第12回雪のラブレター募集(入賞作品) 【俳句の部】 最優秀賞 賞 作品 両親に挨拶彼の雪払う 作者 兵藤 怜美 住所 千葉県 結婚の許しを得る為に改めて彼女の両親を訪ねたのであろう。肩に雪をのせている彼は勿論、 何とか良い結果を望む彼女も初めて迎える緊張の時間である。「挨拶」と「彼の」の間にある 講評 ちょっとした切れが、そのドキドキ感とシチュエーションをより鮮明にしている。私には、玄関前に 立つ彼の肩の雪の白さが大きく大きくクローズアップされてくる。このワンシーンを見事に俳句に 捉えたという事は、きっと二人にとってより良い結果だったに違いない。 優秀賞 賞 作品 て ふ きみ かたほう 手も触れぬ君にミトンの片方を 作者 紫雨 住所 大阪府 いまだに触れられずにいる美しい手。今日の寒さの中、手袋をしてこなかった彼女に片方だけ 借してあげる。二人共何か嬉しく微笑み合う。手袋ではなく「ミトン」と言ったのがよい。その言葉 講評 の響きによってどこか初々しくシャレた句に仕上がっている。さて、残ったふたつの手、ほどなくし て強く握り合い、そのまま彼のコートの大きなポケットにおさまったのではなかろうか・・・ 作品 肩の雪払ってほしいママがいる 作者 山下重信 住所 富山県 雪降る中両手に重そうな買い物袋を提げて帰ってきたママ。そばにいた子供に「ちょっとぉ、雪 はらってぇ・・・」と声をかける。買い物袋からのぞいているのはカレーかシチューの材料その他 いろいろといったところか。家族みんなの買い物を了えて頭や肩に雪をのせている母。毎日当り 講評 前のように見馴れているはずの母の姿に一瞬「あっ!」と声が上がりそうな非日常的な新鮮さを 覚えたのであろう。「ママがいる」とちょっとぶっきらぼうに言ったところが、かえってアンニュイな ムードを漂わせている。日常の退屈な時空の中に詩はごろごろと転がっているものである。 佳作 賞 作品 ある こい ゆき まち ただ歩くだけの恋して雪の街 作者 ビビヤギ 住所 愛知県 無口で不器用な彼、いつものようにただ歩くだけ。雪・たそがれ・人の波・灯りはじめる街、そして 講評 雪・・・。今日もただ歩くだけなのに、いつしかいつまでもつづいてほしい大切な時間に思えてく る。一切の無駄を排した佳句である。 作品 か ざはな す 風花やジョークのように好きという 作者 熊猫太夫 住所 福岡県 コクるときこそ何より真剣にいてほしいものであろう。しかし期待通りにはなかなかいかない。い つもいつも面白いジョークで笑わせてくれる彼だからしょうがないか。でも、いま確かに・・・。この 講評 さりげない告白も美しく漂う風花の中ならばこそより鮮明により強く胸にひびくのであろう。「風 花」が句の甘さを越えてみずみずしいものにしている。 作品 つ ゆき きみ あ ほちょう 積もる雪だんだん君と合う歩調 作者 つぐみ 住所 神奈川県 出会ってさほどの月日がたっている二人ではないように思われる。雪の降り積もるある日、まだ どこかよそよそしい二人も、あたりを美しく覆う雪の中、心が打ちとけ合うと同時に一歩一歩が自 講評 然に合ってくる。言葉も弾み、交わす笑顔も輝きはじめる。やや硬い句姿ではあるが、そこには 確かなリアリティーが感じ取れる。 入選 賞 作品 約束の改札ひとり雪しきる まつもと おさ む 作者 松本長夢 住所 東京都 作品 ゆき か ふ た り けっこん き ね ん ひ 雪を掻く二人結婚記念の日 作者 藤林正則 住所 北海道 作品 老妻を愛称で呼ぶ春うらら 作者 小関東風 住所 山形県 作品 はつゆき わた ろ う か こい 初雪の渡り廊下にあった恋 作者 有帆 住所 愛知県 作品 小社に声の混み合ふ小正月 作者 原田怜子 住所 山形県 作品 きみ ゆき えきしゃ あたた 君がいて雪の駅舎の暖かく 作者 バンバン爺 住所 三重県 作品 じょうりゅう きみ す い え ゆ き げ かわ 上流に君の住む家雪解川 作者 信安淳子 住所 岡山県 作品 牡丹雪遺骨のなくて兵の墓 作者 志村美子 住所 福岡県 選者:大類つとむ氏(山形県現代俳句協会副会長、俳誌「陸」「街」同人) 応募作品数 :1559作品
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