海外研修報告

海外研修報告
土木・環境工学科 3年 杉下 佳辰
1.はじめに
顔写真
「日本人は英語が下手だ。」と言われることは多いですが、僕自身、英
語教育を受けはじめ、かなりの時間勉強してきたはずですが、なかなか実
用的な英語の上達を実感できずにいました。しかし、将来どのような道に
進むにしろ、英語が必須能力であることは間違いありません。今、自分に
必要なことは英語学習のモチベーションアップにつながるような体験だと
考えたことが、今回の海外研修制度を利用しようと考えた一つの理由です。また、時間のある学
生のうちにいろいろな国に行き、自分の目で知らない世界を見てきたいという思いがあったこと
も一つの理由です。渡航先をひとまず英語圏の国に絞りましたが、もともとスポーツや音楽など、
イギリス文化が好きだったこともあり、すぐに英語発祥の地イギリスに決めました。また、滞在
中どのように過ごすか、ということですが、当初は、大学の英語学習プログラムのようなものに
参加しようかと考えていました。しかし、自分で計画を立て、準備をし、行きたいところに好き
なように行き、いろいろな場所を自分の目で見てくるということも、とても貴重な体験であるよ
うに思え、ひとまず今回は自分の好きなように行動することに決めました。
2.訪問都市
滞在期間は17日間で、滞在都市はロンドン、湖水地方ウィンダミア、リバプールの3都市で、
それらの都市を拠点にマンチェスター、バース、コッツウォルズ地方、ニューキャッスル、リー
ズなどを鉄道で回るという形をとりました。
3.気候
滞在中はどの都市でも、常にどんよりと曇り、晴れたと思ってもしばらくするとパラパラと雨
が降ってくる、そんな天気でした。さらに 9 月だというのに、東京の 11~12 月ぐらいの寒さであ
り、特に夜はコートが必要かと思われるほどでした。イギリスは寒いということは事前に知って
いましたが、まさかこんなにも寒いとは思いもせず、厚手の服を用意してこなかったことを後悔
しました。そんなわけで、毎日、持ってきた薄手の服を4~5枚着込んで歩きまわりました。
4.ロンドン滞在
ロンドンとその近郊には見るものがとても多くあります。ロンドン市内でいえばバッキンガム
宮殿、ビッグ・ベンと国会議事堂、大英博物館、ウェストミンスター寺院などがあり、郊外には
テニスの聖地ウィンブルドン、サッカーの聖地ウェンブリースタジアム、近郊都市ソールズベリ
ーには世界遺産ストーンヘンジ、街全体が世界遺産であるバース、美しい田園風景の残るコッツ
ウォルズ地方などです。本当はそれぞれについていろいろと書いていきたいのですが、きりがな
くなってしまうので、ここではロンドン市内の2つの印象的な橋梁について書いていきたいと思
います。
4.1 タワーブリッジ
タワーブリッジはテムズ川にかかる数ある橋のひと
つであり、ロンドンの定番観光スポットですが、その存
在感は圧倒的でした。特にその夜景は非常に美しいもの
でした(写真4.1)。大きな特徴である2つの塔の中は
「タワーブリッジ展示館」となっており、橋の構造につ
いて知ることができます。また、二つの塔を結ぶ歩道橋
から景色を見ることもできます。タワーブリッジは美し
さだけが魅力ではなく、大きな特徴として「跳ね橋」で
あることが挙げられます。下の写真のように、高さのあ
写真4.1 タワーブリッジの夜景
る船が通過する際、真ん中の橋げたが油圧の力で上がるのです(写真4.2)。その間、橋を渡る
自動車は橋の途中にある信号(写真4.3)に従って停止することになります。現在は大型船が通
ることも以前より少なくなっていますが、僕が行ったときにタイミングよく、橋げたを上げる姿
を見ることができました。
写真4.2
帆柱の高い船が通過中
写真4.3 橋の途中の信号機
4.2 ミレニアムブリッジ
タワーブリッジに続けて、もうひとつ別の橋を紹介し
たいと思います。それがミレニアムブリッジです。2年
生の空間デザインの授業でこの橋を知り、今回、自分の
目で見ることを楽しみにしていました。ミレニアムブリ
ッジは「優雅な剣、光の翼」をコンセプトとして作られ
たそうですが、まさにそのコンセプト通りの美しい橋で
した。橋の延長線上にはセント・ポールズ大聖堂が位置
しており、タワーブリッジほど有名ではないですが、周
囲の景観と調和のとれたとても美しい橋だと思います。 写真4.4 ミレニアムブリッジの夕景
写真4.5~7 ミレニアムブリッジ(いろいろな角度から)
5.湖水地方ウィンダミア
イングランド北部には湖水地方と呼ばれる地方があります。名前の通り、ウィンダミア湖をは
じめとするいくつかの湖と山に囲まれた美しいところです。僕はその湖水地方を代表する都市で
あるウィンダミアに滞在しました。街には石を重ねて作った美しい家々が並び、湖には白鳥や鴨
