http://www.wald-inc.com/ [email protected] 第 25 号 株式会社ヴァルト 平成 19 年 9 月 26 日 パネルヒーターと理想の暖房論 㩷⦟⾰䈭ⅣႺ䇭 ■何気なく使っている暖房にはこんな不安が まず普及率上位の「ファンヒーター」を代表とする、燃焼ガ スを室内に放出するタイプの器具があります。これは、一酸化 これまで日本の多くの住まいでは、コタツや火鉢、簡易ス 炭素が排出され人の健康を害する恐れがあります。また燃焼の トーブなどの局所暖房で厳しい寒さに耐えてきました。これは 結果、多量の水分が室内に放出されるので、室内の水分量が増 ヨーロッパ・北米諸国に比較し温暖であることに加え、暖房や えます。この状態で間欠暖房をすると、主に結露が原因の、深 工法など慣習・慣例に従い、つつましいことや耐えることを美 刻な湿気問題に発展する可能性があります。 (カビ・ダニの増 徳として重んじられることが大きかったのではないかと思いま 殖及び建物の劣化)したがって安全面と健康面で不安がありま す。改良・改善が進みにくい環境にあったと思われます。 す。 温風を噴出し、室内の空気をカク 北米や EC 諸国では、住宅の定番 ハンすることで暖める「エアコン」 暖房設備として、温水パネルヒーター など送風がともなう設備は、カクハ が多く使用されています。厚い壁に ンによるハウスダスト等の飛散が考 可能な限り断熱材を施した家で、温 えられます。また強制的な空気の流 水パネルヒーターをシーズン初めか れが、肌の乾燥を早めたり、生理的な不快感を引き起こす可能 ら、春になるまで止めることなく連 性もあります。これらの設備も、機械送風を利用する事や人の 続運転をし、快適な環境を作り出し 健康に対する不安から、マイナス点を含んでいます。 ています。 送風を利用する設備の中には、 「送風ダクト」や壁内通気層 これは、設計段階できちんと断熱 をダクトのように利用る方式がありますが、これらの送風経路 計画と暖房設備計画を盛り込んでい の衛生状態は、人の目が届きにくく、メンテナンスには不向き るからこそ可能になる室内環境です。 です。そんな経路を温風が通過し室内に放出されるので、不安 それでは、設計段階から考えることを前提に、理想的な暖房 が残ります。 について考えてみましょう。 このように、現在私たちが何気なく使用している設備には、 問題のあるものが以外に多いことに気付きます。 ■ 理想的な暖房設備の基準は? 汎用的な価値観の中に、 「地球環 ■理想に近いのは 境の保全」 「人々の健康と安全」 「本 総合的に安心してお勧めできるの 物・良質・自然志向」などがあり、 はやはり、パネルヒーターです。 暖房に限らずあらゆることに通ず 冒頭でふれた温水パネルヒーター る指針・トレンドとなっています。 は、これらの不安を少なくした理想 そこで、理想的暖房の指針として に近い暖房設備と言われ、近年徐々 も参考にしておきたいと思います。 ᔃߩૐ᷷᳓ にその良さが認められるようになりました。 輻射熱(放射)とゆるやかな自然対流で暖めるやさしい暖房 室内環境を評価する直接的な要素では、一酸化炭素、シック です。熱交換器(パネル)が室内に露出しているため、日頃の ハウス要因物質、ハウスダスト、ダニ、カビ、バクテリア、ウィ のチェックも容易、衛生面の不安はありません。パネルそのも ルス、結露、湿度、温度、音、匂い、空気の流れ・ゆらぎ 等 のはシンプルな構造のため耐久性も申し分ありません。 が考えられます。 その他にも、ヒートショック、やけど。そして、修理・メン パネルヒーター同様送風を伴わな テナンスの問題。他に人の感情・心に関わる要素もあります い設備の床暖房と比較してみます。 (精神衛生・気持ち・意識など) 。これらの要素に照らし合わせ、 床暖房は、床面に(熱源に)継続 クリアーする暖房が理想の暖房に近い、 と定義してみましょう。 