足元のブラジルの市場環境

臨時レポート
足元のブラジルの市場環境
2016年9月13日
ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
【マイナス成長が続くブラジル】
ブラジルの実質GDP(国内総生産)成長率は前期比では
2015年1-3月期以降、前年同期比では2014年4-6月期以降、
マイナス成長が続いています。
ブラジルの景気悪化には主要貿易相手国である中国の景
気鈍化懸念といった外的要因に加え、以下に挙げる内的要
因が大きく影響しています。
【図表】ブラジルの実質GDP
(前年同期比、前期比)の推移
2005年第1四半期~ 2016年第2四半期、四半期
(%)
10
8
6
 長年に渡るバラマキ政策に伴い財政赤字が拡大したこと
や、大統領も含めた政治家を巡る汚職問題等により、ブ
ラジル国債の格付が投機的格付にまで引き下げられた
こと。
 ブラジルに対する信用力が悪化するにつれ通貨レアル
が大幅下落したことで輸入物価が高騰し、インフレ率が
急速に上昇したこと。
【政治的混乱は一段落?】
国営石油会社ペトロブラスによる政治家の汚職問題は、
2016年8月31日に行われた上院弾劾裁判でルセフ大統領の
有罪が確定したことから一旦の決着を見せたものと思われ
ます。
同日付で大統領に就任したテメル氏による政権運営は事実
上、今年5月にスタートしていますが、その中でも一貫して重
要視されているのが財政健全化策です。
ブラジルの実質GDP成長率がマイナスであり続ける背景に
は、外国人投資家からのブラジルに対する財政懸念がある
一方で、増税や補助金のカット等といった国民生活に痛みを
伴うような政策の影響があるとも考えられます。
前年同期比
前期比
4
2
0
-2
-4
-6
-8
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
(年)
出所:Bloombergのデータを基にドイチェ・アセット・マネジメント㈱が作成
【図表】政策金利とインフレ率の推移
政策金利:2008年1月1日~2016年9月9日、日次
インフレ率:2008年1月~2016年8月、月次
(%)
16
14
政策金利
インフレ率(前年同月比)
12
10
8
【中銀は将来的な利下げの可能性を示唆】
ブラジル中銀は2015年7月の利上げを最後に9会合連続で
政策金利を14.25%に据え置いてきました。
政策金利が高位で維持されることは、借入コストの増加につ
ながる等ブラジル国内の景気にはマイナス材料となる一方
で、依然高水準にあるインフレ率の伸びが鈍化するとの効果
が見込まれます。
実際インフレ率は2015年12月時点を境に徐々に低下傾向に
あり、中銀は8月末の会合でこれまで議事録に記載していた
「インフレリスクを考慮すると現時点で利下げ余地はない」と
の文言を削除しました。
6
4
2
0
2008/1/1 2009/7/1 2011/1/1 2012/7/1 2014/1/1 2015/7/1
(年/月/日)
出所:Bloombergのデータを基にドイチェ・アセット・マネジメント㈱が作成
※ インフレ率=IPCA(拡大消費者物価指数)とは、最低給与からその40倍
の給与水準までの家計を調査対象にした消費者物価指数。政府の公式
インフレ指標。
※ インフレ率については、2016年8月時点まで。
今後のインフレ率の状況次第では、中銀が利下げへ動く可
能性も高まり始めていると見られることは、ブラジル景気に
とってプラスとなることが期待されます。
※データは記載時点のものであり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
当資料は、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は、信頼できる情報をもとにドイチェ・アセット・マネジメント株
式会社が作成しておりますが、正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。当資料記載の情報及び見通しは、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況
によって予告なく変更することがあります。当資料に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも参考として記載したものであり、その銘柄・企業の株式等の売買を推奨す
るものではありません。 D-160912-1
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【財政健全化が回復のカギに】
ブラジルの基礎的財政収支(対GDP比)は2014年、2015年と
赤字が続き、2016年に関してもこのままのペースで行けばさ
らに赤字幅は拡大する見込みです。
この状況を改善すべく、テメル政権は2017年の基礎的財政
収支の赤字を縮小する目標を掲げるとともに、財政健全化を
より強力に推し進めるため、将来の歳出に対し上限を設ける
内容の法案の制定を目指しています。
この法案が制定されれば、歳出抑制に一定の効果が見込ま
れますが、制定には憲法改正が必要となり、議会で多数の
支持が得られるかが注目されます。
一方で、政府の足元の動向を評価する動きも見られます。ブ
ラジル国債の格付をBBとしている格付会社フィッチは「ブラ
ジルの格付は底入れした可能性が高い」と語った模様です。
フィッチはブラジルの格付見通しをネガティブとし、さらに格
付を引き下げる可能性を示していますが、政府が積極的に
歳出を削減しようとしていることや、その方策について期待を
示している模様です。
【図表】基礎的財政収支(対GDP比)の推移
(2001年~2015年、年次)
(%)
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
-1.0
-2.0
-3.0
2001
2016年8月末にルセフ大統領が正式に罷免されたことで、今
後の為替市場の動向を占う上で財政健全化策の行方が市
場の注目点になると見られます。今後レアルが継続的に上
昇していくにはテメル政権が財政健全化策を具体的に推し
進めていくことが必要になると考えています。
金融政策については、中央銀行は通貨防衛(レアル安阻止)
目的でこれまで積み上げてきたレアル買い/米ドル売りのポ
ジションを削減するため、現在リバース通貨スワップ(先物市
場でのレアル売り/米ドル買い)を継続的に実施しており、こ
れがレアルの上値を抑える要因となっていると見られます。
しかし、インフレ抑制のため政策金利を高水準で維持するこ
とを明確にしていることから、市場心理の安定が続けば、相
対的に高い利回りを求める需要がレアルを下支えすると予
想されます。
2005
2007
2009
2011
2013
2015 (年)
出所:IMF World Economic Outlook, April 2016のデータを基に
ドイチェ・アセット・マネジメント㈱が作成
※2015年は予測値。
【通貨レアルの今後の見通し】
ブラジルの通貨レアルはルセフ大統領に対する弾劾手続き
が進むにつれ徐々に落ち着きを取り戻し、年初来で見ると約
20%上昇しています(対米ドル)。
2003
【図表】ブラジル・レアル(対円、対米ドル)の推移
(2008年1月1日~2016年9月9日、日次)
(レアル)
(円)
80
1.0
レアル/円(左軸)
70
米ドル/レアル(右軸)
60
1.5
50
2.0 レアル
高
2.5
40
3.0
30
3.5
20
4.0
10
2008/1/1
レアル
安
4.5
2010/1/1
2012/1/1
2014/1/1
2016/1/1
(年/月/日)
出所:Bloomberg
また、外部要因については、原油等の資源価格が安定しつ
つあることは、資源国ブラジルにとり市場心理をサポートす
ることになると考えます。一方、米国の経済状況は概ね堅調
であり、米国の追加利上げに関連した議論が高まることで新
興国市場全体に及ぼす影響については注意が必要であると
考えます。
※データは記載時点のものであり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
当資料は、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は、信頼できる情報をもとにドイチェ・アセット・マネジメント株
式会社が作成しておりますが、正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。当資料記載の情報及び見通しは、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況
によって予告なく変更することがあります。当資料に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも参考として記載したものであり、その銘柄・企業の株式等の売買を推奨す
るものではありません。 D-160912-1
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ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
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