<2週 4/21>[講義1]カメラから複写機へ:ニコン、キャノンの系譜 テキスト 島田昌和「カメラ:競争を通じた国際競争力の形成」『日本の企業間競争』有斐閣 初回は私の最近の研究テーマです。戦後日本の産業の担い手はこれからさまざま紹介していき ますが、これまであまり着目されなかった分野が、本日の「光学系精密機械」すなわちカメラ メーカーの系譜です。カメラメーカーは現在でも国内主要企業で 10 社が存在しますが、世界で はコダックくらいしか生き残っていません。発祥国とも言えるドイツはもはや一部のマニア向 けカメラしか作っていません。ところが日本のカメラメーカーは、キャノンやミノルタ、リコ ーが複写機(コピー機)やプリンタ、ニコンがステッパー(半導体関連機器)といった分野に 進出し、見事に多角化に成功しています。そしてバブル崩壊の危機も見事に乗り切っている会 社が多く存在します。この業界はどうしてこんなに強いのかを考え、今の時代を乗り切るヒン トを探しましょう。 Ⅰ.復興から高度成長期:カメラの差別化競争 カメラの発祥国:ドイツ ライカとコンタックスの巨頭2社:35 ミリフィルムを使った小型高性能カメラ(レ ンズ交換可能)で戦前から世界を席巻 日本のカメラメーカーはすべてこの2社の模造品(コピー品)、廉価品を製造 戦後:独自路線の萌芽 ( ):オリジナルデザイン、ライカ・コンタックスと同形式でさらに高性能を 実現 ( ):ライカ模倣路線と決別、中級機・キャノネットの大ヒット リコー アサヒ光学 :徹底したコストダウンによる大衆向け2眼レフカメラで成功 :1眼レフカメラへの進出 各社が新技術を積極的に取り入れ、それぞれに独自の新製品を世に出す差別化競争の時代へ。 そのスピードの速さ、競争の分厚さにアメリカやドイツの一流メーカーがまったくついてこら れず、外国メーカーは衰退 Ⅱ.石油ショックの克服:多角化へ ドルショック、石油ショックによる世界経済の混乱をカメラ業界はいかに乗り切ったのか? ①淘汰:ミランダ、ペトリの倒産、ヤシカの 更生法申請 -1- ( )による吸収、マミヤの会社 ②オートメーション化による小型化、低価格化、オート化による対応 小西六:ピッカリコニカ(フラッシュ内蔵)ジャスピンコニカ(自動焦点カメラ) キャノン:AE-1(マイクロエレクトロニクス化による全自動軽量1眼レフ) *製造のオートメーション化、LSI( から( )の多用で労働集約型 )型産業への転換に成功 ③多角化 キャノン:「右手にカメラ、左手に事務機」 電卓への取り組みと失敗、そして複写機へ>オートメーション化による 知識集約産業の路線 ニコン:高度なレンズ技術を応用してステッパー集積回路製造のための縮小投影型 露光装置へ進出>( )生産を生かす 最近の動き アナログカメラから( )カメラへ 競争相手は家電メーカーなど多様な競争 へ 競争の激化 特にコンパクト機は利益の出にくい競争へ 競争の激化と淘汰:カメラメーカー・ミノルタとフィルムメーカー・コニカの経営統合 アナログカメラの衰退に伴い、35 ㎜フィルム市場も縮小 それでも苦境:カメラ・フィルム分野からの撤退、カラーレーザーコピー機などへ経営 資源を集約 1 眼レフタイプの高級デジカメ市場 デジカメ各社にとって数少ない収益源、ブランド力や光学技術など総合力が重要 ( )はコニカ・ミノルタから部門ごと買収 まとめ 戦後日本の発展にカメラを中心とする精密機械産業の発展が果たした役割は大きい。分 厚い技術競争から日本のカメラは世界を席巻し、競争の中で蓄積された技術はエレクトロ ニクス技術と融合し、事務機やコピー機といった新たな事業分野での競争力獲得につなが った。しかしフィルムカメラの時代は終わり、デジタル化の中で新たな展開先の獲得を各 社は迫られている。 -2- -3-
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