し人が触れていているので、運用温 (寒暖のイメージに関わる要素ですが、照明・色を今回は除外 します) Tel.026-268-4355 Fax.026-221-2678 度が重要なポイントになります。継 続的に触れていても人体に支障をきたさないレベルまで、温度 1 News Letter Vol.24 を下げて運転ができることが大切です。これは、低温火傷など 度が下がるつれて湿度は高まっていき、15℃に下がった時点 を警戒するのではなく、人の本来持っている繊細な交感神経な で 100% になってしまいます。そしてその時、結露がはじま どに与える影響も考慮したいという観点です。また建物全体の るのです。 中で、どこまで床に暖房を施せるかもポイントです。メンテナ ンス面では、熱源部分に不具合が生じた場合、原因調査・修繕、 に入ってきます。その点パネルヒーターの場合は、最悪室内に 露出しているパネルの交換で簡単に対応することが可能です。 0% 飽 和 結露 始まる 15℃ kg / い方をするには双方共に、建物全体の行き届いた断熱が必要で ) 明け方 3℃ % 75 % 50 夜間に冷える す。 起きてから暖房開始 70% 暖房 OFF 26℃ 加湿 床暖房や温水パネルヒーターの長所を引き出し、理想的な使 再びパネルヒーターの特長と運用方法・効果などを詳しく見 一般住宅の湿度温度変化(毎日のくり返し) 10 換となると、埋め込まれているところの床を剥がすことも視野 空気中の水分量 ( 共にかなりの手数がかかることが予想されます。熱交換機の交 ■ 空気線 25% 16.5% 気温 (℃) てみましょう。 空気の緩やかな対流と、太陽光熱と同様に " 輻射 " により緩 空気は温度が高いほど多くの水分が吸収できます。逆に温度 やかに室内を暖めるので、ハウスダストの飛散・送風による不 が下がるほど、吸収できる水分が少なくなります。 快感や衛生面の不安がありません。パネル毎に温度調節が可能 したがって温度差を小さくすることが結露を防ぐ一番の対策 なので、それぞれの部屋の使い方に沿って微妙な温度設定が可 です。このため連続運転が最良の方法なのです。 能です。外気温が大きく下がる時は、室温も緩やかに追従し、 また、室内温度と外気温の温度差を少なくすることも同時に 無理に室温を一定にすることは考えません。部分的に特に寒い 重要です。 (壁内結露の危険性軽減のため) ところの無い暖房、暑いところの無い暖房、このようにして自 然で穏やかな、家の中に優しく変化するもうひとつの気候、家 ▼ 18℃∼ 20℃の室温でも寒さを感じない理由 族専用の室内気候が実現します。 24 時間連続運転のメリットは体感温度にも影響します。従 来の間欠運転暖房の場合、暖房中は空気温が、建物(壁 ・ 床 ・ パネルヒーターを総合的にきちんとした断熱仕様の建物に施 天井・窓)の温度より高くなります。人が感じる温度は、壁・ し、連続運転することで、18℃∼ 20℃の室温でも寒さを感じ 天井・床・窓からの負の輻射熱により、空気温より低く感じて ない、質の良い理想的な温熱環境が実現します。 しまうのです。 「質の良い」部分とは、本来人間の機能として備わっている、 一方、連続運転することにより、建物全体が、空気温に限り 環境に順応する力を活かし健康的な身体を育むことも含み、暖 なく近づきます。その結果体感温度も、空気温に近づいていき 房設備の存在を忘れてしまうような自然で活動的な生活を可 能にする暖房設備ということです。また室内温を低めに設定 することで、結露発生の可能性を最小限に抑えることが可能 です。従って、建物の劣化スピードを抑えることにもつなが り、暖房の守備範囲を超え、より良い建築環境の創造と維持 (Breathability)にも貢献するものです。 