K5-20 - 日本大学理工学部

K5-20
アーク溶接構造の公称構造応力算出法
-アーク溶接部 FE モデルの検討-
Method for Calculating Nominal Structural Stress of Arc Welded Structure
-Study of Finite Element Modeling of Arc weld-
○井上 秀一1, 中野 大輝1, 岡部 顕史 2, 冨岡 昇 2
*Shuuichi Inoue1, Taiki Nakano1, Akifumi Okabe2, Noboru Tomioka2
Recently, a development of the fatigue life prediction technology of the arc weld by CAE is demanded. In our laboratory, the
nominal structural stress (NSS) calculation method of the spot weld is studied in order to improve the fatigue life prediction
technology of the spot weld. This NSS calculation method was applied to the arc welded joints, it was shown that the nominal
structural stress was able to be obtained accurately by using the FE model which consists of the beam elements and the rigid
bar elements. In this study, using the arc welded FE model which consists of the shell elements, the technique that is able to be
obtained the nominal structural stress accurately is studied.
1. 緒
言
自動車のシャシ構造に多用されるアーク溶接部について,
CAE による疲労寿命予測手法の確立が望まれている.アーク
溶接の疲労き裂は,通常,溶接止端付近から発生する傾向に
あ る た め , 溶 接 止 端 部 に 生 じ る 公 称 構 造 応 力 (Nominal
structural stress:NSS)を精度よく得ることができれば,アーク
溶接構造の疲労寿命を予測することが可能になると考えられ
る.これまでの研究で,スポット溶接構造の公称構造応力算
出法[1]をアーク溶接に適用し,精度良く公称構造応力が得ら
れることが示されてきた[2].公称構造応力算出をアーク溶接
構造に適用するために,図 1 に示すようなビーム要素と剛体
バー要素から成る FE モデルを作成する必要があった.しか
しながら,このモデル化は,対象構造が大きい場合に,作成
することが困難となる.
本研究ではアーク溶接部を簡易的にシェル要素でモデル化
した FE モデルから,
公称構造応力を算出する方法を提案し,
その解の精度について検討する.
解析対象モデル
解析対象としたアーク溶接継手を図 2 に示す.図 2(a)は,2
枚の平板を重ね,上板と下板をアーク溶接した LAP 継手 FE
モデルを示し,上板端部に荷重 F を作用させ,下板両端を拘
束した.図 2(b)は,2 枚の平板を T 字に合わせ,上板と下板
を片側のみアーク溶接した T 字継手 FE モデルを示し,上板
上部に荷重 F を作用させ,下板両端を拘束した.
アーク溶接部については,図 3(a)はビーム要素と剛体バー
要素から成る LAP 継手 FE モデルを示し,図 3(b)は止端部が
ビーム要素および剛体バー要素から成り,それ以外がシェル
要素のモデルを示し,図 3(c)は止端部がビーム要素で成るモ
デルを示す.図 4 は T 字継手 FE モデルを示し,アーク溶接
部は同様とする.
2.
Figure 1. FE model consists of the beam elements and
the rigid bar elements using NSS calculation method
(a)Base model
(b)Beam & Rigid bar
(c)Beam
Figure 3. FE shell model of arc weld (LAP joints)
(a)Base model
(b)Beam & Rigid bar
(c)Beam
Figure 4. FE shell model of arc weld (T joints)
(a) LAP joints
(b) T joints
Figure 2. FE shell model of arc welded structure
Figure 5. NSS calculation method of arc welded structure
1:日本大学・学部・機械 2:日本大学・教員・機械
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3. アーク溶接構造の公称構造応力算出法
はじめに図 1 に示すようなアーク溶接部がビーム要素と剛
体バー要素からなる FE モデルから,公称構造応力を算出す
る手法について説明する.この手法は,アーク溶接止端部を
スポット溶接のナゲットとして見なし,応力解を得る手法で
あり,図 5 に示すように,止端部はビード幅を直径 d とする
剛体円とする.また止端部を中心とするある直径 D 円板内の
応力は以下のようにして得ることができる.
1) 円板の中央に作用する荷重(分担荷重)を荷重条件,円板
円周上の変位を変位境界条件とする問題を,板理論を用
いて解き,円板内の応力解を得る.
