内 容 紹 介 容ほど理屈と感覚がマッチすることが要求される 新課程がはじまり,お忙しい毎日をお送りのこと ため,説明が難しいこともある。 と推察いたします。 また,数研通信の投稿原稿をたくさんお送りいただ □ 三角形の 3 つの角に関する問題から ( p. 14 ∼) き有り難うございます。今回は図形についての原稿 正弦定理と余弦定理の関係については本誌No.61 が多かったので,特集として でも掲載した。式変形をしているといろいろな定 理に出会うことになる。この点を筆者は巧みに解 図形に関する性質 説。 を取り上げさせていただきました。いろいろな角度 極座標における回転体の体積の公式について □ から図形を眺めてみたいと思います。 ( p. 17 ∼) □ 極座標表示された図形の回転体の体積はあまり扱 (特集) 4 辺が与えられた四辺形 ( p. 2 ∼) 三角形の 3 辺が与えられればその三角形は一意的 われたことがない。筆者はこれに挑戦。結果はス に定まる。しかし,四角形の 4 辺が与えられても ッキリした形で表示。 四角形は一意的には定まらない。このとき,この 等比級数の話題 ( p. 20 ∼) □ 四角形の面積が最大になるのは円に内接する場合 無限級数は少し視点を変えると驚く解答に出くわ であることに筆者は着目。面積の最大値が外接円 すことがある。筆者はそういう内容を提示。 いずれも興味深い題材。 と関係するとはとても興味深い。 □ 平面上における三角形の内角の和に対応する,空 本誌 No. 63 の続きで,今回は特性方程式の解が共 間における四面体の二面角の和を筆者は考えた。 役な虚数解をもつ場合を紹介。 一般に,内容を拡張する場合,表記の仕方はあま □ 漸化式の解法について ( p. 22 ∼) □ (特集) 四面体の二面角の和 ( p. 6 ∼) n と n ! についての一考察 ( p. 24 ∼) □ り変わらない場合と全く異なる場合がある。今回 以前,C についてその神秘性を扱ったが,今回 は後者にあたるが,筆者はこれを巧みに解説。 は n ! についての面白い関係を筆者が紹介。 このような興味深い関係は他にもありそうで夢を (特集)角の二等分線の長さを求める公式の証明 かき立ててくれる。 ( p. 9 ∼) 角の二等分線の長さはいろいろな方法で求めるこ □ 12 個の格子点を通るグラフを表す式 (p. 26 ∼) 日付からその曜日を求める方法はいろいろなもの れらが三角形の 2 辺の積となるように図形を変形 がある。筆者は換算表からその一次関数のグラフ することに気づいた点が面白い。 とガウス記号を駆使。これによって,換算表に頼 □ とができる。筆者は ,ab,cd に着目して,こ (特集) チェバ・メネラウスの定理から導く三角 形の不等式 ( p. 10 ∼) らない関係式を作成。 因数 p の出現頻度について ( p. 28 ∼) □ 偉大な発見は失敗がヒントになることがあるとよ 因数の出現頻度がジップの法則そのものであるこ く聞く。生徒の誤りをそれだけで終わらせずにど とに筆者は感銘。正に自然現象と自然数のつなが んな意味があるかを考えたことはすばらしい。そ りを匂わす神秘的な事柄かもしれない。 してその結果得られた定理も興味深い内容である。 □ 垂直条件 mm′=−1 の 6 つの証明 ( p. 12 ∼) □ Studyaid D.B. information ( p. 30 ∼) 易しい内容であってもいろいろな解法を考えるこ 今回は Studyaid D.B. の新課程対応システム とは理解を深めることに役立つ。また,易しい内 (Ver. 17) の検索方法について解説しました。 1 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 4 辺が与えられた四辺形 さかもと 坂本 しげる 茂 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 特集 図形に関する性質 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 §1.四辺形 四辺形 ABCD で θ=∠DAB その対角 四辺形 ABCD において 4 辺 DA,AB,BC,CD の長さがそれぞれ,a,b,c,d で与えられているも φ=∠BCD とする。辺 BD は △DAB,△BCD の 共通辺で余弦定理から次式が成り立つ。 a+b −2ab cos θ=c +d −2cd cos φ のとする。四辺形ができるための条件は ④ いま 0<θ<π であるが θ を②の α に選べば③から b+c+d>a,c+d+a>b,d+a+b>c, a+b −2ab cos θ=c +d +2cd cos θ a+b+c>d を満たさなければならない。いま四辺形の周の半分 である。四辺形 ABCD が決定するためには,角 θ を s として の対角 φ が定まらなければならないが,このときこ れと④から cos φ=−cos θ が成り立ち,0<φ<π 2s=a+b+c+d であるので φ=π−θ となる。すなわち②式で定 とおけば,この条件は s>a,s>b,s>c,s>d ① まる角 θ=α によって θ+φ=π と表される。 4 辺がそれぞれ与えられた四辺形で円に内接す るものがただ 1 つ存在する 《証明》 a より大きい辺がなく,a≧b,c,d とし ても一般性は失わない。このとき四辺形 ABCD が できるための条件は s>a で十分である。なぜな ら,この式に a≧b を加えて s>b を得るが,他も 同様で①が成り立つ。ここで b+c+d>a から ⑤ を満たす ∠A=θ,∠C=φ が決定する。したがっ て,四辺形の対角の和が 2 直角となるので,円に内 接する四辺形 ABCD が存在する。 もし,円に内接する四辺形が他に存在して θ′=∠A=π−∠C であるとすると BD=a+b −2ab cos θ′ =c +d −2cd cos (π−θ′) が成り立つ。これより 0≦a−b<c+d cos θ′= であるが,両辺正であるから 2 乗して a+b −c −d ,0<θ′<π 2(ab+cd) (a−b)<(c+d) であるから,②より θ′=α となる。すなわち, 4 a +b −c −d <2(ab+cd) 辺が与えられて円に内接する四辺形 ABCD はただ 1 つである。[証終] また, c−d <a<a+b であるから 2 乗して −2(ab+cd)<a +b −c −d ■ 2 式の両辺を正数 2(ab+cd) で割り −1< a+b −c −d <1 2(ab+cd) これより,次の式を満たす角 α が 0<α<π の範囲 に 1 つ存在する。 cos α= a+b −c −d 2(ab+cd) ② 次に,周の長さが与えられた多角形で面積が最大 したがって以下の式を得る。 a +b −2ab cos α=c +d +2cd cos α 2 ③ となるものは正多角形であるが,4 辺がそれぞれ与 えられた四辺形で面積が最大になるものを調べる。 BD×AC=ac+bd となるが,対角線の積は対辺の 4 辺の長さがそれぞれ与えられた四辺形の面積 積の和である (Ptolemaios) ことがわかる。 は,円に内接するとき最大となる。 《証明》 円に内接する四辺形 ABCD の面積 S は⑤,⑥か 四辺形 ABCD の面積を S とすると ら S=△DAB+△BCD より 1 1 S= ab sin θ+ cd sin φ 2 2 ⑥ である。ここで θ が変化すれば φ も変化する。⑥に おいて S を θ で微分すると dS 1 1 dφ = ab cos θ+ cd cos φ⋅ dθ 2 2 dθ ⑦ S= S = 1 (ab+cd)(1−cos θ)(1+cos θ) 4 = 1 (2ab+2cd−a−b +c +d ) 16 ×(2ab+2cd+a+b −c −d ) dφ dθ ⑧ したがって,⑦,⑧より dS 1 1 sin θ = ab cos θ+ ab cos φ⋅ dθ 2 2 sin φ = = 1 {(c+d)−(a−b)}{(a+b)−(c−d)} 16 = 1 (c+d−a+b)(c+d+a−b) 16 ×(a+b−c+d)(a+b+c−d) となるが,2s=a+b+c+d とおいて s を 四辺形 ab (cos θ sin φ+sin θ cos φ) 2 sin φ の半周としたから,4 辺の長さが決まった四辺形 ab = sin (θ+φ) 2 sin φ ABCD の面積の最大値 S は,円に内接するとき次 dS となる。ここで 0<θ+φ<2π であり, =0 と dθ 式で与えられる。 S= (s−a)(s−b)(s−c)(s−d) (Brahmagupta) ⑫ なるのは,⑤ θ+φ=π が成り立つときである。実 際,⑤式が成り立つときが存在することは証明され ていて,このとき面積 S は最大となる。すなわち, 4 辺が与えられた四辺形 ABCD の面積は,円に内 接するとき最大である。[証終] ■ 四辺形 ABCD が円に内接するとき⑤ φ+θ=π であるから,④式により cos θ= a+b −c −d 2(ab+cd) cd(a+b )+ab(c +d ) ab+cd を得ることができる。これから 1 ab+cd BD= BD 2 sin θ 4S 1 (ab+cd)(bc+da)(ac+bd) 4S 1 1 1 1 + + + ,k=a+b +c +d a b c d とおくと S,R は以下のように表される。 (bc+da)(ac+bd) , ab+cd (ab+cd)(ac+bd) bc+da R= k= AC も同様で,四辺形 ABCD の 2 対角線 に対する正弦定理と⑪から求めると k=abcd,k=a+b +c +d , AC= 四辺形 ABCD が内接する円の半径 R を △DAB また S,R は a,b,c,d の対称式であるが (bc+da)(ac+bd) ab+cd で等号は正方形のとき成り立ち,面積最大である。 R= bc(ac+bd)+da(ac+bd) = ab+cd BD= 2s S =(s−a)(s−b)(s−c)(s−d)≦ となって,⑩により以下の式を得る。 BD=a+b −2ab cos θ = 相加・相乗平均の不等式により ⑨ である。これより = ⑪ で S を⑨を用いて変形し また,④を θ で微分して 2ab sin θ=2cd sin φ⋅ 1 (ab+cd)sin θ 2 ⑩ S= 8k+k−2k , 4 R= k(k+kk) 8k+k−2k 4 辺が a,b,c,d の四辺形は 4 の数珠順列より abcd,abdc,acbd の 3 種の四辺形が考えられる。 3 これらが円に内接するとき,円の半径 R は同じで, 内接四辺形の面積 S の値も同じである。 △ABC の面積を 2 等分する線分を考えると最 短の線分の長さは 2(s−b)(s−c) §2.三角形 四辺形 ABCD の頂点 D が A に近づいて △ABC に近づくとき,円に内接する四辺形の面積公式⑫で 面積 S は d=0 として S= s(s−a)(s−b)(s−c) (Heron) ⑬ となる。実際,これは辺 AB,BC,CA の長さをそ れぞれ b,c,a とした △ABC の面積 S を与える式 で a+b+c=2s であって, s は周の半分である。 △ABC において θ=∠CAB とし 1 a+b −c ,S= ab sin θ cos θ= 2ab 2 が成り立つが,これは⑨,⑪式において d=0 とし たものである。したがって, S の導出⑬式は,上記 ⑫式の円に内接する四辺形の面積計算とまったく同 じもので,d=0 として辿ることができる。 Heron の公式にそのまま相加・相乗平均の不等 式を考えても,4S<s しか得られないのであるが, S =(s−a)(s−b)(s−c) とし適用すれば s 《証明》 (b≧a,c≧a) 2 辺 AB,BC 上にそれぞれ点 X,Y を取 り,△AXY= 1 △ABC のとき 2 1 1 sin A= bc sin A,=AX,=AY 2 4 より 2=bc である。余弦定理で XY= + −2 cos A =(−)+2(1−cos A) ≧2(1−cos A) =bc 1− b +c −a 2bc = 1 (2bc−b −c +a) 2 = 1 (a−b+c)(a+b−c)=2(s−b)(s−c) 2 すなわち == bc のとき最小になる。他の 2 2 辺上で 2 等分するときも同様であるが,b,c≧a であるからこれが最短の長さである。[証終] ■ S (s−a)+(s−b)+(s−c) s ≦ = s 3 3 であるから S≦ 3 s が成り立つ。等号は正三角 9 形のときである。周の半分 s を用いて表せるものを 調べると,まず三角比が sin A (s−b)(s−c) A s(s−a) = ,cos = , 2 bc 2 bc なお,△AXY= tan A (s−b)(s−c) = 2 s(s−a) 分 XY の長さは次式である。 となり,△ABC の内接円が辺 AC,AB で接する点 をそれぞれ E,F とし内心を I とすれば AI=bc である。 s−a (s−b)(s−c) ,EF=2(s−a) s bc 2 1 △ABC とするような最短の線 n (s−b)(s−c) bc ,== n n Heron の公式から,周長 2a が与えられたときは, 正三角形が面積最大であることがいえた。半径 R の 定円に内接する △ABC についてはどのようにいえ るだろうか。3 辺 a,b,c に対する円周角はそれぞ れ A,B,C で,中心角は 2A,2B,2C であるから, 面積 S は角で表し S= R (sin 2A+sin 2B+sin 2C) 2 =2R sin A sin B sin C となる。 4 A+B+C=π の条件で A=B=C のとき, S は最大である。 《証明》 さが大きくなるので面積は大きくなる。すなわち, 正三角形でない三角形では,面積がそれより大きな 二等辺三角形が存在し面積最大とはいえない。した Aを固定して次の不等式 がって,円に内接する三角形で面積最大となるのは S=2R sin A sin B sin C 正三角形である。 =R sin A{cos (B−C)−cos (B+C)} 定円に外接する △ABC においても,角Aを固定 =R sin A{cos (B−C)+cos A} すれば B=C の二等辺三角形のとき面積が最小に ≦R sin A(1+cos A) が成り立ち,等号は B=C のとき成り立つ。した がって,頂角Aの三角形の面積を最大にするのは二 等辺三角形のときである。これは A,B,C どれを 頂点と考えても二等辺三角形が面積最大といえるか ら,正三角形のとき面積最大である。 なることが図形でわかる。これは角 B,C を固定し たときも同じことがいえるので,定円に外接して面 積が最小となるのは正三角形である。 実際,半径 r の円に外接する △ABC の面積 S は, 角で表すと次のようになる。 S=rs=r cot 実際,B=C の二等辺三角形の面積 S=R sin A(1+cos A),0<A<π A+B+C=π の条件で A=B=C のとき, が最大値をとるときはAで微分し, S は最小である。 dS =R (2 cos A−1)(cos A+1) dA 《証明》 1 であり cos A= のとき最大となることがわかり, 2 π このとき A=B=C= である。すなわち同じ円 3 に内接する三角形では正三角形が面積最大である。 [証終] A B C +cot +cot 2 2 2 ■ 以上は次のような図形における推論で示唆された。 円に内接する三角形において面積が最大であるのは 正三角形ではないとすると,面積最大なのは 3 辺が 異なる三角形か,あるいは 2 辺だけ等しい二等辺三 角形である。3 辺が異なる三角形の場合にある 1 辺 A,B,C それぞれの半径を α,β,γ とおき S=r (cot α+cot β+cot γ) sin (β+γ) sin β sin γ 2 cos α =r cot α+ cos(β−γ)−sin α 2 cos α ≧r cot α+ 1−sin α =r cot α+ 等号は β=γ すなわち B=C の二等辺三角形のと きである。このとき 2 sin α−1 dS =r cot α⋅ (1−sin α) dα π のとき S は最小になる。すなわち 6 を底辺として円周上で頂点を (同じ側で底辺の垂直 となり,α= 2 等分線上に) 動かし二等辺三角形を作る (円周角 A=B=C で正三角形のとき,定円に外接する三角 の定理より頂角の値は変わらない) と,高さが大き 形の面積は最小になる。[証終] くなりもとの三角形より面積は大きい。二等辺三角 形の場合においても, 2 等辺の 1 辺を底辺として頂 ■ 以上は大学入学後に考え,本の余白に書いておい た最大・最小問題をまとめたものである。 点を円周上で動かし別の二等辺三角形を作れば,高 (元東京都立高等学校) △A′BC>△ABC △AB′C>△ABC 5 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 四面体の二面角の和 −三角形の内角の和は 2 直角の類似− ひとつまつ 一松 しん 信 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 特集 図形に関する性質 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 §1.問題の趣旨 しかし近年では立体幾何を扱わなくなったせいか, 三角形の 3 個の内角の和は 2 直角 (あるいは一定 この用語が死語に近くなった (?)。数学検定で特定 値) である。これはユークリッド平面幾何学の基本 の四面体の二面角を計算する問題に対して,各面の 的な定理である。 三角形の内角を計算して済ませた誤答が予想外に多 類似の結果が 3 次元の四面体に拡張できるか? 例えば 6 個の辺における二面角の和が一定値になる か? これは誰しも一度は考えてみる (?) 事項か もしれない。 誤解のないように一言すると,上述のような性質 かったという。 二面角を計算するために近年ではベクトルが活用 されている。前記の点 O において両面 P,Q に垂直 な法 線 ベ ク ト ルu ,v を 作 れ ば,二 面 角 θ は u ,v のなす角の補角であり,後者の角は両ベクト は成立しない (後述)。しかし 6 個の二面角の間には ルの内積から容易に計算できる (図 2 )。 ある恒等式(後述の式⑷) が成立し,それが平面 ところで四面体の 4 面に対する外向きの単位法線 ベクトル v,v,v,v を作ると,これらは 3 次元 三角形で内角の和が 2 直角という定理の拡張に なっている。ただしその式は (高校数学の範囲を超 える) 行列式を使って表現されるために,普通の教 科書には載っていない。 その意味で若干逸脱だが,注意を喚起する意 味で紹介したいと思う。 §2.二面角とは 空間内の 4 本のベクトルだから当然一次従属だが, どういう関係式が成立するか? その答は v に垂 直な表面の三角形の面積を S とするとき ∑ Sv=Sv+Sv+Sv+Sv=0 ⑴ である。⑴については次のような図 3 の物理学的 な説明で納得して頂けるだろうか。 3 次元空間内の平行でない 2 枚の平面 P,Q は一 直線 ℓ で交わる。このとき P,Q の間の二面角とは ℓ 上の一点 O を通りおのおのの平面上で ℓ と垂直な 直線 p,q を作ったとき,2 直線 p,q が点 O におい てなす角 θ である。その大きさが ℓ 上の点 O の位 置によらずに一定であることは平行線の公理を 活用して証明できる。昔の教科書には図 1 のような 図が載っていて屏風を立てたような形と形容さ れていた。 四面体を中空の 4 面の膜でできた容器と考えて内 部に空気を吹き込むと,各面に Sv に比例した力が かかる。もしもその和⑴ (合力) が零ベクトルでな ければ,四面体が自動的にそのベクトルの方向に動 き続ける。このような永久運動はあり得ないは ずである。 このような説明が厳密でないと思う方は,⑴ の数学的に厳密な証明を各自で考えてほしい。 6 §3.四面体の二面角の間の関係式 cosγ+2 cos α cos β cos γ+cosα cosβ 前節の記号で面積 S,S (i j) の 2 面の交線を ℓ (=ℓ ),そこでの二面角を θ(=θ ) とすると cos θ=−⟨v,v ⟩ (内積) である。便宜上 a=1=⟨v,v⟩ (大きさ 1 ) とし, a=a =−cos θ=⟨v,v ⟩ (ij) ⑵ とおいて,これらを成分とする 4 次の行列式 a = ⟨v,v ⟩ ,i, j=1,2,3,4 =sinα sinβ=(1−cosα)(1−cosβ) =1−cosα−cosβ+cosα cosβ である。これを整理すれば⑸を得る。 逆に⑸が成立するとすれば,cos γ の 2 次方程式 cosγ+2(cos α cos β) cos γ+(cosα+cosβ−1)=0 とみなして cos γ について解くと ⑶ cos γ=−cos α cos β を作る。この行列式の第 i 行に S をかけて加えれ ば,等式⑴によって ∑Sv=0 であるから,行列式 である。この根号内は ⑶の値は 0 に等しい。すなわち次の等式を得る。 (1−cosα)(1−cosβ)=sinα sinβ に等しいから 1 −cos θ −cos θ −cos θ −cos θ 1 −cos θ −cos θ =0 ⑷ −cos θ −cos θ 1 −cos θ −cos θ −cos θ −cos θ 1 これが四面体の 6 辺における二面角 6 個の間に成 立する恒等式である。⑷を展開することもでき るが,かえって複雑で見透しが悪い。なおサリュス (サラス) の展開の類似を 4 次の行列式に機械的に適 用しては誤りであることを念のために注意しておく。 上記の議論の類似を 2 次元の三角形について論ず れば⑷と同様の恒等式 1 = −cos γ −cos β −cos γ 1 −cos α cos γ=−cos α cos β±sin α sin β=−cos (α±β) ⑹ を得る。さて α,β,γ がすべて 0°と 180°の間の角と する。さらにユークリッドが強調しているように, 三角形の 2 内角の和は 180°未満である。この事実 は平行線の公理を使わずに証明できる。ただしその ためにはユークリッドが明記していない順序の公 理を正しく論ずる必要がある。 そのような制限の下で⑹は γ が α+β,α−β ま たは β−α の補角であるという場合にのみ成立す §4. 2 次元の三角形の場合 1 −cos θ −cos θ 1 −cos θ −cos θ −cos θ −cos θ 1 ± cosαcosβ−cosα−cosβ+1 る。し か し,後 二 者 は γ+α あ る い は γ+β が 180°より大きくなって不可である。結局三角形の 3 内角の α,β,γ については⑹は α+β+γ=180° の場合のみに成立し,結果的にこれが必要十分条件 になる。 −cos β −cos α =0 1 ⑷' 以上のような考察によって,見掛けは著しく異な るが⑷が三角形の内角の和は 2 直角という命題 を得る。ただし記述を略記するために の 3 次元版であることが裏付けられたと思う。 α=θ,β=θ,γ=θ §5.二面角の和 とおいた。⑷′を展開すれば 1−cos α−cos β−cos γ−2cos α cos β cos γ=0 ⑸ 前節でその一端を示したように,平面の三角形で となる。⑸は α+β+γ=180° のときに成立する重 内角の和が一定という結論は,2 次元の場合の特殊 要な等式だが,α+β+γ=180° は一つの十分条件 性が強く影響している。 3 次元の場合に等式⑷から であり,⑸の必要十分条件とは限らない。 念のために,まず α+β+γ=180° のとき⑸が成 立することを証明する。もちろんいろいろと可能だ が次のが簡潔だと思う。γ=180°−(α+β) から cos γ=−cos (α+β)=sin α sin β−cos α cos β (加法定理) を書きかえて cosγ+cos α cos β=sin α sin β であ る。この両辺を 2 乗すると 7 θ の和が一定値であると結論しようといった 無駄な証明の努力はしないで頂きたい。 これについて若干解説を補充する。1°の等積四面 体は直方体の一つおきの頂点を結んでできる等面四 θ の和が一定でないことは,数学でよく試みる 面体である(図 5 )。すなわち各面は互いに合同な鋭 手法だが極端な場合を考えるとよい。この問題 角三角形であり,相対する 3 対の辺どうしは長さが では四面体を平面に押し潰した極限を考える。 等しく,そこでの二面角も等しい。 その潰し方には図 4 のような⒜と⒝と 2 通りの方法 θ=θ=α,θ=θ=β,θ=θ=γ がある。前者は一頂点を他の三角形の内部に潰した (α,β,γ はそう略記するという意味)。このとき行 場合,後者は相対する一対の辺が交わるように四角 列式⑷は展開して因数分解ができ 形に潰した場合である。 ⑷=(1−cos α−cos β−cos γ) ⒜のときには二面角は 3 個が 0,3 個が 2 直角に ×(1−cos α+cos β+cos γ) 近づき,合計は 6 直角に近づく。⒝のときは 4 個の ×(1+cos α−cos β+cos γ) ×(1+cos α+cos β−cos γ) 二面角が 0,2 個が 2 直角に近づき,合計は 4 直角に 近づく。実はこの両者が両極端であって,四面体の 1−cos α−cos β−cos γ=0 6 個の二面角の和はつねに 4 直角より大きく 6 直角 より小さい(もちろん一定値ではない)。 それにもかかわらず,模型を作って実測してみる と,二面角の合計が多くは 420° に近い値になる。 ⑺ と表される。ただし,等積四面体の二面角 3 対は ⑻ を満足する。⑻の下で α+β+γ の最大を調べると, それは α=β=γ cos α= 1 3 のときで,正四面体 400° 以下や 450° 以上になる例は,意図的に作る工 に該当する。このことは例えば =cos のグラフ 夫がいる。 が 0<< 当初はこの課題についてもっと論ずる予定だった。 しかし特定の規則のない結果は退屈だろうと考 えて割愛することにした。ただ次の事実は若干難し いが興味ある事実と思うので,結果のみを記して結 びとする。 1° 4 面の面積がすべて等しい等積四面体の うち, 6 個の二面角の和が最大なものは正四面体で ある。 2° 底面が正三角形で他の頂点が底面の中心を通 りその面に垂直な直線上にある正三角錐のうち, 6 個の二面角の和が最小なものは正四面体である。 ということは正四面体の場合の和の値 1 6θ=423°.16079… (詳しくは cos θ= , 3 θ=70°.526779…) が一種の鞍点になっている。 π (90°) において上に凸であることを活 2 用して証明できる。 正三角錐 (図 6 ) に関する 2° の性質は⑷を活用し てもできるが,直接に底面の三角形 ABC を固定し, 高さ DG を変数として底面と側面,および側面どう しの二面角を計算しても確かめられる。詳細は長く なるので申し訳ないがこれ以上の説明を省略する。 §6.むすび 四面体の拡がりを表す量としては,さらに頂 点における三面角(正確にはそこでの立体角) の 概念がある。もちろん 4 個の和が一定といった関係 は成立しない。これも各辺での二面角などによって 計算できる。調べるのは悪くないが,計算は大変で ある (文献参照)。 最後のほうは結果を挙げただけで不満足であるが, 四面体の二面角の和について一言した次第である。 《参考文献》 [1] 五十嵐貫他,円周角の定理の球への拡張につ いて,日本数学教育学会 高専・大学部会論文誌,18 (2011),p. 35−52 (京都大学名誉教授) 8 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 角の二等分線の長さを求める公式の証明 ふじおか 藤岡 まさと 優太 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 特集 図形に関する性質 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 §1.典型的な証明 問 そこで,もう少し自然でストレートな解法がないか 下図で =ab−cd …(Ⅰ) を示せ。 考えてみました。 §2.積 → 面積 を利用した証明 左の図において, ⋅ =α とすると 0<2α<2π から sin 2α0 であり =ab−cd …(Ⅰ) は 1 1 1 sin 2α= ab sin 2α− cd sin 2α 2 2 2 つまり 1 1 1 ab sin 2α= sin 2α+ cd sin 2α …(Ⅱ) 2 2 2 上記の問題に対する典型的な解法が以下です。 と同値です。ここでは (Ⅱ) を面積を用いて,図でイ 典型的な証明 メージ的に示します。 (Ⅱ) の証明 1 ab sin 2α 2 = 図 1 のように三角形の外接円を考え を設定する と =cd a:(+)=:b (図 2 で打点部三角形の相似より) = (図 3 で方べきの定理より) から =cd ab=(+)= + = …① …② であり②を①に代入して =ab−cd とわかる。 ■ この解法は非常にスッキリしていますが,補助円 を考える点や を設定する点から自力では思いつき = 1 1 sin 2α+ cd sin 2α 2 2 となります。■ にくく,またなぜ公式が成り立つのかというこ とがストレートにはわかりにくいように思います。 (幾何の得意な人には ・積 ab をつくる → 相似をつくる → 補助円 ・積 cd → 方べきの定理 と簡単?に発想できますが…) 《参考文献》 〔1〕 モノグラフ 26 幾何学 −発見的方法−改訂版(科学新興社) p. 19 問題 5−4 p. 174 略解と解答 4 (高知県 土佐高等学校) 9 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 チェバ・メネラウスの定理から導く三角形の不等式 なかむら 中村 こういち 公一 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 特集 図形に関する性質 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 §1.はじめに これら 3 式を辺々掛けて 三角形 ABC で点 O を三角形の内部にとり図のよ うに設定した場合, gki(a+b)(c+d)(e+ f ) =1 acejlh これから j l h a+b c+d e+ f ⋅ ⋅ = ⋅ ⋅ g i k a c e = 1+ b a 1+ dc 1+ ef ……① 次にチェバの定理より BP CQ AR チェバの定理は ⋅ ⋅ =1 ですが,とき PC QA RB どき e a c ⋅ ⋅ =1 f b d AO BO CO ⋅ ⋅ =1 と間違える生徒がいます。 OP OQ OR も ち ろ ん 後 者 の 式 は 成 立 し ま せ ん。し か し こ の AO BO CO ⋅ ⋅ の値は何か法則があるのでしょう OP OQ OR か。既に知られている事実とは思いますが,チェバ の定理とメネラウスの定理で遊んでみました。 f ac = これを①にあてはめて e bd j l h b ⋅ ⋅ = 1+ g i k a =2+ ac 1+ dc 1+ bd b a d c bd ac + + + + + a b c d ac bd (相加平均と相乗平均の関係より) ≧2+2 つまり §2.定理Aの証明 ∴ b a d c bd ac ⋅ +2 ⋅ +2 ⋅ =8 a b c d ac bd AO BO CO ⋅ ⋅ ≧8 が導かれました。 