「FX特別レポート」(9/9) 自民党総裁選と為替の関係 (株)マネー

「FX特別レポート」(9/9)
自民党総裁選と為替の関係
(株)マネー&マネー編集長・吉田
恒
自民党総裁選が近付いてきた。永田町関係者と話していると、「小泉再選」がほぼ確定的
になっているようだ。
今回はそんな政治要因と為替の関係について考えてみる。
◆第一回投票で小泉再選決定か
自民党総裁選は、小泉現総裁のほかに亀井元政調会長など 3 氏が立候補を表明している
が、世論調査の支持率などを見る限り、明らかに「一強他弱」の構図である。
それでも、テレビなどで、派閥別の支持動向分析などの解説を聞いていると、第一回投
票で決着がつかず、決戦投票に持ち込まれれば、1 位の小泉総理に対し、いわゆる「2・3
位連合」が成立すれば票読みは微妙なようにも聞こえるが果たしてそうだろうか。
永田町関係者たちと話していると、すでに勝負はついたようだ。もちろん小泉再選、し
かも第一回投票で決着との見方が有力になっているようだ。
専門家の指摘を聞いていてなるほどと思うのは、反小泉勢力が「統一候補」擁立に失敗
した時点で勝負はついたということだ。その「統一候補」として最有力視されたのが堀内
総務会長だったが、つまりその堀内氏が小泉再選支持を表明、統一候補シナリオが消えた
ところで、小泉再選はほぼ確定したということである。
◆自民大分裂寸前だったのか
このように、小泉総理からすると最大の脅威だった「統一候補・堀内擁立」シナリオだ
が、それを消したのは一般報道を見る限りでも旧経世会、橋本派の青木参院議長なのだろ
う。同じ派閥で、反小泉勢力の総帥・野中元幹事長と対立してまでも、小泉再選支持を変
えず、それどころか堀内に立候補を断念させた張本人のようである。
問題はなぜ青木がそこまで小泉再選にこだわったのかということだが、一般的には 2001
年参院選を「小泉人気」で勝利したことの恩返しと、来年の参院選で引き続き「小泉人気」
以外の選択肢なしとの判断からとの見方が多いようだ。
ただし、ある新聞に載っていた元自民党大物代議士のコメントが興味深かった。その代
議士は、「竹下(元総理)が健在なら経世会は小泉再選支持で動いただろう」という。
「橋本派が反小泉でまとまり、小泉再選失敗となれば、小泉は自民党を離党、解散・総選
挙に打ってでて、いよいよ自民党は分裂ということになりかねない。それを回避するため
に、竹下なら小泉再選支持に回り、今回青木が小泉支持に動いているのも同じ判断だろう」。
◆堀内財務相、竹中金融相
いずれにしても、このまま小泉再選となれば、これまで見てきたことから功労者は一に
青木、二に堀内ということになる。青木はキングメーカーとして表舞台は望まないだろう
が、堀内には「次期財務大臣」密約説があるわけだ。
個人的には、小泉総理と言う人物は人事権へのこだわりが強い印象があるため、それを
侵されかねない「堀内財務大臣」がスンナリ受け入れられるかは微妙な気もするが、よく
わからない。
ところで、堀内サイドからすると、
「財務大臣」ポストが、小泉再選支持に動くほど魅力
的だったということになるわけだが、この理由として堀内氏が関与しているリゾート開発
会社の経営問題を注目する見方はあるようだ。財務大臣の直接の所管ではないものの、金
融庁との緊密な関係を通じ、金融ハードライナーの竹中金融担当大臣を牽制するのではな
いかとの見方だ。
もちろんそのシナリオは、竹中氏が金融大臣を続投した場合の話となる。少し前は金融
大臣については辞任説が有力だったが、ここに来てむしろ経済財政担当大臣との兼務を外
れ、金融大臣に専任するとの見方も多くなっている。ただし一方で、少なくとも、派閥を
割りかねないリスクを覚悟で小泉再選を支持した青木は金融大臣交代を強く望んでいると
の見方もあり、この辺りは依然微妙だ。
◆小泉政権ならではの「115 円防衛」政策
さて最後に為替との関係。為替は、日本の通貨当局による「115 円防衛」政策変更の有無
で大きく変わってくる。そしてその「115 円防衛」政策は、まさに構造改革、財政再建、公
共事業削減、地方から都市への回帰を進めてきた小泉政権ならではの政策と言えるものだ。
これが、反小泉候補たちが唱える、財政拡大、公共事業拡大となれば、方向性は再び都
市から地方へとなり、その意味で輸出産業支援の円高阻止策の位置付けは低下するため
「115 円防衛」方針は変更される可能性が高くなるだろう。
こんなふうに考えると、小泉政権継続は、為替にとってもきわめて大きな意味のあるも
のだと思う。
(Y)