【 QUIZ 12 】 一様な長方形の板 ABCD(質量 M ,長辺 a ,短辺 b )の A と C にベアリングがあって, それらをとおる対角線 AC を軸として,板は自由に回転している。そのとき,ベアリング にどのような力が働くか求めなさい。なお,厚みは無視してよいものとする。 y 【解答】 最初に,この長方形板の慣性テンソルの成分を求める。 【解説】に書いたように,回転軸 𝑧 が物体の対称軸でないの P y C b A a 対称軸の方向にとった座標系O𝑥𝑦′z′おける成分を求めて, z P B 座標変換することにする。( 𝑥 軸は奥向き) 𝜌 𝑑𝑥 𝑑𝑦′𝑑𝑧′ = 𝜎𝑎𝑏 (ここで,𝜎 = z O で,座標系O𝑥𝑦𝑧における成分を求めるのは難しい。そこで, まず,質量は,𝑀 = D 𝜌 𝑑𝑥 面密度)である。慣性モーメン トは,𝑥𝑦′z′が対称軸であるから,容易に計算できる。 𝜌 𝑦′2 + 𝑧′2 𝑑𝑥 𝑑𝑦′𝑑𝑧′ 𝐼𝑥𝑥 = = = 𝑦′2 𝑑𝑦′ 𝜌 𝑑𝑥 𝑑𝑧′ + 𝜌 𝑑𝑥 𝑑𝑦′ 𝑏 2 0 𝑧′3 + 2𝜎𝑏 3 𝑎 2 0 𝑀 2 𝜎𝑎𝑏 2 𝑎 + 𝑏2 = 𝑎 + 𝑏2 12 12 𝜌 𝑧′2 + 𝑥 2 𝑑𝑥 𝑑𝑦′𝑑𝑧′ と 𝐼𝑧′ 𝑧′ = さらに, 𝐼𝑦′ 𝑦′ = 𝑦′3 𝑧′2 𝑑𝑧′ = 2𝜎𝑎 3 𝜌 𝑥 2 + 𝑦′2 𝑑𝑥 𝑑𝑦′𝑑𝑧′ を求めるにお いては,厚みを無視して考えているから,𝑥 2 の項はないものとして計算すればよい。したがって, 𝐼𝑦′ 𝑦′ = 同様に,𝐼𝑧′ 𝑧′ = 𝐼𝑦′ 𝑧′ = − 𝑀 12 𝜌𝑧′2 𝑑𝑥 𝑑𝑦′𝑑𝑧′ = 𝜎𝑏 𝑧′3 𝑧′2 𝑑𝑧′ = 2𝜎𝑏 3 𝑎 2 0 = 𝜎𝑎 3 𝑏 𝑀 2 = 𝑎 12 12 𝑏 2 である。 慣性テンソルの非対角項である慣性乗積は,たとえば, 𝜌𝑦′𝑧′ 𝑑𝑥 𝑑𝑦′𝑑𝑧′などと,被積分関数が奇関数であるから,対称軸であればすべてゼ ロとなることは明らかである。 座標変換(O𝑥𝑦′z′→O𝑥𝑦z)は,【解説】を参考にして, 𝒆𝑥 T 𝒆𝑦 T 𝒆𝑧 T である。ここで, 𝒆𝑥 𝒆𝑦 𝒆𝑧 𝐼𝑥𝑥 0 0 0 𝐼𝑦′𝑦′ 0 0 0 𝒆𝑥 𝒆𝑦 𝐼𝑧′𝑧′ 𝐼𝑥𝑥 𝒆𝑧 = 𝐼𝑦𝑥 𝐼𝑧𝑥 𝐼𝑥𝑦 𝐼𝑦𝑦 𝐼𝑧𝑦 𝐼𝑥𝑧 𝐼𝑦𝑧 𝐼𝑧𝑧 は, 𝑥, 𝑦, z 各方向の単位ベクトルで,それを 𝑥𝑦 ′ 𝑧 ′ 座標系におけ る成分で表現したものである。