経営陣から株主・投資家の皆様へ(831kb)

経営陣から株主・投資家の皆様へ
福永 喬
代表取締役会長兼社長
「持続的成長」をより確実なものとするために、私たちつばきグループは、
愚直なまでに「モノづくり」にこだわり続け、商品の品質・技術や生産力
における競争優位性を、着実に強化し続けてまいります。
2007 年度は、特に期の後半から経済環境が大きく悪化する中で、当社グルー プは、
「6 期連続の増収増益」、
「3 期連続の最高益更新」を達成することができました。
売上成長のみならず、収益性も大きく向上し続けている背景には、
(1)財務基盤の強化や
効率的な組織体制づくりという「企業の体質改善」と、
(2)商品の品質・技術における優位性
をいっそう強化してのグローバル化の促進、生産力増強や生産性改善への先行投資といっ
た「体力の増強」を、バランス良く行うという、私たちの戦略があります。
急激な為替変動や原油・原材料価格の高騰、さらには世界経済の減速など、外部環境は大
きく悪化しています。しかしこういう環境下だからこそ、商品力の磨き上げと生産力の強
化および安定供給体制の確立などを目指し、必要な先行投資を実施していきたいと考えて
2008 年 8 月 25 日、当社代表取締役社長の美本
龍彦が逝去いたしました。2005 年 6 月の社長就
任以来、約 3 年にわたり社業の発展に努めてまい
りましたが、この間における株主・投資家の皆様
います。
からのご支援に心より御礼を申しあげます。なお、
このことは、短期的には業績に影響を与えるかもしれません。しかし、2011 年度以降に
代表取締役会長の福永喬
再び高い成長力の回復と、外部環境変動への抵抗力の強化をもたらし、当社グループの持
が、代表取締役会長兼社
続的成長性をさらに高めるものと確信しています。
2008 年 8 月 28 日の臨時取締役会において、当社
長に就任いたしました。
株主・投資家の皆様には、いっそうのご理解とご支援をお願い申しあげます。
経営陣から株主・投資家の皆様へ
過去 10 年の成長軌道と成果
品事業の主力商品タイミングチェーンドライ
外部環境の認識
少し長めのスパンで、つばきグループの成
ブシステムは、世界のトップシェア商品とな
2008 年度以降の見通しはどうでしょう?
長軌道と達成成果などをご検証ください。
りました。
外部環境はかなり悪化しているように思い
1990 年代までのつばきグループは、日本
生産力の強化と生産性の改善も進めまし
ますが。
国内の 景 気、とりわけ 設 備 投 資の動向に
た。特に老朽化していた大阪の本社工場の
サブプライム問題等に端を発した米国経
よって業績が大きく左右される景気循環性
生産性向上をねらいに、京都府京田辺市に
済の減速は、明らかに世界経済に大きな影
の高い企業でした。そこで 1990 年代後半
チェーン事業の生産拠点となる最新鋭の大
を落としています。これに加えて、原油・原
から、私たちは、国内景気依存型であった
型工場を建設。この投資によって有利子負
材料価格の高騰と、急激なドル安の進行が、
体質を改めるべく、様々な戦略を実施して
債は増加しましたが、その後、生産性の劇
私たちの業績にも当然悪影響を及ぼします。
きました。
的な改善をもたらしました。また最適地生
2008 年度 だけでみれば、連 結 売 上高は
その効果がどう表れたかは、数値を見れ
産・最適地調達を旗印に海外での生産力も
1% 強の伸びにとどまり、経常利益は 5% 強
ば一目瞭然です。例えば 2007 年度におけ
相次いで増強しています。
の減益を見込んでいます。
る日本の設備投資総額は、景気がここ数年
以上に代表される攻めと守りのどちらか一
このような中で、私たちは 2010 年度ま
回復基調にあったとはいえ、10 年前
(1997
方に偏らない
「バランスのとれた戦略」を、着
での新 3 ヵ年計画「STEP10」を策定しまし
年度)とほぼ同水準にあります。自動車生産
実に遂行することで、景気に左右されにくい
た。幸いにして競争力の高い商品を多くもっ
台 数も 10 年前の 6% 増の水 準に過ぎませ
体質を作り上げていきます。
ていることもあり、足元のマイナス要因が、
ん。一方、この 10 年間で、私たちの連結売
主力商品の値上げや生 産性の向上などで
上は 1.3 倍に拡大しました。経常利益にい
徐々に吸収されていくとともに、引き続き世
たっては約 3.3 倍となっています。
界シェアの拡大による売上増効果が出てく
この体質改善を実現させた戦略のひとつ
ることもあり、1ドル 100 円、1 ユーロ 159
が、財務基盤の強化です。総資産有利子負債
円の為替レートを前提としても、向こう 3 ヵ
比率は、10 年前の 28.2% から2000 年度に
年でみれば、年率 4.4% 程度の経常利益の
は一旦 37.7% へと悪化しましたが、その後一
貫して低下し2007 年度末には 19.4% となり
ました。
つばきグループ過去 10 年間の主な戦略的成果
すべて連結ベース
1997 年度
2007 年度
変化
128,298
167,203
約 1.3 倍
経常利益(百万円)
5,511
18,051
約 3.3 倍
す。海外売上高比率は、10 年前の 29.7% か
有利子負債比率
28.2%
19.4%
8.8%ポイント改善
ら 37.5% へと大きく上昇。特に品質優位性
売上高販売管理費比率
21.7%
17.9%
3.8%ポイント改善
の高い産業用スチールチェーンや自動車部
海外売上高比率
29.7%
37.5%
7.8% ポイント上昇
2 つめは、グローバル・ベスト戦略の推進で
売上高(百万円)
攻めと守りの
バランスのとれた戦略を
着実に遂行してきたことが、
つばきグループの景気変動への
抵抗力増強につながった。
成長を達成できると見ています。なお後ほ
また、グローバル化が進んでいるとはい
度までに、現 地調達比率を 20% へと向上
ど詳しく説明しますが、向こう 3 年間で総額
え、世界シェアの高い商品群でも、地域別
させる計画です。
約 350 億円の積極的な設備投資を計画して
にみると強弱がはっきりしています。これを
3. 新市場および新規顧客の開拓
います。このため、減価償却費は総額で約
解消することが、市場分散による持続的成
チェーン事業では、ブラジル、インドに販
260 億円と、2007 年度までの 3 ヵ年比で
長の基盤強化につながります。
売拠点を新設しました。世界景気が減速す
72 億円余りの負担増となります。既述の年
る中でも、中長期的には依然として成長ポ
率 4.4% の経常増益は、これを吸収した上で
基本戦略
テンシャルの高い BRICs など新興市場の開
の計画値です。
それらの課題を踏まえて、今後の戦略につ
拓を加速させます。また、顧客業種別では、
いて教えてください。
活況を呈しているマイニングなどの素材産
つばきの課題
商品力や生産力における優位性をさらに
業、食品産業などを重点的に攻略していき
つばきグループの「最大の課題」は何だと思
強化する、財務体質をいっそう強固なもの
ます。
われますか?