2) 内外周を固定した円板内に強制変位が生じた問題を,板
理論を用いて解き,円板内の応力解を得る.
3) 上記 1)と 2)で得られた応力解を重ね合わせ,円板内の
応力解を得る.
ここで,上記 2)の強制変位とはアーク溶接のビード部で生じ
る変位のことである.
本研究では,図 3,4 に示すような止端部をビーム要素や剛
体バー要素,それ以外をシェル要素でモデル化した FE モデ
ルから,アーク溶接止端部に生じる公称構造応力を以下のよ
うにして求める事とする.
11) 図 3,4 に示すようなアーク溶接部をシェル要素でモデ
ル化し, FE モデルを解析する.
12) 止端部に作用する分担荷重と先端部を中心とするある
直径 D 円周上の変位,ならびにビード部に生じる変位(強
制変位)を取得し,公称構造応力算出法により円板内の応
力解を算出する.
4. 解析結果
本研究では,図 1 に示すようなアーク溶接部をビーム要素
と剛体バー要素でモデル化し,かつ詳細にメッシュ分割した
FE モデルから得られる応力解を正解値として用いる.
図 6(a)は,図 3 の各 LAP モデルにおいて上板端部に荷重
Fx100[N]を作用させたときの溶接止端周辺の主応力分布
を示す.アーク溶接部では誤差が発生したが,公称構造応力
は正解値と一致した.図 6(b)は,最大主応力が生じる角度
330°上の半径 r 方向応力r,周方向応力,ならびにせん
断応力rの分布を示す.アーク溶接部をシェル要素でモデル
化し,FE モデルから得られた応力分布は,正解値と一致し,
止端部周辺の応力を精度よく得られることがわかる.
同様に,図 7(a)は,図 4 の各 T 字モデルにおいて上板端部
に荷重 Fx100[N]を作用させたときの溶接止端周辺の主応
力分布を示し,図 7(b)は,最大主応力が生じる角度325°上
の半径 r 方向応力r,周方向応力,ならびにせん断応力r
の分布を示す.得られた主応力分布は正解値と一致し,止端
部周辺の応力を精度よく得ることができた.
図 3,4 に示す LAP モデルと T 字モデルにおいて荷重の方
向を変化させたときの公称構造応力値を表 1,2 に示す.本手
法を用いて,精度よく公称構造応力を得ることができた.
5. 結
言
アーク溶接部を簡易的にシェル要素でモデル化した FE モ
デルから,本手法により,公称構造応力を精度よく得られる
ことを示した.
参 考 文 献
[1] 久保,岡部,冨岡, “スポット溶接構造の公称構造応力算出法
-フランジ端近傍にあるスポット溶接の場合-”, 自動車
技術会論文集, Vol.39, No.2, pp.81-86, 2008
[2] 加藤,岡部,冨岡,“アーク溶接構造の公称構造応力算出法”,
自動車技術会論文集, Vol.39, No.2, pp.351-356, 2008
(a) Principal stress p on the circumference of arc-weld toe
(b) Stress r, , r on the line of =330°
Figure 6. Stress distribution of LAP joints
(a) Principal stress p on the circumference of arc-weld toe
(b) Stress r, , r on the line of =325°
Figure 7. Stress distribution of T joints
Table 1. Nominal structural stress of LAP joints
LAP joints
Fx100[N] Fy100[N] Fz100[N]
NSS Error NSS Error NSS Error
FE model
[MPa] [%] [MPa] [%] [MPa] [%]
Beam & Rigid bar
5.189 +2.74 4.398 0 53.33 
Beam
5.276 +4.45 4.205  63.03 
Base model
5.051  4.398  53.28 
Table 2. Nominal structural stress of T joints
T joints
Fx100[N] Fy100[N] Fz100[N]
NSS Error NSS Error NSS Error
FE model
[MPa] [%] [MPa] [%] [MPa] [%]
Beam & Rigid bar
81.04  2.138 0.78 71.02 2.97
Beam
79.60 +10.1 1.820 14.2 64.85 
Base model
72.29  2.122  73.19 
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