ビジネスゲームによる企業内集団意思決定効率化の実証実験 2007年1月

ビジネスゲームによる企業内集団意思決定効率化の実証実験
岩井千明(青山学院大学)
要約
ビジネスゲームは大学を中心とした経営学教育分野では多くの研究・実践が行われ成果をあげて来た.一方,企
業内の問題解決指向のビジネスゲームの実証実験研究は教育分野に比較すると十分とは言えない.本論の目的はビ
ジネスゲームが企業内の集団意思決定問題解決に有効であることを実験的アプローチにより検証することである.
今回の実証実験では日本国内のメーカーが次世代の DVD を開発し市場に投入するというシナリオのゲームを実施
し,企業内のマーケティング部門と開発部門の意思決定の効率化が図れるかを試みる.先行研究の多くはゲーミン
グ・シミュレーションの事後的な効果として,集団意思決定への効果を指摘している.本論の意義はシナリオや被
験者も現実の企業を考慮した環境で集団意思決定問題解決の検証を目的として実証実験を行い,分析していること
である.
キーワード ビジネスゲーム,新製品市場投入,相互理解,集団意思決定,問題解決
1. はじめに
本論の目的はビジネスゲームが企業内の集団意思決定問
題解決に有効であることを実験的アプローチにより検証す
ることである.
出口(1998)によれば組織の問題解決のアプローチのなか
にゲーミングは,現状では大きな位置を占めていない.経
営システム論の領域では,ビジネスゲームのような知識の
取得や学習のためのシステムとして認識されており,それ
を超えたソフトな問題解決のアプローチの主要な道具立て
であると認識されておらず,企業の問題解決の技法として
発展していくためには実践的な技法となるような方法論的
な展開が必要だとしている.
黒沢(1990),市川(1993),村山(1993),村原(1999)によれば
ビジネスゲームを用いた教育は大学を中心に経営学教育の
手法として多くの試みが国内外で行われている.一方企業
内の問題解決手法としてのゲーミング・シミュレーション
に関する先行事例はまだ限られている.また,Shirai et
al.(2003)によればビジネス・ゲーミングの開発環境整備に
より,以前より容易に企業内でも独自のケースを用いたゲ
ーミング・シミュレーションを行うことが可能となった.
ゲーミング・シミュレーションが参加者のコミュニケー
1
ションを促進し,集団意思決定にも一定の有効性を持つこ
とは先行研究によっても示されている.しかし,多くの先
行研究はゲーミング・シミュレーションの事後的な効果と
して,集団意思決定への効果を指摘している.本論の意義
はシナリオや被験者も現実の企業を考慮した環境で集団意
思決定問題解決を目的として実験を行い,意思決定理論に
基づいた分析・評価していることである.
本論ではゲーミング・シミュレーションにより企業内の
マーケティング部門と開発部門の意思決定意思決定の効率
化が図れるかを試みる.実証実験は MBABEST21 というフ
レームゲームにより日本国内のメーカー6社が次世代DVD
レコーダーを市場に投入するというシナリオで,実務経験
のある被験者を用いて実施した.
2. 先行研究
本章では問題解決型ビジネスゲーム実験の先行事例の文
献レビューを行い本論との関連性を明らかにする.
2.1 問題解決型ビジネスゲームと組織の意思決定
兼田(2005)はゲーミング・シミュレーションを社会デザ
インに導入する目的として以下の三つの範疇を挙げている.
被験者の世界観に影響を与えることが可能であるという仮
説を設定した.村山他(1992)はゲーミングの対象に組織設
計という学習モデルを想定するとすればそこには組織を設
計するデザイナーのものの見方や感性などが混在し,不確
実性や複雑性が増大するが臆することなくそうした問題を
取り込むべきとしている.
白井(1994)は複数プレイヤーが参加するゲーミング・シ
ミュレーション実験の問題解決効果として議論の集約やコ
ンセンサスの形成が容易となる点を挙げている.白井はフ
ァシリティ・マネジメントをテーマにした FM ゲームを実
業務への導入実験により業務の現状分析・問題点発見・改
善案策定に有効性を確認しており,ゲーミング・シミュレ
ーションによる集団意思決定問題解決アプローチと評価で
きる.
佐藤・村山(1994)のまちづくり体験ゲームはビジネスゲ
ームとは異なる指向だが,現実にまちづくり関わる人々を
参加させて相互理解を促進させようとしているという実験
を試みている.本論も当事者参加型ゲームをテーマにして
おり,ゲームを一種のコミュニケーションの場として位置
づけている.
