河川内の自然環境について

5.河川内の自然環境について
5.5 注目種の生息状況調査
5.5.1 現況河川における注目種の生息調査結果
5.3 で注目種に設定した 5 種について、魚類調査を小石原川 5 地点、佐田川 3 地点で実
施したところ、江川ダム下流の小石原川で 37 種、寺内ダム下流の佐田川で 31 種、両河川
全体では 41 種の魚類を確認した。
注目種の調査結果は、きれいな止水域を代表する種として設定した「オヤニラミ」を全
調査地点で確認するとともに、「カゼトゲタナゴ」も筑後川合流部に近い調査地点 1,2,6
で確認した。また、「カマツカ」、「オイカワ」、「カワムツ」についても全調査地点で確認
した。
以上のことから、河川の現状から見れば、豊富な種類の魚類が確認されていると考えら
れる。
1-1)注目種(魚類)および河川形状に関する調査結果
②調査時期
・魚類相調査: 春季(H22/6/2~4)
夏季(H22/8/16~18)
秋季(H22/9/29~10/1)
・河川形状調査:秋季(H22/9/17~18)
③調査内容
<魚類相調査>
・各調査地点における魚類相の確認
・注目種(オヤニラミ、カゼトゲタナゴ、カマツカ、オイカワ、カワムツ)
の個体数の確認
<河川形状調査>
・各調査地点の河川環境基図および植生断面図の作成
図-5.15 注目種(魚類)および河川形状に関する調査内容
5-9
【第4回検討会資料】
①調査地点:
・小石原川 St.1、St.2、St.3、St.4、St.5
・佐田川
St.6、St.7、St.8
5
5.河川内の自然環境について
6
1-1)注目種(魚類)および河川形状に関する調査結果(魚類相)
St.3(夫婦石橋)
礫河床の瀬が卓越する上流域に
特徴的な魚類相(アカザ・カジ
カ・スナヤツメ等)
江川ダム
St.4
St.5(田中橋)
St.4(長谷橋)
St.5
St.3
スナヤツメ
コイ
ギンブナ
フナ属
アブラボテ
オイカワ
カワムツ
オイカワ属
タカハヤ
モツゴ
ムギツク
カマツカ
イトモロコ
ドジョウ
ヤマトシマドジョウ
アリアケギバチ
ナマズ
アカザ
アユ
オヤニラミ
ドンコ
カワヨシノボリ
St.2(東田橋)
コイ
ゲンゴロウブナ
ギンブナ
フナ属
アブラボテ
カネヒラ
セボシタビラ
ニッポンバラタナゴ
カゼトゲタナゴ
オイカワ
カワムツ
オイカワ属
タカハヤ
ウグイ
モツゴ
ムギツク
カマツカ
イトモロコ
スジシマドジョウ小型種
ナマズ
アユ
メダカ
オヤニラミ
ドンコ
トウヨシノボリ
カワヨシノボリ
カムルチー
St.1(筑後川橋)
コイ
ゲンゴロウブナ
ギンブナ
フナ属
ヤリタナゴ
アブラボテ
カネヒラ
ニッポンバラタナゴ
カゼトゲタナゴ
オイカワ
カワムツ
ヌマムツ
オイカワ属
ウグイ
モツゴ
ムギツク
カマツカ
ツチフキ
イトモロコ
スゴモロコ
スジシマドジョウ小型種
アリアケギバチ
ナマズ
アユ
メダカ
オヤニラミ
ドンコ
カワヨシノボリ
寺内ダム
小石原川
やや平坦な流れの中上流域に特
徴的な魚類相(オイカワ・カワ
ムツ・オヤニラミ等)
St.8
佐田川
St.8(寺内橋)
ウナギ
コイ
ギンブナ
オイカワ
カワムツ
オイカワ属
ウグイ
ムギツク
カマツカ
ナマズ
ワカサギ
アユ
オヤニラミ
ドンコ
オオヨシノボリ
トウヨシノボリ
カワヨシノボリ
St.7
St.2
St.7(上屋永橋)
St.6(佐田川橋)
ゲンゴロウブナ
ギンブナ
フナ属
アブラボテ
カネヒラ
セボシタビラ
ニッポンバラタナゴ
カゼトゲタナゴ
オイカワ
カワムツ
オイカワ属
カワヒガイ
ムギツク
カマツカ
イトモロコ
ドジョウ
スジシマドジョウ小型種
アリアケギバチ
メダカ
オヤニラミ
ドンコ
トウヨシノボリ
カワヨシノボリ
カムルチー
水際植生や砂泥底の豊富な中下
流 域 に 特 徴 的な 魚 類 相 (メ ダ
カ・ニッポンバラタナゴ・スジ
シマドジョウ小型種等)
St.6
筑後川
渓流的な川
St.1
平野を流れる川
コイ
ゲンゴロウブナ
ギンブナ
フナ属
アブラボテ
ニッポンバラタナゴ
オイカワ
カワムツ
オイカワ属
ムギツク
カマツカ
イトモロコ
ドジョウ
ヤマトシマドジョウ
スジシマドジョウ小型種
ナマズ
アユ
メダカ
オヤニラミ
オオクチバス
ドンコ
カワヨシノボリ
スナヤツメ
ギンブナ
アブラボテ
オイカワ
カワムツ
オイカワ属
タカハヤ
ムギツク
カマツカ
ヤマトシマドジョウ
アカザ
アユ
ヤマメ
カジカ
オヤニラミ