OP OQ OR なお,等号が成り立つのは 【定理A】 b a d c = , = , a b c d AO BO CO ⋅ ⋅ ≧8 であり,等号が成り立つ場 OP OQ OR bd ac = より a=b,d=c の場合で,これは点 O ac bd 合は点 O が三角形の重心のときに限る。 が三角形の中線の交点,つまり重心であることを示 しています。 《証明》 式を見やすくするために各線分の長さを下記のよう に表します。 BP=a PC=b CQ=c QA=d RB=f OP=g CO=h OQ=i AR=e AO=j OR=k BO=l △ABP と直線 CR で e a+b g ⋅ ⋅ =1 f b j △BCR と直線 AP で b e+ f k ⋅ ⋅ =1 a e h △ABQ と直線 CR で f c+d i ⋅ ⋅ =1 e c l 10 §3.証明の副産物 式①は AO BO CO BC AC AB ⋅ ⋅ = ⋅ ⋅ を示しています。 OP OQ OR BP CQ AR さらにチェバの定理 メネラウスの定理より ■ BP CQ AR ⋅ ⋅ =1 より PC QA RB BP⋅CQ⋅AR=CP⋅AQ⋅BR ですから 【公式 B 】 AO BO CO BC AC AB BC CA AB ⋅ ⋅ = ⋅ ⋅ = ⋅ ⋅ OP OQ OR BP CQ AR CP AQ BR §4.注意 が導かれます。 AO BO CO この ⋅ ⋅ のもつ意味について調べる OP OQ OR と次の事実に到達しました。 しかし,この場合残念ながら定理Aは成り立ちま ただし,△ABC と △PQR はそれぞれ せん。 △ABC と △PQR の面積を表す。 a c e △ABC=S, =, =, = z とおきます。 b d f ただし,a,b,c,d… は定理Aの証明で用いた各線 分の長さを表すものとします。 また,チェバの定理は五角形や七角形などの奇数 張できることが知られていますが,定理Aを四角形 z S (+1)( z+1) 以上の点をふまえて改めて定理Aと C さらに公式 B をミックスして書き直すと以下のようになります。 e+ f AB = ですから f BR S △ABC 【定理】 点 O を △ABC の内部にとり,直線 AO と辺 BC の交点を P,直線 BO と辺 AC の交点を Q, 公式 B より △PQR=2⋅ AO BO CO ⋅ ⋅ OP OQ OR 直線 CO と辺 AB の交点を R としたとき,次の AO BO CO △ABC ⋅ ⋅ =2⋅ OP OQ OR △PQR 等式および不等式が成り立つ。 ■ AO BO CO ⋅ ⋅ の値は内部と外部の 2 つの OP OQ OR 三角形の面積比に関連する数値だったのです。 定理Aの結果と合わせて表現すると, △PQR の 面積は △ABC の面積の 角形の中にとっても,頂点から O へ引いた直線と対 めです。 a+b BC c+d CA +1= = ,+1= = b CP d AQ 以上に拡張することはできません。たとえ点 O を多 辺との交点が多角形の外に出てしまうことがあるた チェバの定理より z=1 であり AO が OP 角形,メネラウスの定理も四角形以上の多角形に拡 △PQR=S− BC CA AB △PQR=2⋅ ⋅ ⋅ CP AQ BR AO が∞に発散していきます。また OP 0 に収束します。 d e △ARQ= ⋅ S= S c+d e+ f (+1)(+1) 1+z = S (+1)(+1)( z+1) けていくと 辺 BC と並行になる位置に近づけていくと b c △CQP= ⋅ S= S a+b c+d (+1)(+1) + BO CO と を有限値に保ったまま,辺 AB に近づ OQ OR BO CO と を有限値に保ったまま,点 O を OA が OQ OR a f △BPR= ⋅ S= S a+b e+ f (+1)( z+1) (+1)( z+1) + (+1)(+1) AO BO CO ⋅ ⋅ の値はすべての正数値をと OP OQ OR りえます。実際に,点 O を三角形の外部の点におき, 《証明》 この BP CQ AR ⋅ ⋅ =1 を拡張し PC QA RB 公式 B や定理 C は成り立ちます。 AO BO CO △ABC ⋅ ⋅ =2⋅ になる。 OP OQ OR △PQR ゆえに やメネラウスの定理 て使うことができます。省略しますが,その場合も 【定理 C 】 z+1= 点 O を三角形の外部にとった場合,チェバの定理 1 1 以下であり,最大値 4 4 になるのは,点 O が △ABC の重心にあるときに限 AO BO CO △ABC ⋅ ⋅ =2⋅ OP OQ OR △PQR = BC AC AB BC CA AB ⋅ ⋅ = ⋅ ⋅ BP CQ AR CP AQ BR ≧8 ただし,不等式の等号が成り立つのは点 O が △ABC の重心のときに限る。 (長野県 須坂高等学校) るという結論になります。 11 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 垂直条件 mm′=−1 の 6 つの証明 いけ だ よういちろう 池田 陽一郎 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 §0.はじめに ② ベクトルの利用 2 直線の垂直条件 mm′=−1 の証明は教科書で は,①三平方の定理 で示されている。もっとわか りやすい方法はないかと考えたのが,②ベクトル ③行列 ④合同 ⑤複素平面 さらに教科書では,⑥相似 を使ったものである。 を使ったものもある。 私の証明は②∼⑤の 4 つであるが,④は特に本質を ついていてわかりやすく,⑤は新教育課程でもおも 0=OA⋅OB しろく捉えることができるので,お勧めである。③ 行列は新課程ではなくなるが,これもおもしろい考 =(1,m)⋅(1,m′) え方である。 =1+mm′ ∴ §1. 2 直線の垂直条件 mm′=−1 2 直線 =m と =m′ が垂直ならば ③ mm′=−1 行列の利用 mm′=−1 が成立する。また逆も成立する。 というのが垂直条件である。これは,解析幾何的要 素が強いが,他の分野からも考察することができる。 §2.垂直条件 mm′=−1 の証明 ① 三平方の定理の利用 OA′=OB′=1 とし B′ を 90° 回転して A′ に移動さ せたと考えると 1 1 m 1+m cos 90° −sin 90° 1 1 = sin 90° cos 90° 1+m′ m′ 1 0 −1 1 1 1 = 0 1+m′ m′ 1+m m 1 1 −m′ 1 1 = 1+m m 1+m′ 1 (1+m)+(1+m′)=(m−m′) 2+m +m′ =m −2mm′+m′ ∴ mm′=−1 座標を比較すると 12 ∵ 1 −m′ = 1+m 1+m′ したがって m′ 1 = 1+m 1+m′ ∴ 1=mm′ ④ mm′=−1 π +arg z 2 u+vi=i(+i) u+vi=−+i 1+m′=m′(1+m) ∴ arg w=arg iz=arg i+arg z= ところが (∵ m>0 m′<0) u=−,v= v=m′u より (=m でもある。) =m′(−)=−m′m ∴ mm′=−1 合同の性質を利用 ⑥ 相似の性質を利用 OH=1,OH″=m とすると △OHA≡△B″H″O より,B″H″=1 となる。 △OHA△BHO より 直線 =m′ の傾きは m 1 = 1 −m′ −1 m′= m ∴ ⑤ ∴ mm′=−1 mm′=−1 複素平面の利用 §3.おわりに 垂直条件 mm′=−1 の証明は,とりあえず 6 つ 得られたが,どの証明も意味があると思う。しかし, その中でも④の三角形の合同を使った証明は,傾き m′を直接求めたものであり,直観的にも非常にわか りやすいので,生徒たちに示すときはとてもいいも のだと思う。初等的であるが本質的であるという意 味では,お勧めである。また,③は高校生の視野か ら外に出るが,⑤の複素平面は,これからの高校生 複素数 z を 90° 回転させると w の位置にくる。この には新鮮であろう。 とき 《参考文献》 w=iz と表せる。 〔1〕 数学Ⅱ 数研出版 2003 (東京都立永山高等学校) 13 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 三角形の 3 つの角に関する問題から −自作問題と生徒の解答から考えたこと− なかはら 中原 かつよし 克芳 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 §1.はじめに §2.生徒の反応 以下の小論文を読む前に,次の問題A(自作) を考 えてみて下さい。 [問題A] △ABC において,cos A= cos B= 象生徒は数学ⅠⅡAB 選択の文系基礎クラス 22 名, いわゆる難関校ではないが受験に数学の記述が必要 2 , 3 な生徒達,ただし私立薬科大学希望者も含まれます。 どちらかと言えば数学が得意ではない生徒達です。 2 のとき,cos C の値を求めよ。 7 そして上記のような解答が 8 名と,約 この問題の出題意図は,三角形の内角の和は 180° であるという小学生でも知っている知識から,三角 形の 2 角がわかっているとき残りの 1 つの角も得ら れることを,具体例で確認することです。ただし, 三角形の 2 角は角度ではなく余弦の値で与えられて いることが,小学校の問題と違うところです。それ は余弦 (cos) とは角の表し方の一つであり,特に 0° 以上 180° 以下の角が cos という関数により,−1 以 上 1 以下の実数と 1:1 に対応するという性質を利 用したものです。 このように考えれば自然な問題設定であるため, 多くの大学で出題または問題集に掲載されていても 不思議はないはずでしょうが,勉強不足もあって, 類題を見たことがありません。そして出題意図から, 次の自然な解答が導かれます。 [解A] 三角形の内角の和より 0°<A,B,C<180°, かつ A+B+C=180° である。 また cos A= sin A= 2 2 ,cos B= より 3 7 5 3 5 ,sin B= 3 7 ……① で解いていました。このことからも,この問題はそ れほど難しくはないと言って良いと思われます。な お時間設定は,授業時間内 (50 分) で解けば良いと して,早く解いた生徒には自主的に問題集を解くよ うに言っておきました。 さて,この問題に関して,中々解けない生徒に対 しては,三角関数の様々な公式を考えよ,とヒント を出しました。もっともこちらで想定した公式は上 記の通り,相互法則・ 軸対称・加法定理くらいで したが。 しかし生徒はさすがというべきか,実に様々な発 想を見せてくれました。