高梁川 の水辺の生きもの調査 (平成 25 年度高梁 川 水生生物

たかはしがわ
高梁川の水辺の生きもの調査
たかはしがわ
(平成 25 年度高梁川水生生物調査)
1 調査の目的
かんきょう ほ ぜ ん い し き
たかはしがわ
たかはしがわ
高梁川に対する市民の環境保全意識の向上のために,高梁川に生息する
水辺の生きものを調査しました。
2 調査の内容
(1)調査した水辺の生きものと季節
ぎょるい
ぎょるい
ていせいどうぶつ
・魚(魚類),魚類以外の水辺の動物(底生動物),川底の石の表面に付着
そうるい
した小さな植物の仲間(藻類)について調査しました。
ぎょるい
そうるい
「藻類」については平成 25 年8月に調査しました。
・「魚類」,
ていせいせいぶつ
・「底生生物」については平成 25 年 12 月に調査しました。
(2)調査地点
たかはし し な い
たかはしがわ
・調査地点は高梁市内を流れる高梁川本流の2地点としました。
じゅうよう
( 重 要 な生きものが確認されたため,場所については示しません)
(3)調査の方法など
・調査を行った川の深さは約 10~40 ㎝くらいで,底には砂や様々な大きさ
の石がありましたが,10~50cm くらいの大きさの石が多く見られました。
ぎょるい
もぐ
とあみ
え
・
「魚類」については,潜って観察したり,柄のついた網や投網などにより
採集し,名前(種名)を調べました。
ていせいどうぶつ
すきま
・
「底生動物」については,川底の石の表面や隙間などに生息する水生生物
あみ
けんびきょう
を網などにより採集し,顕微鏡により名前(種名)を調べました。
そうるい
そうるい
けんびきょう
・
「藻類」については,川底の石の表面に付着した藻類を採集し,顕微鏡に
より名前(種名)を調べました。
1
3 調査の結果
ぎょるい
(1)魚類
ぎょるい
・13 種の魚類が確認されました。
・最も多く確認されたのは,オイカワ(地方名ハエなど)とカワヨシノボリ
(地方名ゴリなど)でした。
きちょう
ぎょるい
・貴重な魚類として,ハス,カワヒガイ,アカザ,カジカ類の4種が確認さ
し
び
が
わ
こ
れました。ハスについては,原産地である滋賀県(琵琶湖)では数が減っ
び
きちょう
わ こ さ ん
ているため貴重な魚類となっていますが,岡山県では琵琶湖産アユの放流
に混じって広がった外来生物です。
ぎょるい
確認した魚類
きちょう
No.
種
ぜつめつ き
1
ハス
ぎょるい
貴重な魚類のレベル
名
ぐ
るい
かんきょうしょう
絶滅危惧2類( 環 境 省 )
ただし,岡山県では外来生物
2 オイカワ
3 カワムツ
じゅんぜつめつ き
4
カワヒガイ
ぐ
かんきょうしょう
準 絶 滅 危惧( 環 境 省 ・岡山県)
5 ムギツク
6 カマツカ
7 モロコ類
8 ギギ
ぜつめつ き
9
アカザ
ぐ
るい
かんきょうしょう
絶滅危惧2類( 環 境 省 ・岡山県)
10 アユ
じゅんぜつめつ き
11
カジカ類
ぐ
ぜつめつ き
ぐ
るい
かんきょうしょう
準 絶 滅 危惧または絶滅危惧1類( 環 境 省 )
ぜつめつ き
ぐ
るい
じょうほう ぶ そ く
絶滅危惧2類または 情 報 不足(岡山県)
12 カワヨシノボリ
13 ヌマチチブ
きちょう
ぎょるい
注)貴重な魚類の種名を○○○で囲んでいます。
2
きちょう
ぎょるい
(参考)貴重な魚類のレベルについて
レベル
ぜつめつ き
ぐ
るい
レベルの説明
ぜつめつ
き
き
ひん
絶滅危惧1類
絶滅の危機に瀕しているもの
ぜつめつ き
ぜつめつ
ぐ
るい
きけん
ぞうだい
絶滅危惧2類
絶滅の危険が増大しているもの
じゅんぜつめつ き ぐ
そんぞく き ば ん
準 絶 滅 危惧
存続基盤が 脆 弱 なもの
じょうほう ぶ そ く
ひょうか
情 報 不足
評価するだけの 情 報 が不足しているもの
ぜいじゃく
じょうほう
ふそく
かんきょうしょう
注)くわしい説明については 環 境 省 もしくは岡山県のホームページを参考
にしてください。
3
○確認した主な魚類の説明
・ハス
び
わ
こ さ ん
岡山県内には琵琶 湖産 アユの放流に混
じって入ってきました。全長は約 30 ㎝で
す。県南部を中心とした川や水路に生息し
ています。
(写真は参考写真。出典:(公財)岡山県環
境保全事業団資料)
・オイカワ
かん
つ
ハエ,シラハエなどと呼ばれ,寒バエ釣
りで有名です。全長は約 15 ㎝です。岡山
県内の川や水路に広く生息し,放流も行わ
おす
れています。産卵時期の雄には青緑とピン
