フォーラムレター JSTフォーラム 第 24 期第 4 回 ★ 2008 年1 月30 日(水)開催 “液浸リソグラフィと周辺技術” [コーディネータ] 笠間 邦彦氏(NECエレクトロニクス㈱プロセス技術部 シニアプロフェッショナル) 大和 壮一氏(㈱ニコン 精機カンパニー 開発本部第一開発部第四開発課 マネジャー ニコン・フェロー) プログラム □開会ご挨拶 JST フォーラム顧問 木内 一秀氏(NTTエレクトロニクス㈱) □コーディネートにあたって コーディネータ 笠間 邦彦氏 □プレゼンテーション 『液浸露光技術の現状と将来』 大村 泰弘氏(㈱ニコン 精機カンパニー) 『液浸によるメモリデバイスの量産』 橋本 耕治氏(㈱東芝 セミコンダクター社) 『45nmSoC 対応液浸リソグラフィ技術』 塙 哲郎氏(㈱ルネサステクノロジ) 『液浸用レジストの開発』 大森 克実氏(東京応化工業㈱) 『液浸プロセスの量産適用』 山田 善章氏(東京エレクトロン㈱) 『液浸ウエハの検査技術』 今井 清隆氏(ケーエルエー・テンコール㈱) □総合質疑 <司会> 大和 □総 括 コーディネータ 壮一氏(コーディネータ) 笠間 邦彦氏 □ JSTプラス ◆開催の狙い 液浸リソグラフィが量産段階に入った。Hp55∼ 50 のNAND 型フラッシュ・メモリが先陣を切り、 ロジックデバイスも 45nm ノード(hp65)で追従する。露光機メーカからは、水を用いる液浸では限 界となる NA1.3 ∼ 1.35 の装置の出荷が始まった。 当初液浸露光の課題とされたリーチングや水滴残りによる欠陥発生の問題も、材料やプロセスの改 良によって大幅に改善された。これには、液浸液供給機構の最適化、トップコートの表面エネルギー の最適化による接触角制御、ウエハ外周部(ベベル)の処理の最適化による膜剥がれの防止、露光後 のウエハリンスなど、ドライ露光にはない様々な技術が導入されてきた。それでは、液浸による量産 に死角はないのだろうか。また、液浸リソグラフィはどの世代まで使えるのであろうか。 今回のフォーラムでは、露光装置の現状と高屈折液浸の可能性、デバイス量産現場における液浸リ ソグラフィの現状をご報告いただくとともに、レジスト、トップコート材料、現像プロセス、ウエハ 検査などの液浸リソグラフィを支える周辺技術について、最新技術をご紹介いただく。あえてテーマ を液浸に絞り、液浸リソグラフィの量産における諸問題について活発な議論を期待している。 ◆アブストラクト 『液浸露光技術の現状と将来』 大村 泰弘氏(㈱ニコン 精機カンパニー 開発本部光学設計部開発戦略課) 半導体技術の進歩と共にリソグラフィ技術の微細化への要求も高まっている。液浸露光機は既に 1 本格的な量産展開がなされており、Hp55nm 以下のフラッシュ・メモリ、45nm ノードのロジックデ バイス等の生産に貢献している。 本講演では、液浸リソグラフィにとって、開発当初からの課題である「結像性能」「フォーカス精 度」「オーバーレイ」「ディフェクト」について、現在使われている液浸装置のフィールドデータを 紹介するとともに、「トップコートレスレジストへの対応」「高スループット化に伴う熱収差への対 応」など、今後の液浸リソグラフィにとって注目すべき技術課題への対応、Hp32nm を狙うダブル パターンニング対応の液浸リソグラフィ開発、高屈折率溶媒と高屈折率レンズ材料を用いたさらな る高 NA 化技術の進捗状況等を紹介し、ニコンのリソグラフィロードマップに照らし合わせながら、 将来の液浸リソグラフィを議論したい。 『液浸によるメモリデバイスの量産』 橋本 耕治氏(㈱東芝 セミコンダクター社 プロセス技術推進センター 半導体プロセス開発第二部 リソグラフィ技術開発第一担当 参事) 半導体集積回路はメモリデバイスによってその微細化が牽引されており、その代表格である NAND フラッシュ・メモリではおおよそ2 世代に1 回のペースでリソグラフィ技術のブレークスルー を行ってきた。