細田衛士研究会 事前レポート 日本の環境問題 ―ペットボトルのリサイクルについて考える― 1 ―目次― 序 ……………………………………………………………………………………3 第 1 章 ペ ッ ト ボ ト ル リ サ イ ク ル の 現 …………………………………………………4 論 状 1-1 ペットボトルのリサイクルの流れ 1-1-1 市町村ルート 1-1-2 事業系ルート 1-2 ペットボトルの回収率 1-3 ペットボトルのリサイクルの流れ 1-4 『ボトル to ボトル方式』 第 2 章 ペ ッ ト ボ ト ル リ サ イ ク ル の 問 題 点 ………………………………………………7 2-1 リサイクル業者への負担 2-1-1 原材料の有償化 2-1-2 中国のリサイクル業者の存在 2-1-3 国内のリサイクル業者の倒産 2-2 バーゼル条約 第3章 終論……………………………………………………………………………9 参考資料、文献 ………………………………………………………………………10 2 序論 今日、ペットボトルを燃えないゴミのゴミ箱でなくペットボトルのゴミ箱に捨てること は、日本人にとって当たり前のことになっている。あるいは、街中にあるゴミ箱を見渡し た時にペットボトル専用のゴミ箱が設置されていることも当たり前の風景となっている。 大学のキャンパスなどでは、ペットボトルキャップを外して回収することも普通のことに なっている。このように、ペットボトルは人々の間で当たり前のように分別されるものと して認識されている。しかし、実際にペットボトルがどのような経路をたどってリサイク ルされているのか、自分自身でも理解していない部分があったと認めなければならない。 また、ペットボトルのリサイクルにはいくつもの課題が存在している。そのため、この論 文ではまずペットボトルのリサイクルの現状を明らかにし、問題点について考察した上で、 その解決に向けて何ができるかを考え、最後に結論としたい。 ペットボトルを捨てる際には、ペットボトル本体からキャップは必ず外し、ラベルはで きるだけ外して捨てるべきであるとされている。 (図 1 参照)そこで、本来であればラベル、 キャップ、ペットボトル本体についてそれぞれ論じるべきであるが、この論文ではペット ボトル本体のリサイクルに焦点を絞って論じたい。 3 【図 11 分別排出のルール(消費者) 】 第1章 ペットボトルリサイクルの現状 本章では、まず 2 種類のペットボトルのリサイクルの流れについて説明し、その後ペッ トボトルの回収率に関して考察し、再商品化の方法について見る。 1-1 ペットボトルのリサイクルの流れ ペットボトルのリサイクルの流れには、市町村ルートと呼ばれる家庭から捨てられた場 合のルートと、事業系ルートと呼ばれる家庭以外から捨てられた場合のルートに分けられ る。2 1-1-1 市町村ルート 市町村ルートの場合は、まず各家庭で分別排出されたペットボトルを市町村が分別収集 する。その後、市町村が選別保管をしてベール状にした上で、再生品関連事業者がフレー クやペレットに加工した後、再商品化や再利用を行う。このように、家庭から排出された ペットボトルの場合は消費者・市町村・事業者の三者の役割が容器包装リサイクル法によ って定められているのである。 1-1-2 事業系ルート 類型 業種等 業種の主な例 自動販売機 飲料販売事業 飲料ボトラー、飲料自動販売機オペレーション事業者等 脇回収型 者 自社排出型 事業者 工場、オフィス等全ての事業者 拠点回収型 チェーンスト スーパーマーケット、コンビニエンスストア、生活協同組合等 ア 利用者持込 交通機関 鉄道(駅含む)、空港、高速サービスエリア、バス、フェリー等の 型 海運業 レジャー施設 スポーツ観戦施設、映画館、遊園地等のレジャー施設 【表 13 事業系 PET ボトルの回収形態による分類】 1 PET ボトルリサイクル推進協議会 HP 分別排出のルール(消費者) http://www.petbottle-rec.gr.jp/more/rule.html 2 PET ボトルリサイクル推進協議会 HP PET ボトルリサイクルの基礎知識 http://www.petbottle-rec.gr.jp/qanda/sec2.html 3 PET ボトルリサイクル推進協議会 HP 事業系で排出される PET ボトルとは? http://www.petbottle-rec.gr.jp/more/about.html 4 一方、事業系ルートとは家庭以外の自動販売機、コンビニ、鉄道会社、公共施設等から 排出されるペットボトルのリサイクルの流れである。