ドンコ
カワヨシノボリ
【第4回検討会資料】
ウナギ
ギンブナ
アブラボテ
オイカワ
カワムツ
オイカワ属
タカハヤ
ウグイ
ムギツク
カマツカ
イトモロコ
ヤマトシマドジョウ
アリアケギバチ
ナマズ
アユ
カジカ
オヤニラミ
ドンコ
トウヨシノボリ
カワヨシノボリ
【凡例】
:調査地点
:注目種
赤文字 :重要種
青文字 :外来種
図-5.16 小石原川・佐田川の魚類相調査結果
7
1-1)注目種(魚類)および河川形状に関する調査結果(注目種)
オヤニラミ
春
17
夏
6 6
2
3
2
6
4
4
15
11
10
9
3
16
13
秋
10
17
9
5
5
3
カゼトゲタナゴ
8
12
個体数
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
6
4
5
3
春
夏
秋
6
4
4
【第4回検討会資料】
個体数
◆きれいな止水域を代表する種(オヤニラミ、カゼトゲタナゴ)
3 3
2
1
0
筑後川橋
東田橋
夫婦石橋
長谷橋
田中橋
佐田川橋
上屋永橋
寺内橋
筑後川橋
東田橋
夫婦石橋
長谷橋
田中橋
佐田川橋
上屋永橋
寺内橋
St.1
St.2
St.3
St.4
St.5
St.6
St.7
St.8
St.1
St.2
St.3
St.4
St.5
St.6
St.7
St.8
小石原川
佐田川
小石原川
佐田川
◆砂礫河床を産卵場とする種(カマツカ)
50
カマツカ
春
個体数
40
秋
22 22
20
10
夏
34
30
14
7
6
3 2 1
4
1 2
1
4
9
1
4
8
3 1
7
1 1
0
筑後川橋
東田橋
夫婦石橋
長谷橋
田中橋
佐田川橋
上屋永橋
寺内橋
St.1
St.2
St.3
St.4
St.5
St.6
St.7
St.8
小石原川
佐田川
400
350
300
250
200
150
100
50
0
オイカワ
春
夏
秋
個体数
個体数
◆確認個体数が多い種(オイカワ、カワムツ)
129
34 22
70
34
61 67
37
7 7
61 63
30 15 19
13 31 25
14 3 5
7 11 17
400
350
300
250
200
150
100
50
0
カワムツ
352
194
20 37
72
62
130
96107
149
86 79
春
夏
秋
179
135
72
89
83
30
19
4 1
29 13
筑後川橋
東田橋
夫婦石橋
長谷橋
田中橋
佐田川橋
上屋永橋
寺内橋
筑後川橋
東田橋
夫婦石橋
長谷橋
田中橋
佐田川橋
上屋永橋
寺内橋
St.1
St.2
St.3
St.4
St.5
St.6
St.7
St.8
St.1
St.2
St.3
St.4
St.5
St.6
St.7
St.8
小石原川
佐田川
小石原川
図-5.17 小石原川・佐田川の魚類(注目種)調査結果
5-10
佐田川
5.河川内の自然環境について
5.5.2 注目種の追加
調査地点 1,2,6,7 で確認された「ニッポンバラタナゴ(CR:環境省 2007 RL、VU:福岡県
2001 RDB)」については、
「注目種に追加することが望ましい」との意見が第 4 回検討会で
委員から出されたことから、新たに注目種(魚類)に追加し、下流河川環境の改善の評価
に活用することとした。
5.5.3 タナゴ類の産卵母貝の調査結果
新たに注目種(魚類)として追加した「ニッポンバラタナゴ」が、小石原川、佐田川で
継続的に生息することが可能かを評価するため、「ニッポンバラタナゴ」の産卵母貝とな
るイシガイの調査を実施した。
その結果、小石原川の 3 地点、佐田川の 4 地点でイシガイを確認した。
イシガイの殻長組成状況では、10~55mm の幅を持った個体が確認された。また、イシガ
イが世代交代を継続するために必要な「カマツカ」、
「ドンコ」、
「ヨシノボリ」などの底生
生物も確認された。
以上のことから、イシガイは、小石原川および佐田川で世代交代を行いながら生息して
いると考えられ、「ニッポンバラタナゴ」の継続的な生息も可能であると考えられる。
7
1-1)タナゴ類の産卵母貝に関する調査結果
江川ダム
小石原川
確認個体数
イシガイ
15
寺内ダム
補-5
補-2
確認個体数
イシガイ
9
補-2
確認個体数
イシガイ
ドブガイ
佐田川
18
3
補-6
補-5
補-6
St.2(東田橋)
貝類確認なし
St.7(上屋永橋)
St.7(上屋永橋)