が泳いでおり、山を少し上ると草原があり、たくさんの羊がいました。そこに住む人も、動物も
のんびりと暮らしており、そこはまさしく『ピーター・ラビット』の世界そのもので、ゆったり
とした生活をする人々を見て、僕は少し羨ましく思ってしまいました。
写真5.1~3
湖水地方の風景
6.リバプール滞在
ビートルズの出身地としても有名なリバプールは港町であり、一部については「海商都市リバ
プール」として世界遺産に登録されています。近郊にはイギリス第2の都市マンチェスターがあ
り、1830 年に世界初の旅客鉄道がこの 2 都市を結び、発展、衰退、再開発されてきたという歴史
があります。リバプール滞在で最も印象に残っていることは本場のサッカーを観戦できたことで
す。リバプール対マンチェスターユナイテッドの試合を観戦したのですが、スタジアムの雰囲気
は素晴らしいもので、一生忘れることはできないと思います。
写真6.1~3
リバプール
7.ユースホステルについて
ホテルはインターネットを使って事前に予約をしたのですが、費用をできるだけ抑えようと考
えて見つけたのがユースホステルというものです。利用した経験のある方はご存じだと思います
が、ここで簡単にユースホステルについて説明します。一般的に、ユースホステルでは 1 つの部
屋に 2 段ベッドがいくつかあって、6~10 人ほどが同じ部屋で泊まる形となります。そのためプラ
イベートな空間はほとんどありません。多くのユースホステルでは泊まる部屋とは別に共同スペ
ースが設けられ、テーブルやソファー、テレビやパソコンなどが置いてあり、そこでテレビを見
たり、情報収集や、交流をすることになります。また、僕が利用したところは男女混合の部屋で
あったため女性も同じ部屋に泊まっていました。なお、利用したところすべてで男女混合の部屋
しかなく、男女混合のユースホステルは一般的であり、珍しくないと思われます。安価ではあり
ますが、きちんと管理者がいるため、女性も安全に寝泊りできる施設であると考えていただけれ
ばよいと思います。「ユース」ホステルというだけあり、20~25 くらいの年齢の人が多いのです
が、年齢制限が設けられているわけではないため、年配の方も利用していました。
公共スペースで話しかけるのは少し勇気がいりました。ユースホステルの利用者の多くはヨー
ロッパの方々なのですが、英語圏でなくとも、皆ペラペラと英語で話していたからです。さらに
韓国人や中国人などもアジアの方も少数いましたが、やはり流暢に話していました。しかし、せ
っかく来たのだから話してみたいという思いが強く、思い切って話しかけてみました。話してみ
ると皆とても友好的で僕の下手な英語でも言いたいことを汲み取ってくれました。イギリスに来
る人はやはりサッカー好きな人が多いようで、公共スペースのテレビでサッカー観戦を皆楽しん
でいました。サッカーを見た後はボードゲームで遊ぶことになりました。そこにはフランス、イ
タリア、オーストラリア、チェコ、韓国といろいろな国の人がいましたが、それぞれの国の生活
について聞いたり、イギリス観光のことを話したりしながらゲームをしました。ボードゲームや
サッカーというのは言葉の壁を取り払ってくれるもので、とても楽しく、貴重な経験をすること
ができました。もともとはただ「安いから」というだけで決めたユースホステルでしたが、この
ような体験ができるなど思いもよらず、素晴らしい思い出をつくることができて本当に良かった
と思います。
写真7.1
テレビでサッカー観戦
写真7.2
ボードゲームで交流
8.おわりに
17 日間という短い間でしたが、日本では体験できない、いろいろな経験をすることができまし
た。これまで書いてきた場所以外にもコッツウォルズ地方で美しい田園風景を見たり、世界遺産
バースの街を歩いたり、ウィンブルドンのツアーに参加したりととにかくいろいろな場所に行く
ことができました。しかし、そのような体験をしながら、それと同時に痛感するのが自分の英語
能力の低さでした。もちろん、地下鉄の切符を買ったり、道を尋ねたり、買い物をしたりという
レベルでは問題はありません。しかし、少し複雑な内容のことを話そうとすると途端に何と言っ
てよいかわからなくなってしまうのです。ツアーに参加してもガイドの話していることを聞き取
るのが難しく、理解できないことが多くありました。ユースホステルではいろいろな国の人と交
流をすることができましたが、自分の英語能力が高ければ、もっと深く、いろいろなことを話せ
るのに、と悔しく思いました。その意味で、今回の海外体験研修は自分にとって英語学習に対す
る態度を改めて考える良い機会となりました。今後は自分の語学能力をさらに向上させ、もっと
広い世界を見て、少しずつ成長していけたらと思います。このような素晴らしい機会を与えてく
ださった丘友の皆様に深くお礼申し上げます。本当にありがとうございました。