このように、ペットボトルが排出さ れる場所は様々であり(表1参照) 、事業者が自らの責任により廃棄物処理法や条例に沿っ てリサイクルを行う。 1-2 ペットボトルの回収率 【図 24 ペットボトルの生産量・販売量と回収量及び回収率の推移】 図 2 を見ると、2011 年度のペットボトル販売量は 60.4 万トンであり、そのうち市町村ル ートで回収されたペットボトル量は 29.8 万トン、事業系ルートで回収されたペットボトル 量は 18.3 万トンである事がわかる。また、ペットボトルの年度ごとの回収率を見ると、上 昇傾向であることがわかる。ペットボトルの回収率が上がることは環境負荷の軽減につな がるため、喜ばしい傾向であるといえる。 4 PET ボトルリサイクル推進協議会 HP ペットボトルの生産量・販売量と回収量及び回収率の推移 http://www.petbottle-rec.gr.jp/data/transition.html 5 【図 35 日米欧のリサイクル状況比較】 また、図 3 を見ると、日本のペットボトル回収率は、欧米と比べて非常に高い水準を誇 っていることがわかる。このことから、日本人のペットボトル分別に対する意識、また行 政の環境意識の高さを伺うことができる。 1-3 ペットボトルのリサイクルの流れ 【図 46 ペットボトルリサイクルの流れ】 先程述べたとおり、ペットボトルは回収された後に圧縮されてベール状になり、再商品 5 PET ボトルリサイクル推進協議会 HP PET ボトルリサイクル年次報告書 2012 年版 http://www.petbottle-rec.gr.jp/nenji/2012/ 6 フジテクノ株式会社 HP 事業紹介 http://fujitekuno.jp/business/ 6 化事業者に渡される。再商品化事業者はベール化されたペットボトルを厳密に選別し、洗 浄、した後に 8mm 角に裁断することでフレークにする。 (図 4 参照)また、フレークを加熱 して粒状にすることでペレットになる。ペットボトルがフレークやペレットの形状になる ことで、様々な商品へと生まれ変わることが可能になる。再製品化のルートについては、 おおまかに分けると卵パックやクリアファイルなどのシート製品、カーペットやエコバッ グなどの繊維製品7、ベンチやボールペンなどの成形品の 3 種類が存在する。8 1-4 『ボトル to ボトル方式』 近年のリサイクル技術の向上により、 『ボトル to ボトル方式』と呼ばれる、ペットボト ルからできたペレットを再びペットボトルにリサイクルする水平循環のシステムが登場し た。 事例の一つして、AGF(味の素ゼネラルフーヅ株式会社)は、2012 年より〈ブレンディ〉 ボトルコーヒーの主力商品全てに、ボトル to ボトル方式を採用した環境配慮型の新ペット ボトルを導入している。これにより、原料としての石油資源を約 60%削減、またエネルギー 負荷を約 20%削減することが可能となるとしている。9 第2章 ペットボトルリサイクルの問題点 ペットボトルリサイクルの問題点として、国内のリサイクルシステムに歪みが生じてい ることが上げられる。この章では、まず原材料の有償化や中国の存在がリサイクル業者に 負担を与えていることを考えた上で、中国にペットボトルを輸出するということの問題点 について考察する。 2-1 リサイクル業者への負担 2-1-1 原材料の有償化 7 TEIJIN HP 『5 年間でペットボトル約 14 万本相当をリサイクル!東京国際映画祭に「グリーンカーペット」を提供』 http://www.teijin.co.jp/news/2012/jbd120920.html 8 PET ボトルリサイクル推進協議会 HP マテリアルリサイクル http://www.petbottle-rec.gr.jp/more/material.html 9 味の素ゼネラルフーヅ株式会社 HP ニュースリリース『〈ブレンディ〉ボトルコーヒー環境配慮型ペットボトル 主 力商品全てへの導入開始』 http://www.agf.co.jp/company/news/2011-11-21-505.html 7 【図 510 指定法人の落札単価と有償額】 リサイクル業者への負担の一つとして、原材料の有償化が挙げられる。図 5 を見ると、 各市町村から再商品化施設にベールが渡される際の落札単価が、2005 年を境にプラスから マイナスに転じていることがわかる。