Ⅱ.『ウェルカム』のご利用は… い きん 衣 錦 図書館通信 2002年度第2号 しょう 尚 2002.5.1. けい 絅 発行:麻布学園図書館部 *「衣錦尚絅」については、図書館入り口のギャラリーに掛けられている額の解説を見てください。 この嘘、ホント!? … 情報と責任について −『立花隆「嘘八百」の研究』についてと 『ウェルカム』は《2チャンネル》か?− 伊藤照雄(理科) Ⅰ.立花隆という「映し鏡」 2001 年度の14号で、『便利な正解の無くなった時代に』と題し、立花隆の(『東大生はバカになった か』)と立花隆批判本(『立花隆先生かなりヘンですよ』)などを取り上げた。その原稿を図書館部に渡し たころ、『立花隆「嘘八百」の研究』(橋本あずさ編/別冊宝島)という本が出されたのでこれも読んでみ た。そこでは、15人の論客が様々な面から立花隆の分析・批判を展開している。政治・経済から自然科 学までいろいろなテーマが取り上げられているが、ここでは、前回の文章とこの文章の後半とのからみも あり、科学と宗教の関係についてわたし自身が目を開かれた部分を取り上げる。 それは斉藤環氏が「脳・精神医学・哲学」のテーマで書いたもので、そこにはこう書かれている。「『科 学者は最悪の哲学を選びがちである』…「科学は、その合理性ゆえに、必然的に未知の領域を伴う。… その意味で科学は常に暫定的な真理でしかない。…しかし、一部の科学者や理数系の研究者は、そう した未知に耐えられなくなる。やはり科学に『究極の知』を求めてしまうのだ。」として、その例に「ニューサ イエンス」を取り上げ(「ニューサイエンス」については、前回説明しています)、「それらは、インスタントな 宗教となり、俗流神秘主義にまで堕してしまう。」。ここまでについては、一時「ニューサイエンス」にはまっ ていた私としては、それはいえるな、というところである。『立花隆先生かなりヘンですよ』が評価されたの は、立花隆は「ニューサイエンス」だと喝破した点であるのだが、ここではさらに分析が深まっている。 それに続き、「ちなみに欧米には敬虔なクリスチャンの科学者がたくさんいるが、これは矛盾ではな い。最悪の哲学にからめ取られないための、解毒剤として必要なのだろう。」と書かれている。これには 「なるほど!、そうだったのか」と思わされた。キリスト教から自然科学が生まれた。つまり、自然の探求に は、それを創造した神の意志を知りたいという動機があったことは知っていた。しかし、進化論は教えるな というような「原理主義的」な人々は別として、宗教と科学が切り離された現代でも、宗教にそういった役 割があったとは目を開かれる思いだったのである。 この例からもわかるかと思うが、この本では、立花隆を「映し鏡」として多分野のことが論考され、立花 氏がついていけてないとされる、近年のそれぞれの流れが語られる。中には少し納得できないものもなく はないが、興味深いものが多かった。先の2冊を読んだ人はもちろん、そうでない人にもお勧めします。 立花隆を「嘘八百」というのは少しいいすぎだと思うが、以前の評価の高かった仕事のせい もあり、読者が「煙に巻かれた」という面が、自然科学がらみのものを中心にあったと思う。 しかし、それが「嘘」だとしても、責任ははっきりしているのでそれを批判すればよい。 このような場で変だと思うかもしれないが、学内向けとはいえ公的な自治組織から発行されたものであ るので、『ウェルカム』のことを取り上げさせてもらう。今年の『ウェルカム』については、教員紹介の内容 がひどすぎるということで、回収すべきだという意見さえ出された。私自身は、麻布について、堅苦しくな いように紹介しようという『ウェルカム』の姿勢は評価もしてきた。ただ、教員紹介の中には「シャレになっ てないよ」というのも確かにあったと思う。いつも目を通してきたわけではないが、今年のは特にひどかっ たとも思う。ここでは、今回私自身について書かれた部分を取り上げる。 先日、初めて教える学年で、「《2チャンネル》かどこかのインターネットの『掲示板』で、私のことを『オウ ム真理教』信者と書いてあるらしいけど…、」といったら、『ウェルカム』にも書いてありましたよというので、 さっそく見たら確かに出ていた。「天気予報士になりそこなって」というウソも書いてあった。でも、これは 前からあって、私が若かったころは、天気予報士(ほんとは「気象予報士」だよ)の制度なんて無かったと 知らないんだなと苦笑いしていた。今回初めて見た「『オウム真理教』信者、しかも下っ端」ということにつ いては、ご丁寧に「(実話)」とまでつけられている。「おまえは『週刊実話』か」、といいたくなる。