趣意書 - 慶應義塾大学SFC奥田敦研究会

第 14 回 アラブ人学生歓迎プログラム(ASP2015)趣意書
「そして、共に歩もう」
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)奥田敦研究会
1)概要
「アラブ人学生歓迎プログラム(以下 ASP)」は、アラブ諸国で日本語を学ぶ学生を約 2 週間 SFC
に招聘し、研究会(ゼミ)の活動の一環として、SFC でアラビヤ語を学ぶ学生たちと日本語レポート作
成や日本語スキット映像の制作などを通じて行う、アラブ・イスラーム圏との学術交流プログラムであ
る。
なお、ASP とは、Ahlan wa Sahlan Program の略称であり、ً‫(ﺃأﻫﮬﮪھﻼً ﻭوﺳﻬﮭﻼ‬Ahlan wa Sahlan)とは、
「ようこそ」を意味するアラビヤ語である。
2)目的
ASP においては、「ともに学び、ともに作る」というコンセプトのもと、アラブ人招聘者と日本人学生と
の間で実践的な活動が展開される。そこでは、単なる相互理解にとどまらず、自分たち自身の変化へ
の努力が求められる。そうした努力を通じて、互いに共有できる学びを探していく。ひいては、将来に
わたって日本とアラブ世界との関係を国益や私益を超えて友好的に発展させることのできる人物の育
成と、大学における学術交流のモデルの構築も目指す。
アラブ・イスラーム世界との信頼と友好に基づく良好な関係構築は、日本のみならず国際社会全体
においても重要な課題となっている。本プログラムは、2002 年の第 1 回開催以来、新しい時代の日本
とアラブ・イスラーム世界との関係のみならず、アラブ人同士の関係をも構築するプログラムとして、継
続的に実施されている。
3)沿革
本プログラムの発端は、2002 年 3 月に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスアラビヤ語授業の一環と
してシリアのアレッポ大学で開かれたアラビヤ語現地研修である。アラブ人学生たちの惜しみない歓迎
と真摯に学ぶ姿勢に誰もが感動し、簡単に来日できない彼らを日本に招いて、「アハランワサハラン」
の精神で迎え、自分たちが体験したように日本で生きた日本語に触れてほしいという思いが芽生えた。
こうして、お世話になったアラブ人への感謝の気持が動機となり、同年 7 月に「シリア人学生歓迎プログ
ラム」として日本語を学ぶシリア人学生 3 名を招聘した。以降、日本とアラブの学生が等身大の学び合
いと密接な交流を重ね、2015 年の第 13 回アラブ人学生歓迎プログラムまでにアラブ 7 カ国から、計
63 名を招聘した。
同時に、奥田敦研究会では、アラビヤ語を学ぶ日本人学生が原則として年に 2 回アラブ・イスラーム
諸国を訪問するプログラムも実施しており、スキットビデオの協働制作、ワークショップ、文化交流等を
実施し、アカデミックな分野での交流拠点とそのネットワークを構築している。
また 2011 年にはアラブ人学生歓迎プログラムの 10 周年記念行事が行われた。過去の招聘者の中
から 20 名の参加を得て、11 月 22 日、23 日の両日にわたって、ディスカッション、レセプション、国際
シンポジウムを行った。
昨年 2014 年度の ASP では、「わ」を活動の統一テーマとした。アラブ人招聘者と研究会の学生が、
単なる宗教や人種などの違いを超えて対「話」し、学問を追究する学生同士として共に学び、平「和」
1
の「輪」をつくり出す。そしてその「輪」のつながりをおわりのない形(「環」)としてどのように築いていくか
考えていくという想いを込めた。また、アラビヤ語で「‫( َﻭو‬ワ)」とは、「〜と」という意味を持つ語であり、アラ
ブと日本を「つなげ」、その架け橋となる学生を育てるという ASP の目標も表すものである。成果として、
アラブ人学生による日本語レポートや、様々な「わ」を描いた映像作品 4 本が完成した。
また、昨年度はシリア 1 名、ヨルダン 2 名、モロッコ 2 名の計 5 名を招聘した。前年度比 16 人増の
27 人の応募があり、インターネットを通じてスーダンから初めての応募もあった。また、新しい試みとし
て一部の応募者に対するスカイプ面接も行い、より厳正な審査ができるようになったことも、昨年度の
成果である。
なお、ASP の活動内容は毎年報告書とそのダイジェスト版という形でまとめられ、招聘者および各
