当日使用したPPT - 河川情報センター

H26 河川情報シンポジウム
ベトナムHuong(フォン)川における
洪水管理情報システムの開発
(一財)河川情報センター
研究第一部 寺川
陽
お話しする内容
 フォン川流域の概要
 洪水管理情報システム(プロトタイプ) 開発の
背景
ベトナムの洪水管理体制
ニーズ
プロトタイプの概要
モデルの概要
フォン川流域の概要
システム構成
機能
まとめ
熱帯モンスーン地域に位置し、人口8.900万人の約45%が標高5m
以下の低地に暮らしているベトナムは、水害に対する被災ポテンシ
ャルが大きい国です。ベトナム中部に位置する古都フエは、フォン
川の氾濫によってたびたび水害に見舞われています。
フォン川流域図
ホンディエンダム
流域面積 2800km2
フエ市
ターチャックダム
ビンディエンダム
雨量・水位観測地点(9)
雨量観測地点(4)
1
フォン川水系主要3ダムの諸元
ダム諸元
単位
ピーク洪水流入量 ※1
515
6,989
m3/s
G
ダムの形式
目的
発電・農水(治水)
洪水時最高水位 ※1
Normal water level ※2
最低水位
総貯水容量
洪水調節容量 ※1
Active storage
capacity ※2
死水容量
(写真提供:JICA専門家 八条裕己氏)
ビンディエン
km2
流域面積
ホンディエン
707
9,430
G
発電・農水
ターチャック
717
14,200
G+R
発電・農水・治水
106m3
86.0
85.0
53.0
424
(70)
106m3
344
351
348
106m3
79
470
73
m
m
m
106m3
59.9
58.0
46.0
821
53.1
45.0
23.0
421
556
※1 1/1000年規模洪水時の値(日本のダムの水位・容量の考え方とは異なる)
※2 ビンディエン、ホンディエンについては非洪水期の利水容量分、ターチャックは詳細不明
中部ベトナムにおける近年の水害
1999年11月水害 死者621名、被害総額300億円
同 12月水害 死者322名、被害総額70億円
2009年9月水害 死者162名 浸水家屋29.5万戸
2013年9月19日、10月3日、10月15日、11月15-17
日とたて続けに4回の水害 被害総額30億円
1999年や2009年の洪水では、農業用ダム等の決壊
が多数発生しており、下流域の被害軽減とダムの安
全確保が政府の最重要課題のひとつとなっている
S&P社 レポート
2014年5月15日付
Climate Change Is A Global Mega-Trend For Sovereign Risk
(気候変動は、信用リスクに関する国際的なメガトレンドだ!)
Table Of Contents
Climate Change Is More Difficult To Control Than Demographic
Change
How Climate Change Can Impact Sovereign Ratings
Lower-Rated Sovereigns Appear More Exposed
Notes
Related Criteria And Research
http://twitdoc.com/upload/lisa_nugent/climate-change-is-a-global-megatrend-for-sovereign-risk-15-may-14-.pdf#sthash.8KbJ3od2.dpuf
2
(S&P レポート)
・ 海抜5m以下に住む人口の割合
・ GDPに占める農業生産額の割合
・ ノートルダム大学 による脆弱性指標
に基づいて、調査対象116か国の気候変動に
対する脆弱性にかかる信用リスクをランク付け
ベトナムは、カンボジアに次いで
ワースト2位の評価とされている
外資の導入を図り、社会経済の発展を
促進するうえで、水害リスクの軽減は
国家的な課題
ベトナムにおける洪水管理に関する組織体制
水資源法(2012年改正)
天然資源環境省(MoNRE)
水文気象局(NHMS)
農業農村開発省(MARD)
水資源研究院(VAWR)
地方省 天然資源環境局(DoNRE)
地方省 農業農村開発局(DARD)
中央風水害対策委員会(CCFSC)
地方省 風水害対策委員会(PCFSC)
プロトタイプ開発の背景
治水対策の推進は、ベトナムの社会経済発展のための国家的な課
題です。ダム施設の安全を守りつつその機能を最大限に発揮して、
下流域の水害の防止・軽減を図る上で、気象・水文観測体制の整
備と、観測・予測情報を迅速・的確に共有するための情報システム
の整備が求められています。
首相通達(2014年9月)に基づく
新しいダム操作のフロー
2014年12月にMARD に防災局設置
洪水時の危機管理体制強化+平時からの防災情報管理
プロトタイプ試験運用の目的
観測体制の充実や本格的な洪水管理情報シ
ステムの整備には早くても5年程度要
ベトナム政府は、段階的にでも早急かつ着実
な改善を強く希望
現状の諸条件のもとで緊急・暫定的なプロト
タイプを今年9月から試験運用開始
精度が十分でない情報であっても、実際に収
集・加工・共有を図ることを通じて、実務上の
課題解決に寄与
プロトタイプの概要
河川情報センターが過年度に構築したタイ国チャオプラヤ川流域洪水
予測システムをベースとして、フォン川を対象とした洪水管理情報シス
テムを開発しました。実際に現場実務で活用され、将来本格的なシステ
ムを導入・運用することになった場合の基礎となることが期待されます。
3
プロトタイプの基本構造(1)
プロトタイプの基本構造(2)