とするという 2 点については、これまでの延
4. 技術改良と新商品開発の促進
過去 10 年の歴史を振り返れば、私たち
長線上の戦略として、引き続き注力していき
すでに世界最大手の一角に位置するタイ
の持続的成長の基盤が強化されたことは事
ます。
ミングチェーンドライブシステムに次いで、
実ですが、まだまだ、完成にはほど遠いと
一方で、前 項で述べた課 題を踏まえて、
自動車部品事業の第 2 の柱として期待して
考えています。 現に、1 桁とはいえ、2008
以下の戦略については、これまで以上にス
いる「パワードライブチェーン」。 この技術
年度に経常減益を見込んでいるということ
ピードを上げて実行していきます。
優位性を構築すべく、軽量性・静粛性・耐摩
は、為替相場が急速に円高に進んだ場合の
1. 自動車部品事業の工場分散化と
耗性などにおける技術改良を加速していき
抵抗力において、まだ弱さが残されている
生産能力の増強
ます。また、自動車部品事業全体として、収
ことの証です。現地生産や現地調達をまだ
まず、不測の事態への対応力を強化する
益性の高い新 商品の売 上 比 率を、現状の
まだ拡大していかなければなりません。
ために、自動車部品事業で国内唯一の工場
20% から長期目標として 30% 程 度に引き
幸いにして、これまでのところは大きな問
となっている埼玉工場の生産の一部を京田
上げていきます。
題が発生していませんが、自動車部品生産
辺工場に分散化します。当面の目標として
の稼動率が非常に高い中で、国内での生産
は生産量の 1 割程度をシフトする予定です。
以上述べた 4 項目の戦略は、短期的には
が埼玉工場に集中しているという事実は、大
また、タイにおける工場の拡張も検討し
先行投資負担増となって、利益を圧迫する
規模な地震災害などの不測の事態が起きた
ています。
こととなります。逆に言えば、外部環境が
場合に、つばきグループの強みのひとつであ
2. 最適地生産・最適地調達化の加速
悪い中、利益優先でこれらを圧縮すれば一
る
「安定供給体制」が崩壊しかねないという
自動車部品事業では、生産・調達の現地
時的には既述した 3 年間の利益成長率は高
危険性を含んでいます。
化比率を 50% に、精機事業でも、2008 年
まることとなります。しかし中長期的にさら
持続的成長のための
基盤づくりはまだ道半ば。
「STEP10」では
その完成に向けた施策を
着実に打っていく。
経営陣から株主・投資家の皆様へ
に利益水準を一段高いところに引き上げ、
このような状況の下、現在の成長ステー
かつ、成長の持続性を強化するためには、
ジにおいては、内部留保率を高め、中長期
必要不可欠な投資であると判断しています。
的に時価総額の向上を図る経営をすること
が、株主価値の最大化につながると、当社
株主価値の極大化に向けて
グループでは考えています。
株主価値極大化への基本的な考えをお聞か
もちろん、配当性向の引き上げにも留意
せください。配当性向は必ずしも高くない
してまいりますので、株主・投資家の皆様に
と思いますが。
は引き続き、ご理解とご支援をお願いする
1 株当たりの配当
(記念配当を除く)は、
次第です。
2003 年度の 6 円から、2004 年度には7 円、
つばきグループは、顧客、株主、取引先、
2007 年度には 8 円と、段階的に引き上げて
社会等を含むすべてのステークホルダーの
います。しかしそれでも、2007 年度の配当
皆様からのご支持を推進力として、成長力
性向は、連結で 14.4%、単体で 25.7% と決
の高いグローバル企業への道を邁進してま
して高い水準とは言えません。
いります。
これはご説明してきたとおり、利益水準
の引き上げと、持続的成長性の強化を目指
2008 年 8 月
して、設備投資などの先行投資に利益を再
投資している段階にあるためです。
内部留保を高める時期なのか、あるいは
配当性向をもっと上昇させるべきなのかに
ついては、慎重かつ論理的な検証を行うよ
福永 喬
う努めています。
代表取締役会長兼社長
つばきグループの
経済的価値創出力は
着実に強化されている。
企業の成長ステージに合わせた
株主価値極大化策を
実施していく。
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