地球を笑顔に!(第 28 回) 「バイオマスペレットを利用する」 ◆地球に優しい自然エネルギー◆ (社)中国地域ニュービジネス協議会 チーフコーディネーター 竹内善幸 バイオマス全体を余すことなく利用する「バイオマス・リファイナリー」の一環として,端材など未 利用バイオマスを地球に優しい自然エネルギー源として有効利用する方法をご紹介する。 ◆バイオマス・リファイナリー 林地で未利用の間伐材や,製材所で発生するおが粉・かんな屑・バーク(樹皮)などを粉砕して 湿度を調整し,ペレタイザーで圧縮成型した固形燃料を木質ペレットと呼ぶ。 伐採された木材の樹幹以外の枝葉,樹皮,倒木材など未利用バイオマスを木質ペレットなどで 有効利用することにより,林地におけるリファイナリーが達成される。 木粉は,加圧により木に含まれているリグニンが溶出して接着剤の役割をし,直径6~8mm程 度,長さ10~25mm程度の円筒形になる(図1.参照)。 原料である木材の種類や使用部位によりホワイトペレット,バークペレット,全木ペレットに分け られ,ペレットストーブ・ペレットボイラー・吸収式冷凍機などの燃料として用いられる。最近では, 竹を原料とするペレットが試作されている。 銘建工業(株)(岡山県真庭市)では、集成材を作る過程で生じるプレーナー屑の一部から木質 ペレットを製造して販売している。平成22年10月から,製造した木質ペレットの一部を韓国へ試 験的に輸出開始した(月数十トン規模)。ペレットの価格は,倉庫渡しで20~25(円/kg)である が,輸送コストを含めると40~50(円/kg)となる。 図1.木質ペレット ◆ペレットストーブおよびペレットボイラ 日鋼設計(株)(広島県広島市安芸区船越町)は,(株)日本製鋼所からの100%出資子会社で, 主に日本製鋼所広島製作所が取り扱う製品の詳細設計業務を担当している。会社創立は1974 年で,現在の従業員数は約200名である。かつて日本製鋼所がNEDOの補助金を受けて木質 ペレット製造プラントを開発し,市場に提供していた経緯があり,その基本技術を応用して木質ペ レット燃焼機器を手がけた。 旬レポ中国地域 2011 年 10 月号 1 ●ペレットストーブ 平成15年(2003年)に広島県環境関連産業創出推進協議会の企画のもとで,NPO 法人・ 森のバイオマス研究会(庄原市)の協力を得て,ペレットストーブを開発した。 おりしも,京都議定書が批准されようとし,当時の小泉首相が「バイオマス日本」を宣言し,そ の関連予算が交付されつつあり,ペレット燃焼機器もその一部として注目を集めるようになって いた。 NPO 法人森のバイオマス研究会の助言を得ながら,平成15年(2003年)6月から外国製ペ レットストーブの勉強を始め,その知識と独自に育成されていた木質ペレットの知識を融合させ, 「広島型ペレットストーブ」の開発に着手した。 その後,試作1号機,2号機による燃焼・性能確認テストを経て,平成16年(2004年)10月 より販売を開始した。自治体(広島県)・社会(NPO 法人)・企業の連携で広島県産と銘打ったペ レットストーブが世に出たということになる。 平成17年(2005年)に広島市主催の「第9回ひろしまグッドデザイン賞」を受賞した。 その後,ユーザーの要望を取り入れながら改良やオプション機能を追加し,平成23年度末 (2011年3月)までに,392台の販売実績を持つに到った。 ●ペレットボイラ ペレットストーブの開発に引き続いて,広島県より平成17年度ひろしま産業創生補助金(連 携枠)を受けて,小型木質ペレット焚き温水ボイラを開発した。 この小型温水ボイラは,4~5人家族用の家庭用温水ボイラとして,一般の電気温水器を意 識して開発したものである。 平成19年(2007年)より販売を開始し,現在までの納入実績は5台である。 このペレットボイラは,ペレットストーブが季節性があり,木質ペレットの消費が冬場に偏ると いうペレット生産・消費上の問題があり,年間を通じてペレットの需要が期待できる燃焼機器と しての位置づけもあった。 ●製品紹介 1)ペレットストーブ PELETOVE(ペレトーブ)という愛称で売り出している。 a)特徴 特徴は以下の通りで,ユーザーの好評を頂き,日本全国に392台の設置実績がある。 ①暖房能力は木造で100m2,コンクリート建屋で130m2 が目安である。 ②炎がきれい。 ③取扱が簡単。 ④タイマー機能で自動点火が出来る。 ⑤燃焼室天板にヤカン置きのスペースがあり,お湯を沸かしたり簡単なクッキングができ る構造になっている。焼いもを作ったりピザを焼いたりすることも可能である。 ⑥排気筒の長さを長く取れるので,設置場所の制約が比較的少ない。 ⑦故障が少ない。 旬レポ中国地域 2011 年 10 月号 2 b)安全装置 ペレットストーブを安全にお使いいただくために,以下の安全装置を装備している。 ①震動センサー:地震や衝撃などの急激な震動が発生したら燃焼を停止する。 ②風圧センサー:排気ファンが故障したり,何らかの理由で燃焼空気が送られなくなった場 合は,不完全燃焼を防止するために燃料供給を停止する。 ③過温センサー:ストーブの排気ガス温度が異常に高くなると燃料供給を停止し,燃焼を ストップする。 ④排気ガス温度センサー:燃焼が不完全な場合温度センサーが働いて燃焼を停止する。 c)主な需要先 一般家庭,学校教室,公共施設(公民館、待合室など)で使用されている。 d)CO2削減への貢献 木質ペレット燃焼機器は環境負荷がゼロと設定されており,ペレットストーブで暖をとれ ば,CO2排出削減に貢献できる。