もよう
クのまだら模様が現れます。
めす
(写真は雌)
・カワムツ
おす
モツ,ネコマタギ(産卵時期の雄)など
と呼ばれ,岡山県内の川や水路に広く生息
しています。全長は約 20 ㎝です。最近,
カワムツとヌマムツ(岡山県では主に平野
部に生息)の2種に分けられました。
・カワヒガイ
ホヤルなどと呼ばれ,岡山県内の川や水
路に広く生息しています。全長は約 12 ㎝
です。数が減っており,今回確認されたの
は1匹のみでした。ドブガイなどの生きた
二枚貝に卵を産み付ける面白い習性が知
られています。
4
・ムギツク
頭から尾まで太い黒線が走る魚で,岡山
県内では川に広く生息しています。全長は
約 20 ㎝です。オヤニラミ(スズキの仲間)
やドンコ(ハゼの仲間)の産卵場所に卵を
産み付ける面白い習性が知られています。
(写真は未成魚)
・カマツカ
スナホリなどと呼ばれ,岡山県内の川や
水路に広く生息しています。全長は約 20
㎝です。いつも川の底に張り付いており,
もぐ
よく砂に潜ります。
(写真は参考写真。出典:(公財)岡山県環
境保全事業団資料)。
・ギギ
ナマズに似ていますが,ヒゲが8本あり,
岡山県内の川や水路に広く生息していま
す。全長は約 30 ㎝です。背びれと胸びれ
とげ
とげ
さ
の付け根の棘に毒があり,棘に刺されると
大変痛みます。
・アカザ
チョウキリなどと呼ばれ,岡山県内では
流れの速い川の底石の多い場所に生息し
ていますが,数は多くありません。全長は
10 ㎝です。ヒゲが8本あり,背びれと胸
とげ
とげ
さ
びれの付け根の棘に毒があり,棘に刺され
ると大変痛みます。
5
・アユ
と も づ
友釣りの対象として有名で,岡山県内の
川に広く放流されています。全長は約 25
そう
らんそう
㎝です。石の表面に生育する藻類(藍藻・
けいそう
珪藻)を食べるため,生息場所にはゆがん
しょっ こ ん
だキスマークのような 食 痕 (はみあと)
しょっ こん
が見られます。(写真は 食 痕)
・カジカ類
一見,ハゼの仲間に見えますが,海に生
息するカサゴの仲間です。全長は約 15 ㎝
です。岡山県内では,流れの速い川の底石
の多い場所に生息していますが,数は多く
ありません。
岡山県にはよく似た2種類(大卵型,中
卵型)が生息するとされています。
・カワヨシノボリ
ゴリなどと呼ばれ,岡山県内の川や水路
の底に広く生息するハゼの仲間です。全長
は約 8 ㎝です。岡山県ではよく似たヨシノ
ボリ類の仲間が何種類か生息しています
が,本種は数が最も多く,最も広く生息し
ています。
・ヌマチチブ
岡山県内では,県中南部の川の底に生息
するハゼの仲間です。全長は約 15 ㎝で
す。底に石の多い場所に生息しています。
(写真は死体)
6
ていせいどうぶつ
(2)底生動物
ていせいどうぶつ
・37 種の底生動物が確認されました。
こんちゅう
・最も多く確認されたのは,昆虫 のシロタニガワカゲロウ幼虫とナミコガ
タシマトビケラ幼虫でした。
・きれいな水に生息する種として,ナミウズムシ(プラナリアの仲間)の他,
こんちゅう
昆 虫 のエルモンヒラタカゲロウ幼虫,チラカゲロウ幼虫,オオマダラカ
ゲロウ幼虫,カミムラカワゲラ幼虫,ヒゲナガカワトビケラ幼虫,ニン
ギョウトビケラ幼虫などが確認されました。
ていせいどうぶつ
かんきょうしょう
・確認された底生動物から,環 境 省 の生物学的水質判定を行った結果,1
地点で水質階級Ⅰ(きれいな水)
,もう1地点で水質階級Ⅰ-Ⅱ(きれい
な水~ややきれいな水)と判定されました。
かんきょうしょう
(水質階級についてのくわしいことは 環 境 省 のホームページを見てく
ださい)
(参考)水質階級表
水質階級
水質階級Ⅰ
水質
きれいな水
水質階級Ⅱ
ややきれいな水
水質階級Ⅲ
きたない水
水質階級Ⅳ
とてもきたない水
7
ていせいどうぶつ
確認した底生動物
ブン ルイ
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
種名
分類(仲間分け)
プラナリア類
貝類
ヒル類
カゲロウ類
トンボ類
カワゲラ類
昆虫類
トビケラ類
ハエ類
コウチュウ類
ナミウズムシ
カワニナ
シジミ類
イシビル類
フタバコカゲロウ幼虫
コカゲロウ類幼虫
シロタニガワカゲロウ幼虫
エルモンヒラタカゲロウ幼虫
チラカゲロウ幼虫
クロマダラカゲロウ幼虫
オオマダラカゲロウ幼虫
シリナガマダラカゲロウ幼虫
アカマダラカゲロウ幼虫
ヤマサナエ幼虫
ダビドサナエ幼虫
オナガサナエ幼虫
