衛生化学部 - 大阪府立公衆衛生研究所

平成 27 年度 研究実施 / 終了報告書
食品添加物等に関する衛生学的研究
衛生化学部食品化学課
研究代表者 高取聡
共同研究者 阿久津和彦、柿本幸子、粟津薫、野村千枝、柿本葉、山口瑞香、清田恭平、昌山敦
研究目的
府内に流通する加工食品および食品容器・包装等につい
て行政検査を行い、食品衛生法への適合性を確認している。
2) 六鹿元雄ら : ポリスチレン製器具・容器包装における
揮発性物質試験の試験室間共同試験 , 第 110 回日本食
品衛生学会学術講演会 , 京都 (2015)
(誌上発表)
府民の「食の安全安心」に対する要請に応えるため、本研
1) 村上亮 , 六鹿元雄 , 阿部孝 , 阿部裕 , 大坂郁恵 , 大野春香 ,
究では食品添加物等の検査法の開発・改良等を包括的に行
大野浩之 , 大野雄一郎 , 尾崎麻子 , 柿原芳輝 , 河崎裕美 ,
う。平成 27 年度は、1)基準の改正ならびに検査の拡充
小林尚 , 柴田博 , 城野克広 , 関戸晴子 , 薗部博則 , 高坂典
に応じた標準作業書の改定・整備とその行政検査への適用、
子 , 但馬吉保 , 田中葵 , 田中秀幸 , 野村千枝 , 羽石奈穂子 ,
2)厚生労働科学研究費補助金事業への参画を通じて公定
疋田晃典 , 三浦俊彦 , 渡辺一成 , 穐山浩:ポリエチレン
法の改定への寄与、3)動画教材を用いた検査技術等の教
テレフタレート製器具・容器包装におけるアンチモンお
育・伝承方法の開発に取り組んだ。これらは、府民の「食
よびゲルマニウム溶出試験の試験室間共同試験 , 食品衛
の安全安心」の推進に資するものである
生学雑誌 , 56, 57-67 (2015)
平成 27 年度 研究実施状況
1) 清涼飲料水規格基準の改正に伴い標準作業書を改定し
て行政検査に適用させた。
2) 柴田博 , 六鹿元雄 , 阿部裕 , 伊藤禎啓 , 大坂郁恵 , 大野
春香 , 大野浩之 , 大野雄一郎 , 尾崎麻子 , 柿原芳輝 , 小林
尚 , 城野克広 , 関戸晴子 , 薗部博則 , 高坂典子 , 但馬吉保 ,
田中葵 , 田中秀幸 , 中西徹 , 野村千枝 , 羽石奈穂子 , 疋田
2) 食品衛生法に定められる折り紙の規格検査の実施に必
晃典 , 三浦俊彦 , 山口未来 , 渡辺一成 , 穐山浩 : ゴム製器
要な標準作業書を整備した。また、これを活用して新た
具・容器包装における亜鉛溶出試験の試験室間共同試験 ,
に行政検査を開始した。
食品衛生学雑誌 , 56, 123-131 (2015)
3) 厚生労働科学研究「食品用器具・容器包装等に含有さ
3) 山口瑞香 , 梶村計志 : LC-MS による食品中の保存料
れる化学物質の分析に関する研究」および食品・添加物
8 種類の分析 , 大阪府立公衆衛生研究所研究報告 , 53,
等規格基準に関する試験検査費「器具・容器包装の規格
46-48 (2015)
試験への TOC 試験の導入に関する検討」に研究協力者
4) 山口瑞香 , 粟津薫 , 野村千枝 , 柿本葉 , 梶村計志 : 清涼
として参画した。今年度は、改良された蒸発残留物試験
飲料水中のヒ素、鉛、スズ分析法妥当性評価 , 大阪府立
法について試験室間性能評価試験を実施した。評価の結
公衆衛生研究所研究報告 , 53, 49-51 (2015)
果、既存の公定法とほぼ同等の性能が認められた。
平成 28 年度の研究実施計画
4) 食品添加物(漂白剤・乳化剤)の分析法および GCMS/MS のイオン源のメンテナンス方法について動画教
(研究方法)
材を作成して研究員がオンラインで随時閲覧できるよう
平成 27 年度に引き続き、
厚生労働科学研究
「食品用器具・
に整備した。
容器包装等に使用される化学物質や複数の化学物質の複合
学会及び誌上発表等
(学会発表)
影響に関する研究」および「規格試験法の性能評価に関す
る研究」の試験室間共同試験に参加する。蒸発残留物試験
の改良および溶出試験操作の精度管理法の検討等を実施す
1) 渡辺一成ら : ナイロン製器具・容器包装におけるカプ
る予定である。また、過去の行政検査結果を取りまとめて
ロラクタム試験の試験室間共同試験 , 第 110 回日本食
解析して今後の検査計画に役立てると共に有用な知見は公
品衛生学会学術講演会 , 京都 ( 2015)
表する。
21
平成 27 年度 研究実施 / 終了報告書
健康危害物質に関する衛生学的研究
衛生化学部食品化学課
研究代表者 柿本幸子 共同研究者 高取聡、阿久津和彦、吉光真人、野村千枝、粟津薫、、柿本葉、山口瑞香、昌山敦、
清田恭平
研究目的
本研究では、食の安全・安心を確保するために健康危害
物質の理化学検査法の開発・改良等を行う。
1) 食品の腐敗によって生成される生理活性アミンは健康
危害の一因となる。分析法の開発・改良並びに実態調査
等を実施し、食の安全・安心の推進に努める。
2) 食中毒等の原因物質を究明するための分析法の開発を
行い、健康危機事例への対応に努める。
3) 母子汚染の防止を目的とし、生息海域別に魚介類の総
水銀、メチル水銀含有量を調査する。また、分析機器を
従来の ECD/GC から GC/MS に変更し、精度の高いメチ
ル水銀分析法を確立する。
平成 27 年度 研究実施状況
1) 平成 26 年度に検討した固相抽出 - フルオレスカミン誘
学会及び誌上発表等
(学会発表)
1) 粟津薫 , 梶村計志 : 固相抽出 - フルオレスカミン誘導体
化 HPLC 法による市販魚介類のアミン類含有量調査 , 第
110 回日本食品衛生学会学術講演会 , 京都 (2015)
2) 野村千枝 , 昌山敦 , 山口瑞香 , 梶村計志 : 食中毒を引き
起こす有毒キノコの迅速鑑別法の検討 , 平成 27 年度 地
方衛生研究所近畿支部 自然毒部会 研究発表会 , 和歌山
(2015)
(誌上発表)
1) 柿本幸子 , 吉光真人 , 野村千枝 , 粟津 薫 , 山口瑞香 , 清
田恭平 , 阿久津和彦 , 高取聡 , 梶村計志 , 尾花裕孝 : 国
産・輸入魚介類中の総水銀実態調査 ( 平成 20 年〜平成
26 年 ), 大阪府立公衆衛生研究所研究報告 , 53, 31-35
(2015)
導体化 HPLC 法を用いて、市販魚介類のアミン類含有実
平成 28 年度の研究実施計画
態および腐敗に伴うアミン類の生成について調査した。
魚介類の腐敗に伴い生成されるアミン類の合計値に基
づく指標である Biogenic Amine Index(BAI)を算出し、
各種魚介類の腐敗と BAI の関連を検討した。
(研究方法)
1) 分析対象を魚介類以外の発酵食品等に拡げて、食品中
の生理活性アミン類含有量の実態調査を実施する。
2) 食中毒を引き起こす有毒キノコのうち、食中毒発生頻
2) 有毒キノコの分析対象種および産地を拡大するととも
度の高いキノコ数種類について DNA を用いた迅速鑑別
に、より簡便な分析法(リアルタイム PCR)などで実
法を開発した。加熱調理および酵素消化処理を施した数
施可能か検討を行う。
種類のキノコ混合品を分析した結果、有毒キノコを特異
的に検出することができた。
3) 黄色ブドウ球菌エンテロトキシン (SEs) およびウェル
シュ菌毒素の機器分析法における基礎的な測定条件を検
討した。
4) フェニル誘導体化 GC/MS 分析によるメチル水銀を分析
3) ウェルシュ菌毒素の機器分析法を確立する。この系を
用いて培養上清におけるウェルシュ菌毒素を検出する。
毒素および培養上清は細菌課より提供を受ける。
4)LC-MS/MS を用いた SEs 市販毒素の一斉分析法を確立
する。この系を用いて SEs 産生株の培養上清から SEs を
検出する。培養上清は細菌課より提供を受ける。
した。妥当性ガイドラインに従って分析法の性能評価を
5) 生息海域別(日本海側は鳥取県〜青森県、太平洋側は
行ったところ、サバ、タイ、カニについては、目標値を
千葉県〜北海道の各漁港)に、ベニズワイガニに含まれ
達成した。総水銀検査においても検査で使用できるよう
る総水銀およびメチル水銀含有量の実態調査を行う。
に、新水銀分析計で測定データを収集した。
6) 健康危害物質(異物、自然毒および化学物質等)の検
出法についての検討を行う。
(発生した食中毒に応じて
行う。
)
22
平成 27 年度 研究実施 / 終了報告書
食品中の残留農薬等に関する研究
衛生化学部食品化学課
研究代表者 北川陽子
共同研究者 起橋雅浩、高取 聡、阿久津和彦、吉光真人、福井直樹、小阪田正和、山口聡子
研究目的
め、市販野菜果実ジュース、野菜ジュース、果実ジュー
スでマトリックス効果の比較した。その結果、類似の原
[ 残留農薬等の分析 ]
材料を用いた野菜果実ジュース(B 社製品)は、A 社製
府内に流通する農産物について、残留農薬、防カビ剤お
品と同等のマトリックス効果を示し、代替可能であるこ
よびカビ毒の行政検査を行い、食品衛生法で定められた基
とが示唆された。
準値への適合性を確認している。府民の「食の安全安心」
[ 照射食品の検知法 ]
に対する要請に応えるため、検査対象項目を効果的・効率
1) 食品の放射線照射履歴の新たな判別方法として、ジヒ
的に拡充し、信頼性の高い検査を実施できるよう、各種試
ドロチミジン(DHThd)を検知指標とする高感度分析
験法の開発および改良を行う。また、国が提示する「試験
法の開発を行った。従来の方法では履歴判別が困難と
法の妥当性評価ガイドライン」に基づき、幅広い食品への
される牛生レバーおよびエビを対象に検討したところ、
適用性を評価し、検査に反映する。さらに、分析精度の向
照射試料に DHThd の生成が認められた。また、DHThd
