる。 家族政策における、再配分の比率(金銭的支給/サービス・設備)は同部門内で92%/8%の比率で ある。 家族部門の社会活動は、その75%が幼児受入れに費やされている。 しかしながら、住宅、親機能支援、家事調停、困難に直面する家族の社会的支援、福祉センターと いった分野への努力をおろそかにしているわけではない。 このような政策実施の結果、年間保育所の1万席の創設が可能になった。 2012年には、子ども受入れ数を20万まで増やすことができる見込み。 この政策は地方分権型であり、国の優先的政策目標と活動の枠内で管理されている。 同部門の活動は、県や市町村の地方自治体との密接な協力体制を必要とする。 ➔同部門は9つあるフランスの社会最低手当ての3つを管理する。 ▪ 1975年に創設された成人障害者手当て ▪ 1976年に創設された単親手当て(API) ▪ 1988年に創設された社会参入最低限所得(RMI) 2009年6月から、上記のRMIとAPIに代わって就労連帯手当(RSA) を導入。この実質的な内容を含む改革は家族部門の管轄であり、以下 の目標を有する。 選択度(所得要件)がより強くなるのは新学期手当などである。 しかし特に、中・低所得の家族を対象とする手当てといえるのは 住宅手当である。 ➔その予算は教育予算と同等(高等教育を除く)、そして国防予 算をはるかに上回る。現在740億ユーロ以上に達している。当機関 の専門家が厳格な会計システムを必要とする膨大な額を処理して いる。 • 社会的な支出を「活性化し」就業復帰に結び付ける。 • 貧困の減少。 このような目的のために、単親家族の支援を中心に、家族部門の新たな 社会的な支援活動が必要とされる。 ➔家族部門は、家族社会学とその社会的な必要性の変化を考慮しなが ら、社会的な権利を柔軟にかつ透明な形で管理する。 ▪ 社会的権利として同棲が認められたのが1946年からだ。しかし家 族の民法が認められるのは1970を 待 た ね ば な ら な か っ た 。 ▪ 婚姻外の出生(フランスの出生の過半数)は、その他の出生とし て処理されている。 ▪ 1999年の連帯市民協約の創設後、家族部門は、両親の性的指向の いかんに関わらず子供に手当てを支給している。 ➔その背後にあるのは社会中間層を見捨てまいとする普遍主義と選 択度である。 ▪ 家族手当そのものは普遍的なもので1976年以来国民全体に支給 されている。 ▪ 高所得者層の15%の家族のみが、幼児手当ての対象外である。 受給者 ➔各種手当ての受給の権利を有する受給者の名義数は1120万。配 偶者、同棲者、同居者および子供の数を合わせると、全国の公庫 に登録されている人の総数は3020万人に達する。これはフランス 人口の半数に近い。 ➔子供を扶養する家族の数は660万家族。520万は、単親あるいは 子供のいないカップルである。 ➔受給者の場合: ▪ 41%は子供がなく、そのうち86.9%は単身。 ➔家族そのものの内訳: ▪ 47.4%の家族が子供2人 ▪ 30.3%は子供1人 ▪ 22.3%が子供3人以上 ➔97% が地方家族手当金庫のサービスに満足を表明している。 ➔家族手当の支給額は家族構成人数に応じて累進的 ▪ ネット行政処理と書類などの電子化(例えば、インターネット での学生の住宅手当申請) ▪ 受給者の選択に関してアドバイスを与える相談窓口 (cf.monenfant.fr) 1家族あたりの平均支給額 単身、子供なし 351 カップル、子供なし 369 一子家庭 (1) 355 二子家庭 (2) 440 三子家庭 731 四子以上の家庭 平均支給額 1 312 543 先端技術による家族部門の管理 ➔フランス最大規模のコンピュータシステム。中枢システム: Cristal ➔特徴: ▪ 従来の夜間バッチ処理方式でなく、データのリアルタイム処理 ▪ ▪ ▪ ▪ 受給者の状況変化(毎月に全体の3分の1)は、即座に考慮され て新たな支給明細の計算を実施 担当者の作業環境に留意。受給者との手紙・文書などを一瞥で 閲覧可能。 受給者データの一括化により、各種の権利を唯一の基盤(例え ば収入)をベースに一括して計算。 インタラクティブな情報ターミナルを設置し、家族及び家族金 庫との情報交換と処理を円滑にする。 ビデオ技術を利用した遠隔窓口対応の実験中 (1) 一子家庭の約40%が家族給付を受給。特に低所得家庭が多い。 (2)、いわゆる家族手当はこの家族構成が一般的。 ➔国との間に交わされたサービス内容の基盤: ▪書類処理時間:15日を越えない期日で処理。低所得者 の書類は10日以内に処理。 ▪受付: 待ち時間が20分を越えないこと ▪電話:90%の電話に対応。 ▪サービスと給付金を組み合わせたグローバルなサー ビスへ移行(例えば、独り女性の場合には、特定の手 当支給、家族調停サービス、またはその両方を組み合 わせるなど) ➔民間企業よりより低い管理費を達成。 