また,ゲーミング・シミュレーションが企業内のどのよ
うな意思決定問題に向いているかという点に関しては,白
井(1996)は金属家具製造販売業の企業を対象に参加型シミ
ュレーション手法の実験を通じて企業の内部プロセスの改
善とミドルマネジメントが扱うオペレーションレベルの意
思決定にも適しているとしている.一方,下平・寺野(2004)
では「社長のジレンマ」モデルというビジネスゲームによ
り経営トップの意思決定モデルによる実験で一定の経験学
習効果を被験者に与えることが出来ることしている.本論
の実証実験では企業内のミドルマネジメントレベルの意思
決定を想定している.
ゲーミング・シミュレーションを用いて集団意思決定理
論の検証を行った実験として,長瀬(1999)は組織と個人の
意思決定が競争環境下で差があるかどうかを明らかにする
ために大学生を対象に比較的な単純なビジネスゲームを 4
人合議群,2 人合議群,個人群で実施し合議による決定と
個人による決定の比較を行っているが,被験者には実験者
によって操作されたデータが示され環境が良環境から悪環
境にあるいは悪環境から良環境に変化した場合の次の意思
決定を観察している.長瀬の事例は集団意思決定とゲーミ
ング・シミュレーションを関連づけた数少ない事例ではあ
るが,被験者が学部学生でダミーデータにより反応を観察
していることから,問題解決指向というよりも科学理論指
向の実験的アプローチである.
Ruohomäki(2003)はワークフローゲーム(WFG)という組
織デザインゲームを用いてヘルシンキ大学の財務部門の請
求書発行業務など 3 つの実証実験を行い,WFG による議
論を通じて参加者がビジョンと将来の組織の変更を共有す
ることが出来るようになったとしている.この実証実験は
① 問題解決指向
対象となる問題状況の構成,問題状況への
適用を指向するもの
② 科学理論指向
理論モデルの生成あるいは仮説モデルの科
学的検証を指向するもの
③ 学習機会指向
参加者の知識やスキルの獲得,共有体験と
いった学習機会の提供を指向するもの
従来ビジネス分野のゲーミング・シミュレーション導入
目的としては教育分野での学習機会指向を目的とするもの
が多かったが,本論の目的は会社組織内の問題解決指向ゲ
ームの評価である.
また新井(1998)は図 1 の通り仮想性と曖昧さという二軸
でゲーミングの志向性を分類している.本論で用いたゲー
ムのデザインはこの中の現実的かつゆるやかな形式の「政
策ゲーム」に分類される.その特徴は,個人的な教育や訓
練が目的ではなく,組織や集団あるいは社会が抱える問題
の解決のためのゲーミングであり,組織や集団を構成する
主体の学習にもとづく問題解決が基本となるとしている.
新井(1998)は政策ゲームによってシステムの目的や意思決
定責任者が明確な企業の経営政策のために有効性が発揮で
きるとしている.
本論も従来の教育の為のゲームではなく,
異なる部門の担当者間の相互理解が促進し新たなシナジー
が生まれる結果として,新製品の市場成功確率を高めるよ
うな集団意思決定の効率化の検証を目的としている.
仮想的
学習ゲーム
教育ゲーム
ゆるやかな形式
政策ゲーム
厳密なルール
訓練ゲーム
現実的
図 1「仮想性」
「曖昧さ」によるゲーミングの分類(新井)
会社組織内の集団意思決定問題をテーマにしたゲーム
開発事例として村山・越出・岡田(1992)の組織意思決定ゲ
ームがある.ここでは工具販売会社のマーケティング組織
設計にあたり,ゲーミング・シミュレーションを実施した
ことにより参加者の暗黙知の共有,明白化が図れたとして
いる.
今回の実験ではこの暗黙知の共有を更に発展させて,
2
スを上回ることができれば,集団意思決定に一定の効果が
あったと評価することができる.
上田(1996)は意思決定者による問題認知の相違はその意
思決定者が内在的に持つ世界観によるとしている.ここで
世界観とは,
当該人間が意識するとしないとにかかわらず,
その情報処理や判断に際して拠り所となる,人間に内在す
る一種の準拠枠のことである.意思決定者が変則性ないし
異質性を認知した場合の危機意識は,その意識を解消する
ための何らかの努力を行うための切っ掛けとしての役割を
果たし,この努力を探索行動と呼んでいる.探索行動は具
体的には追加情報の収集や,既存情報の別解釈の試みをい
う.
