平成21年度経済産業省委託事業 アジア人財資金構想 共通カリキュラムマネージメントセンター事業 日本ビジネス・ビジネス日本語研修 事例集 平成22年3月 財団法人 海外技術者研修協会 本書は、財団法人海外技術者研修協会が経済産業省より平成 21 年度受託事業として委託 を受け実施した「平成 21 年度アジア人財資金構想共通カリキュラムマネージメントセンタ ー事業 研修事例検討部会」で収集した日本ビジネス・ビジネス日本語研修事例集です。 <目次> はじめに 「ビジネス日本語」について ~事例集を読む前に 1 第一章 ビジネス日本語 サマリー 6 第一節 ビジネス日本語のカリキュラムと教材 事例 1 就職内定前のビジネス日本語 8 事例 2 就職内定後のビジネス日本語 12 事例 3 個人カルテと評価シートを用いたカリキュラム編成 16 事例 4 ビジュアル教材を用いた授業 20 第二節 文化的背景の理解 事例 5 日本社会・企業への橋渡しの手立て-当番制 23 事例 6 ホームステイプログラムを利用した企業文化理解 25 事例 7 日本人TAを授業の中に組み込む 28 第二章 就職支援とビジネス日本語 サマリー 30 第一節 就職支援を組み込んだビジネス日本語 事例 8 キャリアアドバイザーとの連携による個別対応 32 事例 9 キャリアコーディネーターと日本語講師の共同授業 35 事例 10 ビジネス日本語に外部講師を組み込み就職支援を行う 38 第二節 他組織との連携 事例 11 日本語教員と日本ビジネス講師・キャリアオフィスとの連携 41 第三節 内定者などの活用と企業関係者の協力 事例 12 グループディスカッションを身につける -日本人学生内定者と 44 事例 13 内定者や企業関係者との懇談の機会をつくる 47 第三章 PBL 教材 サマリー 49 第一節 プロジェクトベースの授業・教材・運営 事例 14 プロジェクトベース授業の一例 50 事例 15 プロジェクトベース教材の簡素化と自作 53 事例 16 プロジェクトベース教育の中での個人指導の活用 57 第四章 日本語能力差への対応 サマリー 59 第一節 授業時間の確保 事例 17 学生の専門が同じ場合、言語学習を促進するための時間確保 60 第二節 授業、あるいはカリキュラム編成による対応 事例 18 ビジネス日本語クラスにおけるレベル差への対応1 62 事例 19 ビジネス日本語クラスにおけるレベル差への対応2 66 事例 20 レベル対応のためのビジュアル教材 69 事例 21 TAを取り込んだダイバーシティ・トレーニングモデル 72 第五章 授業運営上の諸対応 サマリー 76 第一節 様々なケースへの対応 事例 22 はなれたキャンパスを遠隔授業でつなぐ 78 事例 23 合宿による学生間交流 81 事例 24 ビジネス日本語の単位化と公開による効果 84 事例 25 休暇中の集中講座による時間確保 86 事例 26 事前教育の例 89 事例 27 ITに特化したEラーニング教材の開発と使用 91 クロスリファレンス 96 はじめに 「アジア人財資金構想事業」 (以下 アジア人財事業)は本年度3年目を迎え、現 在、全国 36 管理法人(専門 23、実践 13)が留学生の就職支援研修を行っていま す。共通カリキュラムマネージメントセンターでは、プログラム開始時より業務の一 つとして巡回訪問を行っております。これまでの3年間で多様な学生に対し、各地で 様々な研修事例の試行錯誤が行われ、今後の自立化のモデルとなるような取り組みが なされていることを実感しています。これらの研修事例はアジア人財事業の取り組み を通した知見や財産として、収集して整理分析した上で、広く一般に周知することが 事業実施上有益であると考えました。そこで、共通カリキュラムマネージメントセン ターでは、今年度、実際に現場で研修を行っている講師6名による「研修事例検討部 会」を設置し、全国の研修事例の収集・整理を行い、この度「研修事例集」という形 にまとめ、本書を発行するに至りました。 本書の各事例は執筆者も実施環境も異なる中で生まれてきたものです。各々の事例 を、そのまま他の研修現場に移し変えて実施しても簡単に成果があげられないとは考 えています。しかしながら、各地の試み、実施状況を知ることは、現在のアジア人財 事業の全体像を「研修」という観点から紐解く鍵になると思いますし、また、各現場 の実態にあった新たなる研修開発の貴重なリソースとなるのではないかと考えてい ます。 本書の事例は、現場で研修に携わった方々のご苦労と、アイデアの中から生まれた ものです。本事業の知見の蓄積を共有するために、事例の掲載を承諾して下さった全 国のコンソーシアムまた講師の皆様には深く感謝を申し上げます。 本書がアジア人財事業における研修実施の一助となり、本事業の自立化に向けた取 り組みに役立つことを切に願っております。 平成 22 年3月 財団法人海外技術者研修協会 理 事 春 原 憲 一 郎 「ビジネス日本語 ビジネス日本語」 日本語」について ~事例集を 事例集を読む前に 1.1 アジア人財資金構想のビジネス日本語について 「ビジネス日本語」は、アジア人財資金構想の教育プログラムの中で、インターン シップとともに必須の項目である。それぞれのコンソーシアムごとに、この枠組みの中 で様々な試みが行われている。大学教育というコンテキストの中で、どのような「ビジ ネス日本語」教育が行われるべきなのか、各地の試みはまだ途上であり、あるべき姿に ついての結論が出る段階ではない。しかし事前には明らかでなかった「ビジネス日本語」 についての実像がかなり見えてきており、そこで見出された問題に対して、非常に興味 深い対応が行われている。 「ビジネス日本語」には、かなり現実的、実際的な就職支援に関するものから、日 本社会・文化等への理解、更にその適応に関するものまで、幅広い内容が含まれている。 「ビジネス日本語」という名称では不自然さを感じるほどである。今後、この用語の見 直しが必要かもしれない。 これらの経験は、単にビジネス日本語として、留学生が日本社会に出ていくことの 支援として有効であるだけでなく、グローバルな社会の中での異文化理解教育にも資す る、有益な成果に結びついていくことが期待される。 各コンソーシアムの現場でこれを担当する教師は、必ずしもその教育プログラムの 立案に関与してはいない。また一般にビジネス日本語と言った場合には、言わば場面集 的な教材がイメージされる。従って、予めこのような幅広さを予見して計画していた部 分よりも、現実の学生の目前にしてさまざまな対応をするなかで、創られ、成熟してい った部分も多いのではないかと思われる。 本報告集は、それらの現場が創り出してきた、さまざまな工夫の一部をまとめたも のである。これまでも既に、ビジネス日本語、あるいは留学生就職支援に関してこのよ うな教育が行われてきた。しかしアジア人財資金構想のように、全国的に多くのコンソ ーシアムが同時に、ある一定の範囲の中で「ビジネス日本語」を走らせたという経験は ないであろう。その経験を何らかの形で残す必要がある。 また、それぞれの現場同士の交流は意外に少なく、果たして自分の現場と同様の問 題が他にもあるのか、また一体どのような教育、支援などを、どのように行っているの か等の情報は互いに届かないことが多い。本報告集が部分的にでもその役割を果たすこ とができれば幸いである。 1 1.2 「ビジネス日本語」の教育 アジア人財資金構想の「ビジネス日本語」では、以下のような内容が、最小公倍数 的に含まれている。 (1)一般的な日本語のレベルアップ教育 (2)必要な場面ごとのスキル訓練 (3)就職支援 (4)社会人としてのあり方、基本的なスキルの教育 (5)文化的・社会的背景に対する理解 また、次のような基本条件がある。 (A)学生は基本的に日本企業への就職を動因としている (B)大学生、大学院生に対する高等教育の一環として行われる 日本語能力の基礎的なレベルアップは、ビジネス日本語教育を始める前提となって いる。最低でも中級程度が求められるという認識はほぼ共通しており、目標を定める場 合には、日本語能力試験2級合格程度を1年目の目標とするところが多いように思われ る。この目標設定は、専門教育との同時進行ということを考えれば、必ずしも低いもの ではないが、多くの場合この目標はクリアされる。これはやはり日本企業への就職の前 提として、日本語レベルアップが必要なものと実感されるため、高いモチベーションが 維持されるためであろう。 場面集的なビジネス日本語は当然必要な項目であろう。しかしより一般性の高い、 基本的なマナーに近いものは、それぞれに必要だが強いリアリティーがない。常識に類 することも多く、それほど長い時間をこれに費やすのは難しい。 一方、より高度で個別的なビジネスシーンなどに関わるもの、あるいはエンジニア にとって必要な技術報告書のようなものは、該当する学生に対するリアリティーは強い が、必要な範囲が狭い。就職がまだ具体的になっていない段階では、モチベーションも 十分には上がらないことが多い。 しかし就職に関する事柄は、どのコンソーシアムでも比較的早い段階から取り扱う ことが多い。これは日本の就職活動のスケジュールを考えれば当然のことであろう。ま た、この就職に関する諸活動、準備活動はプログラムに入ったばかりの学生にも、リア リティーを感じることができるものである。これを前提とすれば、基本的なマナーを身 につけることや、言葉遣いの問題を修正することなどにも、十分な動機付けを行うこと ができる。これらの内容は、当然就職後のマナー、スキルにもつながるものだ。 就職活動の支援は、本来日本語教師の範囲ではないかもしれない。だが就職活動に 入った学生が、日本語教師にさまざまな質問や支援を求めて来るのは、自然のことであ り、キャリアコーディネーターなどとの連絡を取りながら、その支援や指導に関与する 2 ことになるであろう。むしろ、就職活動を最初のビジネス日本語と考えて、積極的に指 導に取り入れる事例も多い。 就職活動を利用したビジネス日本語は、目標設定が明確で、学生のモチベーション も高く、非常に学習効率が良い。カリキュラムとして明確に、就職の内定前と後を区別 して教育する事例が、本報告でも取り上げられているが、学生の現実に対応していくと いうことは、多かれ少なかれ避けられないものと思われる。また、職業選択という人生 の中で非常に重要な問題に関与する、ということを考えた場合、留学生の身近なところ にいて信頼される人間が、これを関与する必要があるであろう。 先に触れた社会の中での基本的なマナーに類することには、確かに一定の形式があ る。やや極論となるが、それを完全に身につけるような教育を徹底的に行い、同化を要 求するような訓練は望ましくないであろう。むしろ、そしてどのような理由、また意味 があってそうするか、ある社会的な行動にはどのような背景があるのか等、まず理解し た上で、外国人としてこの社会に定着しようとしている留学生が、自分から行動をどう 取るか決めるというのが、理想であろう。実際に全ての訓練が不要であるということで はないが、大学の中の教育としてどうすべきか十分に考えられる必要がある。また、同 僚として働く日本人の持っている労働観、家族観などは共同作業をする相手の理解とい うことで不可欠のものである。そのような意味で、日本社会、文化、人々の考え方を身 をもって理解するプログラムも、「ビジネス日本語」として必要となり、さまざまな試 みが行われている。 学生の中には非常に日本語力が高く、BJT テストなどでも最高レベルに、当初から 達する者もいる。しかし彼らが、仕事や社会の中で、一人の大人としてきちんと振る舞 えるかと言えば、必ずしもそうではない。マナーに関することばかりではなく、相手の 発言を適切に理解し、必要なことを自分の立場を踏まえてきちんと発言できるか等の、 大人としてのコミュニケーション能力でも実際には不十分なことが多い。これらは仕事 をする大人として必要とされる基本的な諸々の能力、スキルと関わりがある。このよう な基本的な行動に関わるものについても、何らかの教育が必要と考えられる。それらを 「教える」ことが可能か否かは別としても、少なくともそのようなことを意識させ、内 的な能力を引き出そうとすることは可能であろう。 これらのこと全てを、必ずしも全コンソーシアムの現場が保持すべきだと、主張す るわけではない。しかし各地で行われていることを、広く調べて行くと、全体として「ビ ジネス日本語」は、このような範囲まで広がっていることが分かる。各コンソーシアム では、この中のある範囲を、それぞれの立場からカリキュラムとして設定している、あ るいは現実的な対応として行っている。 繰り返しになるが、 「ビジネス日本語」はこのように、非常にプラクティカルな就職 支援のようなものから、文化・社会の理解に関わるようなものまでも含まれる。考えて みれば留学生の就職というのは、非常にリアルな異文化理解・交流の実践の場である。 3 一人一人の学生にとっては、人生の中での重要な選択の過程でもある。我々は、これが 大学という高等教育機関の中で行われるということを、十分考慮に入れて、このプログ ラムを発展させていくということを考える必要があるのではないか。 4 1.3 編集方針 事例の記述にあたっては、様々な要因を考え、以下のような方針によっている。 (1)各現場がある方法をとるのには、一つの理由からとは限らない。多くの場合、 複合的なさまざまな理由がある。しかしそれらを全て記述していると、かえっ て分かりにくくなり、その試みの重要な部分がぼかされてしまうことが多い。 そのため、調査した執筆者、本検討部会の責任で、そのある一つの最重要と思 われる部分にしぼって記述した。 (2)本報告では、各事例の行われたコンソーシアムの名前は伏せてある。これは次 の理由による。 (2)‐1 今回の記述は現場の教師からの調査によっており、ここにある方法、見 解などは現場の教師のものであり、コンソーシアム全体を必ずしも代表 するとは限らないこと。 (2)‐2 上記の理由に加え、日本語の教員は、現場により常勤でないこともあり、 コンソーシアムに問い合わせがあっても必ずしも、問題なく対応できる かどうか、不確定な要因が多いため。 本報告集の記述の仕方、標記等は、必ずしも全体で統一されたものとはなっていな い。この点については、本部会も十分認識している。しかし各地のこのような試み、努 力というものを、拙速でもできるだけ広く伝えたいと考えた。 5 第一章 「ビジネス日本語 ビジネス日本語」 日本語」 サマリー ビジネス日本語をどのように組み立てていくのか、目標を設定していくのか。 本報告の第一部でも言及したが、 「ビジネス日本語」は多様な実体を持っている。そ れらは単に、ビジネスシーンのいくつかの言語的部分をカバーすればよい、のではない。 (詳しくは「 「ビジネス日本語」について ~事例集を読む前に」を参照されたい) 就職活動の支援というのは、いくつかの意味で重要なキイとなる部分であり、学生 にとって、非常にリアリティーを感じる部分でもある。従ってモチベーションも高く保 たれることになる。 このことからビジネス日本語を、カリキュラムとしても明確に、就職の内定前と内 定後に分けるという方向が出てくる。それに基づいてカリキュラムを考えた事例が第1 章に含まれる、事例1「就職内定前のビジネス日本語」と事例2「就職内定後のビジネ ス日本語」である。極めて現実的な内容が書かれているが、実際の授業では how to が 教えられるのではなく、これらを身につけていく過程が重視されていることに、十分な 注意が必要である。 また別の側面から、評価シートなどを中心としたフィードバックを使用しつつ、気 づき、自発的学習に進んでいくことをめざしたのが事例3「個人カルテと評価シートを 用いたカリキュラム編成」である。 ビジネス日本語の教材は、多くの場合イントロダクションでも書いた通り、場面集 的なものが多いが、基本的なスキル(この場合は聴解)の伸びを視野にいれつつ、ビジ ュアル教材を制作し使用した例が事例4「ビジュアル教材を用いた授業」である。 一方で「ビジネス日本語」教育には、文化的な理解の過程が不可欠である。これに 関する興味深い事例が3つ挙げられている。学生に「当番」を割り当てて、そこから集 団の中の責任感などを自覚させていこうとしたものが、事例5「日本社会・企業への橋 渡しの手立て-当番制」 。日本人の労働観、家族や社会への考え方を、特に今それぞれ の職場で働いている人から聞かせてもらうことは、中々むずかしい。特にその本音を聞 きだすことは至難であろう。これについてユニークな試みが、事例6「ホームステイプ ログラムを利用した企業文化理解」である。また、日本人TAを利用する事例は各地に 見られるが、実際の授業に組み込み、留学生と共同作業をさせることで、非常に身近な レベルから、日本人の考え方を感じさせることを目的としたものが、事例7「日本人T Aを授業の中に組み込む」である。 なお、別のかたちでTAを組み込んだものとして、第四章、事例 21 がある。更に、 事例 13 では、同じ業種の先輩へのインタビューを行う過程、すなわち約束のとりつけ、 実際のインタビューそのもの、その内容をまとめる等を通して、社会人としてのあり方、 背景・文化等への気づき、理解を促そうとしている。 6 また、就職支援も、イントロダクションで述べたように「ビジネス日本語」として は非常に重要な要素の一つであるが、これについては次章で独立した項目として取り上 げているので、そちらを参照されたい。 7 事例1 事例1 就職内定前の 就職内定前のビジネス日本語 ビジネス日本語 (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 2) 授業の種類:単位有り・単位無し アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 3) 時間数:90 分×30 コマ(組込部分の授業) 4) 学生数:10~15 名 5) 国籍:中国・韓国 6) 担当教員:大学日本語講師・非常勤講師・外部委託講師・日本語講師以外 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他( ) (2)概要 1)日本語教育、ビジネス日本語教育を融合させた、社会人教育を行う。具体的には、 希望の企業に入社するためのスキルを総合的に学習する 2)2コマ連続授業のため、同じテーマについて、前半を会話、後半を文書作成にあて、 短時間で効率的に学習を進める 3)グループワークを多用し、学生が集団の中での自分の長所に気づく機会を設ける 4)宿題は全てメールで提出させ、欠席連絡、質問もメールで受け付ける 5)キャリアアドバイザーと連携し、学生の就職活動に合わせた授業スケジュールを作 成する。また、学生の個別の研究状況、就職活動にも配慮する (3)内容の 内容の説明 1)方針 日本の大学・大学院に在籍し、就職活動を予定している学生の大半は、就職活動 に不安を持っている。留学生は、多くの場合クラブやサークルに所属していないの で、先輩後輩の縦のつながりがなく、就職活動については全く手探りの状態である。 そのような状況において、留学生にとって最初に必要なビジネス日本語は、まず、 「就職するための日本語」である。 そこで、「就職」を目標に、留学生が就職するためには、どのようなビジネス日 本語教育が必要なのかを考え、以下3点の方針で教育内容の設定と、学生の支援を 8 行った。 ①就職活動に必要な最低限の技能を厳選し、教育する。カリキュラムを修了する ことで、全ての留学生が自分自身の就職活動を進められるようになることを目 標とする。 ②学生ごとに異なる就職活動の相談には、個別に応じる。 ③学生が最適な就職活動を進められるよう、キャリアアドバイザー、キャリアサ ポートセンターと連携する。 2)授業概要 ①シラバスの構成 <「就職内定前のビジネス日本語」シラバス例> 前半(90 分)会話がメイン 後半(90 分)文書作成がメイン メールの書き方① 1 自己紹介の方法 あいさつメール 電話応対 メールの書き方② 2 面接予約 お詫びメール、添付メール 面接① エントリーシート① 3 面接のマナー 自己PR 面接② エントリーシート② 4 自己PR、研究内容を話す 研究内容 面接③ エントリーシート③ 5 個人面接実践練習 6 志望動機 グループディスカッション 履歴書の書き方 ケーススタディ① 送付状の書き方 7 ブレーンストーミング練習 封筒の書き方 ケーススタディ② メールの書き方③ 8 実践練習 辞退のメール ケーススタディ③ 手紙の書き方 9 プレゼンテーション 礼状 就職活動の流れ 業界、業種について (グループディスカッション練習を兼ねる) (グループディスカッション練習を兼ねる) 職種について 社会保険、税金について (グループディスカッション練習を兼ねる) (グループディスカッション練習を兼ねる) 10 11 プレゼンテーション 12~15 テーマ:研究内容発表(ホワイトボードかパワーポイントを使用して発表) 9 ・縦軸の構成 会話 授業の進行は、基本的に就職活動の流れに合わせる。また、1対1のコミュニケ ーション(電話応対、個人面接)から、複数のコミュニケーション(集団面接、 グループディスカッション、ケーススタディ)へと移行する。 文書作成 就職活動において書かなければならない文書を、就職活動の流れに合わせて作成 する。近年の就職活動では、エントリーシートの比重が大きくなり、学生は卒業 の前年の秋からエントリーシートの準備をしなければならないため、早い段階で 書き方を訓練する必要がある。履歴書の提出時期はエントリーシート提出時期よ りも遅く、また履歴書の内容にはエントリーシートの内容が含まれるため、履歴 書の書き方は、エントリーシートの後に学習する。 ・横軸の構成 2コマ連続授業のため、会話の授業に対応させて文書の作成を行うことで、授業 時間を効率的に使うことができる。また、2コマの授業が内容的に連続している ことで、学生にとってわかりやすいシラバス構成となる。 ②授業内容 ・電話応対、面接、グループディスカッション 電話応対は、相手の見えないコミュニケーションとして留学生が苦手として いることのひとつである。ただし、就職活動の場合の電話には定型スタイルが あるため、就職活動に特化すれば、電話応対については比較的早く習得できる。 一方、面接、グループディスカッション、ケーススタディについては、定型練 習では対応できないため、様々なテーマ、シチュエーションでの実践練習の機 会を多く設け、特に以下の項目に重点をおいて練習を行う。 -相手の視点や立場を考えて話す。 -丸暗記せず、自分の言葉で話す。 -会話を行う(一方的に話さない) 。 -簡潔に話す。 -グループ全員で、話の方向を共有する。 -グループでの自分の役割(どのように貢献できるか)を考える。 ・メール、手紙、エントリーシート、履歴書 文書作成練習においては、会社と連絡をとるためのメールの書き方、エント リーシート、履歴書、内定の礼状の書き方を学ぶ。特に、最近の就職活動では、 10 エントリーシートの比重が大きいため、エントリーシートについては、字数制 限(200 字、400 字、無制限)やテーマ(自分の長所と短所、研究内容、志望 動機)を変え、練習の回数を重ねる。文書の作成方法について教える際、講師 は、パソコンをプロジェクターにつなぎ、学生の目の前で文書を作成し、適宜 学生からの質問を受けながら書式や表現について説明する。学生はパソコンを 持参し、プロジェクターの画面を見ながら、自分のパソコンで文書を作成する。 基本的には、授業内で作成した文書の仕上げが当日の宿題となる。 ・日本の就職事情 学生が自分自身の就職活動を進めるにあたり、就職活動の流れや会社を選ぶ 上で参考になる業界や業種の知識、給料のしくみ等、日本で働く上での一般的 な知識を身につけることが必要である。授業では、カードを使ったタスクを多 用し、グループワークを通して日本の就職事情への理解を深める。このグルー プワークは、グループディスカッション、ケーススタディで学んだスキルを使 って行うため、コミュニケーションスキルの実践練習の場としても有効である。 (4)成果と 成果と課題 この授業において、学生は自分の目標を明確にし、非常に高いモチベーションで学習 に取り組んでいた。学生は、授業で学んだ日本の就職活動についての知識、関連するビ ジネス日本語を活用し、自分自身で就職活動を進められるようになった。 一方、学生が実際に就職活動を進める際、個別のケースに応じて、様々な相談事項が 生じる。それに伴い、日本語講師は授業時間外で頻繁に個別相談を受ける。相談内容は、 日本語教育にとどまらないものも多い。そのようなケースへの対応策として、日本語講 師と他分野(キャリアアドバイザー、キャリアサポートセンター)との連携が必須であ る。日本語講師とキャリアアドバイザーの業務分担をどのように行うかは、それぞれの 担当者の経歴や技能によりケースバイケースである。学生への迅速な個別対応も含めて 就職内定前のビジネス日本語教育を有効に行うためには、日本語講師が学生への対応を 「抱え込まない」ことが大切である。 11 事例2 事例2 就職内定後の 就職内定後のビジネス日本語 ビジネス日本語 (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 2) 授業の種類:単位有り・単位無し アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 3) 時間数:90 分×30 コマ(組込部分の授業) 4) 学生数:10~15 名 5) 国籍:中国 6) 担当教員:大学日本語講師・非常勤講師・外部委託講師・日本語講師以外 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他( ) (2)概要 1)日本語教育、ビジネス教育を融合させた、社会人教育を行う。具体的には、社会人 1年目程度で必要とされる技能を総合的に学習する 2)この授業では、就職活動を経験した学生が感じる日本語力の不足や就職への不安を カバーする。学生のモチベーションを維持するため、学習時期は大学・大学院の最 終学年であることが望ましい。 3)2コマ連続授業のため、同じテーマについて、前半を会話、後半を文書作成にあて、 短時間で効率的に学習を進める 4)宿題は全てメールで提出させ、欠席連絡、質問もメールで受け付ける 5)シラバスにストーリーを持たせるため、部分的にプロジェクトワークをとりいれる (3)内容の 内容の説明 1)方針 学生が、社会人として通用する日本語力、行動能力(社会人基礎力)を身につけるた めには、就職活動の準備としてのビジネス日本語教育だけでは不十分である。一方で、 進路の異なる学生に対して、全員に有効な教育内容を考えることは非常に難しい。そこ で、大学・大学院に在籍している留学生にとって有効なビジネス日本語教育の方針とし て次の3点を挙げ、教育内容の設定と授業を行った。 ①教育の方向性は、学生と社会人とのギャップを埋め、スムーズに会社生活に入れる 12 ようサポートすること。 ②教育内容は、入社1年目程度で必要とされる社会人として基本的なスキル。 (新入社員に共通する内容以外のビジネススキルは、業界によって全くことなるため、 大学のクラス内で学ぶことは難しい。 ) ③具体的な学習項目は、留学生が就業後の社内研修や業務だけでは十分習得できない と考えられるもの。 (入社後に教育されることや、自分で学ぶべきことは授業のテーマとしない。 ) 以下、 「就職内定後のビジネス日本語教育」の一事例を紹介する。 2)授業概要 ①シラバスの構成 <「就職内定後のビジネス日本語」シラバス例> 回数 1 基 本 2 3 4 プ 5 ロ ジ 6 ェ ク 7 ト ワ 8 | ク 応 用 9 10 11~15 前半(90 分)会話がメイン 後半(90 分)文書作成がメイン 自己紹介の方法 メールの書き方 電話の取次ぎ① ビジネスレターの書き方 (一般的な電話応対) (案内状、送付状) 電話の取次ぎ② ビジネスメールの書き方 (メモの取り方、苦情の受け方) (案内メール、送付メール) 電話の取次ぎ③ 物品購入の流れと文書を理解 (苦情電話実践) 依頼状(メール)の書き方 プロジェクトワーク① 内容:苦情電話応対とお詫び プロジェクトワーク② 内容:チームでの打ち合わせ プロジェクトワーク③ 苦情報告書の作成 提案書の作成 説得の実践練習 内容:説得 プロジェクトワーク④ 議事録の作成① 内容:会議 (議事録作成方法の理解と練習) プロジェクトワーク⑤ 議事録の作成② 内容:会議(学生による運営) (議事録作成実践練習) 社外でのビジネス 企画書の書き方 内容:商談のマナー プレゼンテーション テーマ:新規プロジェクト(パワーポイントを使用して発表) 13 ・縦軸の構成 15 回の授業にメリハリをもたせるため、シラバスは大きく「基本」 「プロジ ェクトワーク」 「応用」の3部構成とする。 -基本 定型文例の練習をベースに、自己紹介、電話応対、ビジネスメール、ビ ジネスレターの書き方の基本を学ぶ。 -プロジェクトワーク 「基本」で学んだ知識を使いながら、10 回にわたってプロジェクトワ ークを行う。 <プロジェクトワーク例> 「納期遅延によるお客様からの苦情処理と今後の対策」 ・ 苦情電話を受ける ・ 苦情電話の内容を上司に報告する→報告書を書く ・ 改善提案を考える→提案書を書く ・ 提案内容を会議にかける→議事録を書く ポイント:学習項目の意味と必要性を理解させながら学習を進め るため、学習にストーリーを持たせる。プロジェクト ワークのテーマは、業界、職種を限定しない内容にす る。授業時間以外の活動を極力少なくし、宿題は基本 的に授業内容の復習とする。 -応用 「基本」「プロジェクトワーク」で学んだ知識を使い、ビジネスプレゼ ンテーションを行う。 <プレゼンテーション例> 「内定先企業(志望企業)での新規事業企画」 ・ 企画書を作成する ・ パワーポイントを作成する ・ 自分の企画をクラスで発表する ポイント:キャリアアドバイザーに参加を依頼し、ビジネスの視 点からコメントをもらう。日本語講師は、学生の日本 語をチェックする。 ・横軸の構成 2コマ連続授業のため、プロジェクトワークでは、会話のクラスに対応させ て、文書の作成方法を教える。例えば、苦情電話の受け方を学んだ後で、苦 情報告書の書き方を学べば、授業時間を効率的に使うことができる。 14 ②授業のポイント ・対多コミュニケーション練習を重視 会話練習においては、対多コミュニケーションに力を入れる。上級話者に は、1対1のコミュニケーションには問題がないものの、フォーマルな場面での 対多コミュニケーションの方法が不適切なケースがみられる。授業の中では、 話すだけでなく、あいづちを打ちながら聞く方法、他のメンバーの主張のポ イントを理解しながら聞く方法、また議論の進めかたなど、複数でのコミュ ニケーション技術を学ぶ。 ・ビジネス文書の基本を習得 文書作成練習は、会話クラスの学習内容と対応させる。会話クラスが、電 話応対、苦情電話、報告、提案、会議の順に進行するのに合わせ、文書は、 メモ、報告書、提案書、会議議事録の順に作成する。入社後は、授業で学ん だ基本的な技術を社内の書式やルールに合わせて応用すれば、ある程度の文 書が書けるように準備する。また、文書作成練習に平行させて敬語の練習を 行い、定型外の文章も敬語を使って作成できるように訓練する。 ・ビジネスプレゼンテーションの基本を習得 ビジネスプレゼンテーション練習においては、異なる部署の職員やお客様 を「説得」する技術の習得を目標とする。ここでは、日本語表現、プレゼン テーションの構成、パワーポイントの作成方法を学ぶ。学生がビジネスプレ ゼンテーションのスタイルに慣れていない場合は、まず新聞の切り抜き等、 構成の明確な文章を使ってプレゼンテーションの構成を考える練習を行い、 その後自分自身のプレゼンテーションの準備を行う。 (4)成果と 成果と課題 ビジネス日本語教育においては、学生の在学時期、就業時期を考慮し、学生にとって 適切な学習時期に適切な内容の教育を行うことが、学生のモチベーション維持と高い学 習効果につながる。この授業を受けた学生には、次の効果が見られた。まず精神面では、 就業に対する漠然とした不安が解消され、自信がつき、新しい環境への心構えができた。 つぎに技能面においては、集団の中での言語運用能力、行動力が向上した。これらは、 学生のニーズが授業内容と合ったケースである。就職活動を経験していない学生がこの 授業に参加するケースもあるが、その場合、授業の内容と学生の経験、学習動機が合わ ず、学生にとってはただ「こなすだけ」の学習になる傾向が見られる。 15 事例3 事例3 個人カルテ 個人カルテと カルテと評価シート 評価シートを シートを用いたカリキュラ いたカリキュラム カリキュラム編成 (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 その他( ) 2) 授業の種類:単位有り・単位無し アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 単発・日常(通年) 3) 時間数:N/A 4) 学生数:15 名 5) 国籍:中国・韓国・ベトナム・タイ 6) 担当教員:専任日本語講師・非常勤日本語講師・外部委託日本語講師 日本語講師以外( ) 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他( N/A ) (2)概要 1)リーダーとなって活躍できる人材育成のために必要となる日本語コミュニケーショ ン力を養成することを目標とする授業を行う 2)入学時に既に総じて高い日本語力を有しているが、さらにそのレベルを引き上げる ために二段階の日本語科目を提供している 3)学生一人一人がいつ、どの時期にどのような科目を履修したかを年度ごとに詳細に 記録し個人カルテを作成し、管理している。さらには学生がインタビューなどを実 施する前、後で自己評価を記入し提出するシステムがある 4)卒業生の会(OB 組織)のメンバーが、毎回オムニバス形式で講義をし、就職の支 援もする (3)内容の 内容の説明 日本語能力試験1級または2級取得済みである日本語能力の高い学生が多いが、二段 階の積み上げによって、運用力のある、より高度な日本語力が身につくようなプログラ ムが組まれている。少人数である利点を活かし、一般の日本語クラスでは扱い難い発音 の授業が継続的に行われたり、作文の添削指導を通して「書く力」を養成したりしてい 16 る。またディスカッションなども活発に行われており、授業の様子はほぼすべてデータ として残され整理されている。録音、録画はただ記録のためだけではなく、学生の内省 を促し、必要な箇所を文章化するのに必要だからである。 専門科目の講義内容を正確に理解できるよう、非漢字圏の学生は日本に留学経験のあ ることが採用基準になっている。これは専門知識を学ぶ上で、言語、文化両背景の理解 が必要不可欠だという考えに基づいている。 1)個人カルテの作成 学生がどの年度にどのような科目を取り、単位を取得しているのかについて、個人カ ルテが作成され、事務所に保管されている。それには履修科目はもちろん、取得資格、 テスト結果など、その学生の在学時の学習データが記入されている。必要なことは教員 が適宜追記するシステムになっている。 2)評価シート 学んでいる学生は高度な日本語力を有しているが、話す相手の言うことに上手にあい づちを打つなどの「聞き手」としてのスキルを身につけるために、インタビュー、ディ スカッション、ディベートなどを授業の中に多く取り入れている。このうち、インタビ ューについては、①アポイントメールを書く②確認の電話をかける③インタビューを実 施する④お礼状を出すという一連の活動を記録したもの(報告シート)と、それについ ての自己評価(評価シート)を4段階でつけ、担当教員に提出するという方法をとって いる。インタビューする相手は OB、OG を含む社会人である。学生が社会人にインタ ビューを打診し、設定し、交渉し、さらには実践することで、厳しい社会のしくみを嫌 でも体験することになり、それが学生の自発的な学び、気づきの場となっている。 尚、インタビューの対象となる社会人は、主に実施大学の OB 組織を通じお願いして いるとのことであった。但し、具体的な連絡は学生が行う活動であり、講師の役割とし てはインタビュー対象者候補の紹介に留めるとのことである。 ・ 報告シート インタビューした時間、場所、相手、内容(質問と回答)を記載したもの。 内容は録音したものを文章化する。報告シートの最後には学生自身が聞いた話 を箇条書きで「まとめ」として記入する。 ・ 評価シート 決められた評価ポイントに沿って、学生が自らを4段階で評価する。評価の目 安として、以下のように決めてある。提出されたあとは、担当講師と個別フィ ードバックを行う。 S:非常によくできた A:できた B:少しできないところもあった C:全然だめだった 17 (4)成果・ 成果・課題 インタビューは「傾聴」の実践的なスキルを上達させることを目的とするに止まらず、 活動の内容をまとめる作業の目的として以下の2点が挙げられる。まず、社会人との接 点から学生自身が自ら身につけるべきことは何かに気づき、確認するためであり、さら には、様々な活動の段取りを上手にこなしていくスキルを身につけるためでもある。前 者はインタビューの内容、即ちインタビュイーとの談話を学生自身が時間管理も含めて コントロールすることにつながり、後者は実際にインタビューのために訪問するまでの 道筋を自らつける力につながる。そして、両者は「すべて教室内での一斉授業では鍛え ることができない」(担当講師談)ものであると言える。自分自身のインタビュー記録 を文章化し、場面や対象にふさわしい話しかたができたかどうかに自ら気づくことや、 まとめとして要約する作業や評価シートに記入していく作業を通して、学生の内省を促 し、次へのステップを踏み出す力を養成している。実際に社会人にインタビューするな どの体験を通して、学んだ待遇表現や敬語をその場に合った言い方で学生自身のものと して使えるようになること、そして録音したものを文章化することで学生自身の発話の 問題点などが明白になること、この2点はより高度な運用力を身につけるためには非常 に効果的ではないかと思われる。 補足とし、使用された評価シートのサンプルを載せるが、学生がこれらを提出した後、 さらに報告会を実施し①ピアの学びを共有する時間をもつこと②音声あるいは映像の データを教師が確認しフィードバックの時間をもつことの2点が実施されていること を付記しておきたい。 インタビュー実習評価シート 氏名 提出日 評価ポイント 自己評価(評価: S-A-B-C の 4 段階) ①アポイントメール・確認電話・ お礼状などにおいて日本語が上手 に使えたか(上手につかえなくて も自分から積極的に学んだか) ②適切なタイミングで関係者(教 員・インタビュー協力者・そのほ か)との『ホウ・レン・ソウ』 (報 告・連絡・相談)ができたか。 18 ③今回のインタビュー活動に積極 的に取り組めたか。またインタビ ューに対し て自分なりの目標 設 定、関連する日本語やマナーの学 習など、指示されたこと以外にも 取り組んだか。 ④ほかにも授業や課題がある中、 早めにスケジュールを組んで効率 よくインタビュー課題に取り組む ことができたか。 19 事例4 事例4 ビジュアル教材 ビジュアル教材を 教材を用いた授業 いた授業 (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 その他( ) 2) 授業の種類:単位有り・単位無し アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 単発・日常(通年) 3) 時間数:90 分×2コマ(4月~翌年2月末までの週2回) 4) 学生数:8名 5) 国籍:中国・香港・韓国・マレーシア 他 6) 担当教員:専任日本語講師・非常勤日本語講師・外部委託日本語講師 日本語講師以外( ) 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他( 生教材 ) (2)概要 1)漢字圏と非漢字圏が混ざった中級から上級までの幅広いレベルの学生のクラスであ り、漢字語彙の量の差はあるが、聴解力にはそれ程の差がないクラスである 2)聴解力強化のため、また非漢字圏の学生が混在していることを考慮し、理解の際に 文字への依存度が低いビジュアル教材を「ビジネス日本語の教材の一部」として使 用し、レベル差を埋める方法の一部とした (3)内容の 内容の説明 週2回のビジネス日本語の授業5~7回で1テーマを終了するという設定で進めた。 多くのビジュアル教材をテーマに沿って教材化するときに留意した点、またどのような 位置づけで使うのかによって変わる使用法について以下に述べる。 1)教材化 教材探しは前年度から決めていたテーマに沿ってほぼ1年ないしは2年かけて集め た。集めた素材をテーマごとに分類し、さらに細分化し、テーマに合う内容を取捨選択 し使用した。同一テーマでも媒体を変えて扱うということを意識し、それぞれの特性が 活かせるように選択した。またどのテーマを決めるときにも、追記事がでるもの、でき 20 るだけ多くの人の意見が聴けるもの、特に、学生たちが日本企業で同僚として働くこと になる同世代の日本人の考え方が聞けるもの、ということを基本にした。教材化する場 合に注意した点は以下の通りである。 ①素材の使用箇所とその時間 ②使用箇所の流れと順番 ③使用語彙と表現のチェ ック(テキストでは扱えない機能語、表現などが含まれているものを探す) ④テーマに沿ったタスクが作りやすいかどうか。 (視聴した学生が聴きとりに終わら ずに考えて答えを導き出せるものであるかどうか) ビジュアル教材を授業の流れのどこに位置づけるかによって、素材の選び方や使用箇 所が変わることを考え、準備する必要がある。 2)使用法 ①ビジュアル教材が聴解や読解教材の補助的な役割を果たす場合 【聴解教材→ビジュアル教材→読解教材→まとめ】の順番で使用する。これは聴いた り読んだりして得る情報がメインではあるが、映像が入ることでより深い理解が進むと 考えられる場合である。構造を説明する、あるいは時間の変化とともに変わっていく状 況などを説明する内容などに効果的である。 ②ビジュアル教材が読解教材の内容で使用されている語彙や表現をさらに拡充する役 割を果たす場合 【読解教材→ビジュアル教材→聴解教材→まとめ】の順番で使用する。これは読んだ 教材の中で、いわゆる書きことばになっている内容をよりわかりやすく口語で説明する、 日本語らしい言い回しで表現するなどに使いたい場合に効果的である。 ③ビジュアル教材が扱うテーマの導入の役割を果たす場合 【ビジュアル教材→読解教材→ビジュアル教材→読解教材→まとめ】の順番で使用す る。教材によっては、間に聴解教材を入れる場合もある。ビジュアル教材を2回使う場 合は、同じテーマではあっても切り口の異なるものを用いる。時間の経過とともに変化 した結果を時系列で追って説明する場合や立場によって意見の異なる内容を扱う場合 などに効果的である。 (4)成果・ 成果・課題 前年度に引き続きの生教材で、学生たちは聞き取りの部分ではほぼ問題なく内容を理 解した。またどうしても覚えてほしい漢字語彙や表現の使い方を先に扱う以外は、トッ プダウンで行ったが、学生の「自力でできるところまでは取り組む」という姿勢にも助 けられ、特に混乱することなく進められた。これは前年度の取り組みの成果の一つと考 えている。1 回ごとのまとめは、授業後に回収し、学生には訂正箇所を下線で提示する のみにして返却し訂正させた。その後、訂正後のものをまとめてプリントし、クラスで 読み物として扱った。お互いのものを読み合うことで、学生には「ピアの学び」を共有 21 する時間となり、書く力を向上させるのに大いに寄与した。 テーマごとに適当なビジュアル教材を準備することは、かなり負担の大きい作業では あるが、学生の理解を促し、より深い考察に導くためには、効果的な方法だと思われる。 教材をただ視聴するだけではなく、素材のどこをどのように扱うのが良いかを入念に検 討することも必要であるため、今後もひきつづき効果的な方法を探り、実践に活かして いきたいと考えている。 