それは三角形から自然に考 えられる余弦定理・正弦定理・面積の公式等の利用 です。ある生徒は正弦定理 a b = sin A sin B S= 1 1 bcsin A= casin B 2 2 b についての関係式 9a=7b より加法定理を用いれば, ……② を導きました (これらはともに複数名の生徒が書い cos C=−cos Acos B+sin A sin B 14 解し,しかも正解者はそれなりの速さ (20 分以内) から,上記①より sin A,sin B の値を用いて,a と cos C=cos (180°−(A+B))=−cos (A+B) 2 2 5 3 5 11 ⋅ + ⋅ = 3 7 3 7 21 1 の者が正 3 より,また別の生徒は面積の公式 となる。ここで =− この問題を,高校 3 年生に解かせてみました。対 ていました)。これらのことから,正弦定理と三角 (答) 形の面積の公式とは,関連が深いことがうかがえま 得られる。また再び⑥を用いれば す。 一方で,2 つの角 A,B に関する余弦定理から a=b +c −2bc⋅ 2 3 ……③ 2 b =c +a −2ca⋅ 7 ……④ b= 9 8 a,c= a 7 7 となる。これは △ABC の 3 辺の比を表すため, 余弦定理の基本問題に帰結する。すなわち⑦を⑤ に代入して計算すれば,cos C= を導いた生徒もやはり複数名いました。 ……⑦ 11 を得る。 終 21 彼女らはその後にもいろいろな計算をしてはいま したが,残念ながらこれらの方法で正解に至るもの さて,解答 C の解法では,直接は正弦定理を使っ は現れませんでした。しかしこのように出題者にな ていませんが,結局は正弦定理から得られる 3 辺の い発想は,出題者を喜ばせるに十分余りあるもので 比⑦を用いることになりました。 す。実際,これらの方法を考え直して正解に到達す また解答 C で見逃せない点がもう一点あります。 ることができました。そこでそれを新たに出題しま それは途中の式変形でうまく和と差の積が出て a と す。すなわち[問題A]の解法に条件を付けるのです。 b の関係が簡明になりました。これはこの問題特有 のものなのでしょうか。それを確認するには,一般 §3.解法の仕方に条件をつけた解答 [問題 B ] の場合の余弦定理 正弦定理と角 C についての余弦定理 c =a+b −2abcos C ……⑤ を用いて,問題Aを解け。 [問題 C ] 3 つの角に関する余弦定理③,④, いる解法の応用,いわゆる連比の計算で解けそうで す。問題 C についても,このように 3 つの式を書き 並べれば,和や差を取れば未知数が減らせるため, 何とかなりそうな気がするのではないでしょうか。 それでは解説の都合で問題 B の解答は後回しにして, 問題 C の解答から述べましょう。 c=acos B+bcos A ……⑧ の差を取れば a−b =b −a+2c(acos B−bcos A), となり,⑧式を代入すれば 2(a−b ) =2(acos B+bcos A)(acos B−bcos A) となって,和と差の積が得られるのです。すなわち 和と差の積は偶然ではなく必然であったようです。 さらにこの式を変形すれば 4 4 ca+ bc 7 3 2 ∴ c= (3a+7b) 21 について考えれば良いわけです。これらの 2 式の和 が得られます。これは第 1 余弦定理です。また 2 式 問題 B については,教科書・参考書にも書かれて ③+④ より 2c = b =c +a−2cacos B を取って両辺を c で割れば ⑤を用いて問題Aを解け。 [解答 C ] a=b +c −2bccos A, a−b =acosB−b cos A, ……⑥ また ③−④ より a(1−cosB)=b (1−cos A), asinB=b sin A となり,結局あれこれと式をいじりまわした結果, 4 4 a−b =b −a− bc+ ca 3 7 正弦定理に戻ってしまいました。不勉強にして知ら 4 ∴ 2(a −b )= c(3a−7b) 21 ら正弦定理を導く既に知られた方法なのでしょう。 ここで⑥を代入すれば (右辺)= = 4 2 ⋅ (3a+7b)(3a−7b) 21 21 8 (9a−49b ) 441 これを整理すれば 9a=7b となり,関係式②が なかったのですが,恐らくこの式変形は余弦定理か そして具体的な問題より一般論の方が見通しが立て やすい好例と言えるでしょう。何かお釈迦様の掌の 上で遊ばされたような気もしないではありませんが, 定理の間の関係を垣間見ることができて勉強になっ たと思った方が賢明そうなので,そう思うことにし ました。 15 それでは次に問題 B について考えてみましょう。 となります。便宜上後者の三角形を △AB′C とし [解答 B ] △ABC の外接円の半径を R とすると, て,これら 2 つの三角形を辺 CA と角Aが重なるよ 正弦定理 a b c = = =2R より sin A sin B sin C 2 5 6 5 a= R,b= R,c=2Rsin C 3 7 うに 1 つの図に描けば,三角形の重ならない部分は 図のように,3 辺の比が 7:7:4 である二等辺三角 …⑨ 形になります。 が得られる。これらを⑤に代入すれば 4R sinC = 60 20 180 R −2⋅ R ⋅cos C R+ 49 21 9 となる。ここで sinC=1−cosC とし,両辺を 4R で割って整理すれば,cos C についての次の 2 次方程式 この図から ∠AB′C=180°−∠ABC 441cosC−1260cos C+209=0 ……⑩ であることがわかるため,正弦の値は等しいが余弦 が得られる…。 の値は符号だけ違うことがわかります。 このままでは係数が大きくなり過ぎて計算が大変 関数 sin θ が,0°<θ<180° に対して 1:1 関数で です。実際何人かの生徒はこの前後で計算間違い, はなく,問題文の cos B を sin B に変形してから使 これで原因がはっきりしました。すなわち,正弦 あるいは計算を断念してしまいました。しかし分母 を払う際に 21cos C でまとめることに気づけば,2 次方程式⑩は (21cos C) −60(21cos C)+209=0 となるため (21cos C−19)(21cos C−11)=0, のように因数分解ができ,解として cos C= 19 11 , 21 21 ったことから,cos C= 19 という誤答が導き出さ 21 れたのです。 確かに問題集の問題でも,sin θ から θ の値が 2 つ得られるため問題の吟味が必要になり,生徒が悩 む場面に良く出会います。ということは,cos で与 えられた数値を sin に戻して用いる解答 B は別解 としてはあまり好ましくないと言えそうです。 三角関数はその発生からサイン,コサインの順に が得られます。これで 2 次方程式⑩を解くことは出 呼ばれることが多いのですが,三角形の形状を考え 来 ま し た が,別 の 問 題 が 生 じ ま し た。正 解 は る場合は,余弦 cos の方が正弦 sin よりも本質的で 11 19 cos C= でしたから,cos C= は不適である 21 21 はないかと考えさせられました。 はずです。それはどのようにして示せば良いのでし §4.おわりに ょうか。またこの余弦の値は不適であるにも関わら ず,何か意味がありそうです。それはどのような意 味を持つのでしょうか。 この 2 つの疑問を解決するには,やはり図を描く 以上,生徒に問題を解かせた際の感想に過ぎませ んが,読者の方が授業・研究等に役立てて下されば 幸いに思います。 最後になりますが,この問題の三角関数の数値は 11 8 5 べ き で し ょ う。cos C= の と き sin C= 21 21 簡単になり,生徒にも計算しやすくしてあります。 19 4 5 となり,cos C= のときは sin C= とな 21 21 問題における工夫を利用したものです。 るため,⑨を用いればそれぞれ 3 辺の比は 16 cos C= 11 のとき a:b:c=7:9:8 21 cos C= 19 のとき a:b:c=7:9:4 21 これは本誌 No.31 の拙稿三角関数の公式の練習 (広島県 広島女学院中学高等学校) 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 極座標における回転体の体積の公式について やなぎだ いつ お 柳田 五夫 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 §1.はじめに 曲線が極座標で表されている場合,図 1 の斜線部 分の面積 S は S= 1 2 となることから,o (Δθ) に含まれるからである。 次に積分計算で必要となるものをあげておく。 r dθ A(Δθ) =A(Δθ) 0 (Δθ 0) Δθ で求めることができる。それでは,斜線部分を始線 +A d 1 ( +A +A log + +A )+C 2 = ( +A ) d= 4 ( +A ) + 3 A( +A +A log + +A )+C 8 (log + +A )′= 1 であるから +A d+A =log + +A +C 〔図 1 〕 のまわりに 1 回転して得られる立体の体積の公式は どのような式になるのか考察してみたい。 +A d= ′ +A d d = +A − +A +A−A d = +A − +A = +A − +A d d +A +A §2.準備 V (θ+Δθ)=V (θ)+Δθg(θ)+o(Δθ) o(Δθ) =0 lim Δθ dV =g(θ) が成り立つ。 dθ が成り立つから,①を用いると なぜならば まず,次のことに注意しておく。 lim ……① これを用いると ならば V (θ+Δθ)−V (θ) o(Δθ) =lim g(θ)+ Δθ Δθ =g(θ) となるからである。 このことから,Δθ の 1 次近似 V (θ+Δθ)≒V (θ)+Δθg(θ) が求まれば, dV =g(θ) がいえることになる。 dθ なぜならば,A(Δθ) (m≧2) の項は +A d = 1 ( +A +A log + +A )+C …② 2 同様にして ( +A) d= ′( +A) d =( +A) −3 ( +A) +3A ( +A) =( +A) −3 ( +A) d d から 17 ( +A) d ≒ = 1 3 ( +A) + A ( +A) d 4 4 = ( +A ) 4 ……④ よって, dV 2 = πr sin θ dθ 3 3 A( +A +A log + +A )+C 8 + 2 πr sin θΔθ 3 ……③ を得る。 §3.