上のため、試験液に残存する食品由来成分(マトリックス)
の Thd に対する濃度比(DHThd/Thd)を線量に対して
の機器分析への影響についても検証する。
プロットした結果、いずれの試料についても線量依存性
[ 照射食品の検知法 ]
が認められた。
食品への放射線照射は、食品の品質保持および安全性確
学会及び誌上発表等
保に効果的であり有用である。海外ではその有用性に基づ
き多くの食品に照射が行われている。一方、国内で照射が
(学会発表)
認められるのは、馬鈴薯の発芽防止を目的とする場合のみ
1) 北川陽子 , 吉光真人 , 高取 聡 , 福井直樹 , 小阪田正和 ,
であるが、ユッケによる集団食中毒事件を契機に生食用の
山口聡子 , 起橋雅浩 , 梶村計志 , 尾花裕孝 : GC-MS(/MS)
食肉の殺菌への活用が期待されている。このような背景に
測定におけるマトリックス効果補正用添加物質の検討 1,
より輸入食品を中心に監視を強化し国内の消費者に適切な
第 109 回日本食品衛生学会学術講演会 , 東京 (2015)
商品情報を提供できるよう、放射線照射された食品を検知
2) 吉光真人 , 北川陽子 , 高取 聡 , 福井直樹 , 小阪田正和 ,
する手法の開発が急務となっている。現在、国が提示して
山口聡子 , 起橋雅浩 , 梶村計志 , 尾花裕孝 , 伴埜行則 , 中
いる通知法は煩雑であるため、簡便かつ迅速な検知手法の
島 涼 , 角谷直哉 , 山下浩一 , 神藤正則 , 高良浩司 : GC-
開発とその信頼性確保に関する研究を行う。
MS(/MS) 測定におけるマトリックス効果補正用添加 , 物
これらの研究は、府民の食の安全安心の推進に資するも
質の検討 2. 第 109 回日本食品衛生学会学術講演会 , 東
のである。
京 (2015)
平成 27 年度 研究実施状況
3) 阿久津和彦 , 吉光真人 , 北川陽子 , 福井直樹 , 山口聡子 ,
高取 聡 , 梶村計志 , 尾花裕孝 : GC-MS/MS 測定における
[ 残留農薬等の分析 ]
農薬群由来のマトリックス効果の検証 - 溶媒標準溶液中
1)GC-MS(/MS) 分析において、検量線用標準溶液中の共存
の農薬数の違いによるピーク応答の変化 -, 第 110 回日
農薬群がマトリックスとして作用し、残留農薬の定量値
本食品衛生学会学術講演会 , 京都 ( 2015)
に影響を及ぼす事象が認められた。特に高濃度検出試験
4) 吉光真人 , 阿久津和彦 , 北川陽子 , 福井直樹 , 山口聡子 ,
液を定量する際、溶媒で高倍率に希釈すると農薬群由来
高取 聡 , 梶村計志 , 尾花裕孝 : 高濃度農薬検出試験液の
のマトリックス効果が顕在化した。マトリックスを補い
測定 -GC-MS/MS 測定における農薬群由来のマトリック
つつ希釈する、あるいは検量線用測定溶液中の農薬数を
ス効果の顕在化 -, 第 110 回日本食品衛生学会学術講演
減ずることで、共存農薬群由来のマトリックス効果を抑
制することが可能となった。
会 , 京都 (2015)
5) 福井直樹 , 高取 聡 , 北川陽子 , 起橋雅浩 , 石川悦子 , 藤
2)GC-MS/MS 分析のスクリーニング時に活用している市
山貴友 , 古田雅一 , 梶村計志 , 尾花裕孝 : 放射線損傷塩基
販野菜果実ジュース(A 社製品)の代替性を検証するた
である 5,6- ジヒドロチミジンを指標とした新規照射食
23
平成 27 年度 研究実施 / 終了報告書
品検知法の開発,第 110 回日本食品衛生学会学術講演会 ,
まとめ、搬入検体および農薬の検出傾向等について解析
京都 (2015)
を行う。搬入回数が多く、かつ未評価の食品(グレープ
6)山口聡子 , 高取 聡 , 吉光真人 , 阿久津和彦 , 北川陽子 ,
福井直樹 , 小阪田正和 , 梶村計志 , 尾花裕孝 : 残留農薬分
析における野菜果実ジュースのマトリックス効果の比
フルーツ等)について優先的に妥当性を評価し、検査項
目に反映する。
2) ポリエチレングリコール 300(PEG300)をアナライ
較 , 第 52 回全国衛生化学技術協議会年会 , 静岡 (2015)
トプロテクタントとして使用した場合、一部のピレスロ
7)高取 聡 , 福井直樹 , 北川陽子 , 起橋雅浩 , 梶村計志 , 古
イド系農薬が GC 注入口で分解する現象が認められる。
田雅一 , 尾花裕孝 : 5,6- ジヒドロチミジンを指標とした
この現象の要因について、注入時の PEG300 負荷量と
新規照射食品検知法の開発 , 第 52 回全国衛生化学技術
共存農薬濃度等との関連性、農薬の構造上の特徴につい
協議会年会 , 静岡 (2015)
(誌上発表)
て検証する。
[ 照射食品の検知法 ]
1) 福井直樹 , 高取 聡 , 山口聡子 , 北川陽子 , 吉光真人 , 小
1) 今年度開発した DHThd を指標とする新規検知法につい
阪田正和 , 梶村計志 , 尾花裕孝 : 汎用マトリックス添加
て、多様な食品への適用性を検証する。特に既存の検知
標準溶液を活用した野菜類および果実類中の残留農薬一
法では履歴判定が困難な香辛料、甲殻類等を優先的に検
斉分析法の妥当性評価 , 食品衛生学雑誌 , 56, 178-184
討する。また、当該検知法と既存の方法(2- アルキル
(2015)
シクロブタノン(ACB)法)との相関性を検証する。
平成 28 年度の研究実施計画
(研究方法)
[ 残留農薬等の分析 ]
1) 食品類型導入後 2 年(H26 〜 27 年度)の検査結果を
24
2) 食品の放射線照射履歴の検知指標となる ACB につい
て、
常温および冷凍条件下での長期安定性(照射後 3 年)
を比較する。
平成 27 年度 研究実施 / 終了報告書
食品中に残留する微量有害物質に関する研究
衛生化学部食品化学課
研究代表者 起橋雅浩
共同研究者 小西良昌、柿本健作、永吉晴奈、内田耕太郎、山口貴弘、山口瑞香、小阪田正和
学会及び誌上発表等
目的
家畜に対して医薬品を使用する際に、用法に従わず大量
(学会発表)
に投与すると、薬剤が食肉中に残留してヒトが間接的に摂
1)Nguyen, D.T.,Ngoc, D.H.M., Bui,T.L.,Nguyen, D.P., Dang,
取するおそれがある。これが常態化すると、抗菌剤が効か
V.C., Le, H.N., 起橋雅浩 , 山口貴弘 , 内田耕太郎 , 小西良
ない耐性菌の発現を誘発し、健康リスクを招く恐れがある。
昌 , 原田和生 , 梶村計志 , 久米田裕子 , 平田收正 , 山本
そのため、動物用医薬品には食品中の残留基準値が設定さ
容 正 : Antibiotic Residue Monitoring for Animal Food
れている。これら動物用医薬品等の食品中で残留が制限さ
in HoChiMinh City, Vietnam( ベ ト ナ ム ホ ー チ ミ ン 市
れる微量有害物質について、分析法の開発・改良並びに実
における畜水産物中の残留抗菌剤モニタリング), 第
態調査等を行い、食の安全性に関する情報発信を行う。
52 回北米残留化学物質ワークショップ(52nd North
平成 27 年度 研究実施状況
American Chemical Residue Workshop), フロリダ (2015)
2)Nguyen, D.T.,Ngoc, D.H.M., Bui,T.L., 内田耕太郎 , 小西良
1) 動物用医薬品の分析
昌 , 起橋雅浩 , 山口貴弘 , 原田和生 , 梶村計志 , 久米田
ホルモン剤検査法を合成抗菌剤検査法に集約できるか検
裕子 , Nguyen, D.P., Dang, V.C., Le, H.N., 平田收正 , 山本
討したが、感度や食品由来成分の影響により集約不可能と
容正 : Antibiotic residue monitoring for meat and egg in
確認した。ホルモン剤については現行法を改良し、より迅
Ho Chi Minh City, Vietnam in 2014 - 2015(ベトナム
速簡便・高感度にする検討を実施中である。
ホーチミン市における肉、鶏卵中の残留抗菌剤モニタ
2)ST/JICA 地球規模課題対応国際科学技術協力「薬剤耐性
リング 2014-2015), 第 52 回北米残留化学物質ワー
細菌発生機構の解明と食品管理における耐性菌モニタリ
ク シ ョ ッ プ(52nd North American Chemical Residue
ングシステムの開発」への参画
Workshop), フロリダ (2015)
昨年度までに複数の合成抗菌剤が鶏肉や豚肉に残留して
3) 内田耕太郎 , 小西良昌 , 原田和生 , 起橋雅浩 , 山口貴
いる実態を明らかにした。平成 27 年度は 6 月、8 月、11
弘 , Ngoc, D.H.M., Bui,T.L., Nguyen, D.T., Nguyen, D.P.,
月の 3 回にわたり現地へ渡航し、約 300 検体を分析した。
Khong, T.D., Tran, T.H., Nguyen, N.T.,Le, V.H., 梶村計志 ,
その結果、残留する抗菌剤の傾向や、鶏卵においては出荷
久米田裕子 , Pham, T.K., Pham, N.K.,Le, H.N., 平田收正 ,
元により検出率が大幅に異なることなどが判明した。この
山本容正 : Antibiotic residue monitoring for Freshwater
ことから、ベトナムでは一部の生産者は薬剤の使用規制に
