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突然の腹痛・下痢・嘔吐で 救急受診した30歳代女性 の一例

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突然の腹痛・下痢・嘔吐で
救急受診した30歳代女性
の一例
初期研修医2年 N.S
指導医 M.K.
【症例】30代 女性
【主訴】突然の腹痛,下痢,嘔吐
【現病歴】X-3年に全身性エリテマトーデス(SLE)と診断
され,プレドニゾロン8mg/日内服していたが,X年○-7月
からds-DNA抗体上昇,補体価低下を認めていたため
アザチオプリン100mg内服追加されていた.
X年○月☓日深夜に突然の腹痛,下痢,嘔吐が出現し当院救
急部受診した.
【既往歴】SLE,小児喘息
【家族歴】膠原病の家族歴なし
【内服薬】プレドニゾロン8mg、アザチオプリン100mg
【アレルギー歴】なし
入院時身体所見
身長 166cm, 体重 57 kg, BMI 20.7 kg/m2
意識清明,体温 36.4 ℃, 脈拍 80回/分 整
血圧 93/63 mmHg.
頭頸部:眼瞼結膜貧血なし,眼球結膜黄染なし
頸部リンパ節触知せず
胸部:心雑音なし,呼吸音清
腹部:平坦,軟,左側腹部に圧痛あり,グル音低下
下肢:両側下腿浮腫なし
入院時血液検査所見
血算
WBC 10300/μl
RBC 520万 /μl
Hb 17.7 g/dl
Ht 51.4 %
Plt 32.4万 /μl
生化学
AST 37 IU/l
ALT 13 IU/l
LDH 350 IU/l
ALP 104 IU/l
γ-GTP 38 IU/l
T-Bil 0.9 mg/dl
TP 7.6g/dl
Alb 3.5 g/dl
CK 46 IU/l
UN 14 mg/dl
Cr 0.9 mg/dl
UA 8.0 mg/dl
Na 141 mEq/l
K 4.2 mEq/l
Cl 104 mEq/l
Ca 7.2 mg/dl
Fe 96 μg/dl
TIBC 240 μg/dl
Ferritin 113 ng/dl
CRP 2.23 mg/dl
免疫血清
C3 48 mg/dl
C4 3 mEq/l
CH50 13.4 U/ml
C1q 9.7 μg/dl
IgG 1889 mg/dl
IgA 272 mg/dl
IgM 156mg/dl
抗SS-A抗体 500U/ml
抗セントロメア抗体 168
C-ANCA <10E・U
P-ANCA <10E・U
ds‐DNA抗体 79 U/ml
抗Sm抗体 不明
腹部単純CT
画像所見のまとめ
•  小腸の高度の粘膜下浮腫、腸液の貯留
•  小腸腸管周囲の脂肪織混濁と腸間膜の浮腫性変化
•  大腸にも一部で軽度の壁肥厚
•  リンパ節の腫大
•  腹水の貯留
入院後経過
画像診断と抗ds-DNA抗体の上昇などから
ループス腸炎と診断した。
入院後は、絶飲食とPSL60mg/日で開始し
徐々に漸減し第48病日にPSL35mgで退院と
なり、以後外来にて経過観察している。
全身性エリテマトーデス(SLE)とは
•  若い女性に好発.
•  再発・寛解を繰り返す全身性の炎症性疾患.
•  原因は遺伝的背景や環境因子が複合.
•  臨床像は多彩で,多種類の自己抗体が検出される.
•  抗リン脂質抗体症候群と合併することがある.
•  全身症状、皮膚症状、筋骨格系症状、腎症状、漿膜炎、中枢神経
症状、心肺症状、血液異常などがある。
自己免疫疾患の診断基準と治療指針より
診断基準
Derivation and validation of the systemic lupus international collaborating clinics classification criteria for systemic lupus
erythematosus. Petri M et al.Arthritis Rheum 64(8):2677-2686, 2012
SLEと消化管病変①
・SLEの消化器症状は、初発症状のひとつとして、10%に観察され、
経過中25-40%の症例に出現する。
(Hiroki TAKAHASHI et al. J. Clin Immunol 27.p.145-155,2004)
・飯田らはSLEに伴う消化器病変を以下の5型に分類した。
① 虚血性腸炎型
② 蛋白漏出性胃腸症型
③大腸多発潰瘍型
④慢性偽性腸閉塞症
⑤合併疾患(胆管嚢腫様気腫症・潰瘍性大腸炎・Crohn病)
(飯田三雄, ほか:胃と腸 26 :1235-1246,1991)
・ループス腸炎の明確な診断基準はないため、既往歴、臨床症状、
画像、さらにはステロイドによる診断的治療を行い最終的に診断す
る。
SLEと消化器病変②
・虚血性腸炎型:腹痛、嘔吐、下痢などの急性腹症様症状で発症し、
画像上全小腸、時に腹水の存在を認め、ステロイド投与により速やかに
改善する。虚血性腸炎型と表現されているが、粘膜下浮腫が主体であり
病態としては粘膜下層から漿膜下組織における血管炎と考えられる。
ループス膀胱炎との合併が多い。
(Hiroki TAKAHASHI et al. J. Clin Immunol 27.p.145-155,2004
・蛋白漏出性胃腸症型:比較的緩徐に発症し、ステロイド治療に反応する。
病理学的には絨毛萎縮、血管炎を伴わない細胞浸潤や粘膜浮腫。
(吉川 敏一, ほか:日消誌 98 :385-389,2001)
・大腸多発潰瘍型:多発潰瘍型では円形の境界明瞭な打ち抜き様の潰瘍
が多発し、直腸∼S 状結腸に多く、男性に比較的多いとの報告がある。
病理ではSLEに伴う血流障害による血管炎/血栓形成といわれている。
ステロイドの有効性は一定せず、穿孔に至り、手術になることもある。
(Hiroki TAKAHASHI et al. J. Clin Immunol 27.p.145-155,2004)
ループス腸炎(虚血性腸炎型)の特徴
髙橋裕樹ほかJpn.J.Clin.Immunol.,27(3)145-155(2004)
(Takamasa MurosakiI Inter Med 51: 1451, 2012)より
腸管拡張,腸管壁の肥厚,target sign,腸間膜血管の充血,腹水,リンパ節腫大などを認める
その他特徴としては腸液の貯留が目立つことや、造影CTで漿膜の濃染(必ずしも漿膜の肥厚
ではない)が目立つことである。
長浜 孝ほか:全身性エリテマトーデス(SLE).小腸疾患の臨床,医学書院,2004, p268‐274
画像的からの鑑別(腸炎と腹水)
アニサキス腸炎
限局した範囲での強い浮腫。重篤な小腸狭窄を起こす。
好酸球性腸炎
全層の浮腫所見。2/3は高好酸球血症を認める。
Henoch-Schonlein紫斑病
十二指腸∼小腸優位。単純CTで粘膜高吸収。通常は小児。
偽膜性腸炎
直腸や結腸優位。
O-157腸炎
右側結腸優位。
画像診断 Vol.34 No.10 2014より
アニサキス腸炎
好酸球性腸炎2
Henoch-Schonlein紫斑病
偽膜性腸炎1
1.L A Binkovitz他 American Journal of Roentgenology. 1999;172: 517-521.
より
2.Masashi Ohe 他Korean J. Intern. Med 2012; 27(4): 451-454より
結語
•  急性腹症で発症したループス腸炎の症例を経験し
た。
•  SLEに伴う消化器病変の頻度は多く、急性腹症の
鑑別の1つとして念頭に入れておく必要がある。
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