日本セラミック協会第 24 回秋季シンポジウムに参加して

特集
学生の研究活動報告−国内学会大会・国際会議参加記 15
日本セラミック協会第 24 回秋季シンポジウムに参加して
田 中 徹 也
Tetsuya TANAKA
物質化学専攻修士課程
1.はじめに
1年
3.結果・考察
私は 2011 年 9 月 6 日(火)∼9 日にわたって北海
図 1 に各粉末充填雰囲気における相対密度と焼結
道大学札幌キャンパスで開催された日本セラミック
温度の関係を示す.大気雰囲気下で粉末充填した試
協会第 24 回秋季シンポジウムに参加し,先進セラ
料は Ar 雰囲気下で粉末充填した試料よりも低温で
ミック ス の 紛 体 プ ロセ ス 科 学 の セ ッ シ ョ ン に て
相対密度 99.5% まで緻密化することが確認された.
「SD-SiC 中の酸素が緻密化と構造規則化に与える影
響」という題目で口頭発表を行いました.
2.実験方法
Si 粉末(純度:99.999%,粒径:>75 μ m,高純
度化学研究所製)と C 粉末(純度:99% up,平均
粒径:7 μ m, TGP-7,東海カーボン製)を化学量論
比 Si : C=1 : 1 になるように秤量した.秤量した粉
末と Si 3 N 4 製ボールを Si 3 N 4 製容器内へ封入
し,遊星型ボールミル(P-5,フリッチュ製)を用
いて MA 処理(ボール:粉末の重量比=40 : 1,公
Fig. 1
転速度:300 rpm, MA 時間:24 h)を行った.粉末
Effect of holding temperature on the relative density of sintered SD-SiC. Packing
atmosphere : Ar and Air atmosphere.
の秤量から粉末回収までの操作は Ar 雰囲気下(酸
素濃度<3 ppm,水分濃度<5 ppm)で行い,SPS
で用いる黒鉛製焼結型への粉末充填は大気と Ar 雰
囲気下にて行った.焼結には SPS 装置(Dr. sinter :
SPS-1050, SPS シンテック製)を使用した.焼結条
件は印加圧力 100 MPa,保持温度 1850 ∼2000℃ ,
保持時間 30 min,昇温速度 10℃/min(>1200℃)
と し た . 評 価 は 見 掛 け 密 度 測 定 , XRD ( RINT
2000,リガク製),酸素・窒素濃度分析(EMGA920, HORIBA 製)により行った.
Fig. 2
― S-131 ―
Effect of holding temperature on the stacking fault density of sintered SD-SiC. Packing atmosphere : Ar and Air atmosphere.
図 2 に XRD 測定結果から算出した各粉末充填雰
に乱れが生じたためであると考えられる.
囲気における積層欠陥濃度と焼結温度の関係を示
図 3 に酸素・窒素分析を行った試料を示し,表 1
す.積層欠陥濃度は大気雰囲気下で粉末充填した試
に図 3 中に示した試料の焼結温度,酸素濃度,窒素
料の方が Ar 雰囲気よりも高い値を示した.このよ
濃度の関係を示す.窒素濃度は Ar 及び大気雰囲気
うに積層欠陥濃度に差異が生じたのは大気中の吸着
下で粉末充填した試料において差異は確認されなか
ガスによって,構造規則化が阻害されている可能性
った.ゆえに,SD-SiC の結晶構造に影響を与えた
が考えられる.また,大気雰囲気下で粉末充填した
のは窒素ではなかったと考えられる.一方で,大気
試料は 1910℃ 以上の焼結温度において積層欠陥濃
雰囲気下で粉末充填を行った試料では,積層欠陥量
度の大幅な減少を示し,Ar 雰囲気下で粉末充填し
の減少と共に酸素濃度も大きく減少していることが
た試料と同等の値を示した.しかし,Ar 雰囲気下
確認された.積層欠陥濃度が 1910℃ 以上の焼結温
で粉末充填した試料は 1910℃ 以上の焼結温度では
度で急に低下したのは,粉末充填時に SD-SiC 粉末
積層欠陥濃度が急に高くなっていた.これは焼結温
と反応した酸素が,焼結中において SD-SiC の構造
度が高くなると共に, β -SiC である 3 C 構造以外の
規則化を阻害していたため,焼結体中の酸素濃度が
多形の存在確率が増加することが考えられる.ゆえ
減少することで構造規則化が進行したものと考えら
に,Ar 雰囲気下で粉末充填した試料において積層
れる.以上の結果から,大気雰囲気下で焼結型に
欠陥濃度が急に高くなったのは,焼結温度の上昇に
SD-SiC 粉末を充填した場合,酸素の影響により積
伴い多形の存在割合が増加することで, β -SiC 構造
層欠陥がより多く残存し,より低温で緻密化が進行
した.そして,焼結温度が 1910℃ を超えると焼結
中に酸素濃度が減少し,積層欠陥濃度は減少するこ
とが示唆された.
4.おわりに
今回,はじめての口頭発表に加えて,単身での学
会発表とゆうこともあり,とても不安がありまし
た.本番の発表において,少し発表時間を超過した
ので,今後の学会発表における時間配分には十分に
気を付けて発表練習を行いたいと考えています.ま
Fig. 3
Effect of holding temperature on the stacking fault density of sintered SD-SiC. Packing atmosphere : Ar and Air atmosphere.
た,事前に先生や先輩方に発表の指導をしていただ
いたおかげで,発表するべき内容は的確に伝えるこ
とができました.そして,今回の学会は自身を大き
く成長させてくれたと感じており,今後の研究に対
Table 1
Oxygen and nitrogen concentration
measurement result
試料 No.
焼結温度[℃] 酸素濃度[%] 窒素濃度[%]
する意欲をより強くしてくれました.
最後になりましたが,日本セラミック協会第 24
回秋季シンポジウムに参加する機会を与えてくださ
①
1794
0.03
0.14
②
1907
0.02
0.12
③
1914
0.43
0.18
ご討論,ご協力をいただきました理工学部物質化学
④
1922
0.03
0.15
科大柳研究室の皆様に深く感謝いたします.
り,研究のご指導をしてくださいました大柳満之教
授に深く感謝いたします.また,日頃より,有益な
― S-132 ―