不愉快で …、」という話を、「地学の位置づけ」と はあったが、私が、「『オウム真理教』信者と書いてあるらしいけど .... いうテーマのまえふりとして使ってるから、まあいいかとも思った。それは、最初だからすごく大きな枠の 中で位置づけるよとして、科学と宗教の関係ということから話すものである(「科学的宗教」を標榜するもの もあるが、この文章の前半からもわかるように、両者は直接には相容れないものである)。 しかし考えてみると、これはまずいことかもしれないと思えてきた。「自由」な麻布(ホントは「自主・自立」 の麻布)だから、実際に「オウム真理教」信者の教師がいるのかと思い、不安を感じる生徒や保護者もい るかもしれない。それで今回、「情報と責任」のテーマでこのことも書かせていただくことにしたのである。 私は、「オウム真理教」と直接関わったことはない。ただ、「天文学者はダメダメ∼オウムに行かずに …?」(『PTA会報 No.28 』 2001 年 3 月)という文章は書いたことがある。その文章では、「オウム世代」 の上の方である私自身が、オウムにたくさん入った、まさに「悩める理学部大学院生」であったということ は書いた。しかし、たとえ勧誘されても入らなかっただろうという理由は、そこにも引用した、サリン事件の 年の『図書館だより』(1995年7月)に、「オウムに行かずに読んだ本」と題して書いてある。『ウェルカム』 を保護者に見せた人は、この『衣錦尚・』も見せてください(前回のは麻布のホームページで読めます)。 ところで、インターネット上の「掲示板」とは、匿名で好きなことを書き込めるものである。そこには、明ら かな嘘も書き込まれる。笑ったのは、開成の生徒の悪さが、麻布生のこととして、まったく同じ文章で別の ところに書き込まれていたことである。もちろん、開成の生徒のことだって本当かどうかはわからない。 《2チャンネル》は、「便所の落書き」ともいわれる。違いは、いちいちそこへ行かなくても世界中から読 めてしまうことだ。「便所の落書き」を信用する人はいないと思うが、たまたま、自分が内部事情を知って いることで、正しいことが書いてあると、けっこう他のも本当かと思ってしまうかもしれない。 多くの中1生徒諸君は、最初は信じてもいろいろな教員と接するうちに嘘も混ざっているのだとわかる と思うが、保護者の方はどうであろう。誰かに、どれが伊藤という教師かを聞いて、そのひげと髪の毛を伸 ばしている姿を見てますます信じてしまうかもしれない!?。 もちろん『ウェルカム』は発行元がはっきりしているから《2チャンネル》と同じではないともいえる。しか し、教師紹介は匿名対談になっているので同じだともいえる。いずれにせよ、新入生を迎えるその中身 が、「便所の落書き」では恥ずかしいのではないだろうか。「責任」あるものにするには、実名対談にする か、それができないのなら、「責任のがれ」として、《2チャンネル》のように、「『ウェルカム』のご利用は、 利用者各位のご判断にお任せしています。」と最初に書いた方がいいのでは?…。「反論歓迎!」 とか書いても、来年の 『ウェルカム』で、「『教師紹介』にキレて、『回収しろ!』と言ったシャレの通じない 『娘バカ』のひげ親父」と書かれるのがオチかな、オレが言ったのではないんだけどね。 それから、ネットで麻布生のプライバシーを垂れ流している人へ、… 。ここで怒りを表明したりすると、 それが君には愉快なのだろうからやめておこう。でも、そうしてしまう自分って何なのかは見つめてね。 文化祭前後の図書館(記念館)の開館についてのお知らせ 今年は例年と違って、5月1日(水)の午後と5月2日(水)を下記の通り開館することにして みましたので、利用してください。 ・5月1日(水) *11:30に一旦、閉館します。 *15:00から17:00まで、再び開館します。 ・5月2日(木) *9:00から17:00まで開館します。 *コンピュータスペースは10:00から利用できます。 ・5月3日(金)から5月8日(水)まで *閉館となります。 ・5月9日(木)から平常通り開館します。 ・ゲームとしての社会戦略/松原望 ・宇宙考古学/坂田俊文 ・DNA 考古学のすすめ/佐藤洋一郎 ・筑摩プリマーブックス/ソクラテスの最後の晩餐 古代ギリシャ細見/塚田孝雄/ 081-Ch-149 ・岩波ブックレット/ 081-I ・小学校でなぜ英語?