上田(1996)によれば集団意思決定のプロセスとして 2 つ
のプロセスがある.まず集団メンバー間の異なる世界観が
ぶつかり合う発散的プロセス(divergent process)により
メンバー間のコンフリクトが高まり高い危機意識を抱く.
次にコンフリクトや危機意識解消のため,個々のメンバー
が自己の世界観を変革させる収斂的プロセス(convergent
process)である.
このようなプロセスを行うためには情報を伝達する
「場」
と「言語」の重要性を指摘して,問題状況の多義性が高い
場合には短時間に状況に対する理解を促進させるようなリ
ッチな情報とそのメディア
(場)
の必要性を指摘している.
ここでリッチネスとは多義的な状況に対する理解度をある
時間内に変える情報能力であり,その時間が短いほどリッ
チネスが高いとされる.上田(1997)は音声やボディーラン
ゲージなどより曖昧性の高い言語を利用して即時的なフィ
ードバックを行うことによりメディアリッチネスを高める
ことが出来るとしている.そして,
「複数の対立的な解釈が
存在」する多義的な状況,すなわち複数の異なる世界観が
並立する状況での集団意思決定の場ではよりリッチなメデ
ィアが適合的であるとしている.また,Tsuchiya(1996)に
よればコンピューターを利用したゲーミング・シミュレー
ションは曖昧なビジネスの場の暗黙知を形式化して組織共
有するために有効なコミュニケーション支援の場を提供す
る.即ち、ゲーミング・シミュレーションが企業内の集団
意思決定の効率化を促進するようなメディアリッチな場と
なり得るとしている.
上田(1996)は集団メンバーの世界観変革の条件として以
下の 4 つ条件を挙げている.第 1 に集団メンバーの世界観
が相互に十分に異質なこと.第 2 に集団メンバーが自分の
世界観に基づいてそれとは異なる世界観を持つ他者とコミ
ュニケーションを図ろうとすること.第 3 に危機意識を積
極的に解消するための探索行動を行う動機付けをメンバー
が持つこと.
そして第 4 に集団メンバーがお互いを信頼し,
全員が望ましい関係を保持することが不可欠であるとの認
識を持つこと.このように意思決定集団の凝集性について
上田(1997)は低すぎても高すぎても問題であり,中庸的な
レベルにあるのが望ましいとしている.
組織内に問題解決型指向ゲームを導入した貴重な事例であ
り,ワークフローという組織内部の仕事の進め方の問題解
決を目指している.一方,本論では競合企業がいる市場環
境での問題解決指向のゲームシナリオを用いた実証実験を
行った.
以上の先行研究により,企業内意思決定問題とゲーミン
グ・シミュレーションとの有効性は一定の成果を得ている
と評価できる.但し,多くの事例はゲームを実施した結果
として集団意思決定の有効性に言及しており,当初からリ
サーチデザインとしてゲーミング・シミュレーションと集
団意思決定モデルとの関連を実験仮説として論じられてい
るものは多くはない.
本論の意義はシナリオや被験者も現実の企業を考慮し
た実験環境下で集団意思決定問題解決の検証を目的とし
て実証実験を行い,分析していることである.
2.2
企業内集団意思決定
本節では上田(1996, 1997, 2003)が提示した集団意思決
定理論枠組みを用いながら実証実験との関連を述べる.上
田(2003)によれば集団意思決定の利点と欠点は以下の通り
である.
利点
① より多くの情報や知識を利用することがで
きる.
② 多様な観点から問題や代替案を認識評価す
ることができる.
③ 決定案に対する受容性が増す.
④ 民主主義のルールに則った決定として正当
性を高める.
欠点
① 時間とコストがかかる.
② 責任が曖昧になる.
③ 同調や集団分極化の影響で必ずしも良好な
決定案が採択されない.
そして上田(1997)は以下の式により意思決定集団の能力
を定義づけている.
実際の意思決定集団の能力 = 構成員の集合能力
+ 相互作用ゲイン - 相互作用ロス
ここで集団内の相互作用は意思決定にとってプラスにな
る場合もマイナスになる場合もあるとして,プラス部分を
相互作用ゲイン,マイナス部分を相互作用ロスと定義して
いる.
この式に今回の実験を当てはめるとゲーミング・シミュ
レーションに参加した集団の相互作用ゲインが相互作用ロ
3
2.3 新製品開発と集団意思決定実験
本論の実証実験では国内メーカー6 社が次世代 DVD レ
コーダーという新製品を開発するというシナリオを用いた.
