求め方

pH ダイアグラムの作り方
酸は解離し、二種類(以上)の形を取る。
例えば、
(上から酢酸、炭酸、リン酸)
水中のそれぞれの形態の事を「化学種」と呼ぶ。
(例:リン酸は 4 つの化学種からなる。
)
pH ダイアグラムから、
「ある pH において、化学種はどのような比率で存在しているか?さらに pH
を変えるとその比率はどう変わるか?」がわかる。
(これまでの授業で扱った問題は、酸を○○mg/L になるように添加したら pH はいくらになるか、と
いう問題。
)
酸や塩基の化学種の比率を知ることは非常に重要である。
例えば、アンモニア( NH 3 )は水中では NH 3 またはアンモニウムイオン NH 4+ の形で存在している。
どちらの化学種で存在するかが、水中からのアンモニア除去効率を決定する。
NH 3 として存在すれば、ストリッピングにより物理的に除去される。
€
€
€
硝化細菌により生物学的に除去する場合は、 NH 3 は亜硝酸酸化細菌を阻害するので、亜硝酸で反応
€
が止まってしまう。
(すなわち硝化反応が不完全となる。
)
€
各化学種と合計の濃度を区別するため、総(全)濃度を定義しておく。総濃度は「T-化学種」の形で
記述する。T は total の略。
例えば、総酢酸は
と書く。
は必ず 100%(濃度の場合は添加した濃度)になる。
よって、
が 10%なら
は 90%、
が 90%なら
は 10%
となる。
練習問題
の濃度が 1 10-3M の酢酸水溶液中において、各 pH での各化学種の濃度はそれぞれ
いくらか?
(すなわち、各 pH における割合を知るために pH ダイアグラムを描く。
)
解答
①連立方程式を作る。式の数は化学種(=変数)の数と一致するはずである。
・
が各化学種の和になる、という式を立てる。
・平衡定数の式を立てる。
②連立方程式を解き、各化学種の濃度(または全濃度の対する比率(α)
)の式を導く。
③各 pH の時の[H+]を計算し、②の式に代入する。
④各 pH と各濃度(C)またはαの、対数の値(
または
)の表を作る。縦軸は「pC(=
-logC)
」の場合もある。
⑤pH ダイアグラムを描く。
①連立方程式を作る。
[T − CH 3COOH ] = [CH 3COOH ] + [CH 3COO− ]
Ka=1.75 10-5 より
酢酸のかい離反応の式
€
②連立方程式を解き、各化学種の濃度の式を導く。
③、④ 各 pH の時の[H+]を計算し、②の式に代入する。
各 pH と各濃度(C)の対数の値(
)の表を作る。
(この表を Excel にコピーし、表を書いてみる。
)
pH
H(M)
1
2
3
4
4.757
5
6
7
8
9
10
11
12
13
1.0.E-01
1.0.E-02
1.0.E-03
1.0.E-04
1.8.E-05
1.0.E-05
1.0.E-06
1.0.E-07
1.0.E-08
1.0.E-09
1.0.E-10
1.0.E-11
1.0.E-12
1.0.E-13
CH3COOH
CH3COOlog(CH3COOH)
log (CH3COO-)
0.00099983
1.7.E-07
-3.000
-6.757
0.00099825
1.7.E-06
-3.001
-5.758
0.0009828
1.7.E-05
-3.008
-4.764
0.00085106
1.5.E-04
-3.070
-3.827
0.0005
5.0.E-04
-3.301
-3.301
0.00036364
6.4.E-04
-3.439
-3.196
5.4054E-05
9.5.E-04
-4.267
-3.024
5.6818E-06
9.9.E-04
-5.246
-3.002
5.711E-07
1.0.E-03
-6.243
-3.000
5.714E-08
1.0.E-03
-7.243
-3.000
5.7143E-09
1.0.E-03
-8.243
-3.000
5.7143E-10
1.0.E-03
-9.243
-3.000
5.7143E-11
1.0.E-03
-10.243
-3.000
5.7143E-12
1.0.E-03
-11.243
-3.000
まずは対数ではないグラフを書く
⑤最後に pH ダイアグラムを描く。
以下、混乱する人は読まないこと。
間違いがないかチェックする方法:
・各化学種の最大値は全濃度の対数の値になっていなければ、間違い。
・交点が pH = -logK になっていなければ、間違い。
・ 傾きがおおよそ整数になっていなければ、間違い。
化学種が 2 種の時は傾きは-1、0、+1、のいずれかである。一つの化学種は 2 つの傾きを
持つ。
化学種が 3 の時は傾きは-2、-1、0、+1、+2、のいずれかである。一つの化学種は 3 つの傾
きを持つ。
・交点付近が曲線になっていなければ、間違い。
pH ダイアグラムからわかる重要なこと。
傾きがほぼ整数である。よって、pH が 1 変わると、logC は 1、2、3 と増えていく(減っていく)
。
交点は pH=pK
間違えやすい点
・ 縦軸が-logαの時は縦軸の最大値は 0(= -log1)。縦軸が-logC の時は、縦軸の最大値は
−log[T − C ] 。
€
・ 余計な傾きがある。→傾きは、
「一番上の交点」でのみ変わる。
(文章では表現しにくい。リ
ン酸の pH ダイアグラムを参照のこと。
)
・ 交点付近が曲線になっていない。
☆理解している人は表を書かなくてもよい。
①最大値を求める。
②交点を求め、プロットする。
③傾きは整数になるので、交点を参考に線を結ぶ。
(ただし交点付近は曲線になる。
)
以上が分かっていれば、pH ダイアグラムは書ける。