芸術文化 の力

第2章 プランの基本的な考え方
第2章 プランの基本的な考え方
第2 章
1 なぜ芸術文化を振興するのか
私たちは幼い頃から絵を描いたり、工作をしたり、音楽を聴いたり、さまざまな形で芸
プランの基本的な考え方
術文化にふれて大きくなります。一人で、あるいは仲間と一緒に創り上げる喜びを感じる
時もあります。また、素晴しい作品にふれ、大きな感動に揺り動かされることもあります。
芸術文化は、多様な表現活動を通じて行われる創造であり、鑑賞した人々の心に働きか
ける力をもっています。
情操や共感能力を育てる
子どもの頃から芸術作品にふれている
と、美しいものに親しめたり、心から楽し
んだり笑ったりと、情緒豊かな人間性が育
まれます。
また、創造したり鑑賞したりすることを
通じて、仲間や友達と一緒に喜びや満足感・
達成感を味わい、また感動することから共
感する能力が育まれ、人間関係の調和も学
ぶことができます。
生きる力を与える
社会性を育て新しい発見を促す
心や体が疲れているとき、悩んで
いるとき、行き詰まっているときに、
芸術作品にふれると気分転換がはか
られ、元気づけられます。芸術文化
は心の栄養であり、心の体力をつけ
てくれます。そして人を輝かせる働
きがあります。
芸術文化は、真実を表現し、感動
を与え、人の心の深い部分に働きか
けます。芸術文化にふれることによっ
て、未来の「あるべき姿」や「あっ
て欲しい姿」を求める想像力および
創造力が育ち、芸術作品を通じて社
会における是非(善悪)の判断力が
培われます。
芸術文化
の力
まちの魅力を創り出す
社会に安心や安定をもたらす
芸術文化が創造でき鑑賞できる場
や機会に恵まれたまちは、活気がみ
なぎり、活き活きとしています。ま
た、芸術文化活動の盛んなまちは、
魅力的で親しみの持てるまちとなっ
て、住んでいることへの誇りが生ま
れ、まちへの愛着を深めることがで
きます。
芸術文化は、人々の心にゆとりと
豊かさをもたらします。人々の心の
ゆとりや豊かさが、人間関係に調和
と思いやりを与え、相互に理解し合
い尊重し合う土壌をつくり、社会に
安心と安定をもたらします。
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第2章 プランの基本的な考え方
以上のように、芸術文化は、人々の心や暮らしに豊かさ・ゆとり・精神的満足・誇りを持っ
て生きる力や気づきを与えてくれます。こういった芸術文化にふれることで、人々の生活
な生活が営めることになります。
こうした芸術や文化に接することはすべての人々の基本的な権利であるといえ、これが
解し、認め合いながら芸術文化活動を推進していく必要があります。生命の大切さや多様
な価値観を理解し、文化の多様性や個性を受容することによって、共感や思いやりが生ま
れ、社会に安定性と活力がもたらされるとともに、まちへの愛着が高まります。
また、芸術作品を鑑賞したり、創造したりする営みの価値は、経済的な合理性や効率性
だけでは測ることができません。もちろん芸術文化活動には時間も労力も必要です。芸術
文化のもたらすその影響力や効果はすぐに顕著に現れるものではありませんが、人々が協
働し共生する社会の基盤形成に寄与します。活き活きとした市民一人ひとりの活力、すな
わち個人の活力が集団の活力につながっていきます。地方分権の時代、個人からまちのエ
ネルギーへと進み、それが八尾のまちの自治意識を醸成していくことともなります。した
がって、芸術文化の振興は、社会や公共と密接に結びついています。
芸術文化活動の主体は個人であり、楽しみ、趣味、嗜好といった個人の自発的・自主的
な営みをよりどころとしていますが、一個人の文化的な営みはひとたび表現や交流の場を
得ると、他の人々の心に働きかけ、ひいては社会に広がっていく大きな力となり、これら
は八尾市の芸術文化振興の礎として長きにわたり培われてきたものです。
八尾市では、このような芸術文化の力をさらに伸ばして芸術文化活動を支援・振興する
ことにより、「芸術文化との関わりの中で、心豊かな暮らしが創造されています」とした
八尾市第5次総合計画での「めざす暮らしの姿」を実現していきます。
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プランの基本的な考え方
保障されることが重要です。そのため、さまざまな分野や立場の人々が、互いの文化を理
第2 章
に、新しいヒントやひらめき、考えるきっかけや手掛かりが得られ、より創造的で文化的
第2章 プランの基本的な考え方
2 どのように芸術文化を振興するのか
芸術文化は人々の心や社会に良い作用をもたらします。本来、すべての人が優れた芸術
第2 章
作品にふれる機会は等しいものですが、芸術文化活動は個人の自主性・主体性に基づいた
活動であり、強制されるものではありません。個々の自由と選択によって楽しまれるもの
プランの基本的な考え方
です。
芸術文化に対する人々の関心の度合いや興味の対象はさまざまであり、その受け止め方
は個人によって違います。したがって、各々の多様性や個性を尊重しながら振興していき
ます。
芸術文化活動
関心の度合い・興味の対象はさまざま
個人の自由と選択によって楽しむ
多様性や個性を尊重
芸術文化にふれて楽しむ
感動する
発見がある
鑑賞
体験
創作・表現して楽しむ
人々と楽しみを共有し、
向上心が満たされる
