フランス語フランス文学コース

フランス語フランス文学コース
Ⅰ. 文学史
Ⅱ. 文学作品の読み方
Ⅲ. 歴史
Ⅳ. 社会
Ⅴ. 文化
Ⅵ. 美術
Ⅶ. 音楽
Ⅷ. フランス語学
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Ⅰ.
文学史
個別の作家・作品を研究するうえでも、その作家、その作品が、文学史の流れの中でどのような位置を
占めているかを知っておく必要がある。以下のいずれかを通読するとともに、手元に置き、適宜、参照
してほしい。
渡辺一夫、鈴木力衛『増補
フランス文学案内』岩波書店
1990(岩波文庫)
非常にやさしく解説してある文学史入門書。通読して文学史の全体的流れを把握するうえで便利。
河盛好蔵、大島利治他『
〈プレシ〉フランス文学史』 駿河台出版社 1997
整理された記述の中に、文学史理解に必要な知識が豊富に盛り込まれている。文献目録もやや古
くなっているとはいえ貴重な史料である。
横山安由美、朝比奈美知子編著『はじめて学ぶフランス文学史』ミネルヴァ書房 2002
「はじめて」とあるように、とても分かりやすく書かれている。各時代の代表的な作家の文章の
抜粋がフランス語と日本語訳で掲載されている。
篠沢秀夫『フランス文学案内』朝日出版社 1996
各時代の代表的な作家と作品について、重点的に書かれている。とくに作品のあらすじが詳しい。
*
ドミニク・ラバテ『二十世紀フランス小説』三ツ堀広一郎訳 白水社 2008(文庫クセジュ)
とくに 20 世紀後半のフランス小説について知るのに便利。
私市保彦『フランスの子どもの本』2001 白水社
中世から現代まで、子どものために書かれた本(昔話、童話、ヤングアダルト)が、それぞれの時
代背景とともに紹介されている。
Ⅱ.
文学作品の読み方
以下にあげるのは、特定の作家や作品についての個別研究ではなく、文学作品をどのように読むか、文
学作品から何を読み取るのか、そもそも文学作品を読むとはどのようなことなのか、そうした基本的な
問題について示唆を与えてくれると思われる書物の一例である。
マルセル・プルースト『プルースト評論選(Ⅰ)文学篇』保刈瑞穂編 筑摩書房
2002(ちくま文庫)
20 世紀最高の小説家による文学論。文学とは何かを根本から考えている。
アルベール・ティボーデ『小説の美学』生島遼一訳 人文書院 1967
博識の批評家が小説の本質的な問題を扱った名著。
ジョルジュ・プーレ『人間的時間の研究』井上究一郎他訳 筑摩書房 1969
《ヌーベル・クリティック》を代表する批評家が、時間という観点から、さまざまな作品を分析
している。
ジャン=ピエール・リシャール『詩と深さ』有田忠郎訳 有田忠郎訳 思潮社 1995
ネルヴァル、ボードレール、ヴェルレーヌ、ランボーの詩的想像宇宙を浮き彫りにする。
ロラン・バルト『零度のエクリチュール
新版』石川美子訳 みすず書房 2005
ロラン・バルト『物語の構造分析』花輪光訳 みすず書房 1979
いずれも構造主義的文学批評の古典。
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エーリッヒ・アウエルバッハ『ミメーシス ヨーロッパ文学における現実描写』篠田一士・川村二郎訳
(上・下) 筑摩書房 1994(ちくま学芸文庫)
古今の名作の文章を取り上げ、ミメーシス(現実描写)という観点から、その文体を精緻に分析す
る。
塚本昌則『フランス文学講義
言葉とイメージをめぐる 12 章』中央公論新社
2012(中公新書)
ルソーからプルーストまで、代表的作品を通して、文学とイメージのかかわりを追求する。
野崎歓『フランス小説の扉』白水社 2010(白水Uブック)
19 世紀の名作から現代の作品まで、小説の読みどころ、味わい方を熱く語る。
工藤庸子『フランス恋愛小説論』岩波書店 1998(岩波新書)
『クレーヴの奥方』
、
『カルメン』などを取り上げ、恋愛がいかに語られているかを分析する。
Ⅲ.
歴史
フランスの文学や文化を研究するうえで、フランス史の全体的な流れを踏まえておくことは不可欠であ
る。
柴田三千雄『フランス史 10 講』岩波書店 2006(岩波新書)
フランク王国、百年戦争、絶対王政、フランス革命、19 世紀の革命、二つの世界大戦、五月革命
などを軸に、フランス二千年の歴史の歩みを一冊でたどる。
福井憲彦『フランス史(新版世界各国史)』山川出版社
2001
フランスという国の空間的枠組みや人間的構成、国民統合と国民意識の歴史的な推移を念頭に置
きながら、基本的な歴史理解を示す。
佐藤賢一『フランス革命の肖像』集英社 2010(集英社新書ヴィジュアル版)
図版が多いので、フランス革命のイメージがつかみやすい。
*
とくにマリー・アントワネットについて卒業論文を書くには、フランス革命に関する知識をもつほうが
よい。フランス革命およびマリー・アントワネットに関する概説書を一冊ずつ挙げる。そこに紹介され
ている膨大な資料のなかから、興味を抱いたテーマに副ったものを上手に選べば、さらなる読書が楽し
めるはず。
柴田三千雄『フランス革命』岩波書店 2007(岩波現代文庫)
エヴリーヌ・ルヴェ『王妃マリー・アントワネット』塚本哲也訳 創元社
Ⅳ.