NAND フラッシュでは、既にHP=56nm 世代から1.0NA<のArF 液浸リソグラフィ 技術を用いたデバイス量産が開始され、まもなく HP=43nm 世代も 1.3NA<の ArF 液浸リソグラフ ィによる量産が開始される。本講演では、それぞれの世代における液浸リソグラフィ技術のポイン トを解説する。更にHP=3x nm世代では、EUVリソグラフィ技術が間に合わないことから、ArF液 浸リソグラフィ技術とダブルパターニング技術の組み合わせを用いる可能性が高い。ダブルパター ニング技術では、従来パターニングに直接関係しなかった要素プロセス技術とリソグラフィ技術と の融合が必要となり、リソグラフィインテグレーション技術の役割が益々重要となってきている。 ダブルパターニング技術には種々の手法が提案されているが、その選定には「必要とされるデバイ ス性能」、「コスト」などいくつかの判断基準があり、本講演の中でそのポイントを解説していく。 『45nmSoC 対応液浸リソグラフィ技術』 塙 哲郎氏(㈱ルネサステクノロジ 生産本部技術開発統括部プロセス開発部 リソグラフィ開発グループ グループマネージャ) 半導体デバイスの高性能化および製造コスト低減を目的として、微細化のトレンドは今後も継続 される。量産フェーズを迎えた45nmノードSoC(ハーフピッチ65nm)では、ArF 液浸リソグラフィ 技術が導入され、解像度と焦点深度の確保が図られている。当初懸念されたレンズコーティングや 液浸液供給方法の課題は露光装置の改良にて、レジスト成分の液浸液への溶出や液浸固有欠陥はレ ジスト材料、およびレジスト上層に塗布されるトップコート材料やリンスプロセスの最適化により 解決されており、水を用いた液浸リソグラフィの技術的課題は解消されており量産適用可能なレベ ルに達している。今後は、プロセス簡略化やスループット向上によるコスト低減が課題となる。 本講演では、45nmSoC をターゲットとして開発された ArF 液浸リソグラフィ技術および高密度 SRAM(0.245 m2)の試作結果について報告する。また、次世代ロジックデバイス対応の露光技術 についても述べる。 『液浸用レジストの開発』 大森 克実氏(東京応化工業㈱開発本部先端材料開発一部 半導体ポジレジスト材料グループ1担当 課長) 液浸リソグラフィは既に多くの研究開発がなされており、実際の量産プロセスへの適用も開始さ れ始めている。現在の量産工程においては、液浸用保護膜をレジスト上に塗布する事により液浸露 光プロセスに要求される撥水性やレジスト物質の水への溶出を防止している。しかしながら材料コ ストなどの問題により、液浸用保護膜無しに使用できるノントップコート液浸レジストのニーズが 非常に高くなっている。 本講演においてはノントップコート液浸レジスト用の材料開発として疎水性向上のための液浸添 加剤と溶出を抑止するための酸発生剤それぞれについて材料設計に関する議論を行う。また液浸露 光プロセスにおいて問題視されている液浸起因パターニング欠陥の発生について、レジスト塗布や 露光、現像などのプロセスステップ毎の欠陥解析を行い、その発生状況を確認する。 2 『液浸プロセスの量産適用』 山田 善章氏(東京エレクトロン㈱SPE-1 事業部クリーントラック BU クリーントラック事業企画部マーケティンググループ) 45nm 世代以降のデバイス量産に伴い、液浸リソグラフィ技術は量産レベルの性能が要求されてき ている。この液浸プロセスの量産適用により、従来技術の延長である CD 均一性向上や欠陥低減とい ったプロセス性能を向上させていくことは当然として、液浸装置の高速化やコスト増加を背景とす る露光機のダウンタイム発生時の影響は甚大であり、露光装置を停止させない塗布現像装置および プロセスの開発が特に厳しく要求されてきている。この要求を達成するためウエハベベル部の清浄 性向上プロセス技術と Fail ウエハの露光機への供給を監視する Integrated Metrology 技術の両面で の技術開発が必要であり、すでに量産展開されつつある。