流通とSC・私の視点 1998年12月23日 視 点(102) アメリカのディスカウント業態の変遷> ゼネラル業態は伝統的にディスカウントストア、GMS、百貨店の3つのタイプに分類されます。 ディスカウントストア は「商品の品質・商品の選択の幅・サービス・店舗イメージを犠牲にし、価格の 絶対的安さを基軸とする業態」であり、 GMS は「一定の商品の品質・一定の商品の選択の幅・一定の サービス・一定の店舗イメージを確保した上での価格の相対的安さを基軸とする業態」であり、 百貨店 は「高品質・高い選択の幅・高サービス・高い店舗イメージを確保した上で付加価値型価格を基軸と する業態」であり、それぞれがオーバーラップする領域はあるにしろ、業態としての基軸は異なります。 アメリカは「所得格差5倍・2極化所得構造」、わが国は「所得格差2.5倍・中流集中所得構造」であ り、その結果、アメリカでは中間のGMS業態が衰退し、ディスカウントストア業態と百貨店業態が 中心の「ゼネラル業態2.5段階理論」が確立され、わが国では、低所得者を対象とするディスカウント ストア業態が成長せず、GMS業態と百貨店業態が中心の「ゼネラル業態2.5段階理論」が確立されて います。アメリカでは年間所得25,000ドル(円換算300万円)以下に属する人口が8,654万 人、日本では985万人であり、このようにアメリカのディスカウントストア業態は、アメリカの低 所得者に支えられた業態であります。それゆえに、品質・選択の幅・サービス・店舗イメージを犠牲 にしても、絶対的価格の安さに魅力を感じる生活者がたくさん存在し、アメリカのディスカウントス トア業態の成立要因を高めています。ところが、わが国のように年間所得400∼1,000万円の生 活者が70%を占める社会では、絶対的価格を下げるために品質・選択の幅・サービス・店舗イメー ジを犠牲にする商法は、馴染まない業態です。アメリカではディスカウントストア業態、GMS業態、 百貨店業態を利用する客はそれぞれ異なった客であり、そのために各業態はターゲットを明確にしな ければなりませんでした。わが国では、同じ客がディスカウントストア業態、GMS業態、百貨店業 態を利用するため、購入動機の違いで差異化要因を確立し、同じ客が異なった業態を利用し、しかも 生活者が中流志向が中心であるため、一定レベルを維持した上での低価格商法でなければ客に満足を 与えることは出来ません。 今、アメリカのディスカウントストア業態が変わりつつあります。1960年代のアメリカはシア ーズ・JCペニー・モンゴメリーワードのGMS御三家が大衆レベルのマーケットを制覇していまし た。1980年∼1990年代は、ウオルマート・Kマート・ターゲットのディスカウントストア御 三家が大衆レベルのマーケットを制覇するようになりました。 ディスカウントストア業態は、2極化したアメリカの所得構造の中で、比較的低所得者を中心に店 舗数拡大を行ってきました。ところが、最新、ディスカウントストア御三家もディスカウントストア 業態としての性格が変わってきました。ウオルマートは、今までローカル立地を中心に展開して来ま したが、最近は大都市のサバーン立地に進出し、比較的所得や感性の高い生活者を対象にするように なりました。また、前から大都市のサバーバンに立地していたターゲットは、ウオルマートとの差異 化のため、アップスケール化し、コンセプトも「質が良く、トレンディを意識したスタイリッシュな商 品を、破格の値段で提供する」という高品質・高デザインの商品を格安で売るという「相反する購入動 機の融合商法」(六車流:流通理論)を展開しています。ディスカウントストア業態であるターゲット は、 「従来の、商品の品質・商品の選択の幅・サービス・店舗イメージを犠牲とした絶対的安さの商法 から、一定の商品の品質・一定の商品の選択の幅・一定のサービス・一定の店舗イメージを確立した 上での相対的安さの商法へ脱皮」 しつつあります。その結果、比較的低所得者にによって支えられてい たディスカウントストア業態の客層が著しく広まり、中高所得者レベルまで波及してきています。わ が国では何かを犠牲にする商法は通用しませんが、アメリカでも本当は何かを犠牲にする商法は通用 しなくなりつつあります。 何かを犠牲にするディスカウントストア業態は、何かを犠牲にしないディ スカウトストア業態が出現すると、勝ちパターンにならなくなります(今まで、何かを犠牲にした商法 をしていたからこそ、ディスカウントストア業態は低所得者にしか支持されませんでした)。 わが国はGMS業態が2極化するのが中流志向の所得構造から見て正しい方向です。アッパースケ ール化するGMSとダウンスケール化するGMSの2極化は生活者の支持は高く、この2つのタイプ のGMSに百貨店を加え、専門店を150∼200店舗加えた業態が「多核型SC」であり、近未来の 勝ちパターンのSCづくりとなります。マクネアの小売りの輪の理論は生きています。 今後は、何か を犠牲にしないディスカウントストアが続々と出現します。 (株)ダイナミックマーケティング社 代 表 む ぐるま 六 車 秀 之
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