Products in Ho Chi Minh City and Thai Binh, Vietnam
(ベ
意識が乏しく、一般的に薬剤が残留した食品が流通してい
トナムホーチミン市とタイビンにおける淡水域生産物
る可能性が示唆された。また、当所において残留抗菌剤が
中の残留抗菌剤モニタリング), 第 52 回北米残留化学
薬剤耐性細菌発生に影響を及ぼす可能性を検証するため、
物質ワークショップ(52nd North American Chemical
ESBL 産生菌と標準大腸菌間で薬剤耐性プラスミド接合伝
達実験及び薬剤添加によるプラスミド伝達への影響評価実
Residue Workshop), フロリダ (2015)
4) 小西良昌 , 内田耕太郎 , 山口貴弘 , 起橋雅浩 , 原田和
験を行った。
生 , 久 米 田 裕 子 , Ngoc, D.H.M., Bui,T.L., Nguyen, D.T.,
3) 下痢性貝毒の分析法検討
Nguyen, D.P., Le, H.N., Dang, V.C.,平田收正 , 山本容正 :
下痢性貝毒試験法が機器分析法に変更され、オカダ酸群
ベトナム・ホーチミンにおける魚類中合成抗菌剤の残留
(OA、DTX1、DTX2)の基準値が設定された。このことか
ら、当所において、LC-MS/MS を用いた二枚貝試料中のオ
カダ酸の分析法を構築、妥当性評価を行った。
実態 , 第 24 回環境化学討論会 , 札幌 (2015)
5) 内田耕太郎 , 小西良昌 , 原田和生 , 起橋雅浩 , 山口貴弘 ,
Ngoc, D.H.M., Nguyen, D.T., Nguyen, D.P., 梶村計志 , 久米
田裕子 , Le, H.N., 平田收正 , 山本容正 : Antibiotic residue
monitoring for freshwater products in Ho Chi Minh City,
Vietnam, 第 24 回環境化学討論会 , 札幌 (2015)
25
平成 27 年度 研究実施 / 終了報告書
6) 山口貴弘 , 起橋雅浩 , 原田和生 , 小西良昌 , 内田耕太郎 ,
管理用データを蓄積し、問題点の有無を明らかにする。問
Ngoc, D.H.M., Bui,T.L., Nguyen, D.T., Nguyen, D.P., Thien,
題点がある場合は分析法の改良を検討する。また、ホルモ
B.D.H., Phan, B.H., 梶 村 計 志 , 久 米 田 裕 子 , 平 田 收 正 ,
ン剤検査法の効率化を検討する。試料由来マトリックス成
Dang, V.C., 山本容正 : ベトナムにおける食品中の残留抗
分による分析結果への影響の低減を目指して、有用な検量
菌薬実態調査およびモニタリングシステム構築に向けた
線作製法や定量手法を検討する。
取り組み , 第 110 回日本食品衛生学会学術講演会 , 京都
2)ST/JICA 地球規模課題対応国際科学技術協力「薬剤耐性
(2015)
細菌発生機構の解明と食品管理における耐性菌モニタリ
7) 山口瑞香 , 山口貴弘 , 永吉晴奈 , 柿本健作 , 起橋雅浩 ,
ングシステムの開発」への参画
梶村計志 : 下痢性貝毒分析法の妥当性評価 , 第 110 回日
これまでの実態調査結果をまとめ、国際雑誌等への発表
本食品衛生学会学術講演会 , 京都 (2015)
を行う。また、薬剤耐性に関与するプラスミドに関して研
究を進める。
(誌上発表)
1) 内田耕太郎、起橋雅浩、柿本健作、山口貴弘、永吉晴奈、
小西良昌、梶村計志 : LC-MS/MS による食品中合成抗菌
3) レポーターアッセイによる食品中残留抗菌剤種類別判
別法の開発
剤・駆虫剤一斉分析法の妥当性評価 , 大阪府立公衆衛生
食品中残留抗菌剤の検査において、従来の微生物学的試
研究所研究報告 , 53, 36-45 (2015)
験法では抗菌剤の種類を特定できず、ターゲットを絞っ
2) 山口瑞香 , 山口貴弘 , 柿本健作 , 永吉晴奈 , 起橋雅浩 ,
た効率的な確認試験が行えない。また、ELISA 等のイムノ
梶村計志 : 貝 9 種類についての下痢性貝毒分析法の妥当
アッセイでは、網羅的に検出できない。そこで、本研究で
性評価 , 食品衛生学雑誌 , 57, 19-22 (2016)
は、抗菌剤の種類によって活性化の程度が異なるプロモー
平成 28 年度の研究実施計画
(研究方法)
1) 動物用医薬品の分析
今年度に開発した分析法を広範囲の試料へ適用して精度
26
ターの特性を生かして、低濃度抗菌剤を網羅的に、かつ種
類を特定して検出できるスクリーニング試験法の開発を試
みる。
平成 27 年度 研究実施 / 終了報告書
食品中のアレルギー物質等に関する研究
衛生化学部食品化学課
研究代表者 吉光真人 共同研究者 清田恭平、野村千枝、粟津薫、柿本葉、山口瑞香、柿本幸子、昌山敦
研究目的
1) 清田恭平 , 川津健太郎 , 坂田淳子 , 村上太郎 , 昌山敦 ,
吉光真人 , 紀雅美 , 梶村計志 , 山野哲夫 : オレンジアレル
食品中のアレルギー物質 ( 特定原材料等 ) や遺伝子組換
ゲンに対するモノクローナル抗体の作出 , 第 110 回日
え食品の行政検査は、食品の適正な流通管理を促すことか
本食品衛生学会学術講演会 , 京都 (2015)
ら、大阪府下における食の安全・安心を担保する仕組みと
2) 村上太郎 , 紀雅美 , 工藤鮎子 , 昌山敦 , 清田恭平 , 山野
して特に重要である。本研究では、タンパク質や DNA を
哲夫 : ELISA 法による特定原材料の検査における内部品
指標とする新規または既存の検査法の開発・改良に取り組
質管理手法の検討 ,AOAC International 日本セクション
む。また、検査の迅速性等の向上と併せて検査可能な食品
2015 年次大会 , 東京 (2015)
試料と検査項目の拡充、および関連分野の必要性の高い調
査研究の実施を目指す。
平成 27 年度 研究実施状況
1) 特定原材料の試験法の改定:平成 25 年度および 26 年
度の検査法評価を反映し、特定原材料の試験法を改定し
た。
(誌上発表)
1)Kiyota, K., Kawatsu, K., Sakata, J., Yoshimitsu, M., Akutsu,
K., and Kajimura, K.: Development of Sandwich ELISA for
Quantification of the Orange Allergen Profilin (Cit s 2),
Food Agric. Immunol ., 27, 128-137 (2016)
2) 清田恭平 , 竹元晶子 , 岡島沙織 , 森野静香 , 栫井訓 , 佐
久間淳子 , 吉光真人 , 阿久津和彦 , 梶村計志 : 大阪府 7
2) オレンジアレルゲン(Cit s 2)分析:リコンビナント
Cit s 2 に対する複数種類のモノクローナル抗体を組合
市の小学校給食における食物アレルギー対応に関する調
査 , 食品衛生学雑誌 , 56, 151-156 (2015)
せて ELISA の構築を検討した。構築した ELISA は、リ
3) 野村千枝 , 梶村計志 : マイクロチップ電気泳動法を用い
コンビナント Cit s 2、オレンジ抽出物、その抽出物か
た特定原材料の確認検査法の開発 , 大阪府立公衆衛生研
らアフィニティ精製で得られた Cit s 2 に高い反応性を
究所研究報告 , 53, 22-25 (2015)
有していた。一方、柑橘類 10 種類および野菜果実類
4) 清田恭平 , 吉光真人 , 阿久津和彦 , 梶村計志 : トウモ
10 種類の各抽出物に対する反応性が低いことから、Cit
ロコシの遺伝子組換え食品検査における試料由来 DNA
s 2 特異的であると考えられた。
断片化の影響 , 大阪府立公衆衛生研究所研究報告 , 53,
3) 大豆加工品に対するイオン交換樹脂タイプキットを用
26-30 (2015)
いた DNA 抽出精製法の改良:大豆加工品でのカラム通
平成 28 年度の研究実施計画
液状況を改善するため、除タンパク処理を追加し、操作
手順を最適化したところ、抽出精製操作に必要な時間を
短縮することができた。
4) 大豆アレルゲンタンパク分析の検討:LC-MS/MS を用
(研究方法)
1) アレルゲンタンパク機器分析法の検討:大豆アレルゲ
ンタンパクについて、LC-MS/MS での機器分析法を確立
いて大豆アレルゲンタンパクの機器分析法における基礎
する。また、食品中からのアレルゲンタンパクの抽出、
的な測定条件を検討した。
精製条件を検討し、食品中の大豆アレルゲンタンパクの
5) その他:小麦粉ふるい操作後の小麦アレルゲンの飛散
動態を解析した ( 論文投稿中 )。
学会及び誌上発表等
(学会発表)
濃度を調査する。リコンビナント大豆アレルゲンタンパ
クを作製し、分析時の標準品として用いる。
2) オレンジアレルゲン分析:構築した ELISA の妥当性評
価を行い、オレンジの生鮮品や加工食品における Cit s
2 定量法の確立を目指す。
27
平成 27 年度 研究実施 / 終了報告書
残留性化学物質によるヒト曝露とその影響に関する研究
衛生化学部食品化学課研究代表者 小西 良昌
共同研究者 柿本健作、永吉晴奈、柿本葉、先山孝則(大阪市立環境科学研究所)、山本美幸(カ
ネカテクノリサーチ)、鳥羽陽(金沢大学)、中野武(大阪大学 )
研究目的
で代謝し,前後の AhR 活性を比較したところ,BUVS の
種類により代謝後の活性値に差があることが判明した.ま
本研究は,環境や人体,野生生物での残留性が問題視
た活性が低下した BUVS には代謝物が存在することを確認