また、液浸プロセスのコスト低減策のひ とつとして、保護膜工程を省くプロセスの提案がなされている。しかし、ここで用いられるレジス トの表面は非常に高撥水性を有しており、従来プロセスとは異なるプロセス性能が要求される。 本講演では、これら液浸プロセス量産化にともなって、より厳しくなった課題、およびそれに対 する東京エレクトロンの取り組みについて紹介し、最後に次世代技術として注目されているダブル パターニング技術についての取り組みについても紹介する。 『液浸ウエハの検査技術』 今井 清隆氏(ケーエルエー・テンコール㈱イールド・ソリューション・グループ ディレクター) 液浸ウエハの欠陥に関しては、 ① 露光機レンズ・水・ウエハの相互作用により新たな欠陥発生要因が増える ② 液浸プロセス・装置の進化により欠陥密度は大幅に低減し、DOI(Defect of Interest)はバ ブルなどの大欠陥からマイクロブリッジなどの微小欠陥に移行しつつある ③ ウエハエッジの欠陥がますます重要になってきている ことがあげられ、本講演ではこれらに対するソリューションを紹介する。 まず、① に対するソリューションとして、BARC/レジスト塗布、現像後など各小工程で検査を行 うことで欠陥発生工程を特定する DSA(Defect Source Analysis)がある。ウエハ、検査工程、装 置、レシピなどに BKM(Best Known Method)を適用することにより、簡便なセットアップで効 率的に DSA が行える。次に、② の微小欠陥の検査に求められる高感度検査の例として、ウエハ表面 検査装置サーフスキャン SP2 とパターン付明視野ウエハ検査装置 28xx の液浸プロセスへの適用例を 紹介する。SP2 は、従来の LPD による高感度異物検査に加えウエハからのヘイズ信号をとらえる SURFmonitor により、レジスト/BARC の膜厚異常、露光機のスキャン後の水滴残りなどを検出す ることが可能となる。また28xx は、DUV から UV まで幅広い波長帯から最適な波長を選択すること ができるため、検査工程、材料、DOI など多岐にわたる変動要因に柔軟に対応して高感度検査を実 現する。最後に、③ のウエハエッジ欠陥に対して、ウエハ全周エッジ検査を高感度に実現する検査 装置 VisEdge によるエッジプロセス解析・改善例を示す。 ◆総括 (笠間 邦彦氏(NEC エレクトロニクス㈱) 、大和 壮一氏(㈱ニコン 精機カンパニー) ) 今回のフォーラム「液浸リソグラフィと周辺技術」では、① 量産適用が開始された水液浸リソグラ フィ(NA=1.3 ∼ 1.35、hp65nm レベル)に残された課題が無いのか、更に ② hp45nm 以降の次期液 浸リソグラフィの開発状況はどのようになっているかについて議論が行われた。① に関しては、基本 的な露光装置、レジストプロセスおよび検査技術の性能はほぼ達成されているとの結論であった。欠 陥発生のメカニズムやその制御手法もほぼ把握されているといえる。しかしながら、ドライリソグラ フィに比べ欠陥発生の危険性(特にベベル領域)は増大しており、きめ細かな装置管理、プロセスモ ニターが肝要である。更に、トップコートレスレジストや露光装置・コーターの OEE 改善など、コ スト低減を推し進めていく必要もある。一方、②では次期液浸リソグラフィとして、高屈折率液浸リ ソグラフィとダブルパターンニングが挙げられたが、前者は高屈折率レンズ材料&溶剤(屈折率> 1.8)の材料開発が遅延しており、ダブルパターニングが不可避であるとの見解が大勢であった。現 在、各種のダブルパターニングプロセスのデータ蓄積、コスト低減のための工程簡略化の検討が活発 化しつつある。高精度アライメント性能を有するダブルパターンニング用露光装置の完成が想定され る2009 年度までにはプロセス構築がなされることを期待したい。 3
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