川上(2005)によれば新製品の市場成功の確率を高める問
題については多くの先行研究がありその成功要因の分析や
類型化も多岐に渡るが,本節では新製品開発と集団意思決
定に関連する実証研究を示す.
新製品開発を企業内集団意思決定と結びつけた実証実
験 と し て Souder(1977) に よ る 「 名 目 的 - 相 互 作 用
(nominal-interacting)集団意思決定プロセス」がある.こ
れは開発とマーケティングを統合するためのマネジメント
手法として研究され,意見や決定事項を共有する名目的プ
ロセスと,対立や議論を行う相互作用プロセスを交互に行
う会議のやり方である.彼は実験によってその有効性を証
明している.名目的-相互作用集団意思決定プロセス実験は,
はじめに,
マーケティングと開発がそれぞれ問題や解決策,
代替案などをリストアップした文書を作成する.両者の共
同会議はその文書に挙げられた名目的な情報の共有から始
まり,休憩をはさんだ後に,議論を中心とする相互作用会
議が開かれる.会議の際には,ののしるようなコメントを
禁じるルールを徹底するなど,両者が協調的に話し合える
場が作られる.このように,性質の異なる 2 つの会議を続
けて行うことにより,名目的な会議によって生じやすい見
せかけだけのコンセンサスや,相互作用的な会議によって
生じやすい個人的・感情的な対立といった状況の発生を避
け,両者の統合を効果的に達成できるという.
更にSouder (1988)は産業財・消費財の10 産業53 社289
プロジェクトのデータを分析し,全体の約 6 割のプロジェ
クトで,マーケティングと R&D が軽度または重度の非調
和状態にあることが示している.ここでは調和状態のプロ
ジェクトは 9 割近くが成功し,重度の非調和状態のプロジ
ェクトは約 7 割が失敗することが明らかになっている.
図 2 に理論枠組みと仮説との関連を示す.まず,インプ
ットとしてビジネスゲームによるゲーミング・シミュレー
ションという場で異なる世界観を持つ異部門のメンバーを
競争環境で危機意識の動機付けを行う.ゲーム実施中に競
争結果を即時にフィードバックすることによりメンバー間
の相互作用として意思決定の発散と収束のプロセスが発生
する.
その結果,
仮説 1 はメンバー間の相互理解が促進し,
短時間でメンバー間の信頼が向上するとした.仮説 2 は仮
説 1 を所与として集団意思決定の相互作用ゲインが増加
(相互作用ロスが減少)し,集団意思決定の効率化が図れ
るというものである.
インプット
・異部門メンバー
プロセス
仮説1
・即時的な結果の
フィードバック
・メンバー間の相
互理解の促進
・ メンバーによる
発散的プロセス
・短時間でのメン
バー間の信頼向
上
・競争的環境
・メディアリッチな
場
・コンフリクト・危機
意識解消への
収束的プロセス
仮説2
・相互作用ゲイン
の増加
ゲーミング・シミュレーション
・相互作用ロスの
減少
・集団意思決定の
効率化
図 2 ビジネスゲーム実証実験と仮説の関連
3. 仮説の提示
本論の問題意識はゲーミング・シミュレーションを集団
意思決定の場に導入することにより,集団意思決定の悪影
響を排除し,効果的な相互作用を起こすことが可能である
ということである.以下の 2 つの仮説を設定した.
仮説 1
「ゲーミング・シミュレーションという場を通じて異部門
間のコミュニケーションが促進し短時間でメンバー間の信
頼を深めることができる.
」
4. 実証実験
本章では,実験のデザイン,手順およびデータ取得方法
について述べる.
4.1 実験デザイン
① ビジネスゲーム仕様
実証実験に用いたビジネスゲーム”MBABEST21”(表 1)
は柔軟に現実のビジネスケースを用いて任意のゲームを開
発することが出来るフレームゲームである(岩井 2006)
.
仮説 2
「仮説 1 を所与としてゲーミング・シミュレーションによ
ってメンバーの効果的な相互作用により集団意思決定の効
率化が図れる.
」
4
高い商品の市場投入という環境は単独の意思決定者ではリ
スクが多く,複数の部門が集団で意思決定を行わなければ
ならない.マーケティング担当者と開発担当者はそれぞれ
異なる世界観を有しているが,その両者が協同で意思決定
をしないと競合他社に勝てないという危機意識を持たせる
ことができる.この意思決定の過程で,両者は相手の世界
観と自分の世界観の相違を認識し,その問題を解決しよう
とする.