22 事例5 事例5 日本社会・ 日本社会・企業への 企業への橋渡 への橋渡しの 橋渡しの手立 しの手立て 手立て-当番制 (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 その他( ) 2) 授業の種類:単位有り・単位無し アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 単発・日常(通年) 3) 時間数:90 分×31 コマ(週3回) 4) 学生数:5名 5) 国籍:中国・台湾 6) 担当教員:専任日本語講師・非常勤日本語講師・外部委託日本語講師 日本語講師以外( ) 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他( 新聞 ) (2)概要 1)学生を当番とし、教室の環境整備、講師との連絡体制等に責任をもたせる 2)当番とし、連続的に体験することで、日本人的対人関係や、常識等を身につけるよ うに試みた (3)内容の 内容の説明 アジア人財コース開始前の企業ヒヤリングの結果、企業側に専門知識・語学のほかに 協調性をはじめとする日本的対人関係や常識・気配り等において留学生に対し不安があ ることがわかった。 「社会人基礎力」や「協調性」というテーマでの授業実施もあるが、 身についた習得のためには頭だけの習得ではなく実際の体験の中から実感として捕ら えなければなかなか身に付くものではない。そのためにその日の授業における「当番」 を決め、全員が交代でこれを継続し、授業ではない授業を試みた。 1)意図 ・ 気配り、配慮、空気を読むことは日本企業文化において基本となるものであ り、大学生活では習得しきれないものであることからその育成を目指す。 23 ・ 授業では教員はファシリテーターとなる。学生は受身ではなく、学生自身が 自発的に授業を引っ張っていく。 2)形態 ・ 毎回の授業で実施。実感し、自発的な芽生えを期待するため継続することが 重要 ・ クラスのメンバーが毎回交代で、その日の授業の進行をサポートする。 3)内容 ① 教室の開錠、施錠をはじめ、エアコン管理など教室の環境整備 ② 授業で必要なものの整備(ポートフォリオの教室への移動、資料コピー、その 他随時必要なこと) ③ その日の授業で流れが止まったときに、自発的に口火を切り授業をつなげたり、 まとめたり、率先して発言をするなど授業を進める。 4)成果・ 成果・課題 ① 責任感や連帯感の強化 例:・プレゼンテーションや調査時の運営や進行に関し、学生たちで積 極的に役割を決め、執りおこなう。 ・日本語力のやや劣るメンバーをクラスの中で言いかえをしたり、 手伝ったりと自発的にサポートする。 ② 気配りや空気を読むことへの芽生え 例:・授業後半、学生ファイルのためのパンチも持参するようになる。 ・学外講師による授業では、お迎え・お見送りをはじめとし接待を 学生たちでおこなう。 ・通常と違う形(外部講師等)で授業がおこなわれる時、終了後速 やかに机を片付けたり、元の形に戻したり自分たちでおこなう。 ③ 相手の気持ちの理解 例:・他の人にアポイントを取り付けたり、事務局や教員達を訪ねたり する際、相手の都合をまず聞いてから、切り出すことができるよ うになった。 24 事例6 事例6 ホームステイプログラムを ホームステイプログラムを利用した 利用した日本企業文化理解 した日本企業文化理解 (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 その他( ) 2) 授業の種類:単位有り・単位無し アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 単発・日常(通年) *前期授業の中でホームステイは 3 回実施。 3) 時間数:N/A 4) 学生数:5~6名 5) 国籍:中国 他 6) 担当教員:専任日本語講師・非常勤日本語講師・外部委託日本語講師 日本語講師以外( ) 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他( N/A ) (2)概要 1)地元のコンソ企業の協力を得て、企業従業員の家庭にホームステイをする 2)プロジェクトベースの授業内容の中で、企業文化、労働観の理解を主眼とする 3)上記の目的のため、ホームステイ中にインタビューする 4)インタビューのための準備と調査後の発表を授業の中で行う (3)内容の 内容の説明 ビジネス日本語とは何かを考えた時に、場面ごとの言語スキルは後々でも何らかの形 で習得できる可能性が強く、またそのような機会はあると考えられる。むしろそれ以前 の日本社会、企業文化の理解が重要だと思われる。特に重要なのは、単に知識としてそ れらを知っているだけでなく、それを実感として経験を通して理解することだ。そのた めにこのようなプロジェクトを実行することにした。 学生は、各回のホームステイでインタビュー活動のテーマとなる話題について、質問 項目、その聞き方を考えていった。当初は、実際にそのようなことを聞いていいのか、 またその言い方ではいかにも問題があるというものが、教師の側から見て多かった。し 25 かしいくつかのアドバイスをあたえ、考えさせるうちに内容面での視点が個人の利益か ら働く意義といった視点へ変化してきた。また、聞き方の言語的な配慮、更に聞く時に ストラテジーなどに考えが及ぶようになった。これらを考える過程では、ブレーンスト ーミングの手法を用いた。 現実にホームステイ先を選ぶのはかなりの困難があった。地元企業の協力があったた め実現することはできたが、実際問題としてホームステイ先を探し出すのはなかなかむ ずかしいことだった。 しかし一度実現すると、各家庭では非常に好意的に迎えてくれて、なおかつ自分の労 働観、どうして現在の会社に入ったのか、今働いていることをどのように考えているの かなど、非常に率直に語ってくれた。インタビューを夫が受けるのを妻が聞きながら、 今まで聞いた事のないような話、話したことのないような話題が出て、思わぬ会話が家 庭内で起こるなど興味深い現象も見られた。あるいはこれは外国人という立場であった ことが良い方向に作用したのかもしれない。 実際に質問を行った内容は、例えば次のようなものであった。 A) その会社の概要 B) 個人の職業選択の中での優先順位 C) キャリアパス、仕事の意欲に関わる要因 D) 価値観・人生観・結婚観等 E) 外国人の雇用に関する意見 (4)成果・ 成果・課題 このプロジェクトを行ない、このような教育上好ましい結果となったのは以下のよう な点である。 1)日本人の労働観、考え方、会社内のさまざまな問題について、実感として経験から 理解できるようになった、あるいはその機会が与えられた。また、複数の例を見る ことにより、その多様性に気付いた。 2)家族を巻き込んだ話の中で、家族のそれらに対する考え方にも触れることができた 3)家庭内で労働観や考え方に対するインタビューをしなければならないという現実が あることによって、質問する時の言葉遣いの重要さに学生達が気づいたこと 4)その聞き方について、言葉遣いのみならず聞き方の作法、ストラテジーのようなも のまで考えがおよび、実際に学生達がその方法を考えることとなった 一方、このようなプロジェクトの問題点は以下の通りである。 26 A) コンソ企業の協力を得つつ、実際に協力してくれる家庭を探すことは非常に難しい B) デリケートな問題を質問する場合もあり得るので、事前の指導に細かな配慮が必要 である C) 各コンソ企業との緊密な関係が必要である しかし実際に行ってみると、実感、経験を通してというキーワードにふさわしい経験 を学生達がすることができたという意味で、非常に目的にあった結果が得られたものと 思われる。 27 事例7 事例7 日本人学生の 日本人学生のTAを TAを授業の 授業の中に組み込む (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 その他( ) 2) 授業の種類:単位有り・単位無し アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 単発・日常(通年) 3) 時間数:N/A 4) 学生数:N/A 5) 国籍:混在。但し、中国が最多 6) 担当教員:専任日本語講師・非常勤日本語講師・外部委託日本語講師 日本語講師以外( ) 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他( ) (2)概要 1)日本人TAをアジア人財の日本語クラスの中に入れ、留学生と同じ活動を行う 2)授業はプロジェクトベースで、異文化コミュニケーション観の理解を目的とする 3)日本人学生から話を聞くのではなく、ともに作業する中で彼らの問題や留学生の議 論に対する反応などから、日本人が当然と思っていること、対処のしかたなどにつ いて、留学生自身が気づくようにする (3)内容の 内容の説明 いくつかのコンソーシアムでは、コンソ企業との話し合いで、企業が留学生の採用 にあたっては、日本語能力そのものよりもむしろ集団の中で外国人社員がうまくやって いけるかということについて、関心があるとの認識を持っている。 その場合、当然ある程度の日本語能力が必要とされるものの、文化的背景、その中 での日本人の行動原理などについて、身をもった理解が求められる。これらは更に社会 人基礎力に結びついて行くことになるが、その前提として自分が社会人として生きてい く社会、その中の人々の文化的な諸問題、それからくる行動原理の理解が必要とされる。 そのことを目的として、社内の集団の中で生じるであろう様々な問題を考えるとい 28 う課題に対し、留学生数名に日本人学生1名という組み合わせでグループ作業を行って 行く。TAとなる日本人学生の選択については、慎重を要する。単純に公募したことも あったが、その場合、教員の意図したものとは異なる目的や希望で応募して来るものも あり、実際の授業が円滑に進行しなくなるようなこともあり得る。実際に学生を選ぶ時 には、大学内などで行われる、国際交流に関するイベントなどの参加者などから、めぼ しい候補者をさがしておき、個別に協力を依頼している。 日本人学生は留学生と同じ作業を授業中にしなければならず、場合によっては彼ら の作業に我慢強くつきあわなければならない。また留学生への共感も必要となる。 この事例ではコンソーシアムから日本人学生には、TAとしての謝礼が出されるが、 時間的にもそれなりの負担があることは間違いない。適切な協力者を選ばなければなら ない。また、TA以外にも主に学習面でのサポートをおこなうチューターも配置されて いる。 このように学内の学生などの協力者を得るためには、大学の教員が積極的にこのプ ログラムに関与し、大学内にも周知し、協力を求める必要がある。 (4)成果・ 成果・課題 いわゆる劇的な発見が必ずしもあるわけではないが、さまざまな問題、場面などで 自分たちの考え方と、日本人学生の意見などを比較する機会が、数多く与えられること になる。それが日本人の考え方、行動様式の理解につながる過程に結びつく。TAとし ての日本人学生の利用は他にも例があると思われるが、本来留学生向きに作られた授業 の中に、協力者として日本人学生を入れる例はあまりあまりないと思われる。この場合、 日本人学生にはそれなりの、状況への理解と負担に耐えることが要求されることになる。 教員の指導もさることながら、日本人学生にも興味が持てる授業内容に発展させていく 必要があるだろう。 29 第二章 就職支援と 就職支援とビジネス日本語 ビジネス日本語 サマリー 一般に、日本語担当教師が就職支援に関する知識を、十分に持っているとは言えな い。しかし多くの場合、接することの多い日本語教師に、学生が様々な質問をしてくる のは自然なことであり、その中に当然就職支援の問題が含まれることになる。 また、現状の日本における就職活動のあり方、スケジュールなどを見るとき、知識 不足による出遅れ、あるいはそれに取り組む意識の低さは、日本での就職を困難にする 可能性が強い。程度の差こそあれ、日本語教師もこの支援に関わる必要があるだろう。 アジア人財資金構想のプログラムにも、就職活動支援は欠かせないものであり、ビ ジネス日本語教育もそれに対応することになる。しかしイントロダクションでも述べた ように、就職活動はビジネス日本語にとって一つのキイとなりうる素材であるので、そ れを積極的に活用しようという事例もある。そのような場合でも、就職支援を専門とす る機関、あるいは専門家との協力は不可欠の要素となる。 厳密に線引きすることはむずかしいが、ビジネス日本語の時間の中で、どちらかと 言えば、日本語教師がイニシアティブをとり、キャリア関係の支援を行っている担当者 (あるいはデザイナー、アドバイザー等)や外部組織の力を借りるという形のもの(ビ ジネス日本語型)と、コンソーシアムが就職支援をアジア人財のプログラムとして組み 込むもの(コンソーシアム型)がある。学生のキャリア支援等に関する職名としては、 上記のようにキャリア関係の支援を行う担当者の職名は、キャリア・コーディネーター、 デザイナー、アドバイザー等さまざまなものがあるが、それぞれ意味合いの違いもあり、 本報告ではとくに統一した用語にはしていない。 ビジネス日本語型としては、事例8「キャリアアドバイザーとの連携による個別対 応」がある。これはビジネス日本語の授業を中心として、その中の就職支援に関する個 別対応の部分を、キャリアアドバイザーの支援を仰ぐものである。また、事例 10「ビ ジネス日本語に外部講師を組み込み就職支援を行う」は、コンソーシアム外の専門家を 招いて、ビジネス日本語の中に何回か就職活動に関する授業をしてもらうものである。 いずれもプログラム内でのビジネス日本語の独立性が高く、日本語教師の側が独自にビ ジネス日本語の内容について決定できる、という状況が見られる。 一方コンソーシアム型としては、事例9、11 がある。 事例9「キャリアコーディネーターと日本語講師の共同授業」は、コンソーシアム の方針として、はじめからキャリアアドバイザー的な教師と、日本語教師が共同で授業 を担当するものである。一方の教師がその授業を中心となって進め、他方はそれをサポ ートする。また、事例 11「日本語教員と日本ビジネス講師・キャリアオフィスとの連 携」は、プログラムの組織として、ビジネス日本語と日本ビジネス教育を一本化した事 例である。 30 これらはコンソーシアム主導によるものである。但し、前者の9の事例はこのコン ソーシアムの全ての授業で行われているのではなく、条件の整った場所でだけこのよう な方法がとられていたことを付け加えておく。 就職活動に関しては、学生達は経験のある先輩の話に、成功の部分ばかりではなく、 失敗の部分も含めて、よく耳を傾ける。先輩と話す機会を設ける、あるいは先輩の経験 を活かすような方法が工夫されている。事例 13「内定者や企業関係者との懇談の機会 をつくる」は前者の例であり、事例 12「グループディスカッションを身につける-日本 人学生内定者と」は後者の一例である。これによれば、練習の中で具体的な体験を直接 話してもらうことができる。前者の事例 13 では、タイトルにもある通り、先輩だけで なく、企業関係者の協力もあおいでいる。 31 事例8 事例8 キャリアアドバイザーとの キャリアアドバイザーとの連携 との連携による 連携による個別対応 による個別対応 (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 2) 授業の種類:N/A 3) 時間数:N/A 4) 学生数:5~10 名 5) 国籍:中国 6) 担当教員:大学日本語講師・非常勤講師・外部委託講師・日本語講師以外 7) 教材:N/A (2)概要 1)就職を目的とした授業(就職内定前のビジネス日本語教育)を行う場合、授業時間 外に学生の個別相談(自分自身の就職活動についての相談)が頻繁に発生する 2)日本語講師が対応できる相談内容、相談時間は限られており、日本語講師によって 対応できる相談内容は異なる 3)日本語講師とキャリアアドバイザーが学生の情報を共有し、連携することで、個別 相談に適切に対応できる。 学生一人一人の学習状況、将来の希望を詳しく知ることで、学生のニーズを授業に 生かすことができる (3)内容の 内容の説明 1)留学生の個別相談例 ・自己分析に関するもの 自分の長所、短所、何がPRできるポイントなのかわからない。 書類審査や面接で落ちる原因がわからない。 将来どのような仕事をしたいのか、自分に何ができるのかわからない。 (受験する会社をどのように選べばよいのかわからない。 ) ・日本語に関するもの エントリーシートを書いたので日本語をチェックしてほしい。 面接のために準備した内容の日本語をチェックしてほしい。 32 先輩や、会社の人事担当者へのメールの書き方を教えてほしい。 自分の日本語は全体的にビジネスレベルに達しているか教えてほしい。 ・日本での就職活動、就業について セミナーには、絶対に行かなければならないのか。 先輩訪問はしたほうがよいのか。また、どこで先輩の情報を得るのか。 自分の所属学部で○○職に合格する可能性はあるか。 留学生が採用される会社はどこか、またどの職種か。 SPI試験の対策は、何をどれぐらいすればよいのか。 採用試験では、ビジネス日本語の資格は重視されるのか。 契約社員、派遣社員の仕事内容・待遇は、正社員とどう違うのか。 日本採用と現地採用の違いは何か。 内定をもらった会社は第一志望ではないが、就職活動を続けるべきか。 以上の学生の相談例からわかるように、日本語のみに関する相談はごく一 部で、多くの相談内容が進路や就職活動の進め方に関するものである。日本 語に関する相談も、日本語の誤りをチェックするだけではなく、内容も含め ての相談であることが多い。このような相談に対応する際、日本語講師の側 に、採用担当者の視点についての知識がなければ、適切なアドバイスが難し い。 2)日本語講師とキャリアアドバイザーの連携 学生へのビジネス日本語指導のためにも、また学生との信頼関係構築のた めにも、学生の個別相談に応じることは非常に重要である。一方で、以上の 多岐にわたる相談について、学生一人一人に対応していると、日本語講師は 授業時間外の個別指導に忙殺されることになる。そこで、日本語講師とキャ リアアドバイザーが連携すれば、授業展開にも役立つ、効率的な業務分担を 行うことができる。 連携方法としては、①日本語講師とキャリア担当者が学生の進路希望、受 講の様子、学習成果、悩みなどについての情報を共有し、共同で学生の指導 にあたる、②キャリアサポートのスケジュールと日本語の授業プランを連携 させる、③実際に学生に会う機会が多い日本語講師が学生の相談窓口となり、 学生の質問内容を理解した上で、キャリア担当者への橋渡しを行う、などの 方法がある。 33 (4)成果と 成果と課題 連携の一事例としての上記3つの方法により、以下の効果がみられた。 まず、指導内容が効率的で無駄のないものとなる。授業で指導する事項、キャリアサ ポートで指導する事項を分担し、キャリアサポートのスケジュールと日本語の授業プラ ンを連携させることで、効率的な指導内容となった。授業で基礎知識を学び、キャリア サポートで実践的に発展させるなど、学生は連続的な指導を受けられた。 また、学生からの個別相談に適切に対応できる。実際に学生に会う機会が多いのは日本 語講師だが、学生の相談内容の中には、日本語講師が対応できず、キャリアアドバイザ ーによるアドバイスが必要なものも多い。その場合、日本語講師が学生の相談窓口とな り、学生の質問内容を理解した上で、学生とキャリアアドバイザーの橋渡しを行うこと で、学生は迅速に適切なアドバイスを受けることができた。 34 事例9 事例9 キャリアコーディネーターと キャリアコーディネーターと日本語講師の 日本語講師の共同授業 (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 ※N/A 学部・院生 ※博士を含む その他( ) 2) 授業の種類:単位有り・単位無し アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 単発・日常(通年) 3) 時間数:90 分×1コマ(週1回) 4) 学生数:20 名強(アジア人財以外の学生も含む) 5) 国籍:中国 他 6) 担当教員:専任日本語講師・非常勤日本語講師・外部委託日本語講師 日本語講師以外( ) 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他( N/A ) (2)概要 1)プロジェクトベース教材の就職支援の部分で、キャリアコーディネーターと日本語 教師が共同で授業を行う 2)キャリア、就活そのものに関する授業はキャリアコーディネーターが行う 3)日本語教師はグループ作業の時、あるいは随時学生の質問を受け、日本語に関する フォローを中心に行う 4)部分的に日本語の教員が関連のトピックを用いたもの、あるいは先行するキャリア、 就活に関する授業の必要な日本語のフォローを行う (3)内容の 内容の説明 プロジェクトベース教材は、ビジネス日本語の教材であるが、特に就職支援に関す る部分は、かなり現実的な就活が念頭に置かれることが多い。その指導は日本語そのも のの指導というより、就職活動に対する指導となってしまう。その場合、日本語教師が 十分にこれらの指導を行う知識と経験がない場合もある。就活に関して、さまざまな問 題が出て来て、学生からの具体的な質問があった場合、常に自信を持って十分に答えら れるとは限らない。 35 一方、キャリアコーディネーターがその授業を行った場合、就活そのものの指導は いいが、留学生は随時日本語のフォローを必要としており、その部分が不十分になるこ ともある。これらの両者を補うために、日本語教師とキャリアコーディネーターが共同 して授業を担当するという発想が出て来る。もちろん日本語教師、あるいはキャリアコ ーディネーターがそれぞれ、専門外の知識、スキルを身につけて行くこともありうるが、 それぞれの専門について短期間で必要なものを身につけるのは中々むずかしい。 他の事例で、部分的に就活支援のため、外部講師を招いたりする例もあるが、常に 共同して授業を進行させる例もある。これは就職支援を重視するコンソーシアムの意図 もあって行われた。 (4)成果・ 成果・課題 共同し授業を担当するため、学生は両者からフォローが受けられるという点では優 れている。しかし遂行上の問題もある 1)つねに二人の教師が必要となり、経済的、人的なリソースの負担が多い 2)両者の共同が、場合によっては良好にすすまないことがある 3)一方が授業を主導している時に、他方が誤りを修正したり、意見を言ったりする時 には、場合によっては他方の授業を阻害することがある 4)事前にその都度、一定の時間をかけて打ち合わせを行う必要があり、それぞれの授 業技術の違いなども、互いに理解しておかなければならない 4)の問題は,例えば日本語教師が後で生かすつもりで、何らかの伏線をはるよう な発言をした場合、キャリアコーディネーターがそれが理解できずに答えを先取りして 言ってしまうようなこと、また留学生を対象と考えて、簡略な説明を行ったことを、キ ャリアコーディネーターが誤りと指摘してしまう場合がある。