ケンブリッジ留学レポート 京都大学 医学部医学科 2009 年度入学 高橋 賢人 1. はじめに 2010 年の夏休み、 僕は武田先生に紹介していただいたケンブリッジ大学の研究室に短期留学しました。 イギリスでの生活は当然日本と大きく異なり、あらゆる点で刺激的なものばかりでした。また、現地の 研究室で勉強させてもらったことで、海外で働くのがどういうことか、日本にいた時より具体的なイメ ージを描けるようになった気がします。ここでは留学の準備や現地での生活、活動について書きたいと 思います。 2. 出発前 まず、留学先の研究室の方との連絡について。留学先の紹介は武田先生にして頂きました。いくつか 候補がある中から、僕はケンブリッジの Green 先生の研究室にお世話になることにしました。この研究 室は、毎年武田先生の紹介で学生を受け入れているようです。実際部活の先輩でここに留学した方もい て、そのことも僕がこの研究室を選ぶ理由になりました。場所が決まれば、日程と宿泊施設の調整です。 これらについては直接現地の先生と相談しました。また宿泊施設に関しては、Green 先生に紹介してい ただきました。 次に日本での準備についてです。出発する前に、基本的な手技などを学ぶ必要があるので、先生と相 談して研究室に通うことになります。僕は 1 回生の時から武田研にお世話になっていたので、そこで基 礎的な実験手法などを学ぶことができました。語学に関してですが、英語には慣れておいた方が良いと 思いました。武田研で英語のプロトコルに慣れていたので、現地でもプロトコルはだいたい読むことが できましたが、会話をするのはかなり苦労しました。 イギリスに行くとき、自分のノートパソコンを持って行きましたが、とても重宝しました。ケンブリ ッジの研究室ではワイヤレスでネットを使うことができるので、日本にいる家族や友人とメールでやり 取りをすることもできました。 3. 出発∼到着 日本からイギリスへの便は、大体ロンドンのヒースロー空港に到着すると思います。ヒースローから ケンブリッジまでは直行のバスが出ており便利です。僕は到着後、ヒースローのセントラルバスステー ションにある自動券売機を使ってバスの切符を買い、そこで乗車しました。おおよそ 2~3 時間でケンブ リッジに着きます。 4. 現地での研究 僕は複製フォークで働いているタンパク質についての研究を行いました。DNA が複製されるとき、2 本鎖が分かれ複製フォークが生じますが、この時 1 本鎖の DNA に RPA(Replication Protein A)とい うヘテロ三量体のタンパク質が結合します。この RPA のサブユニットの 1 つである RPA3 と結合して働 くタンパク質を同定し精製するのがプロジェクトの大まかな内容です。使用したのは HEK 細胞(ヒト胎 児由来腎臓細胞)で、タグの付いた RPA3 をコードしたプラスミドを持った細胞株と、その対照実験用 にタグだけがコードされている細胞株を使用しました。このタグを使い、RPA3 とそれに結合するタン パク質を精製することが目的でした。 まず、免疫蛍光法で、細胞自身が発現する内因性の RPA3、タグを持った外因性の RPA3 が働く場所 を調べたところ、外因性の RPA3 は内因性の RPA3 と同様に複製フォーク上で働いていることがわかり ました。またこの実験で、ヒドロキシ尿素という薬品を細胞に投与すると、複製フォークの箇所が増え、 細胞から抽出する際の RPA3 の収量が増えるだろうということがわかりました。 その後は、多量の細胞からタンパク質を抽出し、ウエスタンブロット法で解析をするのが主な作業で した。RPA3 が他のタンパク質と結合している可能性があることが確認できましたが、その精製の方法 を試みているところで 6 週間が経ってしまいました。 実験については現地の先生がすごく親切に指導して下さるので、大きな問題はありませんでした。平 日は大体 10 時から 17 時まで研究室で作業し(途中昼食をとります)、土日は休み、という具合でした。 5. 現地での日常生活 僕が宿泊したのは、クイーンズカレッジという場所でした。町の中心部にあり、研究室から歩いて 5 分ほどで、とても良い場所です。最初に受付をするのは Porter’s lodge という場所ですが、川沿いにある 大きな門の左側にあります。ここの入り口は正面から少し見にくい位置にあったので、探すのに苦労し ました。 食事ですが、スーパーマーケットの Sainsbury’s と Boots(薬局とスーパーが合わさったようなお店で す)でよく食べ物を買いました。電子レンジで加熱して食べられるものも多く、便利でした。キッチン がクイーンズカレッジにあったのですが、電子レンジしか使った記憶がありません。晩ご飯はよくパブ やレストランに行きました。「イーグル」(かのワトソンとクリックが二重らせん構造について議論した と言われています)をはじめ、ケンブリッジには食事をする場所は比較的たくさんあり、色々回ってみ るのも楽しかったです。予算ですが、スーパーで買うと 3∼5 ポンドほど、パブで食べると 6∼10 ポンド ほどでした。イギリスの食事に関してはあまり良くない評判もありますが、全体的にそれほど悪くない と思います。 6. 現地での休日 休日は電車でイングランド各地に旅行に行きました。インターネットで安い電車のチケットを手に入 れることができ、とても便利です。僕はよく East Midlands Trains を利用していました。日帰り旅行で も大体の場所は楽しめますが、ゲストハウスなどに泊まることを考えるなら、数週間前から予約をして おくと良いと思います。僕は宿の予約をせずに湖水地方に行ったため、泊まる場所を探して数時間歩き 回ることになりました。 7. さいごに 今回の留学は短期間でしたが、僕にとって本当によい刺激になったと思います。そして、海外で活動 することの楽しさや難しさを少し知ることができたのではないかと思います。最後になりましたが、留 学先を紹介して下さり、色々な相談にも乗って下さった武田先生、そしてこれまで指導して下さった茂 木先生、廣田先生、本当にありがとうございました。
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