始線のまわりに 1 回転して得られる 立体の体積 図 1 の斜線部分を始線のまわりに 1 回転して得ら れる立体の体積 V を求めることを考える。 となるから V= 2 πr sin θdθ 3 ……⑤ を得る。 §4.具体的な例 大学入試に出題されているものを見ていく。 平面上で原点を極, 軸の正の部分を始線 とする極座標に関して,極方程式 θ=α と θ=θ,r= f (θ) で囲まれた部分を始線 r=2+cos θ (0≦θ≦π) のまわりに 1 回転して得られる立体の体積を V (θ) により表される曲線を C とする。Cと 軸とで とする。θ が Δθ 変化すると 囲まれた図形を 軸のまわりに 1 回転して得ら れる立体の体積を求めよ。 〔09 京都大〕 2 π r sin θ dθ 3 2 = π (2+cos θ) sin θ dθ 3 2 = π u (−du) [2+cos θ=u] 3 2 = π u du 3 V= = =r sin θ+ Δθ cos θ 1 Δθ cos θ 1 倍すると面積が 2 1 倍されるから,(Δθ) に比例する量 を引い 4 ても 1 次近似としては同じ式なので ΔV ≒ 1 Δθ πr sin θ+ ⋅r cos θ 3 cos θ − 1 π(r sin θ)r cos θ 3 π 2 sin θΔθ = r ⋅ ⋅r cos θ 3 cos θ + 18 平面において,媒介変数 t (0≦t≦2π) で,上図の斜線部 これは Δθ を ほぼ 40 = π 3 P′H=OH tan(θ+Δθ) ≒r cos θ tan θ+ 2 u π 3 4 π (Δθ) r ⋅r cos θ 3 cos θ によって =2(1+cos t)cos t, =2(1+cos t)sin t と表される曲線で囲 まれる図形を 軸の 周りに 1 回転してで きる立体の体積を求 めよ。 〔11 名古屋市大・芸術工 改題〕 曲線は となる。この例では直交座標の方が計算しやすい。 r =acos 2θ は ( + )=a( − ) r=2(1+cos θ) (0≦θ≦2π) となるから となるから 2π 3 +(2 +a) + −a =0 r sin θ dθ 16 = π (1+cos θ) sin θ dθ 3 V= ≧0 であるから = = 16 (1+cos θ) π − 3 4 −(2 +a)+ 8a + 2 したがって,求める体積 V は V =2π d 64 = π 3 =π −2 −a +2 =π {−(2 +a)+ 8a +a } d §5.その他の例 曲線 r =acos 2θ を始線のまわりに 1 回転 してできる立体の体積を求めよ。a>0 とする。 =π − 4 = πa 3 4 πa 3 = 4 πa⋅2 3 = 4π t 1 a2 t − 4 3 2 2 +1)− 1 6 と求めることができる。 (cos 2θ) sin θ dθ = 42 log ( =πa 4πa 3 2 −a+ 2 a 3 (∵②) r sin θ dθ = a 2 a + d 8 求める体積 V は⑤を使うと 2 π 3 a a a × + + log + + 8 8 8 曲線はレムニスケートで r=a cos 2θ V =2× (2cos θ−1) sin θ dθ (2t −1) (−dt) [cos θ=t] t − 1 2 dt + 38 − 12 1 1 1 × t t − − log t+ t − 2 2 2 [追記] これは 2012 年 1 月に投稿したものである が,公式⑤が今年度の慶應大学医学部の [ⅳ] 番 の問題に出題されている。 (∵③) = 1 3 4πa + log ( 2 +1) ⋅2 − 32 3 16 2 42 log ( =πa 2 +1)− 1 6 (元栃木県立佐野高等学校) 19 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 等比級数の話題 まつ だ やす お 松田 康雄 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 §0.はじめに §2.無限等比級数の和の解釈 無限等比級数は無限と向き合う教材である。本稿 1 の級数の和を使う問題に遭遇した。 はこの無限等比級数に関するいくつかの話題を書い 問題 た。 までの回数の期待値は何か。 〔考え方 1 〕 §1.等比数列の和の公式 先日,宮地俊彦先生 (久留米高専) から次のような S=1+r+r +…+r ( n は自然数,r1) 勝負が決まるまでの回数の期待値は, 2 3 1+r+r +…+r =1+r+r +…+r +r 〔考え方 2 〕 +r (同じ式を書く。) =1+r(1+r+r +…+r ) (異なる区切り方をする。) ③ S+r =1+rS,(1−r)S=1−r ④ 1−r S= 1−r ∑ n(1−r)r = ∑ nr = ( n は自然数,r1) r+2r +3r +…+(n−1)r +nr =r+2r +3r +…+(n−1)r +nr ③ (1−r)T =S−nr , T= 1−(n+1)r +nr (1−r) ∑ k⋅r = 20 (Tが計算できる。) 1−(n+1)r +nr (1−r) 1 から 1−r 1 (1−r) ⑵ つ。 §3.並びのきれいな循環小数 10 =0.12345679… 81 (Tについてまとめる。) ④ 3 一般化 2 先日,ある生徒が 1−r −nr 1−r S−nr = T= 1−r 1−r = lim (n+1)r =0,limnr =0 なので,⑵が成り立 rT =T −S+nr ( S とTを使って変形する。) が成り立つ。実際⑴において, r <1 のとき (同じ式を書く。) ② 2 1 ⋅ 3 3 して T =1+2r+3r +…+nr 2 なので,求める期待値はその逆 3 この方法を真似て,次の級数の和を求めてみた。 一方,2 人でじゃんけんをしてどちら 3 (回) と考えられる。 2 の (等比数列の和の公式が得られる。) となる。 2 つの考え方から ∑ n⋅ ( S を使って変形する。) かが勝つ確率は ② (1+r+r +…+r )+r ① 13 ∑ n⋅ ⋅ とおく。 2 人でじゃんけんをしてどちらかが勝 2 1 ,あいこになる確率は 3 3 つ確率は 等比級数の和の公式の証明法を教えて頂いた。 ① 2 人でじゃんけんをして,勝負が決まる (r1) ⑴ ⑶ と,きれいに数が並ぶが 8 だけがない小数の計算を した,と言ってきた。 この生徒に⑶をテーマに課題研究させたところ, 次のような結論を得た。 先ず,0.1234567…から,この小数は⑵に r= 1 10 π 12 を代入した分数と関係があると予想される。実際, 1 1 ⑵に r= を代入し 倍することによって 10 10 n ∑ = 10 1 10 1 1− 10 = 級数となる。和は収束して 1 1− 9 = 3 π 32 ■ この問題を図形的に考えてみた。 10 81 となる。したがって,⑶では 8 がないわ けでなく,右の計算のように繰り上がり があって 8 が消えていることが分かる。 その生徒は,さらに一般化した。 8000 900 100 + 11 9011 定理 小数の並び 0.aa…a… が,初項 a,公 差 d の等差数列 {a} であるような分数は ① 1 辺の長さが 1 の正三角形の高さを h とすると 9a+d で与えられる。 81 h= ⑶は a=d=1 の場合である。また,a=1,d=2 ② 正三角形の内心は重心でもあるので,この長さ 内接円の面積は 11 =0.135802469… 81 となる。 §4.無限等比級数となる図形の面積の和 無限等比級数の問題 π 12 ③ 内接円の直径なので 2 h 3 ④ 上の三角形の高さは 1 h 3 正三角形から上の三角形を除いた台形の面積は, 正三角形の面積の を図形的に考えてみる。 問題 1 3 h= 3 6 は とすると,小数の数の並びは奇数になる。ただし繰 り上がりがあるので 3 2 13 = 89 (倍) 1− 1 辺の長さ が 1 の正三角形 である。台形とそれに内接する円の比は等しく,こ に図のように内 の台形を次々と無限にたしていくと正三角形になる。 接する円の面積 それにともなって,台形に内接する円の総和と内接 の総和を求めよ。 円の面積の比は,正三角形と最初の台形の面積の比 〔略解〕 内接円の半径を r とすると,1 辺の長さが 1 の正三角形の面積に関して r 1 (1+1+1)= ×1×sin 60°, 2 2 3 3 3 r= より r= 2 4 6 π この内接円の面積は 12 に等しい。したがって,求める円の面積の総和は π 9 3 × = π 12 8 32 となる。 §5.おわりに 無限等比級数は無限と向き合うとともに様々な見 2 番目の円が内接する正三角形の高さは 3 3 3 − ×2= なので 2 つの正三角形の相 2 6 6 1 である。以下この繰り返しなので,円の 3 π 1 1 面積の総和は初項 ,公比 = の無限等比 12 9 3 似比は 方ができる教材だと感じられる。さらなる教材化を 考えていきたい。 (福岡県 明治学園中学高等学校) 21 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 漸化式の解法について (その2) −一般解と特殊解を用いて− おおせき 大関 こう じ 浩二 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 §1.はじめに 【解法】 本誌の No. 63 では,数列 {a} の一般項を斉次 式の漸化式の一般解と非斉次式の漸化式の特殊 解の和で求められるという話をしました。また, ⑴ であるから 2nπ 2nπ a =2 A cos +B sin 3 3 −1+ 3 i=2 cos 隣接 3 項間の漸化式は,特性方程式の解が実数解の 場合の解法を紹介したので,今回は共役な虚数解を もつときの解法について触れてみたいと思います。 §2.隣接 3 項間の漸化式 +2+4=0 を解くと =−1± 3 i 2π 2π +i sin 3 3 a=−1,a=1 を満たすので, a=−A+ 3 B=−1,a=−2A−2 3 B=1 これを解くと,A= 隣接 3 項間の漸化式 a+ pa+qa=0 は特 性方程式 + p+q=0 の 2 つの解を α,β とする と,一般解は 1 3 ,B=− 4 4 したがって, 3 2nπ − sin 14 cos 2nπ 3 4 3 2nπ 2nπ =2 cos − 3 sin 3 3 a=2 αβ のとき a=Aα +Bβ α=β のとき a=(A+Bn)⋅α (注) である。 r と θ を求めるには,解と係数の関係から, α+β=2r cos θ=− p,αβ=αα= α =r =q 【公式】 特性方程式 + p+q=0 が共役な虚数解 α, を導き,これから計算した方がはやい。