第三者意見、第三者意見を受けて

第三者意見
「タキロングループ 環境・CSR報告書2016」
を読んで
CSRアジア 日本代表
赤羽真紀子
早稲田大学で政治学と生物学を修了後、
カリフォルニア大学、
タフツ大学、慶應義塾の各大学院で学ぶ。2001年スターバックスコーヒージャパ
ン
(株)に入社し環境と社会貢献事業を立ち上げたのをはじめ、通算10年以上、
さまざまな業種の多国籍企業のCSR担当を務めた。
日本以外で
も、
シンガポール支社でのCSR部署の立ち上げや、
タイ、韓国、中国でのCSRプロジェクト実施の実績がある。NPO法人国際協力NGOセンター
(JANIC)の「NGOと企業の連携推進ネットワーク」
のアドバイザー、
ウォーターエイド・ジャパンの理事なども務める。
タキロングループではステークホルダーとのコミュニケーション
タキロングループには「プラスチックテクノロジーで豊かな生活環
を深めることを目的にこの報告書を発行されています。簡潔に情報
境を創造します」
という使命があり、製品と技術をもってこの使命を
がまとめられており、読みやすい報告書となっています。
トップイン
すでに数多く実現しておられます。製品や技術について淡々と説明
タビューも対談形式になっています。
この中で、
タキロングループの
するだけでなく、ぜひ当報告書をアピールの場としてさらに活用す
使命や、素材としてのプラスチックによる社会への貢献についてな
ることもできると思います。軽量で、熱・衝撃・摩擦に強く、成形・加工
どがトップのことばとして明瞭に述べられています。
タキロングルー
もしやすいプラスチックの技術と製品が、
どんな社会課題につい
プが、社会の期待に応え、未知の課題を解決し、新しい価値を創造
て、
どう解決して、
どう社会に貢献しているのかを当報告書でも語ら
する企業であろうとする意思がよく表れています。
ステークホルダー
れることを期待します。
が、
タキロングループやプラスチックテクノロジーについてよく理解
二つ目は、資材調達についてです。サプライチェーンの透明性に
したいときに、
ここを読めば概観できるようになっています。
ついては世界的に重視されていますので、
どんな原材料をどこから
タキロングループが社会から求められ、信頼される存在となって
買っているのかについての情報も開示する準備を整えていく必要
いくために必要なことは何か、
というテーマで従業員座談会が開催
があります。当報告書ではグリーン調達についての言及はあります
されました。
この座談会には若手・中堅従業員が集まり意見交換を
が、原材料の調達全般についての記載が薄いように思います。ホー
行ったものです。私は司会を務めましたが、
このようにグループ会
ムページでは「購買取引の基本方針」が掲載されていますし、
「タキ
社の若手・中堅従業員が一同に会して意見を述べ合うというのは初
ロンの行動指針」や「グリーン調達ガイドライン」
もすでにお持ちで
の試みだそうです。参加者らは自分の考えや経験について、他の参
すので、資材調達についてさらに情報を整理して開示することを推
加者らと共有することで自らの状況を客観視し、
グループ内の他の
奨いたします。
会社に対する理解が深められるという機会になっていたようです。
三つ目は、環境以外の点のCSRの領域についても目標設定され
今後業務を行う上で、
こうした横のつながりができたことは財産に
てはどうか、
という点です。環境に関しては2002年に「環境対策グラ
なっていくだろう、
という参加者の感想も聞きました。タキロング
ンドデザイン」を策定されて以来、環境負荷低減のためのPDCAサ
ループがグループとしてより一体感を増すために、今後もこのよう
イクルを通じて継続的改善を積み重ねられておられます。
しかし、社
な人的交流の機会がさらに増えていくことを期待いたします。
会面やコンプライアンス面の活動については目標設定があまりな
タキロングループの環境・CSRの情報開示をもう一歩進めるため
されていないようです。そこで、
これらの面においてもタキロング
に、今後は以下の三つの点についてレポーティングされることを推
ループとステークホルダーにとって重要と考える課題について目標
奨いたします。
を設定されることを推奨いたします。中期経営計画「CC2017 &
一つ目は、
タキロングループのプラスチック製品による社会への
Beyond」の基本方針の一つに「経営品質のレベルアップ」がありま
貢献をさらに詳しく記載してはどうか、
という点です。ルメカーボの
す。CSRとは事業活動が社会へ与える影響に責任を持ち、さまざま
断熱性能と昼光利用という点が「低酸素杯2016」において
「環境大
なステークホルダーとの関係を重視していく企業のあり方であり、
臣賞 金賞(企業部門)」を受賞したという輝かしいニュースがあり
CSRのレベルアップはまさに経営品質のレベルアップにつながるも
ます。
このルメカーボのようにタキロングループには社会課題を解
のです。環境以外のCSRの領域でも重要な課題について目標を設
決し、社会の期待に応えている製品がたくさんあります。巻頭に事業
定し、継続的改善に取り組まれることは、
タキロングループの経営
分野の紹介がされていて、製品についての説明がありますが、製品
品質の向上に寄与するものになると思います。
カテゴリーの説明にとどまっているのがもったいないと感じました。
第三者意見を受けて
本報告書および当社CSR活動につきまして貴重なご意見、
ご指摘を賜りありがとうございました。
本報告書に対しまして、情報が簡潔にまとめられており読みやすく、
タキロングループが社会の期待に応え、未知の課
題を解決し、新しい価値を創造する企業であろうとする意思がよく表れているとの評価をいただきましたことは環境・
CSR担当部門として喜ばしく思っております。
一方、当社グループの環境・CSRの情報開示を更に進めるための方策として、1.製品や技術について淡々と説明す
るだけでなく、本報告書を更なるアピールの場として活用すべきこと 2.グリーン調達についての言及はあるものの、
タキロン株式会社
執行役員
田中 一久
原材料の調達全般についての記載が薄いことから資材調達について更に情報を整理した上で開示すべきこと 3.環
境以外のCSRの領域についても目標設定を定めることの3つのご指摘・ご提案をいただいております。
これらのご指摘
等は大変示唆に富んだものであり、
今後の当社の情報開示において明確な指針になりうるものと考えます。
今年は、当社中期経営計画「CC2017&Beyond」の2年目にあたりますが、2019年度に迎える創業100周年と次なる
100年に向け、企業の永続的な発展成長を支える経営基盤の再整備に注力しているところであります。
その為には、経営品質のレベルアップが
求められるわけですが、
その達成には、CSRのレベルアップが不可欠となります。
タキロングループは、
ステークホルダーの皆様への透明性のある発信、
さらには対話や協働を積極的に図ることにより、社会から信頼され
得る企業になるべく、役員、従業員が一丸となってCSR活動を推進してまいります。
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