カミムラカワゲラ幼虫
フタツメカワゲラ類幼虫
クラカケカワゲラ類幼虫
アミメカワゲラ類幼虫
ナミコガタシマトビケラ幼虫
ウルマーシマトビケラ幼虫
エチゴシマトビケラ幼虫
ヒゲナガカワトビケラ幼虫
チャバネヒゲナガカワトビケラ幼虫
ムナグロナガレトビケラ幼虫
ニンギョウトビケラ幼虫の巣
カクツツトビケラ類幼虫の巣
グマガトビケラ類幼虫の巣
ウスバガガンボ類幼虫
ヒメガガンボ類幼虫
ガガンボ類幼虫
ユスリカ類幼虫
アシマダラブユ幼虫
アシナガミゾドロムシ類幼虫
マルヒラタドロムシ類幼虫
ヒラタドロムシ幼虫
8
ていせいどうぶつ
○確認した主な底生動物の写真
ナミウズムシ
No.1 ナミウズムシ
No.2 カワニナ
No.3 シジミ類
No.4 イシビル類
No.7 シロタニガワカゲロウ幼虫
No.8 エルモンヒラタカゲロウ幼虫
9
No.9 チラカゲロウ幼虫
No.11 オオマダラカゲロウ幼虫
No.12 シリナガマダラカゲロウ幼虫
No.14 ヤマサナエ幼虫
No.15 ダビドサナエ幼虫
No.16 オナガサナエ幼虫
10
No.17 カミムラカワゲラ幼虫
No.18 フタツメカワゲラ類幼虫
No.22 ウルマーシマトビケラ幼虫
No.24 ヒゲナガカワトビケラ幼虫
No.26 ムナグロナガレトビケラ幼虫
No.25 チャバネヒゲナガカワトビケラ幼虫
11
No.27 ニンギョウトビケラ幼虫の巣
No.28 カクツツトビケラ類幼虫の巣
No.29 グマガトビケラ類幼虫の巣
No.30 ウスバガガンボ類幼虫
No.31 ヒメガガンボ類幼虫
No.32 ガガンボ類幼虫
12
No.33 ユスリカ類幼虫
No.34 アシマダラブユ幼虫
No.35 アシナガミゾドロムシ類幼虫
No.37 ヒラタドロムシ幼虫
13
そうるい
(3)藻類
そうるい
・20 種の藻類が確認されました。
りょくそう
・肉眼で目立ったのはシオグサ( 緑 藻 )でしたが,最も多く生息していた
らんそう
のはビロードランソウ(藍藻)でした。
そうるい
ふゆうせい
・確認された藻類の多くは川石に付着する種類でしたが,本来は浮遊性の
種(プランクトン)も確認されました。
そうるい
確認した藻類
No.
ぶんる い
分類(仲間分け)
1
2 らん そう
3藍藻
4
5
6
7
8
9 けい そう
10 珪 藻
11
12
13
14
15
16
17 りょく そう
18 緑 藻
19
20
種 名
学 名
サヤユレモ類
ユレモ類
フォルミディウム類
ビロードランソウ
タルケイソウ類
イタケイソウ類
ハリケイソウ類
クチビルケイソウ類
クチビルケイソウ類
クサビケイソウ類
フネケイソウ類
マガリクサビケイソウ類
コメツブケイソウ類
コバンケイソウ類
ササノハケイソウ類
イカダモ類
イカダモ類
ツヅミモ類
サヤミドロ類
シオグサ
Lyngbya sp.
Oscillatoria tenuis
Phormidium tenue
Homoeothrix janthina
Melosira varians
Diatoma mesodon
Synedra ulna
Cymbella tumida
Cymbella turgidula var.nipponica
Gomphonema pseudosphaerophorum
Navicula sp.
Rhoicosphenia abbreviata
Cocconeis sp.
Surirella sp.
Nitzschia sp.
Scenedesmus acuminatus
Scenedesmus granulatus
Cosmarium sp.
Oedogonium sp.
Cladophora glomerata
注)学名:ラテン語で書かれた世界共通の名前
14
そうるい
○確認した主な藻類の説明
・ビロードランソウ
いとじょう
川底の石の表面に普通に生育する 糸 状
そうるい
えさ
の藻類です。魚類のアユの重要な餌として
知られ,アユの多い場所では,本種でほぼ
占められるとされています。
けんびきょう
(写真は顕微鏡によるものです)
・シオグサ
カワシオグサ,アオノロとも呼ばれます。
いとじょう
川底の石の表面に生育する大型で 糸 状 の
そうるい
おお
藻類です。本種が石の表面を被うと,アユ
えさ
そうるい
の餌である他の藻類が育たなくなってアユ
つ
びと
がいなくなると言われ,釣り人から敬遠さ
れています。
(写真は水中写真です)
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