家族部門は、以下を管理しています。 ▪およそ30種類の法律で制定されている手当 ▪権利に関する400の基本情報を入力 ▪17 000に及ぶ権利に関する基準。これらの管理費は受 給額の 2.6%で対応! ➔コントロールと高度なリスク管理: ▪重度のコントロール率は35% ▪不正行為のリスクをターゲット化 ▪情報処理技術による「データマイニング」(書類上の 非整合性の自動検出)を現在試験的に実施。 ▪税務当局及び失業保険運営機関へのオンライン接続 により情報の整合性を確認または直接入力 ▪600人の監査官が年間30万の現場視察を実施。 関係機関 ➔公的組織(全国家族手当金庫)が、123の地方金庫を統括。行政 機関ではおよそ400名の職員が業務に。この機関は労使、家族団体、 専門家の代表からなる評議会を有している。当評議会は政府の法案 に意見を述べ、社会面での民主制度を保持する。 ➔県とのパートナーシップの向上及び効率的な組織編制をめざし、 2011年には各県に1ヶ所の地方金庫(計102の家族手当金庫)を目標 にしている。 ➔生産性手法でサービスの質の向上、業務の効率をめざし、地方金 庫との対話の透明性を達成する。 ➔国との契約プロセスを開始: 4年ごとに、特に以下の内容に関して国との間に目標達成を目指す協 約に合意。 ▪ 社会政策の予算上昇率を決定 ▪ 地方金庫及び中央機関のCNAFの行政的手段を決定 ▪ 受給者に対する最低限のサービス基準の決定 ▪ 行政面でのパフォーマンス戦略を決定 ▪ リスク管理の保証 ▪ 会計検査院により承認された収支決算 ➔家族手当金庫の事務・会計監査、その評価と経営陣の評価。 家族部門の財源 ➔家族手当の支給: ▪ 財源の60%は、雇用者の負担金から支払われる(主に給与の5.4%) これは19世紀の家族手当の起源において雇用者負担だったためである。 ▪ 一般社会拠出金(CSG)の20%(全収入に対する税金に近い拠出金) ▪ 国家予算から20% ➔住宅手当:家族部門は全体のおよそ半分にあたる財源を提供している。 ➔社会最低手当は、国と地方自治体が負担する。 資金源 公共政策の進展と研究への配慮 家族部門は、政策の立案と進展に関する研究に早くから努力を重ねて きた。 家族部門が自ら研究するのではなく、むしろ研究を委託している。 常に探求を継続している分野は以下である。 ▪ 家族の社会的な側面の進展とその分析 ▪ 家族と子供の必要とするものの進展とその分析 ▪ 公共政策のもたらす影響の評価 ▪ 改革に対する世論の分析(75%のフランス人が、幼児受入れサ ービスに満足しているといわれる) また、改革に対する統計やシミュレーションの調査により、国は、改 革の影響とそのコストについて正確なデータを得ることができる。 国際的な協力に対して開かれた機関 結論として フランスの制度では、また法的に正確に定義するとすれば、 ➔受給者とは、手当を受ける権利を有する名義人(カップルの場合その選択は 自由だが、男女の場合は70%が女性が名義人である) ➔受領者とは手当が給付されている対象の人を意味する。 ➔子供は手当の受益者である。 このように、金銭的再配分においての基準となる必要度が考慮されているのは 家族のそれであって、民法におけるような子供が必要とするものを考慮してい るのではない。子供は法的にみて、また政策の具体的な側面から言えば、家族 手当の「原因」である (大家族では手当が増加する、また収入基準の存在)。 これがいわばフランス家族政策の独自性であるといえるだろう。これは、人口 増加に見合った、また社会的団結の投資を目指す政策であり、その投資に対す る利益が見込まれている。 家族部門は ヨーロッパと世界に向かって開かれている。 家族部門の国際協力の例を挙げると、ルーマニアのEU加盟時に同国 の家族手当支給の支払い窓口の創設、ロシアの3地域での社会最低手 当の創設を支援した。 海外の同じ分野の機関からの依頼に答え専門家を派遣する。 またCNAF(家族手当全国金庫)には絶えず海外からの見学者が絶え ない。 社会保障に関する国際団体の会員であるCNAFは15ほどの国際的な 機構に参加している。 海外で学ぶべき手法を国内の業務に積極的に取り入れるという、いわ ば「自由貿易」戦略を実践している。 Philippe Steck(フィリップ・ステック) 国際関係担当 全国家族手当金庫 32 avenue de la Sibelle 75 685 Paris cedex 14 France 電話:+33 1 45 65 54 72 Eメール:[email protected]
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