 タイ国チャオプラヤ川流域洪水予測システム
がベース
 RRIモデルを採用
標高データ
JICAによる既往調査成果で作成した詳細DEMデータ(10mx
10m)の平均値として設定
土木研究所 ICHARMが開発・普及
2次元の陸域(斜面)モデルと1次元の河道モデルを一体化
するとともに、中間流や鉛直浸透流等流出の物理メカニズム
を一定程度反映できるモデルであり、河道流下と洪水氾濫を
同時に、迅速に解析できる特徴を有している。
 メッシュサイズ
土地利用データ
JICAの既往検討において作成されたGISデータに基づいて、
(モデルパラメータ設定の必要性から)各メッシュごとに、森林
域、非森林域及び水面の3種類に分類
3ダムの上流域を約1㎞(10,800メッシュ)、下流域を約250m
(172,800メッシュ)
入力条件
パラメータ同定
境界条件
上流域モデルは、雨量データを入力して計算した下流端流
量をダム流入量とし、下流域モデルの上流端条件について
は、ダム運用を考慮したダムからの放流量を与える。堤防高
は上流、下流部ともにゼロとし、河道と周辺流域を水が行き
来しながら流下すると仮定
モデルのパラメータ値は、土地利用区分の関数として与え、
洪水・氾濫状況のデータが比較的充実している2009年洪水
について同定
雨量データ
原則として、雨量観測所での観測値(ティーセン分割)
実績データが得られない場合の代替及び予測雨量として、
日本気象庁の全球数値予報モデルによる50㎞メッシュの予
測値(GPV)を境界条件とし地形データも加味した84時間先
までの予測計算によって5㎞メッシュにスケールダウンした降
雨予測値を活用
下流基準地点の水位・流量再現計算結果
(mm/hr)
2009 Flood
浸水エリアの再現計算結果例
雨量
40
Huong River Basin
Average Precipitation
30
20
10
0
9/27
水位
Binh Dien
water level (m)
Observed (2009)
実測値
10
9/29
9/30
10/1
Kim Long
水位
実測値
Observed (2009)
8
RRI Model
RRIモデル
8
RRI Model
RRIモデル
6
4
6
2
4
2
0
0
‐2
‐2
9/27
‐4
9/27
9/28
9/29
9/30
10/1
Binh Dien
discharge (m3/s)
10/2
流量
2500
2000
9/28
water level (m)
10
12
9/28
9/29
9/30
10/1
Kim Long
discharge(m3/s)
10/2
流量
6000
Observed (2009)
実測値
Observed (2009)
5000
RRI Model
RRIモデル
4000
実測値
RRI Model
RRIモデル
1500
3000
1000
2000
500
0
9/27
1000
9/28
9/29
9/30
10/1
10/2
0
9/27
9/28
9/29
9/30
10/1
※実測流量は実測水位をRRIモデルの計算結果から求めたH-Q式により変換したもの
10/2
1999年洪水時の浸水エリア
観測データを、おおむね再
現できている
2009年洪水時の観測データの再現は、おおむね良好
4
プロトタイプのシステム構成
プロトタイプのトップ画面
流域の概況データを表示するとともに,
各表示画面へのリンクボタンを配置
プロトタイプ画面例(1)
流域概況図
プロトタイプ画面例(2)
ダム操作シナリオ比較
4種類のダム操作
シナリオ(選択)によ
る将来のダム貯水
池の水位・貯留量
や,河道の水位・
流量のシミュレー
ション結果を表示
Mapボタンをクリックすることで,フォン川流域の地図を表示する.氾濫エリ
アの変化をアニメーション表示することができる.地図スケールのズームアッ
プ,ズームダウンも可能
プロトタイプ画面例(4)
プロトタイプ画面例(3)
全球数値予報モデルによるGPVデータ(50㎞メッシュ)
Weather View ボ
タンをクリックするこ
とにより,日本国気
象 庁 に よ る GPV
デ ー タ (50km メ ッ
シュ)を表示する.
表示スケールの
ズームアップ・ダウ
ンが可能
(株)HALEX提供
GPVデータに基づく解析雨量表示(5㎞メッシュ)
フォン川流域周辺について,GPVデータを用いて5kmメッシュにス
ケールダウンした解析雨量を表示する.予測雨量の時空間分布変
化をアニメーション表示することが可能
5
今後の検討項目





システムの精度検証と向上
データの蓄積とあるべき観測体制案の検討
最適ダム操作案の検討
データの収集・伝達・加工等の流れの確立
Made in Vietnam体制の構築
まとめ
 ベトナムのフォン川流域を対象とした 洪水管理
情報システム(プロトタイプ)を開発した
 気象・水文観測データや予測情報を、関係機関
が迅速・的確に共有するツールとして活用され、
洪水災害リスクの軽減に役立つ
とともに
 将来、ベトナムで本格的な洪水管理情報システ
ムを導入・整備することとなった場合の基礎となる
ことが期待される
Many thanks to
(独)土木研究所 ICHARM
(独)水資源機構
(株)HALEX
(株)建設技術研究所
ベトナム国 MARD、DARDはじめ関係機関
JICA 松木専門家(ハノイ)、八丈専門家(フエ)
END
ご清聴ありがとうございました
http://www.river.or.jp
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