1シーズンペレットストーブを使った場合,一般家庭の石 油ストーブ換算で約2トンのCO2排出削減に貢献しているという実験結果がある。 e)スリム型(NSS 型)の開発 既に392台の販売実績がある NS(T)型に加えて,スリム型(NSS 型)の開発を行った。 能力は小さくても,コンパクトでスリムなペレットストーブが欲しいという多くの代理店・ユ ーザーの意見を反映させると共に,メインテナンスの利便性を向上させたスリム型を開発 し,今冬から販売開始の予定である。 スリム型は NS(T)型の80%の暖房能力である。外観は NS(T)型の重厚さが消えており, 一般家庭への普及が期待される。色は黒つや消し,ワインレッドは NS(T)型と同じである が,ダイニングルームなどに適応できる色として,ブラウン色を追加した。 表1.に NS(T)型、NSS 型の製品仕様を示す。 旬レポ中国地域 2011 年 10 月号 3 表1.NS(T)型、NSS 型の製品仕様 品番・型式 NS(T)型 黒つや消し,ワインレッド,ピアノ 色 ブラック NSS 型(スリム型) 黒つや消し,ワインレッド,ブラウン 外形寸法(mm) 795H x 620W x 600D 845H x 480W x 600D 重量 約 75kg(燃料を含まず) 約 72kg(燃料を含まず) 暖房の目安(最大) 木造:20~30 畳,非木造:40 畳 木造:16~24 畳,非木造:32 畳 暖房出力(発熱量) 4.1~12.5 kW 3.2~10.0 kW 0.74~2.24 kg/hr 0.6~1.8 kg/hr 燃料タンク容量 20 kg 17 kg 定格消費電力 0.104 kW/hr 0.104 kW/hr ホワイト,全木(混合) ホワイト,全木(混合) 燃料消費量 推奨ペレット種類 図2.NS(T)型 ワインレッド 図3.NS(T)型 黒つや消し 旬レポ中国地域 2011 年 10 月号 4 図4.NSS 型(スリム)ブラウン 図5.NSS 型(スリム)ワインレッド 図6.NSS 型(スリム)黒つや消し 旬レポ中国地域 2011 年 10 月号 5 2)ペレットボイラ 名称は「木質ペレット焚き温水ボイラ」で,4~5人家族の給湯用として販売されている。その 特徴は以下の通りである。 a)小型温水ボイラ 木質ペレットを燃料とし,自動点火方式で温水を発生させ,150 リットルの温水タンクを有す るので,連続給湯が可能である。 b)ボイラ区分 設計圧力は 0.1Mpa 未満,伝熱面積は2m2で簡易ボイラの区分に該当する。従って、熱管 理者などの特別な管理者は不要である。 c)自動運転 温水の温度は、設定された温度で自動的にコントロールされる。 バーナーは自動点火・消火方式で,常に設定温度以上の湯が湯槽内にある。 d)温度設定変更 使用環境や条件に応じて,湧き上がり温度や再点火温度の設定変更が可能である。 e)材質 温水に接するボイラ部分はステンレス鋼製で,沸きあがった温水はそのまま炊事などに 使うことが出来る。 f)タイマー機能 ボイラ運転時刻の設定が出来る。湯を使わない深夜などは,運転を停止させておくことが出 来る。 g)燃料タンク(ペレットタンク) 170リットル(約100kg)の容積のペレットタンクを備えている。 ペレットタンクはペレット残量が見えるようにレベルゲージが付いる。 h)安全装置 ペレットボイラを安全に運転するために,以下の安全装置を装備している。全てボイラの運 転を停止する機能である。 ①排気ガスセンサー 排気ガス温度高温異常(異常燃焼のキャッチ) 排気ガスが異常に低い状態が続く(燃焼不良のキャッチ) ②温水センサー 湯槽内温度過温のキャッチ ③排気ファン圧力センサー 排気ファンの異常キャッチ(正常燃焼の確保) ④火炎センサー 正常な着火炎の確認で正常燃焼していることを確認 ⑤感震センサー 地震発生時に運転を停止 旬レポ中国地域 2011 年 10 月号 6 i)CO2削減への貢献 ペレットストーブと同様,CO2削減運動に貢献できる。 給湯用ペレットボイラは年間を通じて使われるので平均的にCO2削減効果があるが,年間 での削減量は4人程度の家庭でのモニタリングによれば,1.5トン/年という結果が出た。 (これは,お湯の使用量によって増減するのでこれを絶対値として採用は出来ないので,参考 値として考えること。) 表2.木質ペレット焚き温水ボイラの仕様 品番・型式 外形寸法(mm) NTW-150 型 1750H x 630W x 1400L 本体重量 270kg 定格熱出力 30kW 伝熱面積 1.8m2 ボイラ構造 煙管式 燃料消費量 8.1kg/hr (燃焼時) 燃料タンク容量 約 100kg 定格消費電力 0.212kW/hr (運転時) 推奨ペレット種類 ホワイト、全木(混合) 図7.外観寸法 旬レポ中国地域 2011 年 10 月号 7 図8.一般家庭設置例 【参考】 銘建工業(株) 日鋼設計(株) (株)日本製鋼所 http://www.meikenkogyo.com/ http://www.nikkosekkei.co.jp/kanren.htm http://www.jsw.co.jp/ 経済産業省 中国経済産業局 広報誌 旬レポ中国地域 2011 年 10 月号 Copyright 2011 Chugoku Bureau of Economy , Trade and Industry. 8
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