また、キャリアコーディ ネーターが学生の日本語の誤り、学生によって異なったことを言っても気づかず、それ を日本語教師が指摘してしまい、授業の注目が他のところにいってしまう場合などがあ る。 キャリアコーディネーター側の視点からは、日本語教員の説明が不適切に感じるこ とも多々あり、そのままにはしておけないと考えて発言することもある。これらの違い は単に知識の問題だけではなく、基本的な教育技術、手法の違いに根ざしていると考え られ、それほど単純な問題ではない。 日本語の教員は、内的にスキルを形成しようとするため、 「知識」を正確に伝えるよ りは、実際に何かの言語的な行動が可能になるような過程を推進しようとする。知識を 教えるよりも、むしろ習得の手助けを重視する傾向がある。一方、就職活動という具体 36 的なものを念頭に置いている教師は、知識を正しく提示すること、あるべき行動の姿を 明確に説明することを重視する。「できるようになる」過程にも注目があるが、そちら を重視する場合でも、「習慣化」を目的としたような、スキルトレーニングがイメージ されていることが多い。 このように両者の違いから生じる矛盾は、単なる知識的なものではない。従って共 同が行われる場合には、それぞれの時間ごとに主体となるのはどちらであり、その基本 的な趣向、教育としての考え方を互いに理解しておく必要があるものと思われる。更に、 それぞれの時間ごとにしっかりとその時間の目的などを確認するべきであろう。 37 事例 10 ビジネス日本語 ビジネス日本語に 日本語に外部講師を 外部講師を組み込み就職支援を 就職支援を行う (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 その他( ) 2) 授業の種類:単位有り・単位無し アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 単発・日常(通年) 3) 時間数:90 分×1コマ(週1回) 4) 学生数:20 名(一般の学生も含む) 5) 国籍:中国等 アジア圏 6) 担当教員:専任日本語講師・非常勤日本語講師・外部委託日本語講師 日本語講師以外( ) 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他( N/A ) (2)概要 1)プラクティカルなビジネスマナー、就活に関することについては外部講師に依頼 2)日本語の教員で対応できる部分については、専任の授業担当教員などがあたる 3)ビジネスマナー講座については、学生の就活スケジュールに合わせ、就活の始まる 前には、就活に入る前の自己分析、就活のスケジュールなどを指導することにし、 内定後はより入社後の問題を取り上げる講座とした (3)内容の 内容の説明 当初はプロジェクトベースの日本語教材(理系の学生むけにカスタマイズしたもの)だ けを用いていたが、内定が決まり、なおかつ修士論文の最終段階になり時間的にも厳し い状態の学生から、実際に会社に入った後のマナーなどについて教えてほしいという希 望が出て、それに対応するかたちで、プロジェクトベースの授業の中に、4回、ビジネ スマナー講座を外部講師を招いて行った。 当初のプロジェクトベースの授業では、アジア人財の学生のみで行っていたが、マナ ー講座では日本語能力が高く、日本での就職を希望している留学生も参加させ、全体で 38 20 名程度の参加者となった。内容はかなり一般的なもので、日本人も使用する教材を 用い、入社後のマナーやことば使い、挨拶や来客対応などが練習された。全体として学 生の評価は高かったが、理工系のエンジニア等になる可能性が強い学生にとって、本当 に必要なことであるかについては、疑問があり、学生の一部からは同様の指摘があった。 以後、継続して期ごとに、外部講師の選定や内容について、さまざまな試みを行った。 例えば、トピックとして取り上げたのは以下のようなものであった。 A) 日本企業が外国人社員に何を求めているのか B) 社内での報告書の書き方について C) 就職活動のすすめ方、始める時期等 先輩を呼んで話を聞く D) 会社を選ぶときに考えるべき事 就職説明会への参加 E) 入社後に必要な最低限のマナー、言葉遣いの練習 F) 面接試験の模擬練習 しかし現実的にはまだ、この形がいいというところまでには至っていない。 外部講師を招く場合、特に就職支援を業務としている会社に依頼する場合の問題とし ては次のようなことがある。 a) 費用がかかる ビジネスマナー等の講師の依頼では時間3万円ほどだと言われ、そ の他の費用を含めると、4回の講座でも数十万円が必要となる b) 日本人対象にやっている講師の場合、言語的な問題があっても気づかないことが多 く、その点では後で日本語教師が対処する必要がある マナー講師の場合、これまで学習者の明らかな文法、語法的な誤りのあるものもほ とんど修正することがなかった。また全員にコーラスさせても、明らかに異なるこ とを言っている学生がいても気づかず、ほとんど修正しない。そのため外国人学生 としては、言語的なフィードバックがほとんどない状態となる。その場で介入はで きないので、日本語教師側が、一週遅れで練習することが十分な対処とはなりにく い。 c) 子供っぽくなり、院生の必要とするような内容が少なくなることがある。 明らかに、マナーなどの講師と日本語教師の恊働の必要、余地がある。しかし実際に それを行うのはなかなかむずかしい点がある。これを行うためには、事前のかなり綿密 な話し合い、計画が必要になるが、外部講師に依頼する場合には中々時間もとれず、専 門や教育方法の違いもあるため、踏み込みにくい部分がある。また、毎回さまざまな内 容に変更するため、外部講師もいろいろな人がその都度来るため、コミュニュケーショ ンが十分にできないうちに他の講師に交代してしまう。 どんな講師を招くかも含めて、この点は今後の課題となる。 39 (4)成果・ 成果・課題 このような形でマナーや就活に関する部分を導入したことで、改善点はあるものの、 以下のような点が評価できるだろう。 1)アジア人財の学生以外の受講が増え、授業が活性化されることとなった。 →これはマナー講座などが公開されることもあり、科目として成立しているビジネ ス日本語に関する講義が、広く留学生の認知を得ることになったためと思われる。 2)必要十分とは言えないが、学生にそれなりの情報やスキルを提供することができた。 3)これらの講座の企画、実際を通して教員の意識や知識も変化し、それらはビジネス 日本語で何をするのかを考える上で,非常に有益であると考えられる。 ビジネスマナーのあり方は、本当に常識的な共通のものから、場面や関与者、その場 などに影響される非常に個別的なものまで多岐に亘る。これらを全てカバーするという こと自体が非常に難しく、大学というコンテキストの中の教育として考える場合、別の 視点も必要であろう。単なる職業訓練ではなく、何らかの文化、社会的な理解にかかわ るものである必要がある。だとすれば、単純に留学生が「あるべき姿」を教えてもらう のではなく、さまざまに行われていることの基礎的な考え方、社会の構造などを理解し、 それに対し、自分なりにそれぞれがどう対処していくのか、自らつかんでいく機会を増 やすような工夫が必要となる。今後はそのような、教育という観点を明確化することが 必要になるであろう。 40 事例 11 日本語教員と 日本語教員と日本ビジネス 日本ビジネス講師 ビジネス講師・ 講師・キャリアオフィスとの キャリアオフィスとの連携 との連携 (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 その他( ) 2) 授業の種類:N/A 3) 時間数:N/A 4) 学生数:10 名 5) 国籍:インド、中国、ベトナム 6) 担当教員:大学日本語講師・非常勤講師・外部委託講師・日本語講師以外 ・その他(専門教員) 7) 教材:N/A (2)概要 1)専門教員、事務局、キャリアオフィス、日本語教員が連携して、効率的な教育、サ ポートを行う 2)ビジネス日本語と日本語ビジネスのデュアル教育を行う 3)学生一人につき一つのキャリアカルテを作成し、関連部門の全てが関わって、学習・ 指導履歴を蓄積、共有する 4)キャリアカルテの情報を分析することで、学生に合った適切な指導が可能になる (3)内容の 内容の説明 1)教育内容 ビジネス日本語、日本ビジネスを連携させることで、効果的な教育を行う ことができる。例えば、一方の担当講師がもう一方の授業に参加し、教育内 容を共有、協働する。また今後は、日本語のテキストとビジネス日本語のテ キストの内容の乗り入れの可能性を検討している。 ・ビジネス日本語:日本語学習歴の低い学生に対して、日本語能力試験2級 合格を目標に、発話に重点を置いた教育を行う。 ・日本ビジネス:インターンシップ参加のための日本ビジネスマナー教育、 就職活動のための企業分析、自己分析、エントリーシート作成、面接対策 の教育を行う。 41 2)連携方法 ・体制 学生のサポートには、専門教員、事務局、キャリアオフィス、日本語教 員(ビジネス日本語担当、日本ビジネス担当機関)が協働してあたる。 ビジネス日本語および日本ビジネスの授業は再委託されている。ビジネ ス日本語教育機関、日本ビジネス教育機関は連携し、デュアル指導によ る授業運営を行う体制をとっている。 ・情報共有 -定例会議 毎週、各部門の担当者が出席する定例会議を開き、情報と目標を共有 する。問題点については、合議により解決する。 -キャリアカルテの作成 学生一人につき一つのキャリアカルテを作成し、関連部門で共有して いる。カルテには、学生の知識、技術、キャリア、面談内容をファイ ルする。複数の指導者の面談、指導内容を綴じていくことで学生の指 導履歴を明確にし、また指導履歴を関連部門で共有して指導に生かし ている。 (4)成果と 成果と課題 キャリアカルテを活用し、日本語講師、専門科目教員、キャリアオフィス担当者が連 携して学生の指導にあたることで、連続性のある多面的な指導を行っている。 <連携体制を生かした指導> -面接指導 日本語講師、専門科目教員、キャリアオフィス担当者出席による、キャ リアセミナーおよび模擬面接を実施し、専門面接、人事面接、最終面接 といった、日本企業の採用面接について多様な側面から指導を行う。 -エントリーシートチェック エントリーシートのチェックは、日本語講師、専門科目教員、キャリア オフィス担当者の三方向から行っている。 -就職意識の形成 学生は、アジア人財学生として採用された翌年に夏期インターンシップ に参加し、直後に就職活動を行わなければならない。そこで、日本語講 師、専門科目教員、キャリアオフィス担当者が集中指導を行い、学生の 42 就職意識を高める。 -授業時間外の活動 昼食時など、授業時間外に指導担当者が学生と個別に話す時間をとり、 学生の本音によるキャリア観を把握する活動を行っている。 43 事例 12 グループディスカッションを グループディスカッションを身につける -日本人学生内定者と 日本人学生内定者と (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 その他( ) 2) 授業の種類:単位有り・単位無し アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 単発・日常(通年) 3) 時間数:90 分×3コマ 4) 学生数:5名 5) 国籍:中国・台湾 6) 担当教員:専任日本語講師・非常勤日本語講師・外部委託日本語講師 日本語講師以外( ) 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他( ) (2)概要 1)面接の過程にグループディスカッションが含まれている企業が多く、留学生達は かなりの不安を抱いる 2)A-3「つかめ!面接のコツ」Part3-9を軸に、就職内定を取り付けた日本人学 生と留学生のグループディスカッションを3日間の日程でおこなう 3)日本人内定者とのディスカッションから、日本人の意見の出し方、間の取り方、 タイミング等を体験を通し学ぶことができる (3)内容の 内容の説明 本機関では、共通カリキュラムを軸としているものの他の教材との入れ替えや加工、 抜粋、扱う量の増減等かなりカスタマイズを行い、1 年目は徹底して内定獲得を目標と したカリキュラムとした。 準備・振り返りを含め3日間(3回)の日程で就職内定を取り付けた日本人学生と留 学生のグループディスカッションをおこなった。 44 1)事前準備 対象となる日本人学生の選択 本機関には、地域住民からなる地域サポーターと日本人学生による学生サポー ターが登録されていてアジア人財コースでもいろいろな機会に参加してもらっ ているが、今回は本当に就活を経験し、内定を取り付けた日本人学生を対象とし た。「就職支援室」をはじめ、生協が主催する「就活支援プログラム」や学生サ ポーターを介して学内の学生主催の「就活研究サークル」に働きかけ、日本人内 定者4名(男性)と学生サポーター1名(女性)を選択。 2)1回目 ・ 面接(個人・集団)やディスカッションそれぞれの特徴やマナーについて ・ その中での自己アピールの方法・時間配分 ・ グループディスカッションの進め方 ・ グループディスカッションにおける各役割の注意点 a 司会進行係 b 議事録係 c 時間管理係 d その他のメンバー 3)2回目(当日) 事前:15 分間 ① アジア人財コース5名、日本人学生5名を A・B の2グループに分ける ② 残りのグループは、評価シート(共通カリキュラム P35 2-3使用)に記載 ③ 各グループが決まった時点から、教員は脇に退き、運営は A・B グループそれ ぞれに委ねる ④ A グループ:だれがどの役割をするかの口火は、日本人学生が切る B グループ:留学生の中から口火をきる学生が出る ⑤ 役割に対して自発的に手を上げる * 議事録係は、まとめ方・文体・文法・誤字等のチェックのため板書とする ディスカッション:30 分 ⑥ テーマ A: 「社会人と学生の違い」 B: 「仕事のやりがいとは」 終了後:10 分 ⑦ 終了後、感想・心残りなことなどについて全員がコメント(約1分) 4)3回目 ① 2日目に記入されている「評価シート」をコピーし、配付 ② ビデオ見ながら、評価シートもあわせて、振り返り 自分について、他の学生についてよかった点、課題となった点、どの克服 方法等話し合う ③ 振り返りのポイント 45 ・ 討論参加者として難しかった点 ・ 役割がはたせたかどうか ・ 自己アピールができたか ・ 今後の課題 ・ 評価者としての意見・感想・アドバイス よかった点、悪かった点 (4)成果・ 成果・課題 ① 日本人内定者の意見の出し方、間の取り方、タイミング等がアジア人財コースの 留学生にとって刺激となり、また現実の展開を体験できた ② 自己アピールのために各自の不足しているものについて考える機会となった ③ 自分の意見の信頼性を高めるために文法・発音といった基本的なものも大切な 要素と気がつく ④ 後日、実際の就活で受験先企業のグループディスカッションを体験した学生が、 どう展開されるかが分かっていたので安心して参加できたとのコメントがあっ た 46 事例 13 内定者や 内定者や企業関係者との 企業関係者との懇談 との懇談の 懇談の機会をつくる 機会をつくる (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 その他( ) 2) 授業の種類:単位有り・単位無し・N/A アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 単発・日常(通年) ・N/A 3) 時間数:90 分×2コマ 4) 学生数:12~13 名 5) 国籍:中国・韓国 6) 担当教員:専任日本語講師・非常勤日本語講師・外部委託日本語講師 日本語講師以外( ) 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他( ) (2)概要 1) 「ビジネス日本語」のクラスに内定者を参加させる 2)内定を取得した学生の「ビジネス日本語」授業参加を希望する声を反映させ、また 就活を控えた学生にとっては、内定を既に取得した学生の意見を参考にでき、そし てクラス内の議論を活性化することができる (3)内容の 内容の説明 内定をもらっていても日本語がまだ不十分であったり、日本企業や日本社会についてよ く分からないと感じている学生がいる。大学から提供される通常の日本語クラスには、 「ビ ジネス日本語」クラスがないので、彼らの中には、日本で仕事をするために日本語力をつ けるため、アジア人財の科目である「ビジネス日本語」クラスに参加を希望する学生も多 くいる。一方、アジア人財の学生たちは、就職活動に関する知識も経験もなく、来日した ばかりの学生は日本社会についてもよく知らない。 そこで、日本企業から内定をもらって半年後に就職する学生を優先し、アジア人財「ビ ジネス日本語」クラスの趣旨や授業内容を説明した上で、授業に参加させた。 47 1)授業内容 ① 日本社会、日本企業、日本の就職事情と BJT「聴読解」 ② ビジネス日本語(会話クラス)と BJT「聴解」 ③ 日本語の「読み書き」と BJT「読解」 1年目は内定学生の希望でクラスの受講者としてすべての授業に出席することとしてい たが、次第に彼らのニーズと合わなくなり参加がなくなったので、2年目は内定をもらっ た留学生、日本人学生に教室に来てもらい、話を聞く機会を設けた。 また、アジア人財コースでは、インターンシップ報告会や成果報告会などが行事として 入っており、その機会に留学生OBや企業関係者と懇談する場を設けた。 (4)成果・ 成果・課題 アジア人財の学生にとって、実際に内定をもらった学生の経験談や彼らの視点からの意 見はとても参考になった。内定をもらっている学生は、自分のインターンシップや就職活 動の過程での様々な疑問や就職後についての不安を持っており、議論が活性化された。 また、BJT の問題に出てくる様々なビジネスシーンについて、お互いに理解を深めると ともに、日本語・日本語でのコミュニケーションについても、理解を深めることができた。 しかし、次第に授業内容が就職活動の具体的な内容や練習になってくると、彼らのニー ズと合わなくなり、参加がなくなった。次年度については、該当する内定をもらった留学 生の参加希望がなかったので、話を聞く機会を作ることにした。BJT の対策授業や日本社 会・日本企業事情の授業などいくつかの授業項目は、内定をもらった留学生にも参加のメ リットがあり、就職活動前の学生も共に学ぶことで刺激を受けることができるので、参加 の仕組みを改善して実施していくことは、意味があると考えられる。 48 第三章 PBL教材 PBL教材 サマリー プロジェクトベース学習教材が、一時期にこのように多く日本語教師の現場に、供 給された例はこれまでにないであろう。各コンソーシアムで独自に教材を作る場合、非 常に実用的なものもあるが、このプロジェクトベースの教材も一定数ある。本報告では 取り上げていないが、ビジネス日本語の部分を外注する事例もある。その場合は、当然 プラクティカルな教材が使われることとなる。 プロジェクトベース教材は、その性格から言って、ひとつのプロジェクトをやり通 すことに意義がある。しかしその一方で、参加者には社会に出て行くにあたって必要と 思われる事柄に関して、一定の知識を身につける必要もある。今回供給されているプロ ジェクトベース教材は、そのようなトピックを含んでいることから、それらの部分をピ ックアップして、組み立て直すという事例もある(参考 第五章 事例 25) 。 このプロジェクトベース教材の使い方そのものについては、それらに関する別途の 報告、あるいは調査が必要であろう。報告では、それらのカスタマイズ、あるいは自作 にかかわるような一部の事例を取り上げるにとどめる。 まず、事例 14「プロジェクトベース授業の一例」は題名の通り、ある自作教材によ る授業組立の例である。また、事例 15「プロジェクトベース教材の簡素化と自作」は 簡素化を中心とした、カリキュラム・サポート・センターから供給された教材のカスタ マイズと、そのコンソーシアムの事情に合わせた新教材作りについて報告されている。 このコンソーシアムの場合、理系の大学院生が中心となっているため、その事情が考慮 されている。 教材は本来、完成、成熟までに時間のかかるものである。この事例では、理系、技 術系と単純に言っても、それぞれの学生の研究は多様であり、志向、ニーズも同様であ ることから、学習者の関心をひき、動機付けを行えるものはどのようなものなのか、単 純に専門から絞ることのむずかしさが報告されている。 プロジェクトベース教材を実行する際、学習者に対する課題や教室内活動が非常に 多いことから、学生への負担が大きく、その割には言語的な適切性、正確さなどに関し て、教師のフィードバックが不足しがちになる。それを、別途人員をおくことで個人指 導を可能にした例が、事例 16「プロジェクトベース授業での個人指導の活用」である。 49 事例 14 プロジェクトベース授業 プロジェクトベース授業の 授業の一例 (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 その他( ) 2) 授業の種類:単位有り・単位無し アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 単発・日常(通年) 3) 時間数:90 分×31 コマ(週3回) 4) 学生数:5名 5) 国籍:中国・台湾 6) 担当教員:専任日本語講師・非常勤日本語講師・外部委託日本語講師 日本語講師以外( ) 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他( 生教材 ) (2)概要 1)アジア人財コース2年目のクラスでの、就職後をイメージした PBL(プロジェ クトベースド ラーニング)の授業 2)テーマを「地域宣伝用ウエブサイトの作り方」とし、学生主体で進める 3)情報収集の一環とし、地域と連携。