されている,塩素系農薬,有機ハロゲン難燃剤 (PBDE,
した。
HBCD, デクロランプラス (DP) ) ,多環芳香族炭化水素類
5) 母乳及び食品中 PCBs の鏡像異性体分析
(PAHs, ハロゲン化 PAHs),紫外線吸収剤 (BUVSs),PCBs
キラル分子の鏡像異性体(エナンチオマー)は,生体内
等の残留性化学物質による環境や生体残留レベル及びヒト
では代謝酵素などの機能性生体分子が立体構造を区別する
曝露の実態に加え,鏡像異性体を有する POPs について,
ため,生体内挙動や生理活性に違いが生じる.結果,残
その影響を評価することを目的とする。食品と生物試料を
留性や毒性の強さは大きく異なる.保存乳脂肪(1973 -
含む環境中濃度を測定すると共に,in vitro 毒性試験を行
2008 年)を用いて,PCB #183 (2,2’ ,3,4,4’ ,5’ ,6-hepta
い,摂取量及びヒト残留量における毒性を調べる。得られ
CB) のエナンチオマー別分析を行い,Enantiomer Fraction
た結果を基に上記化学物質のヒトへの影響を総合的に評価
(EF) 値の経年推移を明らかにするとともに , Total diet
し,公衆衛生の向上に役立てる。
study (TDS) を用いて食品摂取との関係を推察した.食品
平成 27 年度 研究実施状況
(魚介類)中の PCBs 濃度は経年的に緩やかに減少してい
るが,
PCB#183 の EF 値はほとんど変化していない.一方,
1) 有機ハロゲン系難燃剤
母乳中 #183 濃度は経年的に減少しているにもかかわら
大気粉塵(PM)中デクロラン類の粒径毎濃度分布を明
ず,EF 値は上昇しており,ヒト体内では,(-) 方が (+) よ
らかにした.分析対象としたデクロラン類のうち DP の
りも代謝されやすいことを見出した.これら研究成果は海
みが検出された.10 月に捕集した PM に比べ 1 月に捕集
外英文誌に投稿,掲載された。
した試料では特に,2.5-1.0 μ m,1.0-0.5 μ m,0.5-0.1
6) ネオニコチノイド系農薬の核内受容体活性
μ m の大気中で長距離移動性を有する蓄積モードにお
ネオニコチノイド系農薬のヒト核内受容体活性を調べ
いて PM 濃度の上昇がみられ,DP 濃度も同様に 2.5-1.0
た.ヒト AhR 及び甲状腺ホルモンレセプターのアゴニス
μ m,1.0-0.5 μ m において顕著な上昇がみられた.< 0.1
ト作用を検討したがいずれも陰性であった。
μ m の画分には他の画分に比較し高い濃度ではないもの
7) 陰膳中の POPs 分析
の DP が存在が認められた.捕集した PM 中 DP は平均で
京都大学医学部小泉研究室生体試料バンクより,福島県
67% が 2.5 μ m 以下の画分に存在し,13% が 0.1 μ m 以
及び京都府の陰膳試料計 55 検体の提供を受けて POPs を
下の画分に存在した。
測定,摂取量を明らかにし,環境化学討論会(札幌)で発
2) ハロゲン化 PAHs
表した。
Cl-PAHs の中で環境中濃度が比較的高い Cl-Pyrene につ
学会及び誌上発表等
いて体内動態を明らかにした.代謝酵素を用いた in vitro
実験により 3 つの主要代謝物の存在を確認し,それらが
(学会発表)
3Cl-pyren-1-ol,6Cl-pyren-1-ol,8Cl-pyren-1-ol で あ る と
1) 小西良昌 , 先山孝則 , 柿本健作 , 永吉晴奈 , 原田浩二 ,
同定した.また CYP1A1,1A2,1B1 酵素の中で 1A1 が最も
小泉昭夫 , 中野 武 : 陰膳中残留性有機汚染物質の鏡像異
代謝能が強く,各種酵素によって 3 化合物の生成割合に
性体分析第 , 24 回環境化学討論会 , 札幌 (2015)
差が生じることを見出した。
3) タンチョウヅル中の POPs 分析
2) 先山孝則 , 小西良昌 , 柿本健作 , 永吉晴奈 , 東條俊樹 ,
原田浩二 , 小泉昭夫,中野 武 : 陰膳を用いた残留性有機
タンチョウヅルの大腿筋試料について過去の個体から現
汚染物質 (POPs) の曝露実態調査 −有機塩素系化合物
在の個体にかけて POPs 分析を行った。
類の摂取量− , 第 24 回環境化学討論会 , 札幌 (2015)
4) 紫外線吸収剤(BUVSs)
ヒト AhR 活性を持つ BUVSs をヒトチトクローム P450
28
3) 山本美幸 , 松尾和彦 , 川口広利 , 小西良昌 , 柿本健作 ,
中野 武 : 高分解能 GC/MS によるポリ塩化ビフェニル
平成 27 年度 研究実施 / 終了報告書
(PCBs) 光学異性体の分析第 , 24 回環境化学討論会 , 札
平成 28 年度の研究実施計画
幌 (2015)
4) 柿本健作 , 永吉晴奈 , 小西良昌 , 梶村計志 , 大浦健,畑
光彦 , 古内正美 , 唐寧 , 早川和一 , 鳥羽 陽 : 塩素化多環芳
(研究方法)
1) 本年度同定した 1- クロロピレン代謝物 3 種に,親化合
香族炭化水素類のナノ粒子中における粒径分布の解明 ,
物より強い AhR 活性及び細胞毒性があることが認めた.
第 24 回環境化学討論会 , 札幌 (2015)
今後,これら代謝物の毒性機序を解明を試みる.変異原
5) 永吉晴奈 , 柿本健作 , 稲角直也 , 谷篤史 , 小西良昌 , 梶
性の有無を念頭に各種変異原性試験や DNA アダクトー
村計志 , 大浦健 , 中野 武 , 早川和一 , 鳥羽 陽 : ヒトチト
ム解析を実施する.また,ヒト P450 酵素によるハロゲ
クローム P450 によるクロロピレンの in vitro 代謝解析 ,
ン化 PAH 代謝挙動実験を引き続き行う。
第 24 回環境化学討論会 , 札幌 (2015)
6)Konishi Y., Kakimoto K., Nagayoshi H., Nakano T.:
Comparison of Enantiomeric Ratio of PCB Congeners
2) 大気中ナノ粒子中における Cl-PAHs,PAHs 及びハロゲ
ン系難燃剤の濃度レベル及び粒径毎の濃度分布を明らか
にする。
Between Breast Milk and Fish, International Symposium
3) 特別天然記念物であるタンチョウヅルの種保存に向け,
on Environmental Chemistry and Toxicology , Ehime
現在及び過去における有機ハロゲン化合物によるツル汚
(2016)
染実態を解明する。
(誌上発表)
1)Konishi Y., Kakimoto K., Nagayoshi H., Nakano T.,: Trends
in the Enantiomeric Composition of Polychlorinated
B i p h e ny l A t r o p i s o m e r s i n H u m a n B r e a s t M i l k ,
Environmental Science and Pollution Research , (2015)
2)Kakimoto K, Nagayoshi H, Inazumi N, Tani A, Konishi
Y, Kajimura K, Ohura T, Nakano T, Tang N, Hayakawa
4)AhR を活性化する BUVSs についてヒト S-9 や CYPs ミ
クロソームを用いて代謝機序の解明を試みる.また,ヒ
ト曝露量評価に向けた食品前処理法の検討を行う。
5)PCBs についてヒト P450 酵素による代謝挙動実験を行
い,
代謝に寄与する因子や代謝後の体内挙動を解明する。
6) 母乳中の PCB#183 以外のキラル性 PCB の分析・分離
法を検討し,経年推移を明らかにする。
K, Toriba A.,: Identification and characterization of
7) ネオニコチノイド系農薬や新規難燃剤などについて,
oxidative metabolites of 1-chloropyrene., Chemical
酵母レポータージーンアッセイを用いてアゴニスト及び
research in toxicology , 28, 1728-1736 (2015)
アンタゴニスト活性を網羅的に評価する。
8) 福島県及び京都府の陰膳試料中 POPs 分析に DP を加え
るとともに,キラル性 POPs の分析も行い震災の影響を
考察する。
29
平成 27 年度 研究実施 / 終了報告書
ELISA 法を用いたアレルギー物質検査の内部品質管理手法の検討
衛生化学部食品化学課 開発研究
昌山敦
研究終了
研究目的
値を用いて回収率を算出し、測定における不確かさを推定
した。卵タンパク質添加試料と乳タンパク質添加試料の測
アレルギー物質を含む食品原材料では、表示義務のある
定では室間精度の RSD が 11% 程度となったが、各々の機
特定原材料 7 品目(卵、乳、小麦、そば、落花生、えび・
関における各要因の精度は概ね RSD が 5% 未満であった。
かに)と表示推奨の 20 品目が定められている。特定原材
小麦グリアジン添加試料の測定では濃度が 30 μ g/g を超
料の検査では、スクリーニング検査として市販の ELISA
えたが、回収率計算で補正をしたところ、各機関の室内併
キットを使用するが、測定対象となるタンパク質の標準物
行精度は RSD が 5% 未満であり、室間精度も RSD が 6%
質が国内では販売されていない。そのため、添加回収試験