2.2 節で述べた集団意思決定過程で有効な相互作用を起
こす条件と実証実験の関連は以下の通りである.
表 1 MBABEST21 仕様
ゲームタイプ
商品
市場
会社数
ゲーム進行
入力項目
出力項目
外生変数
競争型(アンドリンガーモデル)
ノンプログラミングフレームゲ
ーム
次世代DVD
日本市場(通貨はドル)
6社
4 半期×4 回(1 年間)
価格,国内生産量,設備投資,研
究開発費,マーケティング費
損益計算書,貸借対照表,キャッ
シュフロー計算書,ランキングレ
ポート
1.
金利,税率,市場成長曲線
メンバーの異質性
マーケティング部門と開発部門という異なる世界
観を持つメンバーによる集団意思決定
2.
他者とコミュニケーションをもつこと
ゲーミング・シミュレーションというコミュニケー
ションの場における集団意思決定
3. 危機意識解消の動機付け
競合企業との競争環境と四半期ごとにその状況を
逐次レポートされる環境下での集団意思決定
4. メンバー間の信頼性
上記1から 3 の条件下で実験中にデータを取得し,
メンバー間の信頼性を評価する
② ゲームシナリオ
仮説を検証するため実験環境は問題解決型ゲーミング・
シミュレーションという場を通じて同一企業内で開発部門
とマーケティング部門という異なる部門の担当者が意思決
定のつど毎四半期に報告される財務諸表とランキングレポ
ートにより競合他社との競争環境で協働するという場を設
定した.
シナリオの設定は現実の企業内の集団意思決定をシミュ
レートするために,実験時点で想定される日本市場におけ
る次世代 DVD の市場環境のビジネスケースの調査を行っ
たうえで,初期のプロダクトライフサイクルを想定した市
場成長曲線,実態に即した金利や税率を用いた.社名につ
いても開発競争に参加が予想される 6 社の電機メーカー
(東芝,ソニー,松下,シャープ,三菱,パイオニア)の
実名を用いた.各社 1 名ずつマーケティング部門と開発部
門担当者を割り当てた.ゲーム進行は四半期単位で経営意
思決定(製品価格,生産個数,研究開発費およびマーケテ
ィング費用の投資といった変数の決定)を行い,その都度
財務諸表と全社の経営指標ランキングの結果を考察して次
期の意思決定を行うことを 4 回繰り返して 1 年間の経営を
行う.ゲームの目的変数としては 1 年間(4 四半期)終了時
の累積純利益の最大化とした.
集団意思決定の理論モデルをより限定的にゲーミング・
シミュレーションに当てはめる上で長瀬(1999)は企業の
集団意思決定問題に関するゲーミング・シミュレーション
の利用が適切な条件として「競争状態における」
「リスクを
含む問題について」
「環境からのフィードバックをはさみな
がら」合議(ないし個人の)意思決定を行う状況をシミュ
レートし,組織の慣性の実証分析を行う場合であるとして
いる.今回の実験は日本の DVD メーカー6 社が同一の市
場で競争しながら純利益 1 位を目指すという設定であり,
その結果は四半期ごとに逐次報告されるシナリオとなって
おり,長瀬の条件を満足している.
今回の実験シナリオでは次世代 DVD という不確実性の
③ 被験者
被験者もシナリオ同様ゲームになるべく現実感を与える
ため文系理系の被験者(理系でメーカー開発部門に勤務す
る社会人6名,
文系で企業勤務経験のあるMBA学生6名,
計 12 名)をそれぞれ 1 名ずつ組み合わせて行った.被験
者はそれぞれ実務経験を持っており,かつ開発担当者は全
員理系(大学院修士以上の学歴を持つ)で開発に関わる業
務を担当している.一方,マーケティング担当は全員会社
勤務経験のある大学院 MBA 課程の学生であり,類似のゲ
ームを入学時に経験している.両グループのメンバーは互
いに面識はなく,チームの組み合わせも無作為に行った.
4.2 実験手順
実験は全員が一つの教室で実施し,チーム毎に入力用
のパソコン 1 台と机を用意した.
ゲーム開始前にファシリテーター(筆者)が 30 分程
度ゲームに関する説明を行った.配布資料は以下の二種
類である.