⑴は β をもつとき,α=r(cos θ+i sin θ) (r>0) と p=2,q=4 であるから,r= q =2, すると a=r (A cos nθ+B sin nθ) cos θ=− 【証明】 ド・モアブルの定理より また,cos θ− 3 sin θ=2 cos θ+ α =r (cos nθ+i sin nθ) と表せる。 β =(α)=α =r (cos nθ−i sin nθ) が成り立つ。 a=Aα +Bβ =r {(A+B) cos nθ+(A−B)i sin nθ} ここで,A+B,(A−B)i を改めて A,B とおくと a=r (A cos nθ+B sin nθ) 【例題 1 】 終 斉次式 次の漸化式で定義された数列 {a} の一般項を 求めよ。ただし,n=1,2,3,… とする。 ⑴ a=−1,a=1, a+2a+4a=0 ⑵ 22 でき,a=2cos =Ar (cos nθ+i sin nθ)+Br (cos nθ−i sin nθ) a=5,a=4,a−2a+2a=0 p 1 =− がすぐに求められる。 2r 2 ⑵ π 3 と合成 (2n+1)π とも書ける。 3 −2+2=0 を解くと =1±i π4 +i sin π4 であるから nπ nπ 2 ) A cos +B sin 4 4 1+i= 2 cos a=( a=5,a=4 を満たすので, a=A+B=5,a=2B=4 これを解くと,A=3,B=2 ゆえに,a=( 2 ) 3 cos nπ nπ +2 sin 4 4 §3.非斉次式 a+ pa+qa= f (n) 【例題 2 】 ⑶ f (n) が指数関数の場合ですから, a−a+a=3⋅2 を満たす数列を 非斉次式 次の漸化式で定義された数列 {a} の一般項を b=C⋅2 (C は定数) とすると, 求めよ。ただし,n=1,2,3,… とする。 C⋅2−C⋅2+C⋅2=3⋅2,3C⋅2=3⋅2 ⑴ a=0,a=2,a+2a+4a=7 よって,C=1 ゆえに,b=2 ⑵ a=4,a=5,a−2a+2a=2n−3 ⑶ a=4,a=5,a−a+a=3⋅2 ⑷ a=1,a=−4, −+1=0 を解くと = 1+ 3 i π π =cos +i sin であるから 2 3 3 a−2a+2a=(n+1)⋅2 a−a+a=0 の一般解は 【解法】 ⑴ c=A cos f (n) が定数の場合ですから, nπ nπ +B sin 3 3 a+2a+4a=7 を満たす数列を b=C と したがって, すると, a=c+b=A cos C+2C+4C=7 より C=1 ゆえに,b=1 a+2a+4a=0 の一般解は c=2 A cos 2nπ 2nπ +B sin 3 3 a=c+b=2 A cos したがって, a=0,a=2 を満たすので, a =−2A−2 3 B+1=2 a=−A+ 3 B+1=0 a= 1 3 A+ B+2=4 2 2 a=− a−2a+2a=2n−3 を満たす数列を b=Cn+D とすると, =2 cos ⑷ (n−1)π +2 3 f (n) が ( 1 次式)×(指数関数) の場合ですから, b=(Cn+D)⋅2 とすると, {C(n+2)+D}⋅2−2{C(n+1)+D}⋅2 +2(Cn+D)⋅2=(n+1)⋅2 より (2Cn+4C+2D)⋅2=(n+1)⋅2 1 1 ,D=− 2 2 したがって,C= {C(n+2)+D}−2{C(n+1)+D}+2(Cn+D) ゆえに,b=(n−1)⋅2 =2n−3 a=( 2 ) A cos より Cn+D=2n−3 したがって C=2,D=−3 ゆえに,b=2n−3 a−2a+2a=0 の一般解は c=( 2 ) A cos nπ nπ +B sin 4 4 したがって, nπ nπ +B sin +2n−3 a=( 2 ) A cos 4 4 これを解くと,A=3,B=2 a=( 2 ) 3 cos ゆえに, nπ nπ +2 sin +2n−3 4 4 nπ nπ +B sin +(n−1)⋅2 4 4 a=1,a=−4 を満たすので, a=A+B=1,a=2B+2=−4 これを解くと,A=4,B=−3 a=( 2 ) 4 cos ゆえに, nπ nπ −3 sin +(n−1)⋅2 4 4 《参考文献》 a=4,a=5 を満たすので, a=A+B−1=4,a=2B+1=5 したがって, nπ nπ + 3 sin +2 3 3 1 3 A+ B+4=5 2 2 これを解くと,A=1,B= 3 a=cos 1 3 これを解くと A= ,B=− したがって 4 4 2nπ 2nπ a=2 cos − 3 sin +1 3 3 (2n+1)π =2cos +1 3 ⑵ f (n) が 1 次式の場合ですから, nπ nπ +B sin +2 3 3 a=4,a=5 を満たすので, 2nπ 2nπ +B sin +1 3 3 1± 3 i 2 〔1〕 高橋健人 新数学シリーズ 20 差分方程式 培風館 (新潟県立新潟江南高等学校) 23 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 n と n ! についての一考察 − Π k k !=(n !) を中心にして− にしもと 西元 のりよし 教善 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 §0.はじめに n ! ( n の階乗) は異なる n 個のものから重複を認 めないで n 個取り出して一列に並べるときの並べ方 の総数であり,一方,n は異なる n 個のものから重 複を認めて n 個取り出して一列に並べるときの並べ 方の総数である。当然,重複を認めている場合の方 Π k! = 4 =4 1 よって,このとき (*) は成り立つ。 n=l(≧2) のとき,(*) が成り立つと仮定する と, (l !) Π k= Π k! が大きく n≧n ! であるが,これらにはどのよう な関係があるのであろうか。 (2 !) (*) の右辺= 本稿では,k と k ! の積 k k ! について,k=1 か ら k=n まで掛け合せると (n !) になることを である。 この等式の両辺に (l+1) を掛けると, 中心に考察する。 (l+1) Π k= (l !)(l+1) Π k! §1. Π k を n ! で表す = まず,k (k=1,2,3,…,n) の積 1⋅2⋅3⋅…⋅n {(l+1)!}(l+1) Π k! つまり Π k と n の階乗 n ! の関係を考察する。 = {(l+1)!}(l+1)⋅l ! Π k !⋅l ! n=5 のとき, Π k=1⋅2⋅3⋅4⋅5 である。 = これを階乗で表してみる。 1⋅2⋅3⋅4⋅5= = = (1⋅2⋅3⋅4⋅5) (1⋅2⋅3⋅4)(1⋅2⋅3)(1⋅2)1 = (5 !) 4 !⋅3 !⋅2 !⋅1 ! (5 !) Π k! (n !) Π k= Π k! 24 である。 立つ。 終 ……(*) これが正しいことを数学的帰納法で証明する。 (*) の左辺= Π k=1⋅2=4, Π k! より,(*) は 2 以上の自然数 n に対して成り であると推定される。 n=2 のとき {(l+1)!} ⑴ したがって,(*) は n=l+1 のときも成り立つ。 これより,n が 2 以上の自然数のとき Π k! よって, Π k= である。 {(l+1)!} 【証明】 Π k! 1 ⋅2 ⋅3 ⋅4 ⋅5 1⋅2⋅3⋅4 であるから, Π k= {(l+1)!}(l+1)! これより,次の定理を得る。 定理 n が 2 以上の自然数のとき, (n !) Π k= つまり Π k Π k !=(n !) Π k! つまり,n が 2 以上の自然数のとき,k の k=1 か ら k=n までの積と k! の k=1 から k=n−1 ま よって,log 2+log 3+…+log n での積は (n !) に等しいということである。 +log 2 !+log 3 !+…+log n ! =(n+1)(log 2+log 3+…+log n) 生徒用として,積の記号 Π を使わなければ, (1 ⋅2 ⋅3 ⋅…⋅n ){1 !⋅2 !⋅3 !⋅…⋅(n−1)!}=(n !) である。これは, log(2⋅2 !)+log(3⋅3 !)+…+log(n⋅n !) ということである。 定理 (変形版 1 ) n が 2 以上の自然数のとき, (1⋅2⋅3⋅…⋅n){1 !⋅2 !⋅3 !⋅…⋅(n−1)!} =(n+1)(log 2+log 3+…+log n) とも表せる。 Π k k !=(n !) の別表現− 2 重の Π での表現− =(n !) kk !=(k⋅k⋅k⋅…⋅k)(1⋅2⋅3⋅…⋅k) また,この両辺に n ! を掛ければ, (1⋅2⋅3⋅…⋅n){1 !⋅2 !⋅3 !⋅…⋅(n−1)!}n ! =(1k)(2k)(3k)⋅…⋅(kk)= Π ik =(n !)⋅n ! ここで,k を j に置き換える (特に意味はない。ik であるから, (1⋅2⋅3⋅…⋅n)(1 !⋅2 !⋅3 !⋅…⋅n !)=(n !) を ij としたいだけ) と, Π kk != Π Π ij となる。 である。すると,n が 2 以上の自然数という条件は よって,定理はさらに次のように表せる。 不要である。 定理 (変形版 2 ) (1⋅2⋅3⋅…⋅n)(1 !⋅2 !⋅3 !⋅…⋅n !)=(n !) n が自然数のとき, (3 !)=6=1296 である。 (1 ⋅1 !)(2 ⋅2 !)(3 ⋅3 !)…(n ⋅n !)=(n !) もっとも簡便に表せば,次の通りである。 定理 (変形版 4 ) Π Π ij= Π i Π 2i Π 3i=1⋅(2⋅4)⋅(3⋅6⋅9)=1296 具体例を示す。n=3 のとき さらには,次のようにも表せる。 定理 (変形版 3 ) Π Π ij=(n !) 定理 (変形版 5 ) n が自然数のとき, n が自然数のとき, Π kk !=(n !) 一般には, Π Π ij= Π i Π 2i Π 3i…… Π ni =1⋅(2⋅4)⋅(3⋅6⋅9)⋅…⋅(n⋅2n⋅3n⋅…⋅n) であるから, 1⋅(2⋅4)⋅(3⋅6⋅9)⋅…⋅(n⋅2n⋅3n⋅…⋅n)=(n !) である。 よって,次の変形版 6 を得る。 §2.定理を使って 対数を使うとどのように表されるか では,得られた定理を使ってみる。 変形版 1 から (1⋅2⋅3⋅…⋅n)(1 !⋅2 !⋅3 !⋅…⋅n !)=(n !) この等式の両辺の常用対数をとると, log {(1 ⋅2 ⋅3 ⋅…⋅n )(1 !⋅2 !⋅3 !⋅…⋅n !)} =log(n !) 