高山裕二『トクヴィルの憂鬱
2001(知の再発見双書)
社会
フランス・ロマン主義と〈世代〉の誕生』 白水社 2012
19 世紀の政治学者トクヴィルを扱った研究書。近代社会が生み出したさまざまな問題が浮き彫り
にされるが、それらの問題の深刻さは現代でも変わっていない。
鹿島茂『怪帝ナポレオン三世
第二帝政全史』 講談社 2010(講談社学術文庫)
みずからクーデターを起こして皇帝になったルイ・ナポレオンの一般的評価は芳しくないが、そ
うした通説を覆すことによって、第二帝政時代の歴史を問い直している。
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宮下志朗『読書の首都パリ』 みすず書房 1998
バルザック、ゾラ、フロベールの描く小説世界で遊びながら、活字メディアの世紀、19 世紀のフ
ランス小説をとりまく都市空間と出版市場の動態を楽しく学ぶことができる。
三浦信孝、西山教行『現代フランス社会を知るための 62 章』 明石書店 2010
現代フランスの政治、社会、文化を 62 のキーワードから読み解く事典。
宮島喬編『移民の社会的統合と排除―問われるフランス的平等』 東京大学出版会 2009
「フランス的平等」はどのような問題をはらんでいるのか。雇用、労働、宗教、教育、都市生活
など、さまざまな角度から包摂と排除の実態を明らかにする論文集。
ピエール・マイヨー『フランス映画の社会史―マリアンヌのフィアンセたち』中山裕史、中山信子訳 日
本経済評論社 2008
ジャン・ギャバン、ジャン・マレー、ジェラール・フィリップ、アラン・ドロン、ジャン=ポー
ル・ベルモンド、ジェラール・ドゥパルデュー、これら 20 世紀を代表する男性スター6 人が表
象するものは何か。フランス映画を通じてフランスの社会と歴史を語る。
Ⅴ.
文化
アルフレッド・フィエロ『パリ歴史事典(普及版)』鹿島茂監訳 白水社
2011
文化、政治、宗教から芸術、風俗、習慣まで、600 の項目から、パリ千年の歴史を浮かび上がら
せる。
鹿島茂『馬車が買いたい』 白水社 2009
19 世紀の若者たちの上昇志向を、バルザックをはじめとする文学テキストから鮮やかに読み取る。
赤木昭三、赤木冨美子『サロンの思想史―デカルトから啓蒙思想へ』名古屋大学出版会 2003
女主人が主宰する優雅で洗練されたサロンは、デカルト思想、啓蒙思想、フェミニズムなど、新
しい思想の創出、交流の場であった。17,18 世紀の思想を動かしたサロン文化の役割を紹介する。
朝比奈美知子、横山安由美『フランス文化 55 のキーワード』ミネルヴァ書房
2011
文学、歴史、芸術から、グルメ、恋愛までを紹介したコンパクトな文化学入門書。
ロラン・バルト『モード論集』山田登世子訳 筑摩書房 2011(ちくま学芸文庫)
20 世紀を代表する批評家による記号論的方法によるユニークなモード論。
中条省平『フランス映画史の誘惑』集英社 2003(集英社新書)
フランス映画史の基礎的知識が得られる入門書。
Ⅵ.
美術
高階秀爾著『フランス絵画史』講談社 1990(講談社学術文庫)
フォンテーヌブロー派からナビ派など 19 世紀末までのフランス絵画の歴史を一望する。
和田章男著『フランス表象文化史―美のモニュメント』大阪大学出版会 2010
モニュメントとは過去の息吹を現在に伝え、それぞれの時代精神の記憶を後世に残すもの。中世
から現代にかけて、それぞれの時代精神を表現する諸芸術(表象文化)のエッセンスを、
「美のモニ
ュメント」として記述。美術、文学、庭園など、千年にわたるフランス文化案内。
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マリナ・フェレッティ『印象派〔新版〕
』武藤剛史訳 白水社 2008(文庫クセジュ)
印象派の始まりから後期印象派、さらにはスーラ、シニャック、ボナールまで、ルネサンス絵画
に匹敵する絵画革命とされる印象派の歴史を簡潔に語る。
Ⅶ.
音楽
今谷和徳、井上さつき著『フランス音楽史』 春秋社
2010
中世から現代にいたるフランス音楽の歴史が一望できる。
ドビュッシー『音楽のために』杉本秀太郎訳 白水社 2005
フランスを代表する作曲家が、過去の巨匠たち、当代の新進作曲家たちとその音楽について語る。
19 世紀末パリの知的・精神的雰囲気を伝えている。
Ⅷ.
フランス語学
朝倉季雄『新フランス語文法辞典』 白水社 2002
本学でも長らく教壇に立たれていたフランス語学者による非常に詳しく、また厳密な語学・文法
辞典。
朝倉季雄『フランス文法集成』白水社 2005
フランス語文法のさまざまな問題点を取り上げ、豊富な文例をもとに、綿密に考察している。語
学で卒業論文を書きたい人には大いに参考になるだろう。
島岡茂『フランス語の歴史』大学書林 1974
俗ラテン語から派生した古フランス語が民族の歴史を通じていかに近代フランス語に結実した
かを語る。巻末に各時代を代表する文例が付されている。
ジャン=ブノワ・ナドー、ジュリー・バーロワ『フランス語のはなし:もうひとつの国際共通語』中島
ゆかり訳、立花英裕監修 大修館書店 2008
カナダ人によるフランス語史。世界でどうしてフランス語が話されているかという問いに答えな
がらフランス語史を読み解く。
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