パネルのスタイル・色も豊富で、コーディネイトの愉しみも 広がります。基本的にすべて特注製品なので、目指す雰囲気に 合わせ様々な試みが可能です。 << 理想的な暖房と室内環境についての補足 >> ▼ 結露のメカニズムと対策 ます。 一般住宅の場合、明け方に 3℃湿度 70% の空気を暖房して つまり体感温度とは、空気温と周囲の物体の温度の間の値に 26℃にすると、湿度は 16% 以下になってしまいます。乾燥し なるのです。周囲に低い温度の物体が多いほど、低い温度に感 た空気は洗面所や浴室、建材、家具などから水分を吸収し、空 じ、逆に周囲に暖かい物体があると、暖かく感じます。 気中の相対的な水分量を増やそうとします。それでも不十分な 空気の温度以下に感じるもうひとつの原因があります。 ので、最近では加湿器などでさらに水分を補うこともありま 通常温度が低いガラス面付近では、室内の空気が冷やされ、 す。このままの状態だと結露の心配はありませんが、就寝時に 比重を増し、 下方行に空気の流れが生まれます。これが連続し、 26℃で湿度が 50% になった室内の空気は、暖房を切ると、温 窓面から床方向に、冷やされた空気が絶えず流れ、窓周辺の 2 〒 381-0022 長野市大豆島 5215-1 株式会社 ヴァルト http://www.wald-inc.com/ [email protected] 床はいつもひんやりしているのです。 ࠦ࡞࠼࠼ࡈ࠻ コールドドラフトと呼ばれる現象で、 子どもにとっての基地は家全体 すきま風のように感じます。 有名中学に合格した子どもの部屋は、さぞかし立派でフル装 これを防ぐため、厚手のカーテン 備の個室であろうと想定。ところが予想は大ハズレ。 を使用したり、パネルヒーターを窓 「麻布、開成、慶応、女学院、有名中学に合格したほとんどは、 下に設置し、この流れを抑えたりし 子ども部屋で勉強していなかったんです。つまり、子ども部屋 ています。さらなる方法は、高性能断熱サッシを使用し、直接 イコール勉強部屋ではなかったということです」 この現象を起こりにくくすることです。 子どもらは母のいる台所の食卓や、家族が集う居間のテーブ ルで、おしゃべりをしながら勉強していたのだ。 ▼ 断熱仕様について 「子どもにとっての生活の " 基地 " は子ども部屋ではなく家全 この課題についてはこれまでの説明で大方の想像がつくこと 体。自分の基地である家で、安心して親や家族と深く関わるこ と思います。断熱性能にこだわる理由は、文字通り熱を " 断つ とこそ重要なのです」 " ためですが、同時に体感温度を上げるためにもなります。そ (以上クロワッサン 8 月 10 日号部分抜粋) のメカニズムは先にお伝えしたとおりです。またこれらの効果 により、省エネルギーのため、結露防止のため、にもつながっ この記事では、テリトリーがあれば、個室はなくてもいい。 ています。 個室のあるなしよりも、家族の交わりが優先であり、孤立化さ ところが、単純に室内温度とが外気温の温度差を大きくする せないための工夫が必要。と唱えている。これは、「中学入学 と、壁内に含まれる湿気が結露する可能性が高まります。 前の子ども達のことで、成長過程では当然個室が必要な次期も その可能性に積極的に対処するために考案されたのが、ヴァ ある、ただ広い必要もないし、何でもそろった便利さもいらな ルト式複合断熱システムです。Breathability に考慮したこの複 い」と言う。 合断熱システムは、単なる壁の構造・作り方に留まる話題で はなく、建物 現在ヴァルトで手がける住宅の多くで、広いスペースを将来 の劣化を遅ら 区切ることを想定されながら、はじめは共有の部屋を作ること せるため、温 が多い。部屋の中は一人々のテリトリーは設けられているが、 熱環境を向上 自由に行き来でき、お互いの気配は十分感じられる環境だ。 