定理 (変形版 6 ) n が自然数のとき, 1⋅(2⋅4)⋅(3⋅6⋅9)⋅…⋅(n⋅2n⋅3n⋅…⋅n) =(n !) §3.まとめ n と n ! の間にはどのような関係があるかについ て考察した。k と k ! の積 kk ! について k=1 か ら k=n まで掛け合わせると (n !) になるとい である。左辺は, log(1⋅2⋅3⋅…⋅n)+log(1 !⋅2 !⋅3 !⋅…⋅n !) =log 2+log 3+…+log n +log 2 !+log 3 !+…+log n ! 右辺は, う結果については,きれいな形にまとめられたので はないかと思う。 (山口県立岩国高等学校) log (n !)=(n+1)(log 2+log 3+…+log n) である。 25 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 12 個の格子点を通るグラフを表す式 のう き 納城 たか し 孝史 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 §1.対応表を満たす関数(例 1 ) 平成23年 8 月27日に開催された第 3 回マス・フェ スタにおいて,中学 3 年生の生徒が誕生日は何曜 日を発表した。参考文献 [1] にあるように,曜日 を計算するときに,次の換算表が使われた。 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 1 4 6 2 4 0 3 5 1 3 6 2 の値は mod 7 で考えているので, に 7 の倍数 を適当に加えてもよい。そうして作った換算表は次 の通りである。 3 4 5 6 7 1 4 6 9 11 14 17 19 22 24 27 30 8 9 10 11 12 13 14 この表のように対応している と に対して, = f () である関数 f を表す式を求めよう。ただ し,補間法による表現は避けたいと思う。 グラフ用紙に座標軸を引き,上の表で決まる 12 個の点 (,) を打つ。 12 個の点に近い直線で,12 個の点が 軸方向で その上に来ない直線を探す。この直線の条件を正 確にいうと, 表の 12 個の に対する直線上の点の 座標が,表の 以上かつ +1 未満であること 図1 である。 である。 図 1 のように, 軸方向の上から,定規を 12 個の この直線は,上の条件を満たす。すなわち,表の 点に当てるように使うと,そのような直線として, に対して,= 5 点 (4,4),(6,9),(9,17),(11,22),(14,30) の の値は表の 以上かつ +1 未満である。 うち 2 点を通る直線が考えられる。 例えば,2 点 (4,4),(14,30) を通る直線をとると, 上の格子点を通らないが, その方程式は = 26 = 13 (−4)+4 5 すなわち = 13−32 5 6 3 4 5 1.4 4 6.6 3 4 5 1.5 4.1 6.7 13 (−4)+4.1 5 すなわち も条件を満たす。実際, 7 8 9.2 11.8 14.4 6 13−32 の関数値を調べると,そ 5 7 8 9 17 9 10 11 12 13 19.6 22.2 24.8 27.4 10 11 12 13 14 30 14 9.3 11.9 14.5 17.1 19.7 22.3 24.9 27.5 30.1 = 13−31.5 5 = 13−32 13−31.5 ,= 5 5 とすると,, の値は前頁の下の表のようになる。 このとき,グラフ電卓のテーブル機能を使うと, 関数値を簡単に調べることができて便利である。 したがって, 13−32 , 13−31.5 5 5 f ()= は求める関数である。ここで,[ ]はガウス記号で ある。 換算表の代わりに, 13−32 5 f ()= を使えば,曜日の計算は数式だけで行われる。 §2.対応表を満たす関数(例 2 ) 他の例を挙げる。参考文献 [2] では,曜日を計算 するときに,次のような換算表が使われている。 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 0 3 3 6 1 4 6 2 5 0 3 5 § 1 の仕方が使えるように, の 1,2 をそれぞれ −1,0 に置き換える。更に, に 7 の倍数を適当に 加えて, −1 0 3 10 13 15 18 20 23 26 28 31 33 0 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 図2 を考える。 この対応も = f () の形で表してみよう。 図 2 のように,グラフ用紙に 12 個の点を打ち,適 当な直線を探す。 例えば,2 点 (0,3),(9,26) を通る直線の方程式 をとると,その方程式は = 23 +3 9 《参考文献》 〔1〕 佐々木美咲,誕生日は何曜日,第 3 回マス・フ ェスタ〈全国数学生徒研究発表会〉レジュメ集 〔2〕 小林道正編著,楽しさ発見 ! 高校数学Ⅰ+A, 数研出版,p. 127 (大阪府立港南造形高等学校) である。 239 +3 = が求める関数であることは容易に確かめられる。 239 +3.1 = も求める関数である。 239 +3 を使うとき, 1 換算表の代わりに = 月を (−1) 月に, 2 月を 0 月に読み替えなければな らないのが欠点である。 27 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 因数 p の出現頻度について く め ひで お 久米 秀夫 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊伊 §1.はじめに 10年ほど前にコラッツ予想 (*1) について考えて いるときに,自然数の中に 2 および 3 の因数がどれ くらい分布しているのかを知る必要があったので, そのとき考えたことについて報告します。直感的に は明らかな内容なのですが,証明してみました。ま たその結果がジップの法則 (*2) そのものであった ので大変興味を引かれました。 1 n 1 1 1 ∑ − < ∑ ≦ ∑ p p p n n 1 1 1 1 1− 1− p p n p p m 1 − < ∑ ≦ 1 n n 1 p 1− 1− まれる因数 p(p≧2) の個数の総和を記号 π (n) で表 1p π (n) を因数 p の 1 から n までの出現頻 n 度と呼ぶことにすると次の等式が成り立つ。 出現頻度について π (n) 1 = n p−1 lim (証明) で を超えない最大の整数を表す。) n 2 次の因数の総数は 個,3 次の因数の総数 p n 個,…であるから n≧ p を満たす k の p 最大値をmとすると n n n また, ≦ < +1 であるから p p p n n n −1< ≦ p p p π (n)= n n n n n + + +…+ = ∑ p p p p p 28 1p ここで,n≧ p であるから 1− m 1 n − < ∑ ≦ n n p ……① p−1 m m ≦ n p また,n ∞ のとき m ∞ であるから n ∞ のとき すなわち m 0 p n ∞ のとき m 0 n したがって,①で n ∞ とすると両端の式はと 1 に収束し p−1 もに lim 1 1 n = ∑ p−1 n p すなわち lim 1 から n までの正の整数に含まれる因数 p n 個 (〔〕 はガウス記号 の 1 次の因数の総数は p は p が π (n) である。例えば,π(10) は 2,2 ,2⋅3,2 , また, 2⋅5 だから π(10)=8 であり,π(10)=4 である。 p すことにする。つまり n! に含まれる因数 p の個数 p−1 n を自然数とする。 1 から n までの各自然数に含 1− §2.自然数における因数 p の出現頻度について 1 n 1 n 1 n −1 < ∑ ≦ ∑ ∑ n p n p n p したがって π (n) 1 = が成り立つ。 n p−1 (証明終) ■ π(n) =1 であるから なお,p=2 のとき lim n π(n)≒n すなわち十分大きい n に対して,n までの正の整 数に含まれる 2 の因数の個数はほぼ n に等しい。 また,同様に 3 の因数の個数はほぼ n に等しい 2 ことなどがわかります。 因みに,この問題を改めて考えていた年の京大の 入試文系(2009 年度)に次のような問題が出題 され,偶然の一致に驚きました。 p を素数,n を正の整数とするとき,( p ) ! は p で何回割り切れるか。 §3.上の結果とジップの法則 ジップの法則は20世紀半ばにジップという人によ って発見された経験則です。 文章における英単語の使用頻度とその順位の関係 として発見されました。つまり出現頻度が k 番目に 多い要素が全体に占める割合は 1 に比例するとい k う法則です。 順 位 1,2,3,4,5,… 因 数 (p) 2,3,4,5,6,… 1 1 1 1 1 , , , , ,… 3 4 5 2 1 出現頻度 であるので,まさにジップの法則そのものです。 自然界のいろいろな分布と自然数には何らかのつ ながりがあることの 1 つの証左なのかもしれません。 ( 1 図はアメリカの都市の人口と順位,参考文献〔1〕 その他にもアメリ の p. 93 の上段の図を引用 カの都市を人口の多 2 図は英語の単語の出現頻度と順位 ( 2 図は対数目 い順に並べた (横軸 盛り),参考文献〔1〕の p. 97 の上段の図を引用) が順位,縦軸が人口) (*1) ものや世界の川の長 任意の 1 でない自然数 n に対して, さと順位,日本の湖 の面積と順位,わが 国の年間輸入額と国 〔図 1 〕 n が偶数ならば,2 で割る ⑵ n が奇数ならば,3 倍して 1 を加える このとき,どのような自然数 n から出発しても, 順位,生物の種の個 有限回の操作で 1 に到達する。 体数と順位などにも この予想は角谷の予想とも呼ばれ,まだ解 同様の分布を見るこ 決されていない数論の問題です。 とができるそうです。 (*2) ところで, 1 から 本文参照 《参考文献》 n までの n 個の自然 〔図 2 〕 個数は多い順に 2,3,4,5,… ですが,2 で証明し たことがらより ⑴ という操作を連続して行う。 別順位,個人所得と 数に含まれる因数の コラッツ予想 〔1〕 無限・カオス・ゆらぎ 寺本英・広田良吾・武者利光・山口昌哉 培風館 (大阪府 大阪国際大和田高等学校) 29 30 31 32
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