程度であった。
などが実施できず、試験検査の品質管理が困難である。
結論
本研究では、欧米で販売・使用されているアレルギー原
材料の分析管理試料を用い、ELISA 法を用いたアレルギー
入手可能な精度管理試料、および独自で調製した標準溶
物質検査の内部品質管理手法の検討を目的とした。また、
液を用いて ELISA 法によるアレルギー物質の測定を行っ
大阪市立環境科学研究所とも連携し、試験室間も含めた精
た。研究機関、プレートおよびサンプルを 3 要因とする
度管理手法の検討も行った。
枝分かれ実験計画を用いて、各要因の分散を推定した。各
研究実施状況
要因の精度を評価し、測定の不確かさを推定することで内
部品質管理手法の検討を行った。
欧米において精度管理試料として販売されている Food
内部品質管理に適した試料を検討したが、海外製の管理
Allergens Laboratory 社のアレルギー原材料分析管理試料
試料や標準物質が国内の検査キットに適さない場合がある
を、2 つの ELISA キット(日本ハム製 FASTKIT エライザ
ことが示唆された。
Ver.III シリーズ、森永生科学研究所製モリナガ FASPEK エ
管理試料の測定および標準溶液を用いた添加回収試験に
ライザ II 特定原材料測定キット)を用いて測定を行った。
より得られる測定の不確かさは真値の許容範囲として利用
研究機関 2 カ所において、2 つのプレートで、3 サンプル
することができ、内部品質管理における目標値として用い
ずつを 3 ウェルで測定する 3 段枝分かれ計画を用いて各
ることができると考えられる。
要因における分散を推定し、測定の不確かさを推定した。
室間精度の RSD 値が大きくなる場合があったが、添加
卵、乳、小麦の精度管理試料(含有濃度 :10 μ g/g)を測
回収試験からの回収率補正計算は試験室間の精度管理手法
定した結果、乳試料では各要因のばらつきは小さく、室
としての利用にも適していると考えられた。
間精度における相対標準偏差(RSD)も 10% 未満であっ
た。一方、卵試料はサンプル間におけるばらつきが大きく
成果の活用
(RSDsample>12%)、小麦試料は 2 キットにおける測定値が
検量線範囲を超えたため、両試料は管理試料として適さな
本研究では、特定原材料の検査における精度管理手法が
いと判断された。
十分に整備されていない中、内部品質管理の手法として可
また、調製した標準溶液(卵タンパク質、乳タンパク質、
能性のある方法を見出すことができた。本研究で用いた手
小麦グリアジン(EU における標準物質))を陰性試料に終
法を日々の検査に導入し、データの積み重ねを行っていく
濃度 10 μ g/g で添加する添加回収試験を行った。添加回
ことで内部品質管理の手法として確立することが期待され
収試験で得られる測定値と、添加した標準溶液のみの測定
る。 30
平成 27 年度 研究実施 / 終了報告書
医薬品等の品質確保及び健康被害防止に関する研究
衛生化学部薬事指導課
研究代表者 川口正美、田上貴臣、皐月由香、中村暁彦、宮川(青山)愛倫
研究目的
1) 吉川正人 , 有本恵子 , 石原理恵 , 伊藤美千穂 , 岡坂衛 ,
河端昭子 , 酒井英二 , 嶋田康男 , 高井善孝 , 田上貴臣 , 十
医薬品等(医薬品、医薬部外品、化粧品など)は、製造
倉佳代子 , 西尾雅世 , 野村涼坪 , 守安正恭 , 山本豊 , 横倉
工程及び流通過程において厳しく管理され、ほとんどの製
胤夫 : 生薬品質集談会報告第 47 報-ゴシュユについて
品の品質は良好である。しかし、一部の製品については企
-加速試験による成分変動について , 第 44 回生薬分析
業の自主回収や行政の措置対象となるものがある。また、
シンポジウム , 大阪 (2015)
医薬品成分を配合した違法な健康食品が販売され、健康被
2) 中村暁彦 , 土井崇広 , 沢辺善之 : MALDI-TOF/MS を用い
害の発生も懸念されている。
た痩身用健康食品のスクリーニング法について , 第 52
本研究では、医薬品等の品質確保を目的とする分析法の
回全国衛生化学技術協議会年会 , 静岡 (2015)
改良・開発等を行う。また、無承認無許可医薬品となる健
康食品等を発見する目的で、医薬品成分の迅速な検出法等
の検討を行う。
(誌上発表)
1) 山本豊 , 十倉佳代子 , 有本恵子 , 伊藤美千穂 , 岡坂衛 ,
河端昭子 , 酒井英二 , 嶋田康男 , 高井善孝 , 田上貴臣 , 野
平成27年度 研究実施状況
1.医薬品等の品質確保に関する研究
村涼坪 , 守安正恭 , 横倉胤夫 , 吉川正人 : ビンロウジに
ついて : HPLC によるアルカロイド分析法の検討と市場
品の分析 , 生薬学雑誌 , 70, 17-26 (2016)
1) 水道原水中の細菌について、日本薬局方に記載されて
2) 青山愛倫 , 田上貴臣 , 皐月由香 , 川口正美 , 沢辺善之 : 化
いる蛍光染色による細菌数の迅速測定法により測定を行
粧品中の防腐剤の検査結果(平成 24-26 年度)及び一
い、細菌の染色性を検討した。
斉分析法の改良 , 大阪府立公衆衛生研究所研究報告 , 53,
2) 難水溶性製剤の溶出性に影響を及ぼす界面活性剤の品
質に関する研究として、ラウリル硫酸ナトリウムの界面
活性剤について、試薬として適切な規格範囲について検
討を行ったが、適切な規格値を設定することはできな
かった。
52-55 (2015)
平成28年度の研究実施計画
(研究方法)
1.医薬品等の品質確保に関する研究
3) 化粧品中の防腐剤の一斉分析法の検討を行い、内標準
1) 生薬・漢方製剤の品質および安全性の確保を目的とし
法に変更することで、多検体の化粧品に対応可能な迅速
て、生理活性の高い主要成分や有害物質について、迅速・
かつ簡便な試料溶液の調製方法に改良することができ
簡便な分析法を開発し、実態調査を行う。平成 28 年度
た。
は主に生薬「ジョテイシ」等を対象とする。
2.無承認無許可医薬品による健康被害防止に関する研究
2) 難水溶性製剤の溶出性に影響を及ぼす界面活性剤の品
痩身効果を暗示する健康食品に配合されたことのある医
質に関する研究として、規格には適合するものの、測定
薬品成分について、マトリックス支援レーザー脱離イオン
条件によっては溶出試験に使用できない品質の界面活性
化飛行時間型質量分析計(MALDI-TOF/MS)を用いたス
剤について、測定条件の変更によって使用が可能となる
クリーニング方法を検討した。その結果、マトリックスに
かを検討する。
α-シアノ-4-ヒドロキシけい皮酸を用いることで、シ
2.無承認無許可医薬品による健康被害防止に関する研究
ブトラミン等12成分のプロトン付加体のピークを検出し
ダイエット効果など各種効果を標榜する健康食品や化
た。
粧品について、迅速・簡便な検査を目的に、試験法を改
学会及び誌上発表等
(学会発表)
良する等の検討を行う。また、これらに添加される恐れ
がある医薬品成分について、前処理の方法や、構造類似
体を含む多成分を同時に分離・同定する方法を開発する。
31
平成 27 年度 研究実施 / 終了報告書
危険ドラッグに関する研究
衛生化学部薬事指導課
研究代表者名 土井崇広、田上貴臣、淺田安紀子、武田章弘
研究目的
1)田上貴臣 , 武田章弘 , 淺田安紀子 , 土井崇広 , 皐月由香 ,
川口正美 , 沢辺善之 : 誘導体化 GC/MS を用いた NBOMe
近年危険ドラッグ使用者による交通事故や事件、また使
シリーズの高感度分析 , 第 52 回全国衛生化学技術協議
用者自身の救急搬送事例が相次いで発生し、大きな社会問
会年会 , 静岡 (2015)
題となっている。大阪府では平成 24 年に「大阪府薬物の
2) 土井崇広 , 淺田安紀子 , 武田章弘 , 田上貴臣 , 沢辺善之 :
濫用の防止に関する条例」を制定するなど、有害な薬物の
危険ドラッグ分析・規制における有機合成の有用性 . 第
濫用防止をはかっている。
52 回全国衛生化学技術協議会年会 . 静岡 (2015)
危険ドラッグの分析では、法規制後に未規制の新たな類
3) 武田章弘 , 田上貴臣 , 淺田安紀子 , 土井崇広 , 皐月由香 ,
似化合物が次々と出現するため、化合物の特定には規制薬
川口正美 , 沢辺善之 : マルチモードカラムを用いた簡便
物と類似化合物との区別が重要となる。本研究では、危険
な危険ドラッグスクリーニング法の開発 , 第 52 回全国
ドラッグ製品の簡便迅速な分析法開発等を目的とし、多成
衛生化学技術協議会年会 , 静岡 (2015)
分の同時分析法や標準品合成法等の構築を行う。
平成27年度 研究実施状況
4) 淺田安紀子 , 土井崇広 , 田上貴臣 , 武田章弘 , 皐月由香 ,
川口正美 , 沢辺善之 : 大阪府における危険ドラッグ分析
について , 日本法中毒学会第 34 年会 , 福岡 ( 2015)
(誌上発表)
1) 麻薬として規制されている 25I-NBOMe 及びその位置
1)Asada, A., Doi, T., Takeda, A., Tagami, T., Kawaguchi,
異性体の計 3 化合物について、HPLC を用いた分離条件
M., Satsuki, Y., Sawabe, Y. : Identification of analogs of
を見出し、分離分析のための基礎データを得た。
LY2183240 and the LY2183240 2′ -isomer in herbal
2) 海外で危険ドラッグとして流通が認められた化合物の