外部講師による講義も開催する (3)内容の 内容の説明 2年目のクラスで、就職後をイメージして企画立案からプレゼンテーションまでの流 れで PBL を実施。教員は、ファシリテーターとして参加。学生の中でリーダーを決め、 以後はリーダーの元、行われる。 1)調査 ① テーマ決め→「地域宣伝用ウエブサイトの作り方」 ② テーマに関する基礎情報集め - 本来売り込みたい「ウエブサイト」の材料 として地域を選定し、その地域へ観光客を誘致する観光宣伝用に決定 ・ その地域の人口、歴史、地理、交通、産業、観光地、名産品、有名な物(所、 人) 50 ・ 上記の担当を振り分ける。 ③ ②を元に調査内容・方法の決定 ④ そのための知識・情報収集 ・ データ、書籍、インターネット、新聞等 ・ アンケート ・ ヒヤリング ・ 外部講師による授業 旅行会社による「該当地域を含む商品開発及び現状」 1コマ 県職員による「地方財政の仕組みと地域おこしの事例」 1コマ 専門家による「日本の開発途上国援助政策-村起こし等」 1コマ 中小企業による「海外戦略-東アジア進出」 ・ 該当地域の視察 1コマ 1コマ ⑤ 各自の調査内容発表 ④の外部講師の選択は教員が、学生の意図を汲み取り、キャリアコーディネーター・事 務方と連携し行った。県職員はアジア人財地域連絡会メンバーのため事務方より、中小 企業と旅行会社はキャリアコーディネーターより、途上国援助の専門家は教員が交渉を 行った。途上国援助についての専門家は、学外の講師との日程が会わず、最終的に学内 のその分野の教員に依頼し実施した。 また⑤の該当地域視察は、本機関所属の地域サポーターに学生の立てたプランに従い、 現地での適切な視察場所や面談対象者およびその取り付けなど協力を仰いだ。 2)今回の「宣伝用ウエブサイトの作り方」(以下新商品とする)の企画について ブレーンストーミング 3)新商品の紹介をプレゼンテーションで行うことにし、そこまでの準備の流れを決定 4)企画書の作成。各自の担当(重複して担当)を振り分ける ① 新商品のモデルを作成(2名) ② その材料となる「地域の売り」を作成(全員) ③ 新商品のキャッチコピー作成(2名) ④ プレゼンテーションの案内状・チラシ作成・発送・回収(3名) ⑤ プレゼンテーション(全員) 6)プレゼンテーション実施 7)振り返り (4)成果・ 成果・課題 1)成果の例 ・大学の研究発表と新商品のアピール・売り込みということの違いを実感し、プレ 51 ゼンテーションの仕方、そのための手立て等について力不足、学ぶことの多さを知 ることができた。 ・PBL を通して、大学生活では未経験な各作業でいかに知らない、できないかを 自覚することができた。 2)反省点の例 ・ウエブサイトの作り方を新商品としたのに材料となる地域に関しての質問が多く、 何が新商品かをはっきり示せなかった。 ・肝心のサイトはあまり注目されず、予想と大きく違っていた。サイトの内容が不 十分で、技術、内容、デザインなど改良すべきだと気付いた。 以上から次へのステップの大きなモチベーションとなった。 52 事例 15 プロジェクトベース教材 プロジェクトベース教材の 教材の簡素化と 簡素化と自作 (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 ※博士を含む その他( ) 2) 授業の種類:単位有り・単位無し アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 単発・日常(通年) 3) 時間数:N/A 4) 学生数:5~18 名 5) 国籍:中国・ベトナム・マレーシア・インドネシア 他 6) 担当教員:専任日本語講師・非常勤日本語講師・外部委託日本語講師 日本語講師以外( ) 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他(PBL教材他) (2)概要 1)全体のトピックを理系の院生向けとする 2)単に理系ということではなく、日本の社会が見えてくるようなものにする 3)日本語レベルを2級程度に下げ、なおかつ授業回数も 10 回程度で終了するものに する (3)内容の 内容の説明 この事例では、アジア人財資金構想に関わる事業の発足時から、自作教材が計画され ていた。これは対象とする学生が理系の大学院生であることから考えると、いわゆる「ビ ジネス日本語」ではなく、エンジニアとして社会に出ていく学生のための日本語教育が 必要であると考えられたためである。従ってそのような線にそった教材がイメージされ ていた。 しかしカリキュラムサポートセンターからの教材が PBL ベースのものであり、その 目標に社会人基礎力の養成なども含まれているといいうことが明らかになって来た。ま た下記のような理由からも、単なるエンジニアのための、場面集的な教材とすることも 問題があるように考えられた。 53 ・理系と一口に言っても、専門が異なると内容、関心もかなり異る ・仕事の内容、職種によっても要求される状況が異り、単純にこれをやればよいとい うような内容が予測しにくい ・プログラム全体として、日本語教育にどのようなニーズがあるのか、必ずしも明ら かではない まず教材に必要とされるスキル、タスクについての検討を行ったが、制作のための時 間が充分にあり、調査などが可能であればよいが、この作業では完成まで数ヶ月しかな く、それらの調査を望むことができなかった。またプロジェクトベース教材が、カリキ ュラムサポートセンターに採用されたことを考えると、仕事上必要となる個別のスキル に関わる教材を作るよりも、同じ手法で対象とする学生に、より適合したものを作ると いう方針をとることにした。作成グループとしては、必要なスキルを割り出しその教育 を行うことが不要だとは考えていない。しかし実際に必要なビジネスにかかわるスキル を、過不足なく抽出することはかなり難しい問題を含んでいるものと思われる。 1)トピック 工学系の技術系と言っても専門の範囲は広く、個々の学生の研究内容も全くと言って いいほど異っている。同じプレゼンテーションでも、研究室ごと、専門ごとにその規範 的なパターンが異っている。このような中である事柄にあまり強く関わるものを選んで も、学習者の関心を一定期間引き続けることは難しい。 これらを考慮して、次のようなトピックを選んだ A) 携帯電話 B) 知的財産権 C) インターンシップとキャリア D) 自分の研究について説明する 「携帯電話」のトピックは、新しい携帯電話を提案するもので、そのネット上のサー ビスやコンテンツについて、更にハードウエア的なものまで、広い範囲に亘っての提案 を行う。 「知的財産権」は、カリキュラムサポートセンターの教材にもあるが、特に特許の問 題は理系の学生とのかかわりが強い。特許の様々な問題を中心に取り扱うプロジェクト とする。 「インターンシップとキャリア」も同様にカリキュラムサポートセンターの教材にあ る。これらは実際に学生がインターンシップに行くことから、それ以前の段階で基本的 なマナーやインターンシップに行く前に確認すべきことをまとめておく必要がある。更 に日本企業への就職を考えるのであれば、現在の日本企業でのキャリアの考え方の理解 は必須のものと思われる。 54 「自分の研究について」は、理系の学生の弱点と言われる、社会的コミュニケーショ ンのスキルに関わる。これらをいかに、分かりやすく、専門ではない人に説明するかを 考えていく。また、この内容は就職活動の時にも、分かりやすく伝達することが求めら れることになる。 2)内容等 上記の d)は全体で5~7回程度の内容のコンテンツとするが、他は大体 10 回程度の 授業で終わる内容とした。B)とC)はいずれもカリキュラムサポートセンターの教材を 参照し、 I) 全体のコンテンツを理系の学生にむくものを選ぶ II) 全体の量的な条件から、必要な項目にしぼる。それに従って資料の使用もしぼる という方針で行われた。 「知財」はほぼこの2つの基準で作業を行い、 「インターンシ ップとキャリア」は、カリキュラムサポートセンターの教材の2つを合わせて構成しな おし、上記の I)と II)を適用していった。 (4)成果と 成果と課題 実際に学生に使用するという時に、最も使用しやすかったのは「知財」の教材であっ た。これは内容的にも社会的なものを含み、また青色ダイオードの有名な裁判のような、 理系のエンジニアにとっても興味深い内容があるためであった。但し、調査を行う際は、 学生数が5名と少なかったため、学生同士がグループで協力しながら調べるという活動 には結びつかなかった。これは教材の問題ではないが、もっと学生数が多い方がプロジ ェクトとして意味があるものと思われる。 逆に「携帯電話」はなかなかむずかしい。携帯電話という総合的な製品をそれぞれの 立場から提案するという仕組みではあるが、ある学生の専門は全く携帯とは関わらない ものがあり、関わったとしても自分の研究との距離が大きいなど、様々なケースがあっ た。これはどのような「理系的」トピックを選んでも生じてくる問題であると思われる。 単に理系というだけでは個々の関心を引くことはむずかしく、むしろ社会的な問題を含 む、あるいは日本社会の理解につながるできごとなどを利用した方がいいように考えら れる。 「インターンシップとキャリア」は実用的な教材であり、適宜これを参照することが できる。しかしアジア人財のインターンシップは、この事例では科目化され、単位が与 えられる。そちらにはコーディネーターや担当教員がおり、それなりのオリエンテーシ ョンや教育を行っている。従って、この教材がそれらと競合する部分もあり、両方で別々 にこのテーマを取り上げるのは合理的とは言えない。厳密に言えば、日本語教育として このトピックを取り上げるのと、実際のインターンシップを前にして教育するのは同じ 55 ではないが、学生にとっては同じことに感じられるであろう。 「自分の研究の説明」は、短いプロジェクトだが、必須のものだ。それぞれの研究領 域が全く異ることから、互いに話しあっても中々楽しく、グループ内でも話がはずんだ。 結局、以上のことから作成した中では、「知財」と「自分の研究」がより成功の度合 いの高いものとなった。 56 事例 16 プロジェクトベース教育 プロジェクトベース教育の 教育の中での個人指導 での個人指導の 個人指導の活用 (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 ※博士を含む その他( ) 2) 授業の種類:単位有り・単位無し アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 単発・日常(通年) 3) 時間数:N/A 4) 学生数:5~12 名 5) 国籍:中国・マレーシア 6) 担当教員:専任日本語講師・非常勤日本語講師・外部委託日本語講師 日本語講師以外( ) 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他(PBL教材) (2)概要 1)非常勤講師を雇用して学生の個別指導にあてる 2)授業内で次回に向けての課題などが出され、作成後個人指導の教師にメールで指導 を受ける 3)就職活動などの際にも、決まった個人指導の教員に随時日本語の添削などが依頼で きる (3)内容の 内容の説明 プロジェクトベースの日本語教育の場合、かなり頻繁に課題が出される。さまざまな 資料を読み、それらをまとめ、発表する。それぞれには一定のスキルが必要となる。ま た、サマリーを作るなどのスキルは、あらゆる局面に関係する非常に重要なものである と考えられる。 しかしプロジェクトベースの教育の中では、それらのスキルを細かく指導していく時 間があまりとれない。更にそれらのスキルは、日本語のレベルがある程度の高さに達し ていて、なおかつそれぞれの能力レベルが近くても、個人ごとにできること、できない ことの差が大きい。このようなスキルの育成には、個別指導がどうしても必要となる。 57 個々人の強み、弱みを充分に理解して、その都度一貫した、なおかつ有用なアドバイス が行われる必要がある。しかもそのアドバイスのためにはかなりの労力が必要とされる。 労力だけでなく、日本語教育に関して一定の知識と経験が必要となる。 以上のことから、アジア人財のビジネス日本語に関わる学生に、個人指導が行われる 教員を配置した。教員は、大学の留学生センターでの一般の日本語を担当しているもの で、オフィスアワー的に設定した授業時間を中心に、メールでも、添削など様々な個人 指導を行った。 (4)成果・ 成果・課題 学生ごとに利用回数はかなり異なっていたが、意欲的な学生は何本もメールを返し、 提出物などの完成度を上げていた。このようなことを何回も行うことで、レポートをま とめるなどについて、一定の進歩が見られた。同じ教員が、1〜2名の同じ学生を担当 しつづけるため、それぞれのくせや問題点も充分に理解しており、アドバイスはより効 果的なものとなった。 また、学生はこれらのアドバイザーに対して、就職活動に関するものなどの書き方の アドバイスを求めた。この場合、注意しなければならないのは、就職活動の場合、必ず しも日本語の教員のアドバイスが効果的なものであるか、就職活動というコンテキスト の中で正しいかについては分からないこともあるということである。これらについては、 常時キャリアコーディネーターなどと連絡を取り、それらの知識を借りるような体制が 必要であろう。しかしこの事例の中では、そこまでの連携は行われていなかった。 しかしこのような体制をとったおかげで、授業中には提出物の修正などに多くの時間 を使う必要がなくなり、合理的な運営が可能となったと思われる。 その一方、人的、経済的なリソースが必要となり、その確保が必要である。また、先 の述べた就活の中での、適切なアドバイスなど、配慮すべき点も多い。しかし学生から すれば、常にすぐにメールでアドバイスを求めることのできる日本語教師がいることは、 「ありがたい」ことであったようだ。 58 第四章 日本語能力差への 日本語能力差への対応 への対応 サマリー 日本語能力の問題は大きく2つに分かれる。1つは、ビジネス日本語、あるいは就 職活動、インターンシップに参加するために必要な一定レベルまで行っていない学生を どうするか、という問題である。もう一つは同じコース内、教室内の、学習者間の日本 語レベルの差異の問題である。ほとんどのビジネス日本語担当者は、学習者の日本語習 得レベルが、少なくとも中級に達していないと、ビジネス日本語のクラスには入れられ ないと考えている。しかしこのレベルは高いに越したことはなく、多くのコンソーシア ムでは、日本語のレベルアップについて、初級、あるいは中級初頭で入った学生にも、 一年後には日本語能力試験二級合格という目標を与える。これは専門教育を受けながら めざすと考えた場合、それなりにきびしい目標であるが、多くの留学生がこの目標を達 成している。 これらの目標を達成するためには、まず第一に日本語の授業時間を増やすことが考 えられる。事例 17「学生の専門が同じ場合、言語習得を促進するための時間確保」は、 複数のコンソーシアムの調査からの報告である。これらのコンソーシアムではプログラ ム構成から、参加する学生の専門が非常に狭い範囲にかたまっている。そのため、学生 が必ず単位を取らなければならない専門科目、必須科目がほぼ共通していた。また、実 験などの制約もあまりなく、必須科目等の時間以外の時間に一定数の日本語学習の時間 を作ることが容易であった。 特に日本語能力の低い学生がいる場合には、それを個別に呼んで、日本語能力向上 のための個人指導を行なう事例もいくつかあった。また、この事例ではとりあげていな いが、単位が与えられない日本語クラス、いわゆる補講などを利用して日本語能力を上 げることを基礎としながら、アジア人財の学生がスケジュールの関係などで、十分に日 本語学習時間、授業時間がとれない場合には、「補講の補講」のようなかたちで、アジ ア人財関係の教員がその学生のための授業を行うことにしている事例もある。どのコン ソーシアムでも利用可能なあらゆるリソースを使って日本語能力の向上が図られている。 当然、クラス内のレベル差などについては、カリキュラム、授業計画などによって、 対応することになる。その事例として、事例 18「ビジネス日本語クラスにおけるレベ ル差への対応1」 、事例 19「ビジネス日本語クラスにおけるレベル差への対応2」 。 また特定のスキルのレベルアップの事例がある。ビジュアル教材を使ったもので、 その後のビジネス日本語教育の進行を考慮して、聴解能力のレベルアップを図っている。 事例 20「レベル対応のためのビジュアル教材」がそれである。 事例 21「TAを取り込んだダイバーシティ・トレーニングモデル」は、多様な側面 を持っているが、日本人TAばかりでなく、経験のある先輩留学生等を幅広く授業の中 に取り込み、レベル差にも対応している例である。 59 事例 17 学生の 学生の専門が 専門が同じ場合、 場合、言語習得を 言語習得を促進するための 促進するための時間確保 するための時間確保 (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 その他( ) 2) 授業の種類: N/A 3) 時間数:N/A 4) 学生数:N/A 5) 国籍:中国が最多の混在 6) 担当教員:専任日本語講師・非常勤日本語講師・外部委託日本語講師 日本語講師以外( ) 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他( N/A ) (2)概要 1)必修の専門科目以外の空き時間に、かなり多くの日本語の授業を行った 2)特に遅れている学生には、個別に指導を行った 3)当該プログラムでは学生の専攻が限定されているために、空いている時間帯がほぼ 同じようなスケジュールとなっており、そこを利用した (3)内容の 内容の説明 このような事例は、上記3)のように学生の専門が限られおり、時間割の中のどこが 彼らの空き時間であるかが明確な場合行われる。このような条件が整わないとむずかし くなるが、一方それが実現すればかなりの効果が得られている。例えば、入学当初、初 級程度の実力しかなかった学生が、ぐんぐんと力を伸ばし、多くの学生が1年目で2級、 更に翌年に1級をめざすというような成果が上がっている。その他として、次のような 条件も必要となるように思われる。 1)日本語教員が、専門のスケジュールに合わせてかなりの時間数を教えなければなら ない 2)低い習得レベルであるだけに、レベル差の問題が生じ、簡単にクラスを合同できず、 ある数のクラス数が必要となる(この事例では2~3レベル) 60 3)一定の人的リソースが必要となる。 4)聴取した例の中では、非常に日本語能力が低い(ほぼゼロに近い)学生が1、2名 含まれており、彼らはクラスに入るものの、日本語教員が個別に個人指導して追い つかせることになる。 5)学生のモチベーションが高くなければならない 3)の補足とし、この例ではアジア人財専従あるいはそれに近い日本語教員が配置さ れており、それが学生のスケジュールに合わせて専門科目の時間割に隙間に授業を行っ ていた。他の授業スケジュールを多く抱える教員だけでは対処がむずかしいように思わ れた。また、4)の個人指導は簡単に思われがちだが、日本語教育のきちんとした経験 のある教員が対処すべきだ。特に最初の段階で問題のある教育が行われると、後で修正 しにくい場合もあるので、注意が必要だ。 (4)成果・ 成果・課題 以上のように、この対処の方法にはいくつかの条件が必要であり、なおかつ日本語教 員が、理想的にはこのプログラム専従で対処できる状態でなければならない。また、日 本語教員の個人的な努力もかなり要求されることになる。また、これを継続して行くた めには、学生の高いモチベーションが必要であることは明らかだ。専門以外にかなりの 時間を日本語学習にさかなければならず、掲げられた目標も高い。 モチベーションは、学生が日本での就職を希望するという条件だけでなく、対応する 日本語教員の熱意、学生との良好な関係も必要である。それらが学生のモチベーション を維持し、高める原因となっているように思われる。 61 事例 18 ビジネス日本語 ビジネス日本語クラス 日本語クラスにおける クラスにおけるレベル におけるレベル差 レベル差への対応 への対応1 対応1 (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 2) 授業の種類:単位有り・単位無し アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 3) 時間数:90 分×30 コマ(組込部分の授業) 4) 学生数:10~15 名 5) 国籍:中国・韓国 6) 担当教員:大学日本語講師・非常勤講師・外部委託講師・日本語講師以外 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他( ) (2)概要 1)到達目標と学習スケジュールを明確に提示することで、レベルの異なる学生のモチ ベーションを維持する 2)定型文例から徐々に応用的な内容に進むことで、学習者の負担を軽減する 3)グループワークを多用し、レベル差のある学生どうしが共同でタスクを進められる ように工夫する 4)グループワーク学習のひとつとして、レベル差も含めた学生の差違を生かすことを 目標にする 5)宿題は、授業での課題を、正しい表現と書式で完成させ、メールで送ることを基本 スタイルとする。講師はそれを添削し、次週に返却することで、全員がほぼ完璧に 課題を達成することができる (3)内容の 内容の説明 1)方針 ビジネス日本語クラスにおいては、講座修了後の学生の到達目標(企業で働ける レベル)と、その目標に到達しなければならない時期があらかじめ定まっている。 従って、ビジネス日本語クラスの編成は、学生の日本語レベルというより、在学期 間を考えた上で(適正時期か否かで)行う必要がある。特に、就職内定前のクラス は、研修時期を就職活動時期に合わせなければならないため、その結果、適正時期 62 が同じで、日本語レベルの異なる学生が、クラスに混在することになる。ただし、 ビジネス日本語クラスの場合、学生自身の目標(志望企業)が明確であり、モチベ ーションが非常に高いという利点があるため、その利点を生かせば、日本語レベル の差はあまり問題にならない授業展開が可能である。以下、学生の日本語レベルの 差に対応するためのクラス運営の工夫を3点紹介する。 ①クラス運営の工夫①定型文例から始まる網の目式シラバス <学習項目の構成> 前半(90 分)会話がメイン 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 自己紹介(定型) メールの書き方①(定型) あいさつメール 電話応対(定型) メールの書き方②(定型) 面接予約 お詫びメール、添付メール 面接①(定型) エントリーシート① 面接のマナー 自己PR 面接② エントリーシート② 自己PR、研究内容を話す 面接③ 個人面接実践練習 志望動機 グループディスカッション 履歴書の書き方 ケーススタディ① 送付状の書き方 ブレーンストーミング練習 ケーススタディ② 封筒の書き方 メールの書き方③ 実践練習 辞退のメール ケーススタディ③ 手紙の書き方 プレゼンテーション 礼状 就職活動の流れ(タスクカード) 職種について(タスクカード) グループディスカッション 12~15 研究内容 エントリーシート③ グループディスカッション 11 後半(90 分)文書作成がメイン 業界、業種について(タスクカード) グループディスカッション 社会保険、税金について プレゼンテーション(テーマ:研究内容発表) ・講座の最初の5回は、「自己紹介」「メールの書き方」「電話応対」など、定型のビ ジネススタイルがある内容を学習する。定型スタイルの学習においては、日本語レ 63 ベルの差はさほど問題にならない。 ・定型スタイルを学んだ後、少しずつ学習内容を発展させる。シラバスの構成におい ては、既に学習した項目が後の授業で役立つよう学習項目を組み立てる(上記の表 および矢印参照)。学生は、過去の学習内容を十分復習することで、後の発展的な 学習内容に対応できる。 ②グループワークの工夫 ・グループワークの多用 ビジネス日本語クラスでは、グループディスカション、ケーススタディ、その他、 合計7回のグループワークを行う。グループは、1グループ4~6名の複数グルー プである。グループワークを多用することで、学生の発言回数を増やすとともに、 「チームで仕事をするときは、日本語レベルにかかわらず参加が義務」という考え 方に慣れる。 ・チームワークの訓練 グループワークを行う際は、ディスカッションの進め方のスキルに加え、チーム ワークを意識する訓練を行う。チームワークの訓練においては、以下の点を評価の ポイントとして挙げることで、学生は、日本語レベル、国籍、考え方の異なるメン バー全員がディスカッションに参加する方法を工夫するようになる。また、練習回 数を重ねると、メンバーは、自分の役割(リーダー、書記、分析、調整、まとめ、 など)を意識するようになり、自信をもって発言し、また他のメンバーの役割、発 言を尊重するようになる。 <評価ポイント> -チームに貢献すること -役割分担をすること -自分の得意な役割をアピールすること -他の人の発言時間に配慮すること -時間内に、協力して課題を終わらせること ・ディスカッションのテーマ設定 ディスカッション練習のテーマには、学生にとって身近で、どの学生も発言でき るものを選ぶ。 例)英才教育に賛成か反対か、グループで意見をまとめなさい 大学の学生食堂のカレーの売上げを伸ばす方法を考えなさい ・フィードバック グループワークの後は、以下のフィードバックを行う。フィードバックを行うこと で、学生はディスカッションに必要な技能をトータルに理解する。 -学生が「うまくいかなかった」と感じた部分についてクラスでディスカッション 64 を行う。また、問題点の解決策を考え、次回のグループワークの課題とする。 -学生が「うまくいった」「よかった」と感じた部分について、クラスでディスカ ッションを行い、講師から具体的なコメントを加える。 ③宿題の内容と提出方法 ・宿題は、授業で表現、書式、内容のポイントについて扱ったものを完成させることを 主な課題とする。(以下の表を参照)書き方を授業内で指定してあるため、学生の日 本語レベルにかかわらず、一定のレベルで宿題を完成させることができる。 ・宿題は、基本的にメール送信で提出するため、学生は宿題提出のために、最低 10 回 はメールを送信する。講師は、学生のメールの文面、宿題の両方を添削して次回の授 業の際に返却する。10 回のメール送信を経て、全ての学生が、社会人として適切な メールを作成できるようになる。 ・添削箇所に更に説明が必要な学生は、メールで個別に質問することができる。 <授業内容と宿題の対応> 文書作成クラスの内容 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11~15 宿題 メールの書き方①(定型) あいさつメール あいさつメール (メール送信) メールの書き方②(定型) 授業を欠席する旨のメール お詫びメール、添付メール エントリーシート① (メール送信) 400 字の自己PR 自己PR (メール送信) エントリーシート② 400 字の研究内容、A4用紙1枚の研究内容 研究内容 (メール送信) エントリーシート③ 400 字の志望動機 志望動機 (メール送信) 手書きの履歴書 履歴書の書き方 (持参) 送付状の書き方 送付状 封筒の書き方 (メール送信) メールの書き方③ 面接辞退のメール 辞退のメール (メール送信) 手紙の書き方 礼状 礼状 (メール送信) パワーポイントの作成方法 研究内容発表用のパワーポイント (プレゼンテーション) (メール送信) 65 事例 19 ビジネス日本語 ビジネス日本語クラス 日本語クラスにおける クラスにおけるレベル におけるレベル差 レベル差への対応 への対応2 対応2 (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 その他( ) 2) 授業の種類:単位有り・単位無し アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 単発・日常(通年) 3) 時間数:90 分×2コマ(4月~翌年2月末までの週2回) 4) 学生数:9名 5) 国籍:中国・韓国・マレーシア 6) 担当教員:専任日本語講師・非常勤日本語講師・外部委託日本語講師 日本語講師以外( ) 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他(BJT 問題集他) (2)概要 1)BJT 受験時の困難を少しでも軽減するため、BJT 問題集を教材として使用した 2)BJT 試験の語彙や表現を使ったロールプレーを実施した 3)答えを導き出すための推測力をつけるために、問題を解いた後のフィードバック に時間をかけた (3)内容の 内容の説明 *ここでは、日本語のレベル差、特にビジネス日本語を学習するときに問題となったレベル差に ついて述べたい。このレベル差は、日本語能力そのものはもちろん、漢字圏、非漢字圏の相違も 含まれる。さらには日本留学前の社会人経験の有無も含めている。 アジア人財では BJT(ビジネス日本語能力テスト)受験が義務付けられており、さ らには結果として J1530 点以上取得が望ましいとされた。 しかし、 採択された中には、 日本語学習歴ゼロという学生がおり、しかもその学生が非漢字圏であったことで、受験 は困難を極めた。聴解問題はある程度の練習でカバーできるが、読解問題については非 66 漢字圏の学生には「お手上げ状態」だったからだ。また、学生は自国では非常に優秀な 成績を修めて国費留学生となった自負もあり、受験が義務であるため「受験するだけで も良い」と説明しても、それを「良し」とすることができなかった。そこで学生のモチ ベーションを上げ、さらに結果としてある程度の点数が出るには何をすれば良いのかを 模索することとなった。諸々の事情もあり、クラスは9名全員の合同クラスと 4 名と 5 名分かれて実施する2通りのクラスを開講した。 1)授業の進め方 ①ビジネス場面と語彙:BJT 用問題集使用 日本語レベルがゼロ初級であっても、幸いなことに社会人経験があったので、これを 授業に活かすことが必要だと考えた。そこでその日に授業で扱うビジネス語彙や表現を 導入する際には、その語彙を使う場面をクラス全員が理解できるよう、媒介語を使って 提示した。さらには語彙や表現を使ったロールプレーを行った。実際の場面をイメージ することで言い回しの難しい語彙や表現の定着を図った。職種によって表現などは異な るが、使用頻度の高いものについては暗記を義務付けた。覚えて欲しい語彙や表現は 次の2通りの方法で定着を試みた。 まず、語彙や表現をそのまま小テストで確認する方法である。これは特にビジネス文 書の挨拶など、そのままの形で覚えて欲しいときに用いた。一方、助詞や接続詞に着目 し、その部分をテスト形式にしてしまう方法も用いた。こちらは主に商談などに使う表 現やビジネス場面での使用頻度の高い言い回しを覚えて欲しいときに用いた方法であ る。助詞や接続詞の使われ方を理解することで表現そのものの理解の助けとなると考え たからである。 ②ビジネス文書と語彙:BJT 用問題集使用 BJT の試験にはビジネス文書が多く出題されている。しかし、これらに使用されて いる語彙や表現は非漢字圏の学習者にとっては、推測も理解も困難を極めるものが多い。 そこでこれを読解教材として授業で毎回使うことにした。毎回目にすることで、学生が ある程度の型を覚え、問題が何を要求しているのかを推測する力をつけることを期待し た。文書によっては、使われる表現がある程度決まっており、これを覚えることで出題 の意図を理解し、消去法によって解答を導き出す方法を身につけることができる。これ によって一定の理解が進んだ。 (4)成果・ 成果・課題 非漢字圏の学習者のために、BJT 問題集のビジネス文書の部分にルビをつけ、さら には覚えて欲しい語彙、表現などを毎回解説し、できるだけ実際の場面が想像できるよ うにロールプレーなどを行い、さらには文書を読解教材として使うなどの工夫をした結 果、非漢字圏の学習者も少しずつではあるが、ビジネス場面での使用頻度の高い語彙や 67 表現にも慣れ、ある程度の推測ができるようになった。また、同じ表現でも、そのまま 覚えるあるいは、助詞や接続詞のテストとして出題するなどの方法を繰り返し行うこと で、出題に新しい表現があっても慌てなくなった。 上記の方法は、社会人経験があった学生は自国での同様の場面を想像しながら、そこ に日本語を当てはめていく作業となったが、社会人経験のない学生にとっては場面の想 像から始めなければならず、かなり大変な作業となった。しかし、敢えてレベルを分け ず実施した授業では、学生にはお互いに足りない部分を補い合う姿勢が、教える側には 「工夫」を生み出す熱意がそれぞれ認められ、一定の効果を挙げたと考えている。 68 事例 20 レベル対応 レベル対応のための 対応のためのビジュアル のためのビジュアル教材 ビジュアル教材 (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 その他( ) 2) 授業の種類:単位有り・単位無し アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 単発・日常(通年) 3) 時間数:90 分×2コマ(4月~翌年2月末までの週2回) 4) 学生数:7名 5) 国籍:中国・香港・韓国・マレーシア 他 6) 担当教員:専任日本語講師・非常勤日本語講師・外部委託日本語講師 日本語講師以外( ) 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他( 生教材 ) (2)概要 1)漢字圏と非漢字圏が混ざっており、ビジネス日本語を開始した当初の日本語レベル に差があった 2)専門の講義は7月までは英語使用可であったが、それ以降は日本語のみになること が決まっていたため、できるだけ早く、日本人のナチュラルスピードの話しかたに慣 れる必要があった 3)聴解力強化のため、また非漢字圏の学生が混在していることを考慮し、理解の際に 文字への依存度が低いビジュアル教材を使用し、レベル差を埋める方法の一部とした 4)文法中心のレベル別クラスを週に一度、全員向けのビジュアル教材使用のクラスを 週に一度行った (3)内容の 内容の説明 週2回のビジネス日本語のうち、1回はレベル別クラスとし、文法を中心に日本語基 礎力の底上げを図った。比較的レベルの高い学生のクラスでは市販教材を中心に初級後 半から中級の文法、語彙、表現を使った授業を行い、ゼロ初級のクラスでは、入門から 初級前半の文法、語彙と平行して、文字学習も取り入れた。 69 週2回のうち、後の1回でビジュアル教材を使用した聴解強化の授業を行った。非漢 字圏の学生がいることを考え、文字から入る情報をできるだけ少なくし、音ならびに映 像からの情報で理解できる内容の教材を選んで使用した。教材を選ぶときのポイントと して、①視覚からの情報が明確であること②見たものを順序だてて説明できるものであ ること③時間が3分以内であることを基本とした。さらに学生の専攻に関連のあるトピ ックが扱われている内容のものも準備した。素材は、段階的に易から難に向かっていけ るものを吟味して選択した。 1)教材化 ①素材を選び時間をはかる。 ②レベル別語彙表を作成する。 ③レベル別タスクシートを作成する。 2)授業の流れ ①語彙を導入する。 ②表現を導入し使い方を確認する。 ③タスクを説明する。 ④視聴する。 (理解度によって回数は異なる) ⑤タスクの答え合わせをする。 ⑥まとめを書く。 ⑦書いたものを発表する。 (音読の練習を兼ねる) レベル差を考慮し、語彙表ならびにタスクシートはレベル別に作成し、学生が選べる ようにした。まとめを書くときには、それぞれの学生のレベルで産出されたもので良い こととし、書いたものは授業最後に必ず発表させた。 (4)成果・ 成果・課題 学生に好評だった教材は、説明するときに原因と結果が明白なもの、時系列に説明で きるもの、比較対照しながら説明できるものなどであった。また当初は非漢字圏の学生 向けに英訳の語彙表も準備していたが、学生は3分の1を過ぎる頃から日本語だけのも のでチャレンジするようになった。また最後に書くまとめについても、当初ゼロ初級の 学生は、理解できたことを英文で表現していたが、こちらも回を重ねるごとに日本語が 増えた。語彙表の英訳が必要ではなくなったのとほぼ同時期に日本語だけで文を書くよ うになった。書いたものを授業最後に発表することの効果として①音読することで発音、 アクセントに注意が向くようになった②学生同士がお互いのものを聞くことで、学び合 う姿勢ができた③教師が教材の適・不適を確認することができたことなどが挙げられる。 レベル別のクラスを週2回開講することが難しかったという物理的な条件があった ため、クラスでビジュアル教材をメインに据えた。これは短期間に聴解力をアップさせ 70 る一つの方法としてビジュアル教材を使う授業を長く実施してきたという経験を活か したものである。使用した教材は、ほとんどが3分以内という短時間のものであるが、 易から難へ、単から複へと段階を踏んで進めていった結果、1年後には全員、飛躍的に 聴解力がつき、それが推測力アップにもつながった。さらには学習態度が非常に意欲的 になった。この理由として、ビジュアル教材は①聴いた内容がすべてわからなくても見 てわかることがある②見た内容を何とか説明したいために必要なことばを覚えるなど が考えられる。見た内容が全部理解できなくても、とりあえず与えられたものは可能な 限り自力で理解しようとする姿勢につながったことも大きな効果である。素材選びには 時間はかかるが、ビジュアル教材はレベル差のあるクラスに効果的であると考えている。 71 事例 21 TAを TAを取り込んだダイバーシティ んだダイバーシティ・ ダイバーシティ・トレーニングモデル (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 その他( 一部文系を含む ) 2) 授業の種類:単位有り・単位無し N/A アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 単発・日常(通年) 3) 時間数:90 分×1コマ 4) 学生数:9名(うち TA4名) 5) 国籍:中国・韓国・ベトナム他 6) 担当教員:専任日本語講師・非常勤日本語講師・外部委託日本語講師 日本語講師以外( ) 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・ その他(新聞、雑誌、書籍、冊子、ウエブサイト) (2)概要 1) 「混在」クラスを「ダイバーシティ(多様性) 」ととらえ、ディスカッションやプロ ジェクト遂行に積極的に生かした 2)日本人等TAを多様性トレーニングのメンバーの一員として位置づけ、取り込んだ (3)内容の 内容の説明 1)混在から多様性へ コンソーシアムの方針等により、専門、国籍、日本語習熟度、来日・入学・卒業時期、 就活必要性の有無、可能な授業出席回数等が混在するクラスである。性別、年齢はもと よりこれら所与の条件は変えられず、クラス運営が困難な状況で、当初教師だけではな く学生たちもクラスでの学習効果に不安や不満を持っていた。 試行錯誤の末、この混在を、TAも共に学ぶ学習コミュニティの「ダイバーシティ」 ととらえたところ、本当のコミュニケーションをしている実感が生まれ、前向きな学習 態度になってきた。以下にクラス内外で実践したアプローチを示す。 ➀コース初回授業でのオリエンテーション 属性の異なる集団で仕事をする可能性は現実社会では十分ありうることを説明し、 72 「この状況でどのようにお互いに納得しながら創造的・効率的に活動できるかを真剣に 考え、自律的に学ぶことが課題である」と要求した。学生にとって、コース初めのこの 時点では雲をつかむような話になり、自由参加の学生の中には不参加を決めた者もいた。 ②TAの参加 日本人、日本育ちの外国人学生、自由参加者としてビジネス日本語クラスを修了した 留学生など多彩な人材をTAとして参加させ、多様性の調整弁(後述)とした。反面、 このようなTAの参加の仕方は、敢えて多様性の幅を広げてしまった結果にもなった。 ③宿題の管理や個別学習のサポート 市販の日本語教材(日本語能力試験 2 級レベル)を予算の許す限り用意して希望者に 自習用に配布した。 教室では口頭発表やディスカッション、大意をつかむ読みが中心 となるので、文法練習や作文(エントリーシート)、漢字、語彙、精読読解などは宿題 となった。宿題の管理はプログラム専従ではない講師にとって負担でもあったが、TA や事務スタッフの支援を得た。意識の低い学生や研究で忙しい学生の中には、教材だけ 受け取って全く自習をしていない者もいた。 2)TAの活用 TAを授業に参加させるにあたり、大学教育における日本人学生と留学生の共修スキ ーム(多文化クラス)と、主に北米系企業におけるダイバーシティ・マネジメントを意 識した。ただし「留学生のための留学生に対する日本語の授業である」というラインは 常に守るようにした。その結果、TAには「参加者として意味内容へフォーカスしたコ ミュニケーションを行なうこと」と「日本語に習熟していない学生の言語的成長を助け ること」の両方を要求することになった。 このような、言葉を教える「サポートモード」と活動への「参加モード」の切り替え のタイミングは、主に教師が指示した。また、留学生TAを含めTAは常に複数いたの で、あるTAはサポート、あるTAは参加者という使い方もできた。以下はTAに実際 に行なってもらった「仕事」である。 ①自分の意見等の表明と相手の理解の確認 まとまった発表であれ1対1のやりとりやディスカッションであれ、日本語を母語と しない相手に伝えたいことがきちんと伝わるように言い換えやビジュアルを使ったり すると共に、失礼にならない方法で相手が理解しているかどうかを常に確かめるように 努力してもらった。これはなかなか難しく、トレーニングが必要であると感じた。 ②留学生とのペアワーク 日本語レベルが低い学生とペアになった時は、サポートモードでじっくり取り組んで もらった。また教師がレベルの低い学生の手当てをしている時間にレベルの高い学生が 飽きないように、レベルの高い学生とペアになって参加者モードで課題を発展させたり 次の課題に進んだりしてもらった。 73 ③TA同士のペアワーク 活動のモデルを示してもらったが、必ずしもいいモデルとならないこともあり、おも しろかった。 ④グループワーク ・グループ構成とTA それぞれのグループの中にTA、日本語高レベル学生、低レベル学生を組み合わせ たり、レベル別グループ+TAグループにしたりした。 ・グループの中のTAの役割 サポートモードか参加モードかを各グループ任せたり、教師が指示したりした。 ・グループ毎の発表 ディスカッションの結果などの口頭発表は、基本的にTAではなく学生にしてもら うようにした。TAにはメンバーとして発表を支援したり、内容を取り違えている学 生がいた場合には修正してもらったりした。 ⑤プレゼンテーション ・プレゼンターとして 学生と同じようにPPTを作って個人課題のプレゼンテーションをしてもらった。 スライドのまとめ方など学生たちの参考になる部分も多かった。学生からのコメント や質問の受け答えの表現形式なども学生たちの参考になった。 ・コメンテーターとして 学生の発表に、他の参加者と同じようにコメントをしてもらった。日本語レベルの 低い学生のプレゼンテーションには何がいいたいのか分からない場面が多々あった。 TAが内容面から投げかけた質問に対して、内容の伝達を阻害している言語面の間違 いを教師が指摘し、クラス全体で修正案を討論することもあった。 ⑥教師の発問に答える ・応答の優先順位 クラスに向けて教師が発問した場合、TAにはまず学生が答えるのを一呼吸待って もらったが、待つまでもなく学生の反応の方が早い場合もあった。 ・TAの応答 学生から答えが出ない場合はTAを指名し、TAの応答の言語フォームをサンプル として提示した。TA応答の内容は、学生と共に批判的に吟味した。 ⑦読み物の読み合わせ クラス全体やグループの中での読み合わせの時、漢字の読みや音読の手本となっても らった。学生が理解していない表現や語彙は、教師が説明する前にまずTAにやさしい 言葉や例を用いて言い換えをしてもらい、TA・学生双方向のやりとりを重視した。 ⑧キーワードや表現・語彙の記録と学生へのメール ・板書 74 クラス活動中に出てきたキーワードや覚えるべき語彙・漢字をその場で板書しても らった。