補-4
補-1
確認個体数
15
確認個体数
8
St.6(佐田川橋)
St.1(筑後川橋) St.1(筑後川橋)
貝類確認なし
【凡例】
確認個体数
5
:貝類調査地点(当初)
筑後川
St.6(佐田川橋)
平野を流れる川
-
補-4
イシガイ
渓流的な川
確認個体数
貝類確認なし
イシガイ
イシガイ
10
-
St.2(東田橋)
補-1
確認個体数
イシガイ
確認個体数
確認個体数
-
図-5.18 タナゴ類の産卵母貝の調査地点
5-11
※平成22年度調査でタナ
ゴ類が確認された地点
:貝類調査地点(補足)
【第5回検討会資料】
補-3
補-3
5-12
図-5.19 タナゴ類の産卵母貝(イシガイ)の調査結果
50~55mm
45~50mm
40~45mm
35~40mm
30~35mm
25~30mm
20~25mm
15~20mm
50~55mm
45~50mm
40~45mm
35~40mm
30~35mm
25~30mm
20~25mm
15~20mm
10~15mm
5~10mm
8
7
6
5
4
3
2
1
0
5~10mm
18個体
8
7
6
5
4
3
2
1
0
10~15mm
補-5
個体数
0~5mm
9個体
個体数
50~55mm
45~50mm
40~45mm
35~40mm
30~35mm
25~30mm
20~25mm
15~20mm
10~15mm
補-2
0~5mm
50~55mm
45~50mm
40~45mm
35~40mm
30~35mm
25~30mm
20~25mm
15~20mm
0~5mm
5~10mm
8
7
6
5
4
3
2
1
0
10~15mm
15個体
8
7
6
5
4
3
2
1
0
5~10mm
補-4
個体数
8個体
個体数
50~55mm
45~50mm
40~45mm
35~40mm
30~35mm
25~30mm
20~25mm
15~20mm
補-1
0~5mm
50~55mm
45~50mm
40~45mm
35~40mm
30~35mm
25~30mm
20~25mm
15~20mm
5~10mm
10~15mm
5~10mm
50~55mm
45~50mm
40~45mm
35~40mm
30~35mm
25~30mm
20~25mm
15~20mm
10~15mm
1-1)タナゴ類の産卵母貝に関する調査結果(イシガイの殻長組成状況)
※St.1、St.2、St.7でのイシガイの確認はなし
補-3
15個体
補-6
10個体
【第5回検討会資料】
5~10mm
8
7
6
5
4
3
2
1
0
10~15mm
0~5mm
個体数
佐田川
個体数
0~5mm
小石原川
補 足 調査
8
7
6
5
4
3
2
1
0
個体数
当 初 調査
8
7
6
5
4
3
2
1
0
0~5mm
5.河川内の自然環境について
8
St.6(佐田川橋):佐田川
5個体
5.河川内の自然環境について
5.6 佐田川の瀬切れ発生状況と河川流量との関係
佐田川の瀬切れ発生状況と河川流量との関係を整理するため、佐田川橋から下古賀井堰間
において、河川流況等の調査を実施した。
その結果、佐田川橋付近の S3 地点における河川水位が約 EL.29.7m を下回ると瀬切れが発
生しやすいこと、また、降雨等の状況にもよるが、S3 地点の河川流量が約 0.2m3/s を下回る
と瀬切れが発生する場合があることが確認された。
また、瀬切れ区間の上下流付近では、流量の減少により水が澱み、水質の悪化等が認めら
れる。寺内ダムで実施している弾力的管理試験のフラッシュ放流を行うことで、一時的では
あるが、佐田川の環境基準(BOD:2mg/L 以下)まで水質が改善されることが確認されている。
以上のことから、小石原川ダムの完成後は、寺内ダム直下において通年 0.37m3/s の流量が
確保されることで、佐田川の瀬切れや水質などの河川環境の改善が図られるものと考えられ
る。
7)佐田川における『瀬切れ』について(現状)
寺内ダム 地点 月平均雨 量(H9~ 18年)
雨量( mm)
400
350
佐田川
佐田川橋
橋
← 佐田川
寺内ダム
月平均 雨量( mm)
300
250
200
150
下古賀井堰
下古賀井堰
上屋敷頭首工
100
50
国道386
小田頭首工
大分自動車道
0
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月 11月 12月
← 筑後川