これは、2005 年以前は市町村がベールを渡すために お金を払っていたのが、2005 年以降は逆に市町村がお金を貰ってベールを渡すようになっ たことを示している。 2-1-2 中国のリサイクル業者の存在 最近になって、市町村が回収したペットボトルをリサイクル業者に渡すのではなく外国 に輸出するケースが出てきている。図 6 を見ると、その大部分が中国であることがわかる。 中国の業者は、日本でのペットボトルの落札額を大きく上回る価格で買い付けている。11環 境省によると、一時期 3 割強の市町村が海外に輸出を行っていた。12この結果、日本国内に 10 PET ボトルリサイクル推進協議会 HP PET ボトルリサイクル年次報告書 2012 年版 http://www.petbottle-rec.gr.jp/nenji/2012/ 11 『日本経済新聞』 2011/7/14 「透明容器の回収広がる、ペットボトルの再生は岐路に」 http://www.nikkei.com/article/DGXNASDJ0801P_Y1A700C1000000/ 12 『日本経済新聞』 2012/9/5 「ペットボトル再生、収益が悪化 輸出価格が急落、在庫膨らむ 採算改善の仕組み 課題」 http://www.nikkei.com/article/DGKDZO45745060V00C12A9QM8000/?bu=BFBD9496EABAB5E6B39EBABEBE9AA3A5E585A8A0BDE 290AB8394B893F9E5B0879997B98190AA9EA6E2A599E794FD829099A0B4B8EABA90ABAAE19BBEE6A4A2E1F982A785B5A0A4AAB993E 2919AB3BFAA9DE0E7A5F99B82E5E7A09A999EB9EB9BE0AA94A7B4E799A4A7B9B0B8B885BFB7E6A694AA98909EEBA490B991AB98EA9 6B4A49480AA88B59B8391E583E281858B909CE1B791979AA1A7B5869A93BAAAB3A0FDA4B6E188A6A097B3BBA5A5BD80A8E5E2BFA29 4B1849E9397E484A8E69090EA86BCB7E497EABDFDBBE1E1E7EB86E2FDBCA6949EB0A19FA786889C9E8181F9A3ABA688B0A0ABEBB8B 08080BCB994A3E4A7A0BDBBB183E7E0BD819A87BC9A84E7ABBEB3B7E395B8B68BA2EA94BC9E829084B487889E90E4BF9CBD99B895B B9491B1A2FD94818293E783E7B088918888B9BFB99EA3E6B0E19CE2FDB997938195BEE29BE488B4BEBD859DBC95AA8A97A585B89CB 8 は経営が苦しくなっているリサイクル業者も現れている。 【図 613 PET くず国別輸出量(暦年)推移】 2-1-3 国内のリサイクル業者の倒産 国内のリサイクル業者のリサイクル業者が倒産することにより、新たな問題が生じる。 すなわち、中国が輸入の停止、あるいはペットボトル価格の変動によりペットボトルが国 内で余ることにより、リサイクル循環がうまく行えなくなるのである。実際、2012 年の夏 は非常に暑かったためペットボトルの売れ行きが好調で原材料の量が多くなったため、価 格が下降した結果、リサイクル業者の処理能力を超えるペットボトルの在庫が存在する状 態となった。14このように、市町村がペットボトルの輸出を行うことが、日本国内のペット ボトルリサイクルのシステムの衰退につながるのである。 2-2 バーゼル条約 中国にペットボトル輸出することは、日本のリサイクルシステムを衰退に導くことにな るだけでなく、別に環境的なリスクを背負うことになる。その理由の一つとして、バーゼ ル条約がある。バーゼル条約とは廃棄物の国境を超える移動の規制である。経済産業省は、 ペットボトルの輸出に関してバーゼル条約に関わって「そのため、廃PETボトルを、そ のままの形状で、又はベール状で、我が国から輸出する場合には、確実に洗浄されている ことを確認することの徹底を、再度、お願いします。 」15と注意を与えている。 