国協力者に配布されている。また詳しい活動成果は、奥田敦研究会(http://nafidha.sfc.keio.ac.jp)
の公式 HP にて公開されている。
4)理念
ASP の基本理念は、「彼らが何者かをわかるためではなく、 彼らとわれわれがお互いの変化を通し
て、いかに「大きなわれわれ」になり得るのかを実践的に考える」(奥田敦教授)である。
これは、交流活動において、文化や宗教の違いを知ることのみに終始せず、そのような違いにとらわ
れない、人間同士としての「大きなわれわれ」にいかになり得るのかを、学問を追究する学生同士とし
ての学び合いと互いの変化を通して考えるということである。
5)ASP2015
今年度は、「そして、共に歩もう」を統一テーマとして活動する。近年アラブの情勢が混迷を極め、日
本においてもイスラームへの偏見が強まっている。さらに、アラブでは物理的な暴力が人々の生命を脅
かしている一方で、日本では様々な内的な危機が人々の生命を蝕んでいるともいえる。このような状況
の中では、異なる価値観を持つ人々が平和裏に共生し、よりよい社会を作るために協力し合うことは難
しいように見えるかもしれない。しかし学問を追究する学生たちの活動であるASPにおいては、どのよう
な状況の中でもまずは人間同士として繋がり、大きな目的に向かって、強い意志を持って歩み続ける
ことができるはずである。したがって今年度は、それぞれの抱える困難な状況を十分に受け入れた上
で、「その先へ」共に歩き出そうという前向きな意識を参加者全体で改めて共有したいという思いから、
この統一テーマを掲げることになった。
6)スケジュール
2015 年 8 月
8 月 11 日
第 14 回アラブ人学生歓迎プログラム実行委員会発足
シリア・レバノン・モロッコ・ヨルダンへ募集要項送付
8 月 11 日~
シリア・レバノン・モロッコ・ヨルダンにて招聘学生募集開始
9 月 13 日
シリア・レバノン・モロッコ・ヨルダン書類締め切り
9 月 18 日
9 月 19 日、20 日
招聘者選考会議
追加選考期間(必要に応じて Skype 面接を実施)
9 月 21 日
招聘者決定の連絡
11 月 1 日~15 日
第 14 回アラブ人学生歓迎プログラム(ASP2015)開催
11 月 20 日、21 日
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス ORF*における成果報告
*ORF(Open Research Forum):SFC の全研究成果を発表する年次イベント
2
7)ASP2015 の概要
期間
平成27年11月1日(日)~11月15日(日)
場所
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)
内容(仮)
Ø
日本語スキットの協働制作
Ø
日本語レポートの作成と発表
Ø
日本文化体験講座(茶道、着付け、神奈川県立中央農業高校での交流活動など)
Ø
Ø
日本語による自国紹介
アラビヤ語による招聘者授業、日本人学生とのディスカッション
Ø
小旅行(横浜、鎌倉、東京、富士山など)
8)招聘者
応募資格
アラブ諸国で日本語を通算で 2 年以上学習している、満 18 歳以上の方で正則アラビヤ語である
フスハーを用いての会話および読み書きが正しくできる方(20 歳未満の応募者は保護者の許可が
必要)。日本への渡航経験が無い方が望ましい。
招聘者決定方法
ASP 実行委員会において、提出書類をもとに、プログラムの趣旨にあった招聘者の選考を行う。
なお、選考の際、必要に応じて Skype による面接を実施する。面接の日程は、9 月 19 日(土)ある
いは 9 月 20 日(日)を予定している。
招聘先国および招聘者数(予定)
3 名程度(シリア、 レバノン、モロッコ、ヨルダンから)。
9)プログラムに要する費用
アラブ人学生に関わる費用は一人あたり約 30 万円を予定。内訳は主に、航空運賃(空港税など諸
費用含む)・日本国内での交通費・食費・宿泊費・健康保険代・諸活動費(休日の旅行の際の費用など)
などである。
なお上記費用は、本プログラムの趣意に賛同してくださる方々からの寄付金、大学内の研究助成金、
および学園祭収益金などから、プログラムが負担する。
10)宗教に関する快適な滞在のための配慮
本プログラムでは、招聘者の宗教に応じ、食べ物などの生活面はもとより、礼拝など日々の宗教行為
が円滑に行われるよう、きめ細かい配慮を行う。
3