products.Forensic Toxicology, 33(2), 311-320 (2015)
うち、国内での流通の危険がある 8 種類について化学
2)Doi, T., Asada, A., Takeda, A., Tagami, T., Katagi, M.,
合成および機器分析を行った。さらに受容体機能評価を
Matsuta, S., Kamata, H., Kawaguchi, M., Satsuki, Y.,
行うことにより、それら化合物の危険性を評価した。合
Sawabe,Y., Obana, H.: Identification and characterization
成した化合物はいずれも、カンナビノイド受容体に対し
of
て強いアゴニスト活性を示した。
found in illicit drug products, Forensic Toxicology , 34,
3) 類似した構造を持つ危険ドラッグ 6 成分について、ヒ
ト代謝酵素による代謝実験を行った。その結果、危険ド
ラッグ成分の含窒素骨格の違いが代謝されやすさに影響
する傾向があることを明らかにした。
4) カルボキサミド型合成カンナビノイドのうち、光学活
α -PVT,
α -PBT, and their bromothienyl analogs
76-93 (2016) 平成28年度の研究実施計画
(研究方法)
指定薬物等のスクリーニング分析法の開発
性を持つものについて各エナンチオマーを合成し、その
1) 近年、次々と新たな薬物が指定薬物等規制薬物のリス
分離識別法を開発した。また、買い上げ試験で 5F-AB-
トに加わっている。これらの規制薬物には、互いに構造
PINACA・5F-AMB を検出したハーブ製品に当該分離法を
が類似した化合物が多数あることから、一種類の分析機
適用し、その殆どが(S)体であることを明らかにした。
器で識別・同定することが難しく、化合物の識別・同定
5) 新たに合成・購入した約 60 成分の危険ドラッグ標準
までにかかる時間を増加させる要因となっている。
品 に つ い て、LC/PDA、GC-MS お よ び LC-QTOF/MS の
本研究では危険ドラッグの分析時間短縮を目的として、
分析条件の設定を行うとともに、スペクトルライブラリ
各種分析装置を用いた指定薬物およびその類似化合物の
高感度・迅速識別同定法を構築する。
を作成した。
学会及び誌上発表等
(学会発表)
32
指定薬物およびその類似化合物の異性体分析法の開発
1) 近年の薬物規制強化に伴い、指定薬物の数は増加の一
途をたどっている。これらの薬物には同一分子量の異性
平成 27 年度 研究実施 / 終了報告書
体が存在する場合があるが、標準品の販売等はほとんど
行われていない。本研究では規制薬物の正確な分析を目
2) 各種質量分析装置を用い、指定薬物およびその類似化
合物の高感度・迅速識別同定法を構築する。
的として、それらの異性体を化学合成し配備する。また、
異性体を明確に区別可能な分析法の開発を行う。
33
平成 27 年度 研究実施 / 終了報告書
小規模分散型生活排水処理システムに関する研究
衛生化学部生活環境課
研究代表者名 奥村早代子、中野 仁、東恵美子、肥塚利江
研究目的
度の有機物存在下でも大きく増殖した。
・浄化槽処理水やみなし浄化槽処理水に、新たな有機物と
生活系排水処理の整備として、従来からの下水道中心か
して他の施設の処理水や雑排水を添加した場合、25℃
ら、近年では整備の迅速性や経済性などの観点から、市町
でも大腸菌が大幅に増殖することは観察されなかった。
村の費用で地域一帯に浄化槽を設置する面整備事業が行わ
・浄化槽の処理水と別の大腸菌が接触した場合、大腸菌の
れるようになってきた。本研究は、府民の生活に密接に関
増殖は認められず、ろ過滅菌した処理水では増殖した。
係のある浄化槽による小規模分散型生活排水処理システム
以上のことから、培地のような微生物に資化されや
に関し、より良い水質の確保や運転管理技術、処理技術、
すい有機物を添加した場合を除き、河川水や実排水では
情報管理方法、整備手法などを検討する。
存在する細菌フローラとの競合があるのか、現段階では
平成 27 年度 研究実施状況
1) サカマキガイが確認された浄化槽の水質改善を目的に、
間欠ばっ気法の導入を試みた。間欠ばっ気運転を開始し、
25℃の条件下でも他の排水との接触により大腸菌が大
きく増殖する現象は観察されていない。一方、夏期に菌
数が多いのではなく、冬期は低温のため環境中で大腸菌
が減少しているのではとの仮説は否定された。
清掃後 1 年間の水質状況の確認を行った 2 基は、清掃
学会及び誌上発表等
後約 6 ヵ月間は、透視度が 40 度以上に改善し、BOD
が 12mg/L 以下で推移し、平均値が 10mg/L 以下であっ
(学会発表)
たが、それ以降の清掃までの期間は、透視度の低下傾向
1) 奥村早代子 , 中野仁 , 波元恭子 , 森川洋佑 : 住宅に設置
が見られて BOD が上昇し、1 年間安定した水質とはな
される浄化槽の使用水量及び放流水質について , 第 29
らなかった。6 ヵ月を境に水質が変化した原因は明らか
回全国浄化槽技術研究集会 , 福島 (2015)
にできなかった。さらに、サカマキガイの発生を確認し、
2) 中野 仁 : 浄化槽から排出された大腸菌群と大腸菌の
透 視 度 が 11 度 と 低 く、BOD が 54mg/L と 34mg/L を
その後の挙動 , 第 29 回全国浄化槽技術研究集会 福島
観察した浄化槽に、間欠ばっ気を導入したものでは、清
(2015)
掃からの約 8 ヵ月間で、透視度の改善が認められ、BOD
(誌上発表)
は、5 ~ 31mg/L(平均 12.3mg/L)、10 ~ 25mg/L(平
均 17.1mg/L)の範囲で推移した。
以上のことから、透視度低下等の水質悪化が見られ、
その上、サカマキガイが確認された浄化槽について、間
1) 奥村早代子 , 東恵美子 , 肥塚利江 , 浅野和仁 : 小型浄化
槽の運転状況と処理水質の実態調査(第 1 報), 大阪府
立公衆衛生研究所研究報告 , 53, 76-80 (2015)
2) 杉原敬太 , 奥村早代子 , 西村貴文 : 浄化槽の維持管理指
欠ばっ気を導入したところ、サカマキガイの生息は継続
導による放流水と河川水質の改善について、
生活と環境、
して認められるものの、透視度や BOD に改善傾向が見
Vol.60, No8, 48-50 (2015)
られた。
2) 水温の高い夏期に河川水中の大腸菌群数や大腸菌数が
増加する傾向がある原因を、模擬排水や河川水、浄化槽
3) 中野仁 , 奥村早代子 , 佐竹哲 , 角谷和志 : 集合住宅に付
帯する低負荷浄化槽への間欠ばっ気運転導入について、
浄化槽研究 , vol.28、No.1, 1-7 (2016)
処理水などを用いて 10℃と 25℃で 1 ~ 3 日間の振盪
平成 28 年度の研究実施計画
培養で増殖の有無を検討した。
その結果
(研究方法)
・河川水や浄化槽処理水をそのままを振盪した場合、そこ
1)夏期に環境水中の大腸菌群数や大腸菌数が多い原因の
に存在する大腸菌群や大腸菌はいずれの水温でも減少す
検討に際し、糞便中に排泄され、栄養要求性から環境水
る傾向にあり、25℃ではむしろその傾向が強かった。
中では増殖しないとされている腸球菌を同時に測定し、
・純粋培養した大腸菌や河川水中の大腸菌群・大腸菌は、
大腸菌との月変動パターンの比較から夏期にどこかで増
25℃の条件下では希釈培地で調整した BOD 10mg/L 程
殖しているのか、単に排出負荷が増大しているのかを検
34
平成 27 年度 研究実施 / 終了報告書
家庭用品に関する衛生学的研究
衛生化学部生活環境課
研究代表者 味村真弓
共同研究者 所内家庭用品検査担当者、中島晴信 ( 国立医薬品食品衛生研究所 )
研究目的
昭和 48 年に「有害物質を含有する家庭用品の規制に関
を継続する。
3) クレオソート油で処理された枕木に含まれる3つの多
環芳香族炭化水素の試験法:
する法律」が制定され、20 物質が規制対象であったが、
公定法で示されたのとは異なる種類のキャピラリーカラ
24 種の特定芳香族アミンを生ずるおそれのあるアゾ化合
ムを用いて GC/MS 分析し、ピーク分離等の違いについて
物が平成 28 年 4 月1日から新たに規制対象物質として追
検討した。DB-1 カラムでは、
コーティング剤の膜厚が厚く、
加される。
カラム長が長い方(内径 0.25mm ×膜厚 1 μ m ×カラム
また、新しい製品の開発に伴って、規制外の化学物質が
長 60m)がピーク分離が良かった。しかし、分析に長時
家庭内で使用され、それらによる健康被害の報告事例は後
間を要し(1試料あたり 90 分以上)
、遅くに検出される
を絶たない。家庭用品に使用されている化学物質の安全性
規制対象物質のピークは非常にブロードとなり、確認には
確保は重要な課題である。そこで、本研究では、家庭用品
適するが定量性の面で問題があった。一方、極性が異なる
の試験・検査・研究業務遂行のため、公定分析法の検討や
VF-17(内径 0.25mm ×膜厚 0.15 μ m ×カラム長 30m)
開発を行う。さらに、未規制物質の中で健康被害を引き起
は早いリテンションタイムで検出される物質のピーク分離
こす可能性のある物質を検索し、分析法の開発及び市販製
は不十分であるが、分析に要する時間も半分以下で、遅く
品の分析調査などを行い、健康被害の未然・再発防止を計
に検出される規制対象物質はピーク形状がシャープで、前
ることにより、府民の健康の保護に資する事を目的として