なぜバーゼ ル条約が問題になるかというと、2004 年に日本の業者が中国に汚染した廃プラスチックを EA0B9B1A09BE097B8B18AB79D919A9886FDB7A4ABB59697EF 13 PET ボトルリサイクル推進協議会 HP PET ボトルリサイクル年次報告書 2012 年版 http://www.petbottle-rec.gr.jp/nenji/2012/ 14 『日本経済新聞』 2012/11/24 「ペットボトル、リサイクルに暗雲 猛暑で大量消費」 http://www.nikkei.com/article/DGXNASDJ24002_U2A121C1MM0000/ 15 経済産業省 HP 廃PETボトルの不適切な輸出の防止について http://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/admin_info/law/10/pdf/re_exp_pet.pdf 9 輸出していたとして中国が日本からの輸入を停止したからである。このように、市町村が 中国に対して汚染したペットボトルの輸出を行うこと、市町村もその責任を問われかねな い。また、そもそも中国に輸出したペットボトルがどのように使用されているかを追跡す ることは困難であり、そこにも責任が生じることになる。 第3章 終論 第 2 章で論じたように、ペットボトルが中国に輸出されている現状が日本のリサイクル システムに打撃を与えていることは明らかである。環境省は毎年、 「ペットボトルを日本の リサイクルシステムで処理しないことは基本方針に反しており、容器包装リサイクル法の 趣旨にも反している」という内容の通知を各市町村に出しているものの、状況に変化はな い。16容器包装リサイクル法の趣旨とは、企業に廃棄物の削減義務を課すことで、再資源化 を促すことである。 現在、ペットボトルのリサイクルシステムについては、経済のシステムが上手く機能し ていないことが明らかである。環境負荷の観点からすれば、中国にペットボトル輸出する よりも日本の優秀なリサイクルシステムでペットボトルを処理する方が負荷が少なくなる ことは明らかである。そのため、環境省は市町村に対して強制力をもった通知により中国 への輸出を禁止した上で、現在市町村のみが負担している回収経費について、市民や飲料 メーカーなどへと分散する必要があると考える。 また、図 2 を改めて見返すと、リサイクル率が上昇していることと同時にペットボトル の生産量自体もまた増加していることが分かる。日本人のペットボトルのリサイクルに対 する意識、あるいはそのシステムが優秀なことは明らかになったが、それはペットボトル 自体の生産量が増え、廃棄物と成り得るものの量が増えているという事実から目を背けて も良いという事にはならないと考える。容器包装リサイクル法の趣旨である、廃棄物の削 減義務を果たしているとはいえないと考える。そのため、排出量自体を減らすために、タ ンブラーなどの再利用可能な容器、あるいはリターナブル容器の使用が世間一般に広まる ことが、根本的に求められているのではないかと改めて認識した。(4,902 文字) 参考資料、文献 ・ジェフリー・ヒール著 細田衛士、大沼あゆみ、赤尾健一訳 『初めての環境経済学』 (東 洋経済新報社 2005 年) ・澤田和弘著 『図解でわかるプラスチック ペットボトルはどうして作るの?本当にリサ イクルされているの?』 (サイエンス・アイ新書 2008 年) ・経済産業省 HP 16 『産経新聞』 2011.12.4 「「回収ペットボトル」 海外売却の自治体名を公表へ 環境省」 http://sankei.jp.msn.com/life/news/111204/trd11120401000001-n1.htm 10 (http://www.meti.go.jp/) ・環境省 HP (http://www.env.go.jp/) ・日本包装リサイクル協会 HP (http://www.jcpra.or.jp/index.html) ・PET ボトルリサイクル推進協議会 HP (http://www.petbottle-rec.gr.jp/) ・フジテクノ株式会社 HP (http://fujitekuno.jp/) ・帝人株式会社 HP (http://www.teijin.co.jp/index.html) ・日本経済新聞 HP (http://www.nikkei.com/) ・MSN 産経ニュース (http://sankei.jp.msn.com/) ・環境新聞 HP (http://www.kankyo-news.co.jp/) 11
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