当日配布資料
①
実験計画書
 実験の目的,
 被験者の役割分担
 当日スケジュール
 質問状の記入要領
5
②
①
②
③
④
⑤
⑥
簡易版ゲームマニュアル
 ゲーム進行方法
 シナリオ
 勝敗の判断基準
ゲームに入る前にチーム毎に 15 分のミーティング時間
が与えられ,自己紹介,作戦会議を行った.実証実験は同
じ日に 30 分の休憩を挟んで 2 回実施した.1 回目はチーム
間で合意に達するための練習の意味もあるので被験者があ
る程度納得するまで自由に討論させることにした.2 回目
は時間制限(1 四半期あたり 15 分)を区切って進めた.所
要時間は 1 回目が 70 分,2 回目が 60 分であった.
q1「パートナーと協調的にゲームを進められたか」
q2「自身の役割どおりの立場を徹底できたか」
q3「パートナーは協調的にゲームを進められたか」
q4「パートナーは役割どおりの立場を徹底できたか」
q6「パートナーと意見対立はあったか」
q7「パートナーと相談することにより,一人で考えるより良
い意思決定が出来たと思うか」
それぞれ 1 が否定,5 が肯定の 5 点法でそれぞれ第 2 四
半期と第 4 四半期のゲーム出力直後の回答の平均値を記し
たのが表 2「ゲーム進行とメンバー相互理解」である.
ここでq1とq3によりゲーミング・シミュレーションが異部門の
パートナーと協調的な集団意思決定する場として適切だった
かを評価する.q2 と q4 により今回実験に参加した被験者が異
質な世界観を持つ役割を果たせたかを評価する.q6 により集
団意思決定過程の発散的プロセスを,q7 により収斂的プロセ
スをそれぞれ評価する.
当日スケジュール
① オリエンテーション 30 分
② チームミーティング 15 分
③ 第 1 回目ゲーム実施 70 分
(第 2 四半期と第 4 四半期終了後質問状に記入)
④ 休憩 30 分
⑤ 第 2 回目ゲーム実施 60 分
(第 2 四半期と第 4 四半期終了後質問状に記入)
⑥ 質問状記入およびインタビュー 90 分
表 2 ゲーム進行とメンバー相互理解
回数
データ
q1
q2
q3
q4
q6
q7
4.3 データ取得方法
ゲーミング・シミュレーションが集団意思決定に与える
影響を調査するためゲームの意思決定の最中に計 4 回被験
者に質問状に記入してもらった.また 2 回目のゲーム直後
に被験者全員(N=12)に対し一人 10 分程度構造化インタ
ビューと質問状によりデータを取得した.同時に,ゲーム
のチーム単位の入力変数と出力変数の記録を取得した.仮
説 1 は質問状と構造化インタビュー,出力データにより検
証した.仮説 2 は主として構造化インタビューにより検証
した.
競合の状況など情報探索しながら単独意思決定より集団
意思決定をより高く評価するようになるかどうかを測定す
る.また,ゲーミングの最中に同じチームメンバー間で意
見対立(発散的プロセス)と協調(収斂的プロセス)の時
間経過に伴う評価を質問状により取得して 2 つのプロセス
が起こったかどうかを検証する.
自身の協調性
自身の役割
パートナー協調性
パートナー役割
意見対立
チーム意思決定
1
2
3
4
4.5
3.7
4.3
3.8
1.9
3.8
4.8
4.3
4.7
4.3
1.8
4.2
4.7
3.8
4.6
4.3
2.2
4.3
4.6
3.6
4.5
3.9
2.6
4.4
平
均
4.6
3.8
4.5
4.1
2.1
4.1
表 2 によれば q1 自身の協調性(平均 4.6)と q3 パートナー
の協調性(平均 4.5)に関しては一貫して高い評価が与えられ
て,今回のゲーミング・シミュレーションによる実証実験が集団
意思決定の場として一定の効果があったことを示している.一
方,q2 自身の役割(平均 3.8)と q4 パートナーの役割(平均 4.1)
については相対的に低い評価で被験者が十分に異部門組織
に所属する担当者としての役割を果たせたとは言い切れない.
これについては引き続き次節で議論する.また,q6 の意見対
立(平均2.1)と q7(平均4.1)のチーム意思決定は進行につれて
漸増傾向が見られる.q7「パートナーと相談することにより,
一人で考えるより良い意思決定が出来たと思うか」という
質問に対して,表 3 に示すとおり 1 回目から 4 回目まで回
答の数値が若干ではあるが上昇傾向にあり順位相関でラム
ダ 0.32(10%有意)であった.今回のゲームではゲーム進
行につれてチームとしての意思決定に関しては相互理解が
進行する傾向が見られた.
以上により集団意思決定過程の発散と収斂のプロセスが時
間経過とともに進行したと評価できるが,発散のプロセスを示
す q6 意見対立は平均 2.1 と比較的低い値で十分な意見の対
立を喚起できたかどうかは判断しがたい.
