「トコジラミ(南京虫)蔓延防止対策への第一歩」

「トコジラミ(南京虫)蔓延防止対策への第一歩」
※この記事は日観連機関誌の 2011 年新年号に掲載されました。
観光立国実現を目指し訪日外客 3 千万人達成に
向けて国をあげて取り組んでいますが、一方で訪
日外客の荷物に着いて持ちこまれるトコジラミ
(南京虫)の被害が年々拡大しています。日本で
は、ほとんど居なくなったのですが外国からやっ
て来るトコジラミは強くなって日本の市販の薬
ではなかなか駆除できません。このトコジラミに
棲みつかれると私どもは被害者ですが、これを駆
除できないで宿泊のお客さまが噛まれると、今度
は私どもが加害者になるという厄介な代物です。
トコジラミの国内での蔓延を防ぐには国に対
策を立ててもらわなければいけません。
そこで日観連としては 2010 年 10 月 8 日に観光
庁に「南京虫蔓延防止対策について」の要望書を
提出しました。全国の会員から寄せられている南
京虫被害の現状を報告し政府として南京虫の蔓
延防止対策を早急に講じてもらうことを要望し
ました。
そして 2010 年 10 月 18 日には、全旅連の佐藤会
長、清澤理事、日観連の中村専務理事、現場体験者
として私の 4 人で厚生労働省健康局、堀江生活衛
生課長に「トコジラミ駆除対策の要望書」を 提出
しました。
その内容は、1)「駆除薬剤の開発(承認)」現在
の市販の殺虫剤では完全に駆除できないので、早
急に専用の駆除剤を開発(承認)していただきた
い。 2)「持ち込み防止策」、海外から持ち込まれな
いように空港での消毒を徹底して欲しい。 3)「相
談窓口の開設及び駆除対策マニュアルの作成、配
布」をしてほしい。 4)「消毒費用の補助」、保健所
による無料消毒の実施あるいは消毒費用に対す
る補助制度の創設をお願いしたい。 5)「風評被害
対策」保健所等へ相談した際、風評被害が起こら
ないような対策を講じて欲しいと要望しました。
その後、日本防疫殺虫剤協会主催の「トコジラ
ミに関する第 2 回目の勉強会」が日本橋で 2010 年
11 月 10 日に開催されると聞き旅館業界から全旅
連の市川事業部長と私の2人で参加しました。
長年トコジラミの研究をしている池袋保健所
の矢口昇先生が「トコジラミの現状と課題」につ
いて話をしてくれました。
現在のトコジラミの被害は外国人が多く利用
するホテル・旅館だけでなく、不特定多数の人が
利用するサウナや、日帰り温泉、漫画喫茶や図書
館、そして一般住宅にも発生し全国から相談が来
るそうです。また日本の建築物の特徴である木や
紙を多く使った和式の部屋に入り込まれると駆
除が容易でなくなるそうです。
初期対応が重要ですが、目で見つけるのは難し
く、また市販の薬ではなかなか駆除できないので
一般の人にトコジラミに対する知識の普及とと
もに我が国の現状に見合った対策の構築が急務
であると話されました。
その他にトコジラミの発生している部屋に宿
泊者として泊まった体験談や消毒会社による防
除事例が公開されました。
日本に侵入してきたトコジラミの実体とその
防除には殺虫剤会社も消毒会社も苦慮されてい
ることを知りました。
研修会の後に日本防疫殺虫剤協会の役員の森
岡氏が訪ねて来てくださって、これから日本に見
合った予防、そして駆除の対策マニュアルを作り
たいので宿泊業者としての意見を欲しいと言わ
れて協力したいと返事をしました。
ところで 50 万ドルの予算でトコジラミ撲滅作
戦を展開するニューヨーク市では衛生局の作業
部会の新設、トコジラミの情報を提供するウェブ
サイトの開設、トコジラミの防止と駆除方法、駆
除剤の選び方、などいろいろな対策を講じている
そうです。
現在、全旅連では南京虫対策に厚生委員会に於
いて、今後検討をするようです。都連の佐久間共
済部長は旅館賠償責任保険で南京虫被害が補填
されないか保険会社と折衝しています。私も日観
連東京支部で南京虫の研修会を開催することを
提案しています。
ところで 2010 年 12 月 21 日に第1回のトコジ
ラミ研究会が日本防疫殺虫剤協会の主催で開催
されることになりました。検討事項は 1)トコジ
ラミの現状 2)今後の対策(1.情報の共有化 2.
防除マニュアルの作成) 3)その他 です。
参加メンバーは国立感染症研究所、池袋保健所、
日本環境衛生センター、日本ベストコントロール
協会、それに宿泊業界から全旅連、日観連、全日本
シティホテル連盟です。
今年の夏はこれまで以上にトコジラミ被害の
増大が予想されています。この研究会が我が国の
防除対策の確立の第一歩になることを願ってい
ます。