英語の副詞の特徴と認可条件

平成11年度∼平成13年度
科学研究費補助金・基盤研究(C)
研究成果報告書
英語の副詞の特徴と認可条件
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研究課題
英語の副詞の特徴と認可原理に関する記述的・理論的研究
課題番号
11610478
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研究代表者
鈴木英一
筑波大学 現代語・現代文化学系
2002年3月
は し が き
本書は,1999年度∼2001年度(平成11年度∼平成13年度)・科学研
究費補助金・基盤研究(C)の交付を受けた「英語の副詞の特徴と認可原
理に関する記述的・理論的研究」という研究の成果報告書である.
本研究では次のようなことを目的としている.
英語の副詞は多くの場合に意味的に曖昧であり,この意味的な曖昧
性は副詞が文中で担う機能に深く関わっている.また,副詞の曖昧性
は,同一の機能を担う場合にも見られ,この場合には共起する述語動
詞などによって曖昧さが解消されることがある.副詞の意味的曖昧性
や機能的多様性は,副詞が生じている位置や構造とも深く関わって
いる.副詞が文中で複数の位置に生ずることは,語順が固定している
英語にあって注目すべき特徴であり,「自由語順現象」と呼ばれること
がある.そこで,英語の副詞の特徴を明らかにするためには,生ずる
位置を考慮しながら意味と機能の両面から副詞を一定の下位類に分
類し,その用法を明らかにする必要がある.
このような目的の下で,本研究では,統率・束縛理論や極小主義理論を中
心とする生成文法の諸研究を踏まえて,次のような問題に取り組んだ.
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
英語の副詞が文の構造においてどのような位置を占めるか.
副詞が生ずる位置でどのような機能を担うか.
副詞は意味的にどのように曖昧であるか.
副詞の意味的な曖昧性はどのような場合に可能であるか.
副詞の意味的な曖昧性はどのような場合に解消されるか.
副詞は結局どのような位置・構造に生じ,どのような機能を
担い,どのような意味を表すことができるか.
本研究では,伝統文法・記述文法・生成文法の広範囲な研究を検討し,
言語データベースを用いて多くの例を分析し,英語の副詞がどのような意
味を表し,どのような機能を担うかについて理論的な面と記述的な面から
研究を行った.本研究によって次の諸点が明らかにされた.
ii
① 英語の副詞に属する語はほとんどが多義的であるが,その意味・
機能の多義性は多くの語の場合具体的な文において解消される.
多義性が解消されるのは,副詞の意味・機能が具体的・個別的に
決定されるからである.
② 副詞の意味・機能の決定に際しては,副詞が文において生じてい
る位置・構造が重要になる.
③ 副詞の生起位置・構造(特に文の構造においてどのような構造関
係をもつか)によって,当該副詞が文副詞(接続副詞を含む),主
語・述語副詞,主語副詞,述語副詞のいずれの機能を担っている
かが決定される.
④ 副詞の意味・機能の決定には,このような生起位置・構造に関す
る特徴に加えて,個々の副詞の語彙的な特徴(副詞の表す意味と
担う機能の範囲および共起関係等)が重要な役割を果たす.
⑤ 個々の副詞特に最も生産的な ly-副詞の語彙的な特徴は,対応
する形容詞の意味から決定できることが多いが,決定できない場
合は語彙的特異性として辞書おいて指定する.
⑥ 前置詞句は,ly-副詞と同様に,極めて生産的な副詞的な要素で
あり,副詞的前置詞句の意味・機能は語彙的特異性として辞書に
おいて指定することができないので,前置詞と名詞句の特徴に基
づいて決定する必要がある.
⑦ 特に主語副詞や動詞句副詞の意味・機能を決定する場合には,
個々の副詞は,具体的な文において共起している主語名詞句や
述語動詞等の特徴と強い依存関係があるので,これらの要素を照
合するための仕組みが必要になる.
このような研究成果の詳細については,本報告書に掲載した論文を参
照していただきたい.なお,現在執筆している論文および執筆を計画して
いる論文は速やかに公刊する予定である.
本研究は,1997年度∼2001年度の5年間にわたる『東西言語文化の
類型論特別プロジェクト』の研究,および1998年度∼2001年度の4年間
にわたる筑波大学・学内プロジェクト・助成研究(A)「レキシコンの構造と文
iii
法に関する総合的研究」と平行して行われ,予想以上の研究機会に恵ま
れた.特別プロジェクト研究と学内プロジェクト研究にご支援いただいた岩
崎洋一・研究担当副学長と原口庄輔教授に心から感謝申し上げたい.
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研究種目: 科学研究費補助金・基盤研究(C)
研究課題: 英語の副詞の特徴と認可原理に関する記述的・理論的研究
課題番号: 11610478
研究組織: 研究代表者 鈴木英一 (筑波大学 現代語・現代文化学系 教授)
交付決定額
(金額単位:千円)
直接経費
間接経費
合 計
平成11年度
1,100
1,100
平成12年度
1,000
1,000
平成13年度
800
800
2,900
2,900
総
計
研究発表
1) 「書評 Cinque (1999) Adverbs and Functional Head. Oxford
University Press」 『英語青年』 8月号,1999年7月.
2) “Licensing Some Kinds of Degree Adverbs in English,”
『筑波大学・東西言語文化の類型論特別プロジェクト研究報告書
平成11年度』, pp.735-754, 2000年3月.
3) “A Note on Adverbial Prepositional Phrases,” 『筑波英学展望』
20号,pp.115-126, 2001年3月25日.
4) 中島平三(編)『英語構文事典』 (項目分担執筆), 大修館, 2001年
5月1日.
5) 「副詞の曖昧性と指向性」 『筑波大学・東西言語文化の類型論特別
プロジェクト研究報告書平成13年度』 2002年3月.
iv