TAも漢字の間違いをするので、学生が調べて伝える場面もあった。 ・PCに打ち込んでプロジェクターで表示 その場で語彙などを打ち込んで提示し、授業終了時に復習した。板書より見やすく、 漢字語彙はひらがな表示も楽である。その場でプリントアウトして学生に配る他、希 望者にはやはりその場で添付ファイルとしてメールで送ってもらった。常時インター ネットに接続できるPC環境はありがたい。 ⑨個人作業(シートの書き込み等)支援 困難を感じている学生にTAを専従で貼り付けて、黒子役をしてもらった。 ⑩その他 機材の準備と片付け、教材のコピーと配布など通常の業務も行なってもらった。教職 員に対するTAの気遣いや、進んで仕事をする態度を、学生は学んだようである。 3)テーマと教材 本事例では、待遇表現の教科書、ビジネスマナーの映像教材、日本企業・経済に関す る概論・総論的な新聞・雑誌記事等(以上春学期)、IT業界に関する読み物とオリジ ナルEラーニングコンテンツ、地域経済や今年の就職活動動向に関する新聞・雑誌記事、 就職活動対策の書籍・冊子等(以上秋学期)を使用した。外部ゲストも招待した。 (4)成果・ 成果・課題 1)成果 ①経済、ビジネス、就活スキル等、どんなテーマでどんな教材を使っても、TAを活 用してこのような授業が組み立てられると思われる。 ②日本人等TAも共に学び成長することができるモデルであり、教育の場としての大 学の授業にふさわしいと思われる。 ③学生・教師両方の立場から進言するTAの客観的授業評価は授業改善に役立つ。 2)課題 ①多様性をコントロールするには労力・時間等のコストがかかる。例えば内容中心の 活動の流れの中でも必要が生じれば中断して言語の手当てをする。そうすることが 内容(成果の品質)軽視ではないことを、学生とTAに理解してもらうことに工夫 がいる。 ②学生の属性とTAの個性をできるだけ把握しておく必要がある。その時々の参加者 や活動の内容に応じて、その場でTAに役割を振り、TAを自然に組み込んだペア やグループを作ることは難しい。 ③事前の予測が立てにくく、場当たり的な印象を与えがちである。 75 第五章 授業運営上の 授業運営上の諸対応 サマリー これまでに取り上げた多くの事例も、現実的には運営上の対応も必要となることが 多い。ここで取り上げるのは、第一章~第四章のカテゴリーに入れにくい事例である。 同じ大学でもキャンパスが離れていることがよくあり、また高度実践では異なった 大学の学生が参加することになる。中々同じ場所に学生を集めることができない場合も ある。 事例 22「はなれたキャンパスを遠隔授業でつなぐ」は遠隔技術で対応しようとした ものである。ネットワークを利用した遠隔授業の場合、技術的に音声と映像が送れると いうだけでは不十分ではあるが、既にさまざまな試みがあるようだ。また、ネット上に 展開できるテレビ電話などを使って、海外の候補者の日本語能力を確認すること等、事 前の準備を行う例もあるようだ。 特に高度実践のプログラムでは、異なった大学の学生が集まって土日などに授業を 行っていることが多く、その学生達の間に強いつながりが生まれている、という現象が あるようだ。高度専門の方でも、大学内で通常は話す機会のない学生同士が仲良くなり、 ネットワークが生まれている。事例 23「合宿による学生間交流」は、本来は、就職が 内定したが、まだ日本語力が十分とは言えず、その不足を補うための合宿であった。し かしここでも学生同士の交流が始まり、よい結果となっている。社会人になってからも、 この人的ネットワークは有用であろう。この学生間のネットワークの広がりは、今後重 要な点として考えるべきことではないだろうか。 プロジェクトベースの授業の場合、10 人程度、あるいはそれ以上の学生がいて、い くつかのグループ作業が並行して行われるのが好ましい場合がある。しかし、実際には 特に高度専門では、10 名以上の学生が、アジア人財のビジネス日本語で学習する、と いうことはほとんどない。事例 24「ビジネス日本語の単位化と公開による効果」では、 ビジネス日本語を単位化し、他の留学生にも開放したところ、多くの留学生が参加し、 多様な活動が可能となったという事例である。ビジネス日本語を他の留学生に開放する かどうかは、コンソーシアムごとに考え方が異なるであろう。しかし今後の自立化や学 内の国際化などの流れの中で、「ビジネス日本語」のような科目が一般にも提供される ことには、一定の意義があるのではないだろうか。(この例とは逆に大学内にあったビ ジネス日本語関係の科目、あるいは非単位のクラスを、アジア人財のプログラムが利用 する事例もある。その点は付け加えておく。 ) 同じくプロジェクトベースの日本語クラスには、それなりの学習時間が必要である。 しかし理系の修士などでは、通常の授業期間中ではそれに集中することが困難な状況も ある。事例 25「休暇中の集中講座による時間確保」では、休暇中に集中してプロジェ クトベースのビジネス日本語教育を行っている。このようなスケジュールでは、毎日長 76 時間に亘ってビジネス日本語のクラスがあることとなり、一般のプロジェクトベースの スケジュール、カリキュラムでは中々運営がむずかしい部分もあり、かなりのカスタマ イズが行われている。 海外から日本語能力があまり高くない、あるいはゼロの留学生をリクルートすると いう状況がある。当然、来日前の教育が視野に入ってくる。前述の遠隔技術を利用した もの、ネット上の安価な国際電話等を利用する場合など、さまざまに考えられるが、事 例 26「事前教育の例」では、海外の教育機関の協力を仰ぐものである。 E ラーニングの使用も、検討・実行されているが、本報告では、事例 27「ITに特 化した E ラーニング教材の開発と使用」を紹介する。目的をしぼった、この種の教材 の一例である。 77 事例 22 はなれたキャンパス はなれたキャンパスを キャンパスを遠隔授業でつ 遠隔授業でつなぐ でつなぐ (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 その他( ) 2) 授業の種類:単位有り・単位無し アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 単発・日常(通年) 3) 時間数:90 分×2コマ 4) 学生数:11 名 5) 国籍:中国・韓国 6) 担当教員:専任日本語講師・非常勤日本語講師・外部委託日本語講師 日本語講師以外( ) 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他( ) (2)概要 1)2つのはなれた場所にあるキャンパス(A・B)で授業を可能にするため、遠隔装置 を用いた 2)今回は、Aキャンパスに8人、Bキャンパスに3人の学生が在籍し、教師はAキャン パスで授業を行った 3)遠隔授業で使用する資料は事前に配布しておき、追加資料や時事問題関連の新しい記 事などは、学内便やメールでの添付を活用し、学生と連絡体制をとった (3)内容の 内容の説明 2つのはなれた場所にあるキャンパスの学生が同じ授業を受講するために遠隔装置を用 いた授業が行われた。日本語関係の授業科目は「ビジネス日本語A(上級日本事情)」「ビ ジネス日本語B(読み書き) 」 「日本ビジネス研修A(ビジネス会話) 」である。テレビ会議 システムを利用し、両キャンパスの教室風景を画面に映し、ズーム機能で学生一人一人の 様子や黒板、DVD画面をはっきり見せることができる。マイクはそれぞれの教室に1つ しかないので、教師の話、学生の発言、CDやDVDの音声はマイクを移動させて拾う必 要があった。機材的にはどちらのキャンパスからでも授業ができるが、今回教師はAキャ ンパスで授業を行った。 78 専門科目の授業は講義形式であり、 「遠隔」でもあまり問題ないと考えられるが、日本語 の授業は「遠隔」では細かい指導がやりにくいのではないかと教師は危惧していた。しか し、A・Bキャンパスの移動には、片道1時間半以上かかり、実験やゼミなどが多い理工 系大学院生にはかなり負担となることから、日本語の授業も「集合」ではなく「遠隔」で 行われた。 1) 「遠隔」を使うにあたって工夫した点 ①Bキャンパスの学生たちを孤立させないよう、積極的に質問、意見を求めたり、彼 らの発話をできるだけ取り上げるようにする。 ②机の位置や教室の配置に工夫し、画面を通して教室が一つに見えるようにする。 ③リモコン操作でカメラを動かしたりズームにしたりして、緊張感や集中力を維持させ、 また、教室の様子や雰囲気を伝え合うようにする。 ④「遠隔」が不利にならないような授業の内容やクラス活動を選ぶようにする。 ⑤教材については、できるだけ事前に配布しておき、追加資料や時事問題関連の新しい 記事などは、学内便やメールでの添付を活用。また、授業中に書かせたものや宿題も、 学内便やメール添付で送らせる。 但し、教師が滞在しないBキャンパスの学生には、多少不公平感があったようで、次年 度は教師の確保ができなかった1つの授業を除いて、両キャンパスに教師が行き同時並行 で授業が行われた。 (4)成果・ 成果・課題 1) 「遠隔」を使ったメリット、気づき ①画面に自分が映ったり遠隔先にどう見えどう聞こえるかを考えたり相手を配慮したり することで、学生が自分を客観視したり「聞き手」を意識したりしている様子がうか がえた。 ②今後の仕事でも使われるであろう「遠隔」会議などのシミュレーションとして、利点 や難しさを学生も体験できた。 ③授業内容に関して 「読解」 、 「作文」 (エントリーシート指導も含む) 、 ・ 「日本事情」や BJT 対策クラス、 1対1の面談や面接練習、 「発表」や「ペアワーク」などは、配慮は必要だが比較 的問題はない。 ・ 「会話」 「ディスカッション」 「ディベート」などは、担当した教師からやりにくか ったという感想が多かった。 2)問題点、課題 ①教師自身が「遠隔」の機材を使いこなし、 「遠隔」授業に慣れておかねばならなかった 79 のだが、今回は準備の時間が取れず、うまく行かない場面が多々あった。また、マイ クが教室に1つしかないので、複数の発言があった場合それが遠隔先に伝わらなかっ たりして、お互いにストレスが溜まった。機材の充実、機能の向上があれば、解決す る問題も多いと感じた。 ②遠隔先からでは、指名されて発言することはできても、聞き手の反応を感じることや 盛り上がっている議論に参加することは難しい。また、 「行動変容シート」の回答や教 師の実感として、Bキャンパスの学生において「社会人基礎力」に関する「気づき」 が少なかったようである。 「遠隔」でやることを念頭においた授業活動を検討し、 「遠 隔」授業でのルールを作り上げていくことが必要であるし、 「遠隔」という状況で養成 できる「社会人基礎力」もあると思われるので、その状況を積極的に活用することも 考えるべきではないだろうか。 (教師はどうしても「遠隔」に否定的になってしまうた め。 ) ③授業で準備すべきことや課題などの伝達が、遠隔先の学生にうまく伝わらなかったり、 教材や学生からの提出物の受け渡しが、間に合わなかったり時間がかかったりするこ ともあった。教師がいないキャンパスの学生の授業参加意欲に関わってくるので、事 前の説明や教師側の準備を入念に行う必要がある。 ④教師がBキャンパスに行き、そこから「遠隔」授業を行ったことがある。しかし、人 数の少ない側からの「遠隔」はコントロールが難しかったとのこと。また、1期生の 場合は「遠隔」授業の前に何回か「集合」授業があったため、学生同士も教師と学生 もお互いを知ることができたが、2期生ではそれがなかった。一体感や親密度の有無 が、クラスの雰囲気や温度差に影響すると思われる。そのあたりにも配慮が必要だろ う。 「日本語」の授業であるから、学生と教師が向き合って行われるのが望ましいことでは あるが、キャンパスが分散していたり、教師や時間の確保が難しかったりで、今後も「遠 隔」を使って授業をやらざるを得ないことが多いと考えられる。ビジネス場面では「遠隔」 会議などが行われているし、今後のEラーニングの普及などで学生たちも抵抗なく「遠隔」 授業を受け入れるようになるだろう。 「遠隔」のメリットを活かし、デメリットを軽減する ような授業内容・授業形態を模索し、教師側も機器を使いこなしていく努力をする必要が ある。 80 事例 23 合宿による 合宿による学生間交流 による学生間交流 (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 その他( ) 2) 授業の種類:単位有り・単位無し・N/A アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 単発・日常(通年) 3) 時間数:2泊3日(組込部分の授業) 4) 学生数:21 名 5) 国籍:中国・韓国 6) 担当教員:専任日本語講師・非常勤日本語講師・外部委託日本語講師 日本語講師以外( ) 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他( ) (2)概要 1)日本人とのインタラクティブなコミュニケーション、日本企業や日本社会を知る、 学生同士のネットワーク構築などを目的とする合宿(集中講座)を行う 2)1期生、2期生合同で行うことで、学生間での交流を図る 3) 「合宿」前に、ビジネス日本語の授業で関連項目を扱い、授業と実践をつなげる (3)内容の 内容の説明 理工系の大学院生の場合、研究室での実験に多くの時間を要するため、一般の日本人と 接する機会は少ない。研究室内の日本語でのコミュニケーションは問題なくても、それ以 外のコミュニケーションは苦手とする学生が多い。また、日本社会との接触も少ないよう で、マナーや日本の習慣に慣れない者もいる。日本企業への就職を目指しているものの、 学生生活の中では、将来社会人として日本で働くという意識を持ちにくいところがある。 また、学生たちは同じ教室で学んでいても、専門や研究室が違えば、学生同士で親しく なることも少なく、1期生と2期生の間で話をする機会もなかった。 そこで、学生の就職に対する意識を高め、コミュニケーション力向上や学生同士の交流 を深めることを目的として、 「合宿(集中講座) 」が行われた。 2期生に関しては、ビジネス日本語のクラスで「合宿」の前に、以下の内容を授業で行 81 った。 1) 企業見学での質問の仕方 2) 簡単なビジネスマナー 3) インターンシップ研修について 4) 最後の個人発表の原稿のチェック(テーマは事前に提示されていた) また、後期の授業では、 「合宿」で経験したことや気づいたことについて報告させ、理解 を深めるようにした。 今回の合宿は、大学のバスで移動し、民間宿泊施設に宿泊し、学生の個人負担は1万5 千円であった。尚、合宿(集中講座)の内容は下記の通りである。 内容 1) 企業・工場見学(2ヶ所) 2) オリエンテーション・自己紹介 3) 企業講師による講話 テーマ①:日本企業で働くことについて テーマ②:日本のモノづくりについて 4) ケーススタディ(コーディネータ:企業人事担当者)グループ討議など 5) 1期生・2期生の懇談会 6) 留学生OBの体験談 7) 1期生・2期生の個人発表 (4)成果・ 成果・課題 夏休み中のこの時期は、1期生は就職活動を経験し、3分の2の学生が内定をもらって いた。内定をもらっていない学生にとっては、自分の就職活動を見直すチャンスとなり、 内定が決まっている学生には、就職した会社で働き続けていくために何が必要かを考える チャンスになったようだ。2期生はこの合宿後にほとんどの学生がインターンシップ研修 に行くことになっており、秋からは本格的に就職活動の準備に入る。この時期に企業の人 と話すことができ、1期生からインターンシップ研修や就職活動の経験を具体的に聞けて、 参考になったようである。 学生たちは、授業で学んだこと、練習したことを実践することができ、企業の日本人か ら講評をもらったことがいい経験になり、また、同じコースで学んでいる学生たちとの連 帯感を深め、日本社会の習慣やマナーを実際に体験したこともよかったとコメントしてい る。しかし、実験や学会発表などがあり、2泊3日の日程を確保するのが大変だったと言 82 う学生もいた。学生を無理なく参加させるには、日程や内容について周囲の理解を求める などの配慮が必要であると思われる。 ビジネス日本語の教師にとっては、授業と実践がつながり、また、実践での気づきを授 業でフィードバックできた点がよかったと感じている。 83 事例 24 ビジネス日本語 ビジネス日本語の 日本語の単位化と 単位化と公開によ 公開による による効果 (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 ※博士を含む その他( ) 2) 授業の種類:単位有り・単位無し アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 単発・日常(通年) 3) 時間数:90 分×1コマ(週1回) 4) 学生数:15~20 名(うちアジア人財の学生4~6名) 5) 国籍:中国・韓国・マレーシア 6) 担当教員:専任日本語講師・非常勤日本語講師・外部委託日本語講師 日本語講師以外( ) 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他( N/A ) (2)概要 1)一般の大学院科目の一つとして「ビジネス日本語」に該当する授業を提供する 2)就職支援関係の外部講師による講座を、受講者以外にも公開する 3)内容的に就職活動のスケジュール、ニーズなどに合わせたものにする一方で、大学 での教育という点にも配慮する (3)内容の 内容の説明 プロジェクトベースの日本語、あるいはグループ作業がそれなりに必要となる授業を 行う場合、1グループだけではなく複数が必要となることがある。いくつかのトピック を手分けすることも可能であり、またグループ間の比較なども、自らの学習の振り返り などにとって重要な部分である。しかしアジア人財の学生は、コンソーシアムによって も異るが、あまり多くの学生がいないこともある。プロジェクトベースの教材の学習等 では、いくつかあるトピックの調査をグループごとに行い、グループ内で、またグルー プ同士で比較しあったりすることがあった方がよい。しかし当初は5、6名しかおらず、 一つのトピックについては一人で調べるという結果となり、結局は個人作業になってし まった。アジア人財の枠内のみでは、定員もありこれ以上の人数増加は不可能であった。 84 その途中から、学生の要望もあり、外部の講師などを招いた講演、あるいはセミナー なども随時、授業の中に組み込んで行っていたが、内容的に多くの留学生に関わると思 われるもの、特に就職活動の支援に関するものは学内に、日本語能力が高いことを条件 に公開した。その結果、毎回 20 名以上が集まることとなった。これによって学内でも、 留学生に認知されやすくなった。また一般の留学生用の大学院科目としてたてられてい るので、その内容の説明から関心を持つものも増えてきた。その結果、第二年度以降は、 アジア人財以外の学生の受講者も加わりクラスの人数が、いくつかのグループを作るの に充分な数となった。現在では、科目として履修するものが 18 名、うちアジア人財の 学生は4名であった。 (4)成果・ 成果・課題 一般の留学生の受講者が増え、単にグループ作業に効率的なクラスとなっただけでな く、多くの学生と就職に関し互いの情報交換、同じ状況にいる学生と知りあいになれた など、メリットが大きい。 一方、科目であるために、必ずしも目的が同じではない学生が入ることがある、また 日本語能力が他と大きく異る学生が入ることがある等、問題がないわけではない。しか し現状では、これは良好に機能しており、メリットの方が大きい。また、日本での就職 支援に関して、現在不足している部分を、ある程度、この授業が補うという結果になっ ているものと考えられる。 しかしこれらがあくまでも大学での教育の一つとして行われていることについては、 充分な配慮が必要である。これらは何なる職業訓練ではなく、おそらくこれを通して日 本企業、それを囲む、あるいは支える日本社会理解への入り口としても、考えられる必 要がある。外部のビジネスマナー、あるいはキャリア、就職活動に係る知識、経験を持 った教師はの目標は、非常に具体的なものとならざるを得ない。それが必要であること は確かだが、それと平行してどのように日本社会、日本企業社会、あるいは日本という 場所で、一人の大人として暮らしていく、あるいは定着していくという中で必要とされ ることが、これらの授業の中からも見えてくる必要があるように思われる。 85 事例 25 休暇中の 休暇中の集中講座による 集中講座による時間確保 による時間確保 (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 その他( ) 2) 授業の種類:単位有り・単位無し アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 単発・日常(通年) 3) 時間数:N/A 4) 学生数:10 名 5) 国籍:中国 他 6) 担当教員:専任日本語講師・非常勤日本語講師・外部委託日本語講師 日本語講師以外( ) 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他( ) (2)概要 1)従前からの大学内の各週日本語クラスの出席を中心として、これで一般的な日本語 能力の向上の基礎とする 2)春夏の休みに、集中的にプロジェクトベース日本語を行う 3)学期中に充分な日本語学習ができない場合、アジア人財資金専用の補講クラスを用 意する (3)内容の 内容の説明 本事例では日本語能力全体の向上については、様々に行われている予備教育、いわ ゆる補講などの既に行われているリソースを利用し、これを日本語能力向上の柱とする。 しかし学生の専攻が様々であり、どのようにスケジュールを組んでも、全ての学生が充 分な日本語のクラス数を受講できるとは限らない。そのためアジア人財資金の学生には、 学期の学習スケジュールが決まった後、それぞれの空き時間、受講できなかったクラス の内容などを調べ、専用の補講を組織する。これもレベル別、内容別に開講することに なる。 また、プロジェクトベースの日本語を中心としたビジネス日本語の時間は、このよ うな学期中のスケジュールでは、充分に学習することは不可能である。