5. 分析結果
5.1 ゲーム進行とメンバー相互理解
本節ではゲームの進行に伴う担当者間の相互理解につい
て質問の内容ならびに結果報告を行う.
仮説 1 で提示した問題に関して,まず異部門の担当者の
相互理解についてゲーム進行につれて被験者の認識に違い
が出てくるかを検証した.
質問は以下の 6 問である.(なお,q5 は今回の分析には用
いなかったので割愛した.)
6
5.3 集団意思決定問題解決の評価(被験者別)
本節ではゲーミング・シミュレーション終了後の被験者
全員に実施した質問状とインタビューの結果報告を行う.
仮説 2 で示したゲーミング・シミュレーションによる集
団意思決定の問題を解決の有効性を検証するために,ゲー
ミング終了後に被験者全員に対し一人 10 分程度構造化イ
ンタビューと質問状記入を行った(表 5「被験者による事後
評価」).
表3 チーム意思決定への評価
q7チーム意思決定
3以下
4
5
回数
合計
1
2
3
4
合計
5
2
2
2
3
5
3
2
4
5
7
7
12
12
12
11
11
13
23
47
質問は以下の 4 つである.
① Q1「パートナーと相談することより,一人で考える
より良い意思決定ができたと思うか」
② Q2「意思決定に当たり,パートナーと意見の対立は
あったか」
③ Q3「意思決定に当たり,パートナーと意見を共有で
きたか」
④ Q4「このゲームにより異部門間の相互理解は促進す
ると思うか」
また,ゲーム進行の達成目標であるチームの純利益をそ
れぞれの回ごとに規準化した指数を求め,これら指数とそ
れぞれの質問項目の評価点との相関係数を算出した.しか
しこれら変数間に有意な相関関係を示すものはなく,今回
の実験ではゲームそのものの成績と集団意思決定との明確
な関係は見られなかった.ゲーミング・シミュレーション
結果の四半期ごとのフィードバックはゲーム進行そのもの
の動機付けには貢献するものの,パートナー間の集団意思
決定に影響を与えているという結果は得られなかった.
5.2 役割分担によるメンバー相互理解
本節では実験で設定した開発担当とマーケティング担当
という役割による相互評価について述べる.
開発担当とマーケティング担当の役割ごとに比較を行
ったのが表 4 である.全体的には担当による大きな差は見
られなかった.それぞれの回答についてクロス表を作成し
χ二乗検定を実施したところ,q4 「パートナーは予め決
めた役職どおりの立場を徹底できたと思うか」について
5%有意であった.これは開発担当者が概ねマーケティング
担当者に対して立場を徹底したという評価を与えていたが,
マーケティング担当者は開発担当者に対しては相対的には
立場を徹底できなかったとの評価を与えていたことを示し
ている.考えられる理由としては今回のゲーミング・シミ
ュレーションに用いたゲームがマーケティング担当者には
役割を演じやすかったが,開発担当者の世界観(例えば,
研究開発費の投入とその成果へのタイムラグがなくすぐに
製品品質向上に反映されてしまう)の反映が十分でなかっ
た可能性があり今後の課題として検討するべき点である.
表 4 役割別メンバー相互理解
役割
データ
q1 自身の協調性
q2 自身の役割
q3 パートナーの協調性
q4 パートナーの役割
q6 意見対立
q7 チーム意思決定
開発
4.7
3.7
4.6
4.3
1.9
4.4
マーケティング
4.6
4.0
4.4
3.8
2.3
3.9
それぞれ 1 が否定,5 が肯定の 5 点法による回答結果が表
4 の「被験者による事後評価」である.Q1 チーム意思決定
(平均値 4.6) と Q3 意見共有(平均値 4.6)につい
てはほぼ全員が肯定的,Q2 意見対立(平均値 2.3)につ
いては解答がばらついた.本実験の主眼である Q4 相互理
解(平均値 4.1)では少数の否定的な意見もあったものの,
肯定的な意見が多かった.
表 5 被験者による事後評価
被
Q1 チー
Q2 意見 Q3 意見
験
ム意思
対立
共有
者
決定
1
5
2
5
2
4
2
4
3
5
2
5
4
5
4
5
5
3
1
5
6
5
2
5
7
5
4
5
9
4
1
5
10
5
2
4
11
5
1
5
12
5
2
4
13
4
4
3
平
均
4.6
2.3
4.6
Q4 相互
理解
3
4
1
5
5
5
4
5
4
5
3
5
4.1
(被験者番号 8 は予備の被験者のため記載しない)
7
問題点も明らかになった.これらに対応するため以下の課
題を設定した.