/大津由紀雄 ・アメリカはなぜ狙われたのか/西谷修 ・暮らしから考える政治/姜尚中 ・学童保育/下浦忠治 ・在日コリアン権利宣言/田中宏 ・岩波ジュニア新書/ 081-I ・自分をつたえる/荒田洋治 ・音楽でバリアを打ち壊せ/菊地昭典 ・ルネサンス/澤井繁男 ・宇宙物理への道/佐藤文隆 ・清水書院 Century books /シャンカラ/島岩/ 108-Hi-179 ・公共哲学 7 中間集団が開く公共性/佐々木毅/東京大学出版会/ 108-Ko-06、07 6 経済から見た公私問題 ・福澤諭吉書簡集 ・カント全集 第 7 巻/福澤諭吉/岩波書店/ 121.6-Fu-07 11 人倫の形而上学、13 批判期論集/坂部恵/岩波書店/ 134-K-11、13 ・ミシェル・フーコー思考集成 10 倫理 ・メルロ=ポンティ・コレクション 道徳 啓蒙/ Michel Foucault /筑摩書房/ 135.5-F-10 4 / Maurice Merleau-Ponty /みすず書房/ 135.5-M-04 ・<育てられる者>から<育てる者>へ/鯨岡峻/日本放送出版協会/ 143-Ku ・世界がどんなになろうとも役立つ心のキーワード/香山リカ/晶文社/ 146-Ka ・日本ばちかん巡り/山口文憲/新潮社/ 162.1-Ya 督促状を受け取った者へのお願いと警告 年度越えの未返却資料をまだ返却していない者は、至急資料を返却してください。 5月11日までに返却されない場合は、貸し出し停止の措置がとられます。 ・「日本」をめぐって 網野善彦対談集/網野善彦/講談社/ 210-A ・日本の歴史 16 天下泰平、17 成熟する江戸/横田冬彦/講談社/ 210-Ni-16 ・再現日本史 43 戦国①∼ 51 戦国⑨/講談社/ 210-Sa-043 ∼ 051 ・稲・金属・戦争 古代を考える/佐原真/吉川弘文館/ 210.2-Sa ・縄文人になる! 縄文式生活技術教本/関根秀樹/山と渓谷社/ 210.2-Se ・隼人の古代史/中村明蔵/平凡社新書/ 210.3-Na 新着資料紹介 ・百姓一揆とその作法/保坂智/吉川弘文館 先週に引き続き「衣錦尚・」が発行できましたので、先週紹介できなかった資料の中から 200 番台までの資料を紹介します。残りの資料については、先週の予告通り、文化祭明けに 一覧のかたちで紹介します。(いつものように、職員室出入り口と中 2-2 横掲示板の図書館 コーナーのところに吊しておきます。) ・七三一 歴史文化ライブラリー/ 210.5-Ho 追撃・そのとき幹部達は…/吉永春子/筑摩書房/ 210.7-Yo ・東洋文庫/ 220.08-To ・ヤージュニャヴァルキヤ法典/井狩弥介 ・老乞大 ・鏡の国の孫悟空 ・日本談義集/周 西遊補/荒井 健 朝鮮中世の中国語会話読本/金文京 作人 ・朝鮮戦争全史/和田春樹/岩波書店/ 221-Wa ・なぜ書きつづけてきたか・なぜ沈黙してきたか 済州島四・三事件の記憶と文学/金石範/平凡社/ 221.9-Ki ・C 言語 ・中国史研究入門(増補改訂版) 上巻/山根幸夫/山川出版社/ 222-Ya-01 はじめての C プログラミング/倉薫/翔泳社/ 007-Ku ・まちの図書館でしらべる/『まちの図書館でしらべる』編集委員会/柏書房/ 010-Ma ・アソシエ 9 号 資本主義に組み込まれる生と死/『季刊アソシエ』編集委員会/御茶の水書房/ 061-A-09 ・イスラム世界論 トリックスターとしての神/加藤博/東京大学出版会/ 228-Ka ・ヨーロッパ史の時間と空間/ Oscar Halecki /慶應義塾大学出版会/ 230-H ・地方紙の研究/鎌田慧/潮出版社/ 070.2-Ka ・古代ギリシアの旅 ・平凡社ライブラリー/ 080-He ・フランス生まれ ・宇野千代聞書集/宇野千代 ・霧のなかのゴリラ/ Dain Fossey ・映画の中の東京/佐藤忠男 ・改定新版 ・日常を愛する/松田道雄 思想史のなかの科学/伊藤俊太郎 ・岩波セミナーブックス/ 080-I ・中世芸能を読む/松岡心平 ・自己決定権とジェンダー/江原由美子 ・露伴随筆『潮待ち草』を読む/池内輝雄 ・いま、子供たちが変だ/川合正 ・(週刊朝日百科)世界100都市/ 290-A ・008 イスタンブール ・015 コート・ダジュール ・016 上海 ・017 ボルドーとナント ・018 広州と華南 ・019 リヨンとディジョン ・020 香港 ・021 アルザスとシャンパーニュ ・022 西安 ・023 ノルマンディーとブルターニュ ・街道の日本史 ・丸善ライブラリー/ 080-M ・文化と歴史で学ぶフランス語/小倉博史 創造の源をたずねて/高野義郎/岩浪新書/ 231-Ta 美食、発明からエレガンスまで/早川雅水/集英社新書/ 235-Ha ・西域 27 越中・能登と北陸街道/不快甚三/吉川弘文館/ 291-Ka-27 探検の世紀/金子民雄/岩波新書/ 292-Ka ・ニューヨーク/亀井俊介/岩波新書/ 295-Ka
© Copyright 2024 Paperzz