第 11 回 アラブ人学生歓迎プログラム(ASP2012)趣意書 アラブと踏み出す新たな一歩 ~実践型学術交流の挑戦~ 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)奥田敦研究会 1)概要 「アラブ人学生歓迎プログラム(以下 ASP)」は、アラブ諸国で日本語を学ぶ学生を約 2 週間 SFC に 招聘し、研究会(ゼミ)の活動の一環として、SFC でアラビヤ語を学ぶ学生たちと日本語レポート作成 や日本語スキット映像の制作などを通じて行う、アラブ・イスラーム圏との学術交流プログラムである。 なお、ASP とは、Ahlan wa Sahlan Program の略称であり、ً(أهالً وسهالAhlan wa Sahlan)とは、 「ようこそ」を意味するアラビヤ語である。 2)目的 ASP においては、 「ともに学び、ともに作る」というコンセプトのもと、アラブ人招聘者と日本人学 生との間で実践的な活動が展開される。そこでは、単なる相互理解にとどまらず、自分たち自身の変化 への努力が求められる。そうした努力を通じて、互いに共有できる学びを探していく。ひいては、将来 にわたって日本とアラブ世界との関係を国益や私益を超えて友好的に発展させることのできる人物の 育成と、大学における学術交流のモデルの構築も目指す。 アラブ・イスラーム世界との信頼と友好に基づく良好な関係構築は、日本のみならず国際社会全体に おいても重要な課題となっている。本プログラムは、2002 年の第 1 回開催以来、新しい時代の日本と アラブ・イスラーム世界との関係のみならず、アラブ人同士の関係をも構築するプログラムとして、継 続的に展開されている。 3)沿革 本プログラムの発端は、2002 年 3 月に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスアラビヤ語授業の一環とし てシリアのアレッポ大学で開かれたアラビヤ語現地研修である。アラブ人学生たちの惜しみない歓迎と 真摯に学ぶ姿勢に誰もが感動し、簡単に来日できない彼らを日本に招いて、「アハランワサハラン」の 精神で迎え、自分たちが体験したように日本で生きた日本語に触れて欲しいという思いが芽生えた。こ うして、お世話になったアラブ人への感謝の気持が動機となり、同年 7 月に「シリア人学生歓迎プログ ラム」として日本語を学ぶシリア人学生 3 名を招聘した。以降、日本とアラブの学生が等身大の学び合 いと密接な交流を重ね、2011 年の第 10 回アラブ人学生歓迎プログラムまでにアラブ 6 カ国から、計 48 名を招聘した。 同時に、奥田敦研究会では、アラビヤ語を学ぶ日本人学生が原則として年に 2 回アラブ・イスラーム 諸国を訪問するプログラムも実施しており、スキットビデオの協働制作、ワークショップ、文化交流等 を実施し、アカデミックな分野での交流拠点とそのネットワークを構築している。 また 2011 年 11 月には、「10 周年記念 ASP」を開催し、過去 10 年間に ASP に携わった人々が一堂 に会した。アラブ・イスラーム圏と日本における国際学術交流の現状と展望に関するディスカッション 交流会とその成果報告会、ORF*における「ASP10 周年記念国際シンポジウム」にて、奥田先生による 基調講演「アラブ人学生歓迎プログラム(ASP)10 年の軌跡と今後の展望」や、パネルディスカッショ ン「ASP10 年のこれまでとこれから」などを行った。教員 2 名、実行委員 30 名、過去の招聘者 19 名(シ リア人 11 名、モロッコ人 4 名、レバノン人 3 名、チュニジア人 1 名)、奥田敦研究会 OB・OG21 名の 計 72 名が参加した。 *ORF(Open Research Forum)とは、SFC の全研究成果を発表する年次イベントである。 4)理念 ASP の基本理念は、 「彼らが何者かをわかるためではなく、 彼らとわれわれがお互いの変化を通して、 いかに「大きなわれわれ」になり得るのかを実践的に考える」 (奥田敦教授)である。 これは、交流活動において、文化や宗教の違いを知ることのみに終始せず、そのような違いにとらわ れない、人間同士としての「大きなわれわれ」にいかになり得るのかを、学問を追究する学生同士とし ての学びあいと互いの変化を通して考えるということである。 5)ASP2012 本年度は「アラブと踏み出す新たな一歩〜実践型学術交流の挑戦〜」を全体の統一テーマとする。 アラブの民主化運動や東日本大震災とその後の社会の状況を踏まえ、そこから新たな一歩を踏み出し ていくために、私たちが直面している問題は何か、また今何をすべきであるのか、そのことについて、 プログラム全体を通じて考える。 また、昨年度までの募集方法に加え、本年度のASPでは新たな試みとしてインターネットで招聘者を 1人募集する。インターネット募集の対象はアラブ世界全域である。 6)スケジュール 2012 年 6 月 第 11 回アラブ人学生歓迎プログラム実行委員会発足 8 月 10 日 シリア・レバノン・モロッコ・ヨルダン・サウジアラビヤへ募集要項送付 8 月 12 日~ シリア・レバノン・モロッコ・ヨルダン・サウジアラビヤにて招聘学生募集開始 9 月 12 日 ヨルダン書類締め切り 9 月 14 日(仮) ヨルダンにおける筆記・面接試験 9 月 15 日 シリア・レバノン・モロッコ・サウジアラビヤ書類締め切り 9 月 22 日 招聘者選考会議 9 月 23 日 招聘者選考会議予備日、招聘者決定の連絡 11 月 4 日~11 月 18 日 第 11 回アラブ人学生歓迎プログラム開催 11 月 22 日、23 日 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス ORF における成果報告 7)ASP2012 の概要 期間 平成24年11月4日(日)~ 11月18日(日) 場所 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC) 内容(仮) 日本語スキットの協働制作 日本語による個別レポートの作成と発表 日本文化体験講座(茶道、着付けなど) 日本語による自国紹介 アラビヤ語による招聘者授業、日本人学生とのディスカッション 小旅行(横浜、鎌倉、都心、富士山など) 8)招聘者 応募資格 アラブ諸国で日本語を通算で 2 年以上学習している、満 18 歳以上の方で正則アラビヤ語であるフ スハーを用いての会話および読み書きが正しくできる方(20 歳未満の応募者は保護者の許可が必要) 。 日本への渡航経験が無い方が望ましい。 招聘者決定方法 ASP 実行委員会において、提出書類をもとに(ヨルダンは面接試験も含む) 、プログラムの趣旨に あった招聘者の選考を行う。 招聘先国および招聘者数(予定) 5 名(シリア、 レバノン、モロッコ、ヨルダン、サウジアラビヤから計 4~5 名、 アラブ全域からインターネット募集により 0~1 名) 9)プログラムに要する費用 アラブ人学生に関わる費用 アラブ人学生に関わる費用は一人あたり約 30 万円を予定。内訳は主に、航空運賃(空港税など諸 費用含む)・日本国内での交通費・食費・宿泊費・健康保険代・諸活動費(休日の旅行の際の費用な ど)などである。 なお上記費用は、本プログラムの趣意に賛同してくださる方々からの寄付金、大学内の研究助成金、 および学園祭収益金などから、プログラムが負担する。 10)宗教に関する快適な滞在のための配慮 本プログラムでは、招聘者の宗教に応じ、食べ物などの生活面はもとより、礼拝など日々の宗教行 為が円滑に行われるよう、きめ細かい配慮を行う。
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