のため、省エ 「立派すぎる個室は往々にして孤立化し、引きこもりをまね ネルギーのた いてしまうこともある。孤立させないよう、ドアを引き戸にし め、安全で健 て開けっ放しにしたり。本棚などは子ども部屋に置かず、家族 康的な室内環 みんなで使える場所に移動して共有するのもいい」。 境のため、建 環境は「不足するより満足してあげた方がいいに決まってい 物全体の品質 る」と考えがちですが「与えすぎず、不自由なくらいでいいの に関与する、 だと思います」とも言っています。つまり物質的な環境は二の まさに住まい 次で、なにより家族の触れあいが大切というわけです。それば の性能面の根 かりか、環境が整い過ぎると好ましくない方向に向かう可能性 幹をなす考え方を形にしたものなのです。 も考えられるというのですから、要注意です。 以上が、理想の暖房の考え方と、良質な温熱環境作りの考え 核家族化、個人主義化の傾向にある今、住まい作りを契機に 方の粗筋です。 家族のコミニュケーションやライフスタイルに付いても、改め このパネルヒーターを、ヴァルトでは理想の暖房として推奨 て見つめ直してもよいのかもしれません。そしてそれらが、よ し、自社設計の住宅に標準装備として、ほとんど例外なくこの り満足度の高いの住まいに繋がることを期待します。 高価なヒーターを設置しています。これらの理由をご理解いた だき、そしてそこまでこだわるほど、住まい作りに特別な情熱 を傾ける住宅会社であることをアピールさせていただきたいと 考えています。 紙上見学会 㩷䋲Ꮺቛ 東向きの玄関とガレージ、その前には普通車なら3台は楽々 駐車できそうなスペース。広い敷地にゆうゆうと配置された2 子ども部屋を考える 㩷ቅ┙ൻ䉕䈘䈞䈭䈇䈢䉄䈱Ꮏᄦ䇭 子ども部屋について、興味深い記事があったので一部紹介しま 世帯住宅です。 二間続きの和室とキッチンダイニングそして玄関が独立。浴 室とトイレは兼用だが、この独立スペースに隣接し、両親の生 活動線がコンパクトに計画されている。 す。 Tel.026-268-4355 Fax.026-221-2678 3 News Letter Vol.24 所々に工夫が見られ、住まい全体がシンプルに仕上げられてい る。 勝手口風除室兼食品庫、本棚形式の収納棚は全てを見渡せる 使い勝手の良いもの。玄関・トイレへのアクセス動線が複数設 けられていること、 キッチンでは床に埋め込まれた暖房パネル、 2階サブリビング、リビングを囲むデッキ、それぞれに特長が ある。建築主もしくはプランナーの確かな意図に感心させられ る。 ▲主玄関を入るとキッチンとリビングダイニング。奥に進むと 2世帯兼用の浴室とトイレがある。 ▲リビング天井表しの化粧梁、好む人にはたまらない。デッキ に出ることが可能な和室。 ▲2階は寝室(個室)スペース、1階は2世帯用スペースに、 それぞれの動線が交差することなくゾーン分けされている。 間取以外では、光と風を効果的に取り入れるため窓の配置が 特長のひとつ、写真撮影当日は、僅かな風が家の隅々まで取り 込まれ、その心地様良さを実感させられた。このお宅でも採用 されているドイツ式サッシの複数の開閉モードにより、開け放 したままでも侵入者の心配をしないですむ。予想以上に重宝す る機能かもしれない。 ▲トップライトを設けた 2 階の畳リビングは、とびきりのコ ミニュケーション広場になりそうだ。 紙上見学会 㩷䉲䊮䊒䊦䈭ਛ䈮䉅⏕䈎䈭ᕈ ■ 編集後記 ご意見・ご感想・ご希望などお気軽にお寄せ下さい。今後のニュース レター編集の参考にさせて頂きます。 この頃では比較的少ない、トラディショナル(バルトの中で) なタイプ。細かな部分まで作り込んである訳けではないが、要 4 〒 381-0022 長野市大豆島 5215-1 株式会社 ヴァルト
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