企業内の集団意思決定問題解決を目的としてゲームを行
う場合,その目的に,より特化したゲームの開発を行う必
要がある.今回の実験でも意見の発散プロセスが十分起こ
ったとは言い切れなかったし,それぞれのメンバーがその
役割を十分果たせなかった可能性もあった.従って,意見
対立と役割をより強調できるゲーミングデザインと実験の
デザインを検討する必要がある.例えば,社内の限られた
資金をマーケティング部門と研究開発部門で取り合い,製
品の市場認知度と品質という異なる指標で売上が決定する
というような異部門間のコンフリクトが発生するようなシ
ナリオを開発実施してその効果を検証することが必要であ
る.
また,被験者がそれぞれの役割を果たすために入力変数
の部門間の責任分担をもっとはっきりさせるデザインが必
要である.この項目はマーケティング担当者が決め,この
項目は開発担当者が決め,合議にするのはこの項目という
風に意思決定項目を振り分けるなどの工夫が必要である.
更に,実験直後の被験者に対するインタビューでこの実
験を通じてパートナーのどういう部分の理解が促進したか
という質問により以下の 2 点も明らかになった.
① 異部門の達成目標や思考プロセスの相違の理解
② パートナーの性格の理解
これはゲーミング・シミュレーションという場で一方の
被験者が持つ暗黙知ないし世界観をバートナーが理解し始
めたことを示している.
5.4 実験結果総括と仮説検証
今回の実験を以下の通り総括する.
① 競争的かつ現実に近いビジネスゲームを用いて被験
者が相互にコミュニケーションを図ることができる
場を設定し,ゲーミング・シミュレーションを実施し
た.
② 被験者は単独意思決定より集団意思決定をより高く
支持した.
③ 時間経過とともに集団意思決定の収斂プロセスが起
こった.
④ 被験者はゲーミング・シミュレーションが相互理解を
促進させると評価した.
⑤ 今回の実験では集団意思決定の発散プロセスが十分
であったかどうかは疑問である.
⑥ 今回の実験では開発担当の被験者がその役割を十分
に果たせたかどうかは疑問である.
参考文献
以上①,②,③,④により仮説 1 は支持されたと評価で
きる.すなわちお互いに面識のない開発部門とマーケティ
ング部門という異なる部門の担当者が競合他社との競争と
いうビジネス・シミュレーション環境下で協働することに
より,比較的短時間(約 3 時間)で被験者同士のコミュニ
ケーションを促進し相互理解を深めるという仮説を支持す
る方向の結果が得られた.
一方,⑤,⑥を勘案すると仮説 2 については支持された
とは言い切れない.意見対立に関していえば被験者間に強
い意見を主張できない遠慮があった可能性もある.集団意
思決定において十分な発散プロセスを経ていない場合,そ
れは単なる意見の同調による妥協に終わってしまう場合が
多く,効率的な意思決定とはいえない.またそれぞれのメ
ンバーが自分に与えられた役割を十分果たせていない場合,
異部門のメンバーの世界観変更に有効な影響を与えられな
い可能性が高い.
6. 今後の課題
今回の実証実験で問題解決指向のビジネスゲームの応用
として企業の新製品開発プロジェクトの意思決定過程で異
部門間の調和状態が短時間で醸成されることにより効果的
な集団意思決定が行われ,その結果新製品開発の成功確率
を高める可能性を示すことができた.一方,今回幾つかの
8
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9
An Experiment of improvement of group decision making in organization by business game
Chiaki Iwai
Aoyama Gakuin University
Centering on business educational field in university, business game has been studied and there are lots of
researches and practical results. On the contrary, business game which aiming for problem solving in a real
business entity has not been fully studied and there are more topics to be researched. This paper reports to
experimental approach by gaming simulation, which tries to show the effectiveness of business game for group
decision making in a real business entity. Scenario of the experiment is that several Japanese manufacturing
companies launch next generation DVD player into Japan market. Hypothesis of this experiment is that
marketing division and R&D division person of each company will be able to resolve group decision problem
through gaming simulation. Former researches pointed out that business game result to an effective tool for
group decision as a result. The uniqueness of this paper is conducting experiment which aim the solution of
group decision problem in real business and analyze.
Key words: Business Game, Launching new products, Mutual understanding, Group Decision making,
Problem Solution
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