10月から2月の間は雨が少ない
河川水の伏没
(下古賀井堰上流付近)
中流部で瀬切れ状態が度々発生
26
佐田川の瀬切れ区間(平成19年11月30日)
(平成19年11月5日12mm、6日4mm、12日1mmの日雨量)
図-5.20 佐田川における「瀬切れ」について(その1)
5-13
【第1回検討会資料】
主として無水が
生じる区間
(瀬切れ)
5.河川内の自然環境について
7)佐田川における『瀬切れ』について(昨年の例)
流量(m3/S) (m 3/s)
降雨(mm)
佐田川の流況(寺内橋)平成20年10月~平成21年2月
1.50
0
20
1.25
40
60
1.00
佐田川橋から下古賀井堰
間の瀬切れ92日間
寺内橋流量(m3/s)
(m3/s)
80
平均降水量(mm)
0.75
100
瀬切れ
120
0.50
140
160
0.25
180
0.00
10月1日
11月1日
12月1日
1月1日
200
3月1日 日
2月1日
【第1回検討会資料】
寺内橋下流流量は下記の式にて算出
寺内ダム直下の河川への放流量-寺内井堰取水量
28
国道386号 佐田川橋下流付近
(撮影日:H20.11/28)
下古賀井堰上流付近
(撮影:H20.11/5)
図-5.21 佐田川における「瀬切れ」について(その2)
(14/54)
10月~2月(非かんがい期)の効果
←放流量
佐田川↓
← 筑後川
試験
放流
↓
6
4
2
時間 →
約2週間
環境基準を達成
環境基準2.0mg/L以下
約30m
放流前(H20.11.13)
放流中(H20.11.14)
【平成20年11月14日の試験放流結果】
(とうぎぜき)
①ダムから約4km下流の倒木堰の淀みは、佐田川の環境基準BOD 2mg/L以下
を達成した。また、放流後の約2週間は環境基準を維持した。
②ダム下流の無水区間では、一時的に瀬切れが改善された。
図-5.22
寺内ダム弾力的管理試験
5-14
11/27
11/25
11/23
11/21
11/19
11/17
11/15
0
11/13
淀みの状況(H20.11.10)
(無水区間)
の
改善 範囲
km
環境 対象 m~5
2k
ら
か
ダム
試験
放流
8 ↓
11/11
倒木堰 BOD(mg/L)
無水区間
下古賀井堰
(ダムから約5km)
←約4万m3
【第2回検討会資料】
とうぎぜき
寺内ダム
倒木堰
(ダムから約4km)
1.76m3/sの
上乗せ放流
流量0.24m3/s
(倒木堰)
【時期】10月~2月
瀬切れの発生時期
【目的】淀んだ水を押し流すことで、
水質環境基準(BOD)を満足
するとともに、瀬切れの緩和を図る。
【平成20年度実績】
放流を3回実施(11/11,11/14,1/27)
1回当り毎秒2m3を6~7時間放流
(11月14日の場合)
合計2.0m3/s、6.75時間放流
5.河川内の自然環境について
【第5回検討会資料】
図-5.23 佐田川の瀬切れ発生区間
10
1-2)佐田川の瀬切れ発生状況と河川流量の関係について
◆瀬切れ状況調査時における瀬切れの有無と河川水位・流量の関係
09/6/1
09/8/1
09/10/1
09/12/1
10/2/1
10/4/1
10/6/1
10/8/1
10/10/1
10/12/1
11/2/1
11/4/1
11/6/1
11/8/1
11/10/1
11/12/1
50
【第5回検討会資料】
日雨量(mm)
0
100
150
朝倉地点雨量
200
瀬切れ状況調査(瀬切れ発生)
瀬切れ状況調査(瀬切れなし)
流量観測(瀬切れ発生)
流量観測(瀬切れなし)
瀬切れ調査時のS3水位(EL.m)
30.0
29.9
4.80m3/s
29.8
0.47m3/s
0.88m3/s
0.59m3/s
3
0.27m /s
29.7
3
0.17m3/s
29.6
0.17m3/s
0.15m3/s
0.18m /s
29.55
09/6/1
09/8/1
09/10/1
09/12/1
10/2/1
10/4/1
10/6/1
10/8/1
10/10/1
10/12/1
11/2/1
11/4/1
11/6/1
11/8/1
11/10/1
11/12/1
・S3地点における河川水位が約EL.29.7mを下回ると瀬切れが発生しやすい。
また、降雨等の状況にもよるが、河川流量が約0.2m3/sを下回ると瀬切れが発生する場合がある。
図-5.24 瀬切れと河川水位・流量の関係
5-15