述の DB-1 カラム(内径 0.25mm ×膜厚 1 μ m ×カラム
実施する。
長 60m)よりも定量性が良好であった。そこで、膜厚が
平成 27 年度 研究実施状況
1) リン系防炎加工剤トリス (1- アジリジニル ) ホスフィン
オキシド (APO) 分析法の追加検討:
公定法に定められている精製法は、ジクロロメタン等の有
厚く、カラム長の長い DB-1 カラムで物質の存在を確認し
た後、近年、PAH 分析用をうたったカラムが各メーカか
ら種々販売されているが、それらを比較検討し、分析機器
や条件に最適なカラムを選択して定量を行うのがよいと考
えられた。
害試薬を使用し、パックドカラムを用いた GC/FPD 分析法
学会及び誌上発表等
で、検出感度及び精度の低い方法であるため、新しい前処
理法と GC/MS を用いた分析条件を作成した。昨年度、新
しい方法で分析を行ったところ、サロゲートによる補正を
行うと天然繊維の綿 100%製品では 100%前後の良好な
回収率を得ることができるが、化繊では製品によって回収
(学会発表)
なし
(誌上発表)
なし
率が異なり、CV 値も大きいことがわかった。そこで今年
平成 28 年度の研究実施計画
度は化繊素材の混紡比の異なる製品、同じ化繊素材で複数
の製品について分析し、添加回収率を比較したところ、同
(研究方法)
じ素材でも染料や加工剤の違いにより回収率が異なること
1) 平成 28 年度から 24 種の特定芳香族アミンを遊離する
が判明した。そこで、その原因について追加検討したとこ
アゾ色素に関する基準が新たに施行される。今回規制対
ろ、繊維の素材による違いに加えて、色素等の繊維の加工
象となるのは、アゾ染料由来の特定芳香族アミンのみで
物質と APO が反応して複合物ができたり、分解が起こる
あるが、規制対象外であるアゾ顔料や繊維そのもの(ウ
ことが回収率低下の要因となる可能性が推察された。
レタンを混紡した繊維や化繊)からも 24 種の特定芳香
2) 平成 27 年度難燃剤加工繊維製品の試買検査時に、GC/
族アミンが遊離されることがわかっている。乳幼児向け
MS を用いてトリス(2,3- ジブロムプロピル)ホスフェ
の衣料品は、染料で染色された繊維に顔料で絵柄が施さ
イトの分析を行った。今回の検体については、特に問題
れていることが多く、大人用では補正下着等の伸縮性の
点は無かったが、今後も、試買検査時に実試料での検証
高い繊維にはウレタンが混紡されている。これら製品の
35
平成 27 年度 研究実施 / 終了報告書
検査時には、検出された特定芳香族アミンがアゾ色素の
2) クレオソート油で処理された枕木に含まれる3つの多
還元により遊離されたアミンかそれ以外の物由来である
環芳香族炭化水素の試験法について、使用する有害試薬
か判別する必要があるが、現在のところ、参考となる情
の削減や検査機器への深刻な汚染などの問題を改善する
報が殆どない。そこで、検査結果について正確な判定を
ための検討を行う。
するために必要な参考情報収集のため検討を行う。
36
平成 27 年度 研究実施 / 終了報告書
環境微生物に関する調査研究
衛生化学部生活環境課 * 企画総務部企画調整課 ** 感染症部ウイルス課 研究代表者 肥塚利江、枝川亜希子、東恵美子
共同研究者 木村明生 *、
倉田貴子 **
研究目的
アメーバ共培養後試料は 57 試料(83.8%)が陽性であっ
た。アメーバ共培養法を行うことにより、
30 試料(44.1%)
近年、レジオネラやクリプトスポリジウム等の水系感染
で 10 倍以上の菌数増加がみられた。いずれの方法でもレ
を原因とした集団感染が各地で起こり、公衆衛生上の問題
ジオネラが検出されなかった試料は 6 試料(8.8%)のみ
となっている。これら病原微生物によるヒトへの感染を防
であった。アメーバ共培養法とリアルタイム PCR 法を組
止するためには、種々の環境水に適用可能な検出法の確立
み合わせる方法により、浴槽水中にレジオネラが高率で存
と感染源および汚染実態の正確な把握が必要である。本研
在することが明らかになった。
究では、これらの病原微生物の正確かつ迅速な検出法を確
学会及び誌上発表等
立し、水環境における汚染実態について検討する。
(学会発表)
平成 27 年度 研究実施状況
1) 枝川亜希子 , 木村明生 , 田中榮次 , 足立伸一 , 宮本比呂
志 : アメーバ共培養法を用いた浴槽水中に存在するレ
1) クリプトスポリジウム等に関する研究
ジオネラ属菌汚染実態の解明 , 日本防菌防黴学会 , 大阪
大阪府内の水道原水として利用されている環境水につい
(2015)
て、クリプトスポリジウムおよびジアルジアの存在状況お
(誌上発表)
よび遺伝子型の調査を約 10 年にわたって行った。その結
1)Edagawa, A., Kimura, A., Kawabuchi-Kurata, T., Adachi,
果、クリプトスポリジウムについて 12 の遺伝子型が、ジ
S., Furuhata, K. and Miyamoto, H.: Investigation of
アルジアについて 3 つの遺伝子型が確認された。その中
Legionella contamination in bath water samples by
には、野生動物由来と考えられるものも多かったが、ヒト
culture, amoebic co-culture, and real-time quantitative
に感染性のあるものや下水等の生活排水由来と考えられる
PCR methods, Int J Environ Res Public Health, 12,
のもあり、また、複数の遺伝子型が同一地点から検出され
13118-13130 (2015)
る例もあり、汚染源は単一では無いと思われた。
2) レジオネラと宿主となる自由生活性アメーバに関する
研究
2) 枝川亜希子 : 行政の動き 府民の健康と生活の安全を
守る~大阪府立公衆衛生研究所~ , ビルと環境 , 152,
48-51 (2016)
レジオネラは、VBNC(viable but non-culturable)状態
3) 枝川亜希子 , 中野 仁 , 東恵美子 , 奥村早代子 , 安達史恵 ,
になる菌種であることや培養不能菌種が存在するため、培
松島加代 , 足立伸一 : 大阪府内の特定建築物内水景施設
養法のみでは汚染状況の把握は十分ではない。本研究では、
におけるレジオネラ調査 , 大阪府立公衆衛生研究所研究
レジオネラがアメーバ内で増殖することを利用したアメー
報告 , 53, 64-68 (2015)
バ共培養法の手法を使って、浴槽水中レジオネラ汚染実態
平成 28 年度の研究実施計画
調査を行った。
浴槽水 68 試料について、培養法、リアルタイム PCR 法
(研究方法)
によりレジオネラの検出を行った。アメーバ共培養法は A
1) 環境水におけるクリプトスポリジウム等他の病原微生
canthamoeba を使用し、得られた試料について同様にレ
物の汚染実態の調査やその検出法の検討を引き続き行
ジオネラを検出し、それぞれの検出結果の比較検討を行っ
う。
た。培養法により、浴槽水は 11 試料(16.2%)、アメーバ
2) 環境水におけるレジオネラ汚染実態の解明を引き続き
共培養後試料は 4 試料(5.9%)からレジオネラを検出した。
行う。来年度は、特定建築物の冷却塔を対象としたレジ
リアルタイム PCR 法により、浴槽水は 46 試料(67.6%)
、
オネラ生息調査を環境衛生課と共に実施する予定であ
る。
37
平成 27 年度 研究実施 / 終了報告書
住居と職場における有害化学物質への曝露状況と
健康影響に関する研究
衛生化学部生活環境課 * 企画総務部企画調整課
研究代表者 吉田仁
共同研究者 吉田俊明 *
学会及び誌上発表等
研究目的
住宅や職場における室内環境中の化学物質への曝露はヒ
(学会発表)
トに様々な健康影響を引き起こす。本研究は、化学物質に
1) 吉田俊明 : 一般住民における尿中ピレスロイド代謝物
よる室内環境汚染の実態を明らかにするとともに曝露によ
のガスクロマトグラフィー / 質量分析による定量法 , 平
る健康影響について解析し、それらの未然防止と軽減に役
成 27 年度室内環境学会学術大会 , 沖縄 (2015)
立つ資料を得ることを目的とする。
平成 27 年度 研究実施状況
(誌上発表)
なし
平成 28 年度の研究実施計画
子どもにおける化学物質の曝露に着目し、一般生活環境
中で広範に使用され、内分泌かく乱作用や神経毒性作用を
有する殺虫剤 ( 有機リン系、ピレスロイド系 )、可塑剤 ( フ
タル酸系 ) および難燃剤 ( 有機リン系 ) を対象として、一
(研究方法)
・上記フタル酸エステル類の尿中代謝物の分析方法を確立
する。
般の子どもにおける各薬剤の体内汚染レベルを明らかにす
・これまでに難燃剤および殺虫剤の曝露指標となる尿中代
るとともに、子どもの通う学校教室内及び自宅室内の各薬
謝物の分析法を確立した。これらの方法を用いて、一
剤による空気汚染が体内汚染に及ぼす影響について把握す
般の子どもの尿中に排泄される各薬剤 ( 難燃剤、殺虫
ることを中期的な研究目標としている。( 文部科学省科学
剤、可塑剤 ) の代謝物量を調査し、各薬剤の体内汚染レ
研究費補助金採択課題 , 基盤 C、平成 26 ~ 29 年度 )
ベルを明らかにすることを計画している。本調査は人を
様々な家庭用品 ( 主に合成樹脂製品類 ) に可塑剤として
対象とする疫学研究に該当するため、当所倫理審査規程
使用されるフタル酸エステル類を対象として、生活環境下
に従い研究の倫理審査申請を行い承認を得ている (No.