したがって, 𝑀 1 0 12 0 0 cos 𝛼 − sin 𝛼 0 sin 𝛼 cos 𝛼 𝑎2 + 𝑏 2 0 0 0 𝑎2 0 0 0 𝑏2 1 0 0 0 cos 𝛼 sin 𝛼 𝐼𝑥𝑥 0 − sin 𝛼 = 𝐼𝑦𝑥 𝐼𝑧𝑥 cos 𝛼 𝐼𝑥𝑦 𝐼𝑦𝑦 𝐼𝑧𝑦 𝐼𝑥𝑧 𝐼𝑦𝑧 𝐼𝑧𝑧 𝐼𝑥𝑥 𝐼𝑦𝑥 𝐼𝑧𝑥 cos 𝛼 = 𝑎 𝐼𝑥𝑦 𝐼𝑦𝑦 𝐼𝑧𝑦 𝐼𝑥𝑧 𝑀 𝐼𝑦𝑧 = 12 𝐼𝑧𝑧 𝑎2 + 𝑏2 𝐼𝑥𝑥 𝐼𝑦𝑥 𝐼𝑧𝑥 𝐼𝑥𝑦 𝐼𝑦𝑦 𝐼𝑧𝑦 0 2 𝑎2 cos2 𝛼 + 𝑏 sin2 𝛼 0 − 𝑎2 − 𝑏 0 𝑎2 + 𝑏2 , sin 𝛼 = 𝑏 0 2 − 𝑎2 − 𝑏 2 sin 𝛼 cos 𝛼 𝑎2 sin2 𝛼 + 𝑏2 cos2 𝛼 sin 𝛼 cos 𝛼 𝑎2 + 𝑏2 を代入して整理すると, 𝐼𝑥𝑧 𝑀 𝐼𝑦𝑧 = 12 𝑎2 + 𝑏2 𝐼𝑧𝑧 𝑎2 + 𝑏2 2 0 𝑎4 0 0 +𝑏 4 −𝑎𝑏 𝑎2 − 𝑏 0 −𝑎𝑏 𝑎2 − 𝑏 2 2 2𝑎2 𝑏2 と求めることができる。これでようやく,問題に入る準備が整った。 剛体に貼りついた座標系(今の場合O𝑥𝑦𝑧)における剛体の回転運動の方程式は, 𝑰 𝑑𝝎 +𝝎× 𝑰𝝎 =𝑵 𝑑𝑡 T いま,𝝎T = 0,0, 𝜔𝑧 であるから,𝝎 × 𝑰 𝝎 = −𝐼𝑦𝑧𝜔𝑧 2 , 𝐼𝑧𝑥 𝜔𝑧 2 , 0 となって,運動方程式は, 𝑑𝜔𝑧 − 𝐼𝑦𝑧 𝜔𝑧 2 = 𝑁𝑥 𝑑𝑡 𝑑𝜔𝑧 𝐼𝑦𝑧 + 𝐼𝑧𝑥 𝜔𝑧 2 = 𝑁𝑦 𝑑𝑡 𝑑𝜔𝑧 = 𝑁𝑧 𝐼𝑧𝑧 𝑑𝑡 𝐼𝑧𝑥 となる。今の場合,自由回転だから,𝑁𝑧 = 0 であって,第 3 式から,𝜔𝑧 = 𝜔 const. であること がわかる。したがって,第 1 式と第 2 式の左辺第 1 項はゼロであって,また今の場合,𝐼𝑧𝑥 = 0 であ るから,𝑁𝑦 = 0 となる。結局,第 1 式より 𝑁𝑥 = −𝐼𝑦𝑧𝜔𝑧 2 = 𝑀𝑎𝑏 𝑎2 − 𝑏 2 12 𝑎 2 + 𝑏 2 𝜔2 となって,𝑧軸まわりの回転を維持するためには,その軸を支えるために𝑥軸まわりにモーメントをかけ ていなければならないといことである。したがって,A と C にあるベアリングには,図のような偶力𝑃が 働くことになる。 𝑃= 𝑀𝑎𝑏 𝑎2 − 𝑏 2 12 𝑎2 + 𝑏 2 3 2 𝜔2 あくまでも,剛体に貼りつている座標系で考えているから,当然𝑃も回転するが,図を見れば,物体 が𝑧軸まわりに回転すれば, B や D の方が出っぱっている分だけ,そちらに遠心力がかかるから,そ れを支えるのに力が必要なことは想像に難くない。 以上
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