技報 第 9 号(2011 年) 片持ち式の ST 版を用いた研究棟の建設事例 -東北大学(片平)インテグレーション教育研究棟- 1.はじめに 建築本部 設計部 福井剛 建築本部 設計部 江口尚之 大阪支店 建築部 田中敏幸 2.2 PC 工事概要 片平キャンパスは,大正 13 年に竣工した東北大学最古のキ ラボ棟は長辺方向 52.9m,短辺方向 26.6m,最高高さ 22.6 ャンパスであり,歴史的価値のある建築物が今も残っている. mで,南北方向には片持ち方式の ST 版が迫り出しており,そ 本建物はそれらの旧教室群の中庭に位置する地上5階建ての の長さは各フロアで異なっている(最大 5.95m の片持ち) . 教育研究棟(ラボ棟)である.ラボ棟北側隣接の旧教室は既 16.5mスパンの床構造はプレテンション方式の ST 版(一方向 存の外壁を残したままオフィス棟として新築(鉄筋コンクリ 版)で形成されている.4 階平面図と断面図を図-1,2 に示す. ート造)され,ラボ棟との間を鉄骨のガラスハット屋根とし て覆い,吹き抜け空間を演出している(写真-1).ラボ棟の構 既存外壁(スクラッチタイル貼り) 造方式 はプレキャス ト・プレスト レストコンクリ ート造 (PCaPC)が採用され大空間確保の為,床には ST 版が用い オフィス棟 N られている.また,外部の南北方向に片持ち方式の ST 版が用 吹き抜け部(ガラスハット屋根) 本報告では,ラボ棟の実施概要と主に片持ち方式の ST 版の 5,9 50 いられているのが本建物の特徴である(図-1 参照) . LY 4 5, 500 施工概要について紹介する. 16,5 00 5,5 00 LY 3 LY 1 ラボ棟 2 ,5003, 350 5 ,500 LY 2 7,2 00 4階伏図 L X0a 7,2 00 5,7 50 L X0b LX 1 5,7 50 5,7 50 48 ,900 LX 2 LX 3 5,7 50 5,7 50 5,75 0 6,5 95 LX 4 LX 5 LX 6 LX 7 6, 300 OX10 PC合成床版(ST版) 場所打ちRC部(既存躯体解体後新築) PCa・PC梁 片持ち式PC合成床版(ST版) 鉄骨 図-1 4 階平面図 47 0 4 , 05 0 2.1 建築工事概要 3 ,5 5 0 3 ,5 0 0 5, 5 30 アンボンドPC鋼材 ▽3 FL 4, 20 0 研究新営工事(ラボ棟) 工事場所 :宮城県仙台市青葉区片平二丁目 1 番 1 号 :東北大学 設計 :株式会社三菱地所設計 監理 :東北大学施設部・株式会社三菱地所設計 施工 :戸田建設株式会社 階数 :地上 5 階 建築面積 :2,512.02m2 ▽2 FL 4, 05 0 建築主 20 ,4 0 0 4 , 05 0 ▽4 FL :東北大学(片平)インテグレーション教育 3 , 35 0 5 , 95 0 2 ,1 0 0 7 00 ▽1 FL 最高高さ :22.60m 延床面積 :9,149.86m2 5 ,5 0 0 L Y 1 5, 5 00 16 , 50 0 L Y2 構造種別 :PCaPC 造 (一部,鉄筋コンクリート造,鉄骨造) PC工期 :2010 年 5 月~2011 年 1 月 4 70 アンボンドPC鋼材 ▽5 FL 2.工事概要 工事名 2 , 63 0 4 , 05 0 写真-1 建物内観 15 , 56 0 アンボンドPC鋼材 1 9 0 ▽R FL OX 11 PCa・PC柱 図-2 断面図 5 , 50 0 7 , 72 0 LY 3 L Y 4 技報 第 9 号(2011 年) 2.2.1 大梁・柱 は,PC 梁内に埋め込まれた鋼製のアンカーキャップ(グラウ 長辺方向の PC 大梁の側面は,ST 版を支承するため T 字で トホース付)に下端筋を差込むように据え付け,その後無収 連続的に欠き込まれた形状となっており,設備用の 300φの 縮モルタルを注入するというものである.この際,アンカー 連続大開口を有している(写真-2 参照) .また,PC 柱で LX0b, キャップの形状は架設時の施工性(下端筋を差込んで降ろす LX2,4,6 通りの PC2 タイプもフカシ部に T字の欠込みを設け, 方法)を考慮し,クリアランスをとって縦長になっている. 直接 ST 版を支承している(写真-3 参照). ST 版架設時とケーブル緊張後の状況を写真-6,7 に示す. 写真-4 ST 版梁承け部 写真-5 下端筋取付状況 写真-3 柱の ST 支承 写真-2 大梁側面 2.2.2 片持ち式の ST 版 荷重条件の厳しい片持ち式の ST 版にはアンボンド PC 構造 が採用されており,その鋼材はトップコン内に配置されてい る.この PC 鋼材は緊張端を片持ち先端に,固定端を片持ち 基部に連続する ST 板のトップコン内部に設けている.片持ち 式の ST 版の詳細を図-3 に示す.この部位においては定着性 能の確認実験を事前に行っており,定着部と打ち継ぎ面に有 害な変形および損傷が無い事を確認した. 500 883 500 1,695 PC鋼より線 2c-21.8φ 1,440 380180 880 PC鋼より線 各1c-21.8φ 500 765 135 ▽4FL 720 180 900 500 790 110 300 500 1,440 378 180 @75x6= 20 450 30 14-D16 写真-6 片持ち式 ST 版架設状況 900 345250 845 887093 圧着グリップ PL-135x135x28 14-D16 @75x6= 20 450 30 250 1,000 2,500 PS1・cPS1アンボンドケーブル配線図(4F) 5,950 LY4 :トップコンクリート 940 470 470 1,695 940 470 470 PC鋼より線 1c-28.6φ 500 900 PC鋼より線 1c-28.6φ 720 180 900 @75x6= 20 450 30 300 500 760 140 ▽4FL 500 790 110 940 373195373 14-D16 圧着グリップ +PL-155*165*32 140 2,500 PS2・cPS2アンボンドケーブル配線図(4F) 写真-7 片持ち式 ST 版(L=5.95m) 4.まとめ 片持ち方式の ST 版に配線したアンボンドケーブル定着具 5,950 LY4 :トップコンクリート をトップコンクリート内部に納めた工法について,打継ぎ面 の定着性能確認試験を行い,十分な定着性能を有している事 図-3 片持ち式 ST 版詳細図 3.ST 版施工方法 ST 版架設は,版両端を PC 梁欠込部のネオプレンゴム支承 に接地するまで下ろし、支承部のかかり代が片側に偏らない ように両端部で振り分け調整し据付ける.片持ち版の据付け を確認した.また,実例の少ない片持ち方式の ST 版の施工方 法を提案し,安全に施工して竣工を迎えることができた. Key Words:PCa・PC 工法,片持ち式 ST 版,打ち継ぎ面, 下端筋 は,片側を PC 梁欠込部に差込み反対側は支保工上に据付け る.承け側の PC 梁には ST 版断面の輪郭状にノロ止め用ネオ プレンスポンジゴムが貼付されている.スポンジゴムは予め 製作工場で取付けて出荷している(写真-4 参照) .また,本工 事では片持ち式 ST 版の地震時上下動への対策として,一部の 片持ち部材を対象に下端筋を設けている(写真-5) .施工方法 福井剛 江口尚之 田中敏幸
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