第4章 政治制度と政治過程 1. 自由民主主義体制下の政治制度と政治過程 • 政治制度 政府と国家 議会と議会政治 選挙制度 • 政治過程(テキスト99ページ図4-1参照) 国民代表の政治過程 利益代表の政治過程 政府と国家 • 政府とは – 狭義の政府=行政機関のみ – より狭い意味の政府=内閣 – 広義の政府=立法・行政・司法すべての機関 • 国家とは‥‥国民との関係における支配・統 制の主体 ⇔ 政府=国民からの要求や支持を受ける客 体 議会と議会政治 • 議会=公に選ばれた代表者による合議体 • 議会政治=議会が国家の中心となる政治方 式 • 議会政治のもとでの議会の機能 ① 国民全体の利益を代表する機能 ② 政策を審議し決定する機能 ③ 政策を実施する行政を監督する機能 選挙制度 • 小選挙区制 =一つの選挙区から一人の議員を選出する 方式 • 比例代表制 =各政党の得票数に比例して議席を配分す る方式 小選挙区制の長所と短所 • 長所 ① 安定した政権が生まれやすい ∵わずかの得 票差が過大に議席差に反映するため ② 政権交代が行われやすい ∵二党制を促すた め • 短所 ① 死票が多くなる ② 社会の多様な利害が反映されにくくなる 小選挙区制かつ相対多数制の場合 選挙区数100 政党A,B,C 獲得 議席数 1~60区 政党A 60議席 45% 議席獲得 61~100区 40% 平均 得票率 43% 政党B 40議席 40% 政党C 0議席 15% 45% 議席獲得 42% 15% 15% 比例代表制の長所と短所 • 長所 ① 選挙民の政党支持の分布がそのまま議席に反 映される ② 死票が最小限に抑えられる • 短所 小党分立の傾向が出て,政治が不安定化する 比例代表制の場合 議席数100 政党A,B,C 獲得 議席数 得票率 政党A 45議席 45% 政党B 40議席 40% 政党C 15議席 15% 連立政権のパターンは? 自由民主主義体制下の政治過程 • 政府への入力過程(図4-1参照) – 国民代表の政治過程‥‥政府において政策決 定にあたるエリート=代表者の選出をめぐる政治 過程 – 利益代表の政治過程‥‥特殊利益の実現をめ ざして各種の利益集団が政府に働きかけを行う 政治過程 2.国民代表の政治過程 • 選挙の過程 政党が議員と有権者の間で仲介役を果たす。その 際,政党が公約を提示し,政権を獲得した場合に はその公約を実行に移す ∴選挙は,代表選出に加えて,緩やかな政策選択 の機能を持つようになった • 選挙の機能 ①代表選出 ②政策選択 ③指導者選抜 ④政府形成 小選挙区制では③④が,比例代表制では①②が重視され ている 2.国民代表の政治過程 • 選挙制度と政治過程 – 小選挙区制 → 二党制,単独政権‥‥政治的 安定性にすぐれている – 比例代表制 → 多党制,連合政権‥‥こちらも 政治的安定性において劣っているわけではない ヨーロッパ諸国の多くが比例代表制を採用したの は,政治的安定のみならず,異質なものの共存と いう価値も重視されたため 2.国民代表の政治過程 • 議会・選挙政治の危機とゆらぎ 先進国の議会政治,選挙政治は決して盤石では ない。 • 投票率の低下 • 選挙ごとの政党の得票率の激変 • 無党派層の増大 3.利益代表の政治過程 • 利益集団発生の背景 ① 国民的・社会的諸利益が分化,多様化したこと ② 政府の機能が拡大し,社会に介入していること ③ 利益集団の掲げる利益は,国民代表の政治過 程で汲み上げられるとは限らないこと • 利益集団の掲げる利益は生産者的・職能的利 益が中心 • ところが,国民代表の政治過程では消費者的・ 地域的利害が出やすい ∴利益集団は,選挙→政党のチャンネルとは別に, 独自に政府に対する働きかけを行うようになる 3.利益代表の政治過程 • 利益集団の種類と戦術 ① 経済的・職能的な特殊利益を追求する団体 例)経済団体,労働団体,農民団体,専門家団体 これらの団体では,メンバー間の利益の一致の度合 いが高く,結束も固い ② 政策受益団体‥‥生活基盤,活動基盤そのも のが補助金などの政府の政策に大きく左右され る団体 例)福祉団体,教育団体 ③ 公共利益集団(米国)‥‥組織化されにくい一 般的な利益・価値(環境問題,消費者の利益,平 和など)を実現しようとする団体=ヨーロッパにお ける「新しい社会運動」(pp. 108-109) 3.利益代表の政治過程 • 利益代表の政治過程の変化 アメリカの場合(テキストpp. 238-241も参照) • 多元主義(多元的民主主義)‥‥様々な集団の 競争と妥協による公共利益の発見の過程 • 「利益集団リベラリズム」‥‥特権的な利益集 団による利益配分の独占 ヨーロッパの場合 ネオ・コーポラティズム(テキストpp. 70, 79も参照) 政府,労働組合,使用者団体の3者代表が,中央レ ベルで交渉をもって国民経済の維持・発展のために 協調しようとした体制。1980年代に入ると,新自由 主義の台頭により,後退を余儀なくされている 3.利益代表の政治過程 • 利益代表の政治過程の変化 日本の場合‥‥「族議員政治」 • 族議員=特定の政策分野の政策決定に大きな 影響力を持つ議員のことをいう。「農林族」「建設 族」「商工族」など • その族議員が特定の利益集団や主務官庁と結 び付いて「政官業」の癒着構造をつくりあげ,利 益誘導政治や金権腐敗政治を生み出した ただし,1990年代から2000年代にかけて行われ た選挙制度改革や中央省庁の再編が,族議員 の活躍の余地を狭めている • 4.政治過程の変容 • 国民と政府をつなぐ媒介アクターの機能不全 – 政党の衰退現象 – 労働組合などの利益集団の弱体化,あるいは特 定利益集団の特権化と既得権益へのしがみつき • こうしたなかで,マスメディアが,国民から政 府への入力過程で大きな役割を果たしつつ ある – 「第4の権力」としてのマスメディア – 民主主義体制下で,マスメディアは,議題設定の 機能をはたす 4.政治過程の変容 • マスメディアへの評価 – 肯定的な評価‥‥権力の再配分に貢献している ∵反体制団体や弱小団体の選好を政治システム に注入しているから – 否定的な評価‥‥権力あるいは有力な団体の 意向に沿った世論形成をしてしまう ∵情報源を 権力に依存することが多いため • 政治情報の娯楽化 → 人々は政治を身近に 感じる反面,おもしろみのない政治からはま すます遠ざかる恐れもある
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