Evidence Based Preventive Medicine ■ 原著 ■ 鉄吸収促進作用のあるDFAⅢは非貧血者では鉄過剰を引き起こさない Enhanced iron absorption by difructose anhydride Ⅲ does not cause hyperferremia in non-anemic persons Evidence Based Preventive Medicine 奥原康英 1 蜂谷幸子 1 重松典宏 1 森本恵子 2 原博3 中田理恵子 2 非貧血者の女子大生１群 20 名の 3 群に、それぞれ鉄として 6mg/日を含むヘム鉄カプセル、ピロリン酸鉄錠およびDFAⅢ（500mg/日）を含有するDFAⅢ ピロリン酸鉄錠を12 週間摂取させ、DFAⅢの併用による非貧血者の鉄過剰の可能性をその指標となる血清フェリチン値により検討した。その結果、層別解析による前潜在性鉄欠乏といわれる血清フェリチン値が 17ng/mL未満の被験者では、DFAⅢピロリン酸鉄錠の摂取のみで血清フェリチン値が有意に増加した。一方、血清フェリチン値が 17ng/mL以上の前潜在性鉄欠乏よりも鉄が充足されている被験者では、血清フェリチン値の増加はなかった。以上より、 DFAⅢの鉄吸収亢進作用は鉄の充足状態によって調整され、DFAⅢの併用が非貧血者に鉄過剰を起こす可能性はきわめて低いと考えられた。 1 株式会社ファンケル総合研究所 2 奈良女子大学研究院生活環境科学系 3 北海道大学大学院農学研究院はじめに Difructose anhydride Ⅲ（DFA Ⅲ、図１）は、イヌリンから SP H65‒7 のフルクトシルトランスフェラーゼによって生産される 1, 2)、フルクトース 2 分子から成る難消化性の二糖で、ラットやヒトの試験においてカルシウムや鉄などのミネラルの吸収を亢進させることが示されている 3‒10)。ミネラルごとの吸収亢進のメカニズムは、そのミネラルの主要な吸収経路によって異なっている。カルシウム、マグネシウムなど吸収経路が受動輸送であるミネラルは、Ussing chamberによる試験から、腸管の粘膜上皮細胞間 18 (134) 予防医療 Aggressive Vol.2 No.3 2015‒10 SAMPLE HOH2C 1 CH2 O 2 3 O O HOH2C O 2 3 CH2OH 1 図 1 DFAⅢの構造式 Copyright(c) Medical Review Co.,Ltd.