そのため、夏休 86 み4週間、春休み6週間の日程で集中講義形式で行う。合計 240 時間がこれにあてら れる。夏休みの時間が少ないのは、8月にビジネス日本語を学び、9月にインターンシ ップに行くことになっているためである。 プロジェクトベースの教材は、カリキュラムサポートセンターから供給されているも のを用いるが、いくつかの理由から、必須と考える項目をそれぞれの教材から抜き出し、 更にカスタマイズしたものを用いている。項目の抜き出しには、キャリアコーディネー ターなどのアドバイスを活かして、就職支援、また社会人としての必要な知識などを優 先している。 尚、カスタマイズの理由は下記の通りである: 1)このスケジュールでプロジェクト全てをこなすことは不可能なので、必要と思われ る部分を抜き出して、簡略版で授業を行う 2)学生のレベル差があるので、カスタマイズの方法が変わる。上のレベル、中位(中 級の中)は同じ教材だが、中級始めぐらいの、より低いレベルのクラスではより負 担が少なく、ルビなどもふってあるものを用いる 3)毎日の授業となるため、課題なども通常は数日後に提出となるが、この事例では多 くの場合翌日提出となる。そのためあまり課題が多いとこなせなくなる このスケジュールのおかげで、集中してビジネス日本語の学習に入ることができる。 しかし以下のような問題点もある。 A) 休み中に毎日行われるので、場合によっては学生のモチベーションの維持が厳しく なることがある B) 課題がある場合、翌日までにするなどスケジュールが厳しく、学生の負担が多い。 またその課題を事前にチェックする担当教師の負担も大きい。 C)いくつかのプロジェクトを、数日ごとに行っていくことになるので、毎回プレゼン をすることになり、やや形骸化することがありうる。 休み中の連続講義の形式は学生への負担も大きい。特にインターンシップも行われる 時には、学生は休みなく何らかの活動に関与する必要がでてくる。当然、これは学生の モラルを高める効果もあるが、一方で逆にそれを低下させる恐れも含んでいる。従って、 休暇中のプロジェクトベースの日本語については、その目的が非常に明確であり、学生 にもそれが浸透していること、更に実際にそれを学習の中で学生が感じられることが必 要となる。実際に行われている教育が、日本での就職、あるいは個人にとって有益なも のであると感じられる必要がある。また、それなりの負担を行っている学生に対して、 対応する教師の熱意などが感じられることも重要であろう。このような集中型の授業に は上記のような人間的な要素もかかせないものと思われる。 87 (4)成果・ 成果・課題 プロジェクトベース学習1のための時間確保策として、一つのあるべき方法を示し ている。プロジェクトベースの日本語教育が実際に行われる場合、少なくとも学生の日 本語能力は、中級以上に達していなければならない。各現場の実情を見ると、多くの場 合プロジェクトベースの日本語だけでは運営できず、日本語のレベルアップと一組で授 業が行われることが多い。しかし他の事例にもあるように、大学院生の専門が近く、う まく空き時間を利用して日本語の補講が組み込める場合はいいが、専門が多様になれば なるほど、学生の空き時間を統一することは不可能となる。そうなった時、いかにして 日本語能力のレベルアップの時間を確保するのかが大きな問題となる。 この事例も、プロジェクトベースの日本語を、休暇中に特に時間を確保して行うと いうものではある。その意味では学習時間の増加も含めた、プロジェクトベース日本語 のための、運営上の工夫ということになる。しかし休暇中に行うことによって、参加学 生の集中力を高めることが可能で、プロジェクトベース日本語、ビジネス日本語等の学 習効果を上げるとともに、日本語能力の向上も意図されたものである。 88 事例 26 事前教育の 事前教育の例 (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 * 日本語学習経験がほぼゼロに近く、基礎的な日本語力のない学生 2) 授業の種類:単位有り・単位無し アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 * 海外事前日本語教育(入門・初級クラス) 3) 時間数:120 時間程度 4) 学生数:5名程度(但し、案件により異なる) 5) 国籍:タイ・ベトナム 他 6) 担当教員:大学日本語講師・非常勤講師・外部委託講師・日本語講師以外・ 現地教員 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他( ) (2)概要 1)現地の協定大学に依頼してコースを実施 2)すでにそれぞれの大学が持っている日本語コースの中に参加してもらう場合と、ア ジア人財事業のために新たに特別コースを設置する場合がある 3)依頼の際は日本の大学の日本語教育担当教員やアジア人財オフィスの担当が、現地 を実際に訪問し、コース内容や体制整備について具体的な話を行っている (3)内容の 内容の説明 アジア人財事業では、海外から理系の大学院生を直接リクルーティングしてくる事例 が多くある。理系の高い専門性を持った学生の場合、日本語学習の経験がないというの がほとんどである。一方で、アジア人財事業は、日本企業に入って、ある程度即戦力と して働ける高度人材を育成することを目的としている。理系の大学院生が、渡日後に専 門の研究を進めながら日本語学習も行うのは非常に負担が大きい。そこで、その対応策 として、渡航前の海外事前教育が実施されるようになった。 事前教育実施は、現状では二つの方法で行われている。一つは、海外の教育機関に依 頼し、日本側と情報交換しながらコース設計を行って実施するケース。もう一つは無料 のインターネット電話サービス等を活用して遠隔研修を実施するケースである。ただし、 89 そのような遠隔指導だけでは、学習が個人任せになってしまい成果に大きなばらつきが 出ることも考えられるため、現地での教育も同時に行うことが重要である。 いずれの形態でも、学習の目的は渡日後の日本語学習を円滑に進めることにある。そ のために、初級レベルの基礎的な語彙や文法とひらがなおよびカタカナについて学習を している事例がほとんどである。時間的制約や現地日本語教育リソースの限界もあり、 到達目標はおおむね現行の日本語能力試験4級、初級前半終了程度に設定している。4 級レベルの日本語習得ということを勘案し、そこにビジネスの要素や専門教育の要素を 取り入れるということは行われていない。アジア人財事業で実施した意味として大きい のは、今まで協定校とはいえ、教育面で十分に連携できていなかった国内外大学が、具 体的な点で連携できたことである。 なお、現段階で、アジア人財事業に参加している複数大学が相乗りをして海外事前教 育を行っている事例はないが、そのようなニーズは潜在的にあるという話を日本各地で 聞いている。現在行っている海外事前教育についても、コースによっては外部にオープ ンにしているものもあり、今後の展開次第で複数大学の相乗りによる海外事前教育を実 施できる可能性があると思われる。 渡日後は、海外で学習したことを復習しながら、基礎的な日本語学習を継続する場合 がほとんどである。多くの大学で、通常開設している日本語クラスに可能な限り出席す るよう促すとともに、アジア人財の対象学生向けの授業も開設している。 渡航前教育の一例として、カリキュラム例を以下にあげておく。 カリキュラム例 1回3時間×14 週(計 42 時間) これを段階別に 3 コース(計 126 時間)実施 カリキュラム例はそのうちの1コース分(入門期) 1 コース説明、日本語について、ひらがな 2 カタカナ 3 カタカナ 4 1課 自己紹介 5 2課 ものを尋ねる 6 2課 ものを尋ねる 7 復習 8 3課 数字、時刻 9 3課 数字、時刻 10 4課 助数詞、買い物 11 復習 12 5課 場所、存在文 13 6課 形容詞 14 復習 4課 助数詞、買い物 90 事例 27 ITに ITに特化した 特化したE したEラーニング教材 ラーニング教材の 教材の開発と 開発と使用 (1)基本情報 1) 対象:文系・理系 学部・院生 その他( 一部文系を含む ) 2) 授業の種類:単位有り・単位無し N/A アジア人財の学生のみ・一般の学生にも公開 単発・日常(通年) 3) 時間数:90 分×1コマ4) 学生数:9名(うち4名 一般の学生) 5) 国籍:中国・韓国・ベトナム他 6) 担当教員:専任日本語講師・非常勤日本語講師・外部委託日本語講師 日本語講師以外( ) 7) 教材:AOTS配信教材・市販教材・独自開発教材・その他(BJT 問題集他) (2)概要 1)コンソーシアムでEラーニングビジネス日本語教材を開発した。日本語講師はEラ ーニングを発注するコンソーシアムのステークホルダー(利害関係者)としてニー ズを決定する役割を果たした。 同時に、システム開発者と協力し、開発ベンダー 側の専門家としての役割も果たした。即ち学習方法や教育項目を構成し、コンテン ツ作成も行なった 2)コンソーシアムの専門教育がITに特化しているので、コンテンツの内容は主人公 (留学生)の就職活動から始まる地元IT会社を舞台としたストーリーとした 3)開発したEラーニングは自習用というよりブレンディング学習として補助教材と組 み合わせ、15 回のコース授業でテスト使用している(シラバス参照) (3)内容の 内容の説明 1)Eラーニング作成にあたり日本語講師が果たした役割 ①ニーズ決定の当事者 筆者ら日本語講師は外部委託講師である。委託元にはビジネス日本語の専門家がい なかった。ニーズ調査の対象となるステークホルダーは誰なのか、誰を満足させれば よいのか悩んだ末、日本語講師が自分たちの経験に基づきニーズを決定した部分もあ 91 った。 ②ニーズ調査と分析 専門教育であるIT研修の現場の観察・聞き取り調査をした結果、IT研修に使う 日本語は専門研修で対処できるということだった。そこで地元IT企業の方々に聞き 取りをし、仕事の流れに沿って必要と思われる場面を抽出。言語項目、言語機能を決 定した。 ③専門家としてコンテンツを作成 動画のスクリプト(台本)を書き、撮影のコーディネートを行なった。演じる役者 さんの意見も取り入れて、自然な会話になるように何度かスクリプトを書き変えた。 できあがった動画を基にタスクを作成した。 ④システム設計者とのチームワーク Eラーニングの発注元及びユーザーとして、また日本語教育の専門家として、シス テム構築に対する要望をまとめ、設計者に伝えた。システム設計者はIT企業の社員 なので、ストーリーの内容についてもアドバイスを得られたのはありがたかった。 2)Eラーニングの特徴 ①内容について 主人公である(元)留学生がIT企業に就職し、経験を積んでいくストーリー仕立てであ る。台本は地元IT企業での聞き取りをもとに作成しており、実際の仕事の流れに即し ているが、どの課からも始められるモジュールになっている。就職前・就職後の諸問題 をトピックに、Eラーニング受講生が動画の中で「主人公がどのように問題を解決した か」を理解し、 「自分ならどうするか」という視点を持つように工夫した。名称も地元の ローカルな特色を出し、イラストなどでも地域のアピールをした。 ②システム設計について 講師側にとって最大のメリットは、教材の内容を自由に入れ替えできることだろう。 対面授業と連結したブレンディング学習としてコースを組み立てるのであれば、関連し た問題などを講師自身がすぐに追加しておくことができる。 92 (画面例) 3)授業での使用例 ①Eラーニングシラバスと対応補助教材 Eラーニング 補助教科書1『ちょっとしたものの言い方』 (講談社α文庫)* 1 専門研修 会議を進める、議論を整理する、反対を説得する 2 就職活動 感情を言い表す 3 仕事上の様々なやり取 指示する、大事な点をはっきりさせる、抗議する り 4 退社後のやり取り サービスへのお礼、世話になった、物をもらった、来て もらった 5 社内の人間関係 遠慮する、招待を断る、酒を断る、セールス・勧誘を断 る、商談を断る 6 システム開発①② 電話に出る、先方の名前を聞く、電話を取り次ぐ 7 システム開発③ かかった人が不在の時、伝言を受ける、切るときの挨拶 8 システム開発④ 先方を呼び出す、最初の一言、伝言を頼む 9 システム開発⑤ 長電話を切る、声が聞きとれないとき、留守番電話に話 す、誘いに応じる 10 システム開発⑥ 依頼に応じる、意見に同意する、命令に応じる、報告す る 11 システム開発⑦ 深い感謝を表す、呼びかける、ていねいに言う 12 システム開発⑧ 相槌を打つ、顧客を迎える、顧客を待たせる、勘定をす る 13 システム開発⑨ 顧客に頼む、クレームに応じる、話を急ぐ 14 上司宅を訪問する 近所の人とすれ違う、仕事中の人へ、玄関先で、座敷で、 辞去のきっかけの言葉、客を送り出す、別れの挨拶 15 いろいろな挨拶 依頼の切り出し方、仕事上の依頼、用を頼む、禁煙を頼 む、お見舞いしてもらった、自分のミスを謝る、身内・ 部下のミスを謝る *他に補助教科書2として『Visual IT活用の基本』 (日経文庫)を使用 ②補助教材について 日本人向けの市販の書籍を2冊補助教材に選定し、学生に配布している。Eラーニ ングのそれぞれの課に「見る」 (オリジナル動画) 、 「話す」 (補助教材1を組み込んだ 練習) 、 「読む」 (補助教材2を組み込んだ練習)の3つのパートが含まれている。 93 ③授業の進め方 各自行なう作業と、クラス全体、ペア、グループで行なう作業を組み合わせる。現 在、授業で使いながら不足な点を改善している。 ・インターネットに接続してIDとパスワードを入力。 ・学習課を選び、各自動画を見る。 ・シャドウイングをする。 ・解説文・スクリプト・ポイントチェックを読む。 ・リピート練習とロールプレイを行なう。 ・内容について話し合う。 ・補助教材1を読み、TAと一緒に表現を組み合わせた会話を作成し、発表する。 ・補助教材2のITに関するキーワード(予習)と図を基に、内容についてプレゼ ンテーションを行なう。 ・課のテストを行なう(記述式なので、画面からメールで教師に送信される) 。 ・辞書ページを見て、辞書に載っていない分からない語彙は教師に送信。教師は辞 書に追加する。 ・欠席した学生は、その分の課を自習し、テストの解答や質問等を画面から送信。 (4)成果・ 成果・課題 アジア人財のようなコンソーシアムでEラーニングを開発する場合、内部ですべて作 成する、委託するなどいくつかの方法があるだろう。日本語教師の関わり方も様々だと 思われる。本事例はその一つの方法を示した。 受講者が増えた場合、授業担当講師の他に学習管理者・支援者が必要になるだろう。 教室にPCがある環境も必要である。オンラインの学習なので、今後は補助教科書だけ ではなく、関連URLも適宜組み込んで、参加者に合わせた更新や教材のストックを行 ない、変化に富んだ授業にしていきたい。 94 95 クロスリファレンス <研修の 研修の内容について 内容について> について> Q1. 「ビジネス 「ビジネス日本語 ビジネス日本語」 日本語」の研修として 研修として、 として、どのような内容 どのような内容の 内容の研修を 研修を行うことが必要 うことが必要なの 必要なの でしょうか? でしょうか? →1ページ「 「ビジネス日本語」について ~事例集を読む前に」 、30 ページ「第二章 就職支援とビジネス日本語」サマリーに、「ビジネス日本語」の考え方・概念について 記述しております。 具体的なシラバス作成につきましては、事例1(8ページ) 、事例2(12 ページ) 、 事例 18(62 ページ)をご参考に、また運営方法のアイデアとして事例5(23 ページ) をご参照下さい。 Q2.PBL授業 .PBL授業ではどのような 授業ではどのようなテーマ ではどのようなテーマを テーマを扱えばよいでしょうか? えばよいでしょうか? →外部講師と連携し、地域に根付いたテーマで行ったPBL授業の例としては、事例 14(50 ページ)が、また、理系学生向けに行われたPBLの事例としては、事例 15(53 ページ)が参考になるかと思います。 Q3.日本社会、 日本社会、企業の 企業の文化理解という 文化理解というテーマ というテーマではどのような テーマではどのような取 ではどのような取り組みをすることがで きるでしょうか。 きるでしょうか。 →日本人TAが授業に入ることで、自然に日本人の考え方に触れることができる例とし、 事例7(28 ページ) 、事例 12(44 ページ) 、事例 21(72 ページ)を掲載しております。 また、日本社会で好まれるふるまいを身につけるために、 行った取り組みを事例5(23 ページ)で紹介しております。 コンソーシアム企業と連携し企業の方のご家庭でのホームスティ体験を通して、生活 体験を得ながら日本社会や文化を理解するという事例6(25 ページ)もご参考下さい。 <就職支援について 就職支援について> について> Q4.就職支援としてどのようなことが 就職支援としてどのようなことが行 としてどのようなことが行えますか? えますか? 学内のキャリアオフィスと連携して個別の学生に対応した例として、事例8(32 ペ ージ)を掲載しております。また、研修自体を就職支援専門家と日本語講師が共に行う 事例とし、事例9(35 ページ) 、事例 10(38 ページ)をご紹介しております。 なお、合宿形式の研修によって企業の方からの講演を聞いたり、ケーススタディーに よって企業文化を学んだり、入学時期の異なるアジア人財の学生同士の交流を図ったり 96 する取り組みもあります。このような取り組みを通して、日本での就労への意識向上に 繋がった事例 23(81 ページ)もご覧下さい。 Q5.就職内定後の 就職内定後の教育としてどのような 教育としてどのような研修 としてどのような研修を 研修を行うことができますか? うことができますか? →事例2(12 ページ)では社会人1年目程度で必要とされる技能を身につける為に設 計された研修事例を紹介しております。 <学生について 学生について> について> Q6.学生の 学生の学科等が 学科等が異なり、 なり、集合研修を 集合研修を行う際に弊害が 弊害が多い場合にできる 場合にできる工夫 にできる工夫はあり 工夫はあり ますか? ますか? →事例 25(86 ページ)では、長期休暇を利用した短期集中型の研修を実施している事 例を掲載しております。また、事例 22(78 ページ)とし、場所が遠く離れたキャンパ スをTV会議システムで繋ぎ、遠隔授業を行った事例も掲載しております。 Q7. 学生の 学生の個人指導について 個人指導について教 について教えてください。 えてください。 →事例8(32 ページ)に、個別指導を通して学生から出された質問例を取り上げてあ ります。事例 16(57 ページ)では個別指導の担当者をどうするかという事例について 掲載しておりますので、ご参照下さい。 Q8. どのように教材 どのように教材を 教材を整えればよいのでしょうか? えればよいのでしょうか? →共通教材を実態に合わせカスタマイズしたものの例として、事例 15(53 ページ)が 参考になるかと思います。また事例 25(86 ページ)でも共通教材からテーマを選び、 レベルに合わせてカスタマイズした例が取り上げられている。 新しく教材を開発した例としては、事例 27(91 ページ)に E-learning 開発及び、 それを用いた授業の進め方を掲載しています。 Q9.レベル差 レベル差がある学生 がある学生が 学生が混在しているのですが 混在しているのですが、 しているのですが、研修運営の 研修運営のポイントがあれば ポイントがあれば教 があれば教え てください。 てください。 →日本語レベルの差という観点では、事例 20(69 ページ)が参考になります。当該の 事例では、漢字圏、非漢字圏出身者が混在し、なおかつレベル差も幅広い場合に、ビジ ュアル教材を用いた学習活動を行った事例を紹介しております。また、ゼロ初級の学生 の BJT 受験対策と関連した事例は事例 19(66 ページ)をご参考下さい。 その他、レベル差をマイナス要因としてではなく、 「ダイバーシティ(多様性) 」とし て積極的にとらえ、授業に生かした例として、事例 21(72 ページ)をご覧頂ければと 思います。 97 <運営に 運営に関する方法 する方法について 方法について> について> Q10. 別の機関や 10. 機関や他部署の 他部署の関係者と 関係者と連携して 連携して行 して行う研修としてはどのようなものがありま 研修としてはどのようなものがありま すか? すか? →大学に予め蓄積されているリソースの利用という点では、大学のOB組織を通じ、学 生から社会人に対する、インタビューを実施した事例3(16 ページ)があります。 また、学生の経験を積極的に活用するという点では、既に内定した学生が授業へ参加 する事例 13(47 ページ)があります。 尚、組織的に専門教育の教授、事務局、キャリアオフィス、日本語講師の4者が連携 し、就職研修を行っている例としては、事例 11(41 ページ)をご参照下さい。 Q11. 11.学生が 学生が日本へ 日本へ渡航する 渡航する前 する前に日本語研修を 日本語研修を行うことを考 うことを考えているのですが、 えているのですが、何か事 例はありますか? はありますか? →無料のインターネット電話サービスを利用し、渡航前から遠隔指導を行う例がありま す。また、現地の教育機関に日本語教育を依頼して実施するという例もあります。いず れも事例 26(89 ページ)で紹介しています 98 ○執筆者一覧○ 平成 21 年度アジア人財資金構想 共通カリキュラムマネージメントセンター事業 研修事例検討部会委員 委員長 武井 直紀 委員 大石 寧子 委員 押谷 祐子 委員 川邊 理恵 委員 栗原 由加 委員 関 かおる (敬称略) 平成21年度 経済産業省委託事業 アジア人財資金構想 共通カリキュラムマネージメントセンター事業 日本ビジネス・ビジネス日本語研修 事例集 平成22年3月 財 団 法 人 海 外 技 術 者 研 修 協 会 〒120-8534 東京都足立区千住東1丁目30-1 電話 03(3888)8250 http://www.aots.or.jp 掲載事例についてのお問い合わせは、上記までご連絡下さい。
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