におけるその吸収量を把握するための指標となり得る尿中
1310-11)。
代謝物の一斉分析法の検討を進めている。
38
平成 27 年度 研究実施 / 終了報告書
水道水の安全性に関する研究
衛生化学部生活環境課
研究代表者 小泉義彦
共同研究者 中島孝江、高木総吉、吉田 仁、安達史恵、田中榮次
学会及び誌上発表等
研究目的
水道水は我々が生活する上で必要不可欠なものである。 (学会発表)
現在、水道水は水道法による水道水質基準により飲用水と
1) 安達史恵 , 山口貴弘 , 河原隆二 , 中野仁 , 足立伸一 : 病
して安全性が保たれている。しかし、水質基準で取り上げ
院排水および水環境中の薬剤耐性菌について、第 50 回
られている化合物はほんの一部でしかない。水道水の安全
日本水環境学会 , 徳島(2016)
性をより確実なものにするため、本研究は主として水道水
2) 高木総吉 , 吉田仁 , 安達史恵 , 小泉義彦 , 中島孝江 , 田
質基準等で規制されていない化合物、分析法が定まってい
中榮次 , 足立伸一 : 大阪府内浄水場における要検討農薬
ない化合物の水道水中レベルを把握し、水道水の安全性を
類の検出状況と浄水処理性 , 日本薬学会第 136 年会 , 横
評価する。また、大阪府内水道事業体を対象に外部精度管
理を実施することにより水道水の安全性を確保するための
分析技術の向上を図る。
平成 27 年度 研究実施状
1) 分析法開発
浜 (2016)
3) 高木総吉 , 吉田仁 , 安達史恵 , 小泉義彦 , 中島孝江 , 田
中榮次 , 足立伸一 : 大阪府内河川におけるネオニコチノ
イド系殺虫剤の検出状況 , 第 52 回全国衛生化学技術協
議会年会 , 静岡 (2015)
4) 吉田仁 , 高木総吉 , 安達史恵 , 小泉義彦 , 中島孝江 , 田
グリホサート、その分解物 AMPA およびグルホシネー
中榮次 , 足立伸一 : 大阪府内浄水場における 6 農薬の
トの誘導体化 - 固相抽出 -LC/MS/MS 法を検討した。その
検出状況 , 第 52 回全国衛生化学技術協議会年会 , 静岡
結果、分析前に 2% リン酸溶液を LC に流し、金属部分を
(2015)
リン酸コーティングすることによりピーク形状を良好に
5) 小林憲弘 , 久保田領志 , 鈴木俊也 , 川元達彦 , 高木総吉 ,
でき、目標値の 1/100 の濃度に調製した水道水で良好な
吉田仁 , 小高陽子 , 薗部真理奈 , 小林浩 , 望月映希 , 上村
妥当性評価の結果を得た。また、10 種類の浄水処理対応
仁 , 西以和貴 , 佐藤学 , 辻清美 , 宮本紫織 , 大窪かおり ,
困難物質の直接注入 -LC/MS/MS 法を検討した。注入量を
五十嵐良明 : 対象農薬リスト掲載農薬の新規 6 分析法の
50 μ L にすることにより、0.001 ~ 0.01 mg/L まで定量
妥当性評価 , 第 52 回全国衛生化学技術協議会年会 , 静
できる方法を開発した。
岡 (2015)
2) 外部精度管理
6) 高木総吉 : 水道水質検査担当者を対象とした水質分析
大阪府内水道事業体、保健所および衛生研究所を対象に
法研修について , 第 52 回全国衛生化学技術協議会年会 ,
銅及びその化合物とジクロロメタンの水道水質外部精度管
静岡 (2015)
理を実施した。その結果、外れ値となった機関は両項目と
(誌上発表)
も 1 機関であり、概ね良好な結果が得られた。また建築
1) 吉田仁 , 高木総吉 , 小泉義彦 , 足立伸一 : 直接注入 - 高
物飲料水水質検査業登録業者を対象に銅及びその化合物と
速液体クロマトグラフ - タンデム型質量分析計 (LC-MS/
3 種類のハロ酢酸の外部精度管理を実施した。その結果、
MS) 法によるネライストキシンを指標とした水試料中カ
銅及びその化合物で 4 機関が外れ値となった。ハロ酢酸
ルタップの定量 , 水道協会雑誌 , 84(8), 2-7(2015)
では 2 機関が評価の対象外となったが外れ値となった機
2) 高木総吉 , 安達史恵 , 吉田仁 , 小泉義彦 , 中島孝江 , 田中
関は存在しなかった。
榮次 , 足立伸一 : 水中農薬類分析における安定同位体元
3) 浄水場における実態調査
素標識化合物の有用性について , 水道協会雑誌 , 84(4),
10 種類の浄水処理対応困難物質とアクリルアミドにつ
15-21 (2015)
いて大阪府内の 30 の浄水場を対象に存在実態を調査した。
平成 28 年度の研究実施計画
その結果、全ての浄水場からも検出されず問題のない結果
であった。
(研究方法)
消毒副生成物であるハロアセトアミド類の分析法の開発
39
平成 27 年度 研究実施 / 終了報告書
と分析対象化合物を決めないノンターゲット分析の検討を
よび建築物飲料水検査業登録業者を対象に外部精度管理を
試みる。また環境衛生課の協力のもと、浄水場における未
実施し、大阪府内の水質検査体制および検査技術に関する
規制物質の調査を実施する。さらに大阪府内水道事業体お
問題点を考察する。
40
平成 27 年度 研究実施 / 終了報告書
大気汚染および住環境による健康影響に関する研究
衛生化学部生活環境課 研究代表者 大山正幸 共同研究者 東恵美子、中島孝江、竹中規訓(大阪府立大学)、東 賢一(近畿大学)、安達修一(相
模女子大学)、亀田貴之(京都大学)、大西一成(鳥取大学)、峰島知芳(国際基督教大学)、山本
勝彦(大阪府立環境農林水産総合研究所)、Kyong-Whan Moon(高麗大学・韓国)
研究目的
大気汚染や住環境の健康影響への関与を、疫学的調査、
1) 大山正幸ら : モルモット特異的気道抵抗に対する亜硝
酸曝露の影響 , 第 56 回大気環境学会 , 東京 (2015)
2)Ohyama et al.: Nitrous Acid induces Pulmonary
動物曝露実験、試験管内実験などで明らかにする。大気汚
Emphysema-like Alterations in Guinea Pigs, The 13th
染物質の健康影響では、黄砂やディーゼル排気粒子などの
International Conference on Atmospheric Sciences and
大気中浮遊粒子状物質や亜硝酸や二酸化窒素などのガス状
Applications to Air Quality, (ASAAQ13), Kobe (2015)
汚染物質と喘息症状やアレルギー反応などとの関係を明ら
3) 大山正幸 : 喘息影響指標である特異的気道抵抗に与え
かにする。また住環境の健康影響では、スギ材が二酸化窒
る亜硝酸の影響 , 黄砂等に関する共同研究会 , 平成 27
素を除去することに着目し、部屋の木質化の効果を検討す
年度連絡会 , 大阪 (2016)
る。また、タバコ煙や建材などに含まれる主要な化学物質
4) 大山正幸ら : Effects of Nitrous Acid Exposure on Specific
とアレルギー反応などとの関係について調査研究を行う。
Airway Resistance of Guinea Pigs: 第 89 回日本薬理学会 ,
これら健康影響に関する研究成果を府民の健康増進対策に
横浜 (2016)
資する。
5) 大山正幸ら : モルモット曝露実験における特異的気道
平成 27 年度 研究実施状況
1) 文科省科研費の助成を受け、亜硝酸のモルモット曝露
抵抗と亜硝酸との関係 , 日本薬学会第 136 年会 , 横浜
(2016)
(誌上発表)
実験による、喘息影響指標の特異的気道抵抗測定実験を
1) 峰島知芳(第 6 著者:大山正幸)ら : 水田土壌からの
2 回実施した。2 回の実験データを基に有意差検定した
亜硝酸ガス(HONO)直接発生フラックスの測定および
結果、0.7ppm 以上の亜硝酸の 4 週間から 7 週間の曝露
大気濃度への寄与評価 , 大気環境学会誌 , 50, 249-256
で有意な特異的気道抵抗の亢進が認められた。
(2015)
2) タバコ煙と亜硝酸の併用曝露による腫瘍発生実験につ
平成 28 年度の研究実施計画
いては平成 27 年度の科研費助成は受けられなかったが、
継続して申請中。平成 28 年度に助成を受けることがで
きれば実施する。
(研究方法)
1) 文科省科研費の助成を受け、亜硝酸の動物曝露実験
3) 亜硝酸の喘息影響調査に関する論文を作成中。多種化
(ラット)による、喘息影響指標の特異的気道抵抗測定
学物質過敏症の論文作成を優先したため、まだできてい
実験を継続実施する。また、既存の実験結果については
ない。
論文が受理されることを目指す。
4) 黄砂の生体影響に関する疫学調査については、19 名の
2) タバコ煙と亜硝酸の併用曝露による腫瘍発生実験につ
協力者の回答では有意な結果は認められなかった。 既
いて文科省科研費に申請中。助成が受けられれば実施す
存の黄砂の実験に関する論文を作成中。多種化学物質過
敏症の論文作成を優先したため、まだできていない。
5)3 歳 6 か月児健診受診者と母親を対象に実施した 2 年
間の疫学調査結果について、論文を作成中。多種化学物
質過敏症とアレルギー疾患との関連や各症状の発症要因
の解析については、疫学の専門家の近畿大学の東先生に
も協力してもらうことにした。
学会及び誌上発表等
(学会発表)
る。
3) 亜硝酸の生体影響について学術的図書の作成依頼が
あったため、原稿作成する。また、予定の論文作成も継
続する。
4) 黄砂に関する研究については、既存の実験結果の論文
作成などする。
5)3 歳 6 か月児健診受診者と母親を対象に実施した 2 年
間の疫学調査結果、室内のホルムアルデヒド濃度は築年
数が古いほど高い傾向にあったことなどについて、論文
を作成する。
41
平成 27 年度 研究実施 / 終了報告書
環境放射能および環境放射線の測定
衛生化学部生活環境課
研究代表者 肥塚利江、東恵美子、足立伸一
研究目的
る極微量のヨウ素 131 を検出した。しかし、いずれもそ
人工放射性降下物および原子力施設等からの放射性物質
の濃度は非常に低く府民への健康影響には全く問題のない
漏洩による環境汚染の有無を明らかにすること、また放射
レベルであった。また、いずれのモニタリング強化におい
能事故時の影響評価や対策等の基礎資料を得る事を目的と
ても異常値は検出されなかった。
し、大阪府内における環境放射線ならびに環境および食品
学会及び誌上発表等
中の放射能レベルを把握する。
(学会発表)
平成 27 年度 研究実施状況
なし
(誌上発表)
昨年度に引き続き、原子力規制庁委託による環境放射能
1) 東恵美子 , 肥塚利江 , 足立伸一 : 大阪府における環境お
調査として、大阪府内の環境および食品試料中の放射能お
よび食品中放射能調査(平成 26 年度報告), 大阪府立
よび空間放射線量率調査を実施した。降水の全ベータ放
公衆衛生研究所研究報告 , 53,69-75 (2015)
射能測定約 90 件、環境および食品中のガンマ線核種分析
平成 28 年度の研究実施計画
25 件、空間放射線量率測定 2196 件 (366 件、6 ヶ所 ) を行っ
た。また、それに加えて 2011 年 3 月に発生した福島第 1
( 研究方法)
原発の事故を受け、モニタリング強化として、サーベイメー
引き続き、大阪府内における環境放射線ならびに環境お
タによる地上 1m における空間線量率の測定を 12 件 (1 ヶ
よび食品中の放射能レベルを把握するために、来年度も原
月に 1 度 )、蛇口水のガンマ線核種分析を 4 件 (3 ヶ月に
子力規制庁の委託調査を下記の通り行う。
1 度 ) 行った。さらに、平成 28 年 1 月 6 日の北朝鮮の 4
1) 全ベータ放射能測定 : 降水について、低放射能測定装
回目の核実験実施の発表を受け、当日から 1 月 14 日まで
モニタリングの強化として、降下物及び大気浮遊塵のガン
マ線核種分析を行った。
平成 27 年度における環境および各種食品中の放射能お
置を用いて測定。
2) ガンマ線核種分析: 大気浮遊じん、降下物、上水、土壌、
海水、海底土、牛乳、野菜について、ゲルマニウム半導
体検出器を用いて測定。
よび放射線調査の結果、すべて平常値であり、人工放射性
3) 空間放射線量率: 当所屋上および府内 5 ヶ所の地上
物質の環境への新たな放出はないことを確認した。上水原
1m において、モニタリングポストを用いて連続測定。
水(淀川河川水)および蛇口水に医学利用によると思われ
42