つなぐ・ひろげる
企画・運営にかかわる人材を育て
学習・体験を、鑑賞・創造へと
担い手をつなぎ、広げる
優れた芸術文化を
身近にふれる
体験して楽しむ
創造
学習
芸術文化に関する知識を
深める
学習意欲が満たされる
支援
芸術文化活動の場や機会を提供し、資
金や情報などを活用して支援する
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第2章 プランの基本的な考え方
3 芸術文化振興の担い手
芸術文化活動は個人や団体の活動であり、一個人の創作が表現や交流の機会を通じ、広
在によって、さらに人間の心に響きわたり、広がるものとなります。
創り手側、受け手側だけでなく、あらゆる担い手の自主的な活動と連携や協力支援によっ
そこで、さまざまな芸術文化振興の担い手・主体に、次のような役割が期待されています。
(1)市民(個人)
芸術文化は、八尾市に住んでいる人、働いている人、学んでいる人や八尾市においてさ
まざまな活動をしている人など、市民一人ひとりの自主的な活動が原点となります。自主
的、創造的な創作活動を行う側として、作品を見たりふれたりする側として、さらに両者
の橋渡し役として、市民一人ひとりの芸術文化への関わり方はさまざまですが、個々の芸
術文化活動を通じて、市民が相互に共感し、つながっていく中で、市民どうしのつながり
がさらに広がっていくことが期待されています。
(2)地域団体
町内会・自治会などの住民組織やNPOをはじめとする市民活動団体など、地域ではさ
まざまな団体が活動しています。これらの団体は、組織力や企画力を発揮することによっ
て、芸術文化振興の担い手となります。
それぞれの得意分野や地域の特色や持ち味を活かして、芸術文化を通じた交流を深め連
携・協力していくことで、魅力あるまちづくりに貢献することが期待されています。
(3)専門家・専門団体
芸術文化の専門家や専門団体は、地域や学校における芸術文化活動の支援や市民が本物
の芸術文化にふれ、芸術のすばらしさや本質を感じる機会づくりを支援し、八尾市におけ
る次代の芸術文化振興の担い手を育成するなど、重要な役割が期待されています。
(4)教育機関
市内の幼稚園、学校などでは、児童・生徒がそれぞれ地域の歴史や特色に基づいた中で
芸術文化を学んでいます。児童・生徒は、授業時間だけでなく、専門家による音楽演奏や
古典芸能の鑑賞会、演劇や映画の鑑賞会などで芸術文化にふれる機会を得て、そのすばら
しさや楽しさを味わい、自ら創造する中で、豊かな感性を育んでいきます。
教育機関は、芸術文化が児童・生徒に果たす役割の重要性を認識し、文化資源を積極的
に活用して、次代の芸術文化を担う子どもたちの心と感性を育む上で、重要な役割が期待
されています。
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プランの基本的な考え方
て芸術文化振興は支えられ、魅力的なまちをつくっていくことになります。
第2 章
く地域や社会において作品として浸透していきます。さまざまな作品は、鑑賞する側の存
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(5)企業
企業や企業財団においては、メセナ活動※3に代表されるように社会貢献活動の一環として芸
術文化活動を主催・後援するなど、芸術文化活動を積極的に支援しているケースが多く見られます。
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企業は、独自の組織力や情報発信力などを発揮し、行政とは違った側面からの支援が可能です。
八尾市の芸術文化の振興にとって、地域社会の一員としての役割が期待されています。
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(6)行政
行政は、すべての芸術文化振興の担い手が行う活動がより拡大・発展し、活性化していくよう
に、市民やさまざまな組織・団体の主体的な活動と相互の連携・協力の場づくりを側面的に支援
します。また、広域的な連携を図りつつ、必要な情報を受発信し、ソフト面・ハード面での基盤
を整備していく役割を担います。
また、文化会館(プリズムホール)は、芸術文化の情報と交流の場を市民に提供するとともに、
市民の芸術文化活動の創造と振興を図る拠点施設としての役割を担っています。
八尾市では、平成 18 年(2006)度より指定管理者制度※4を導入し、文化会館(プリズムホー
ル)の管理運営は、( 財 ) 八尾市文化振興事業団※5が指定管理者※6として行っています。
■芸術文化振興の担い手
専門家・専門団体
地域団体
行 政
市 民
教育機関
企 業
※3 メセナ活動…主として企業が社会貢献を目的の一貫として、芸術文化活動を支援すること。活動の内容は、
文化事業の主催、資金の提供、コンクールなどの顕彰事業などがある。
「メセナ」とは、芸術文化支援を
意味するフランス語で、芸術文化の擁護・育成に尽力したローマ時代の政治家の名前に由来する。
※4 指定管理者制度…平成 15 年 6 月に地方自治法改正により、「公の施設」(文化施設、スポーツ施設、社会
福祉施設など)の管理運営を法人その他の団体など、地方公共団体が指定するもの(民間事業者を含む)
が行える制度。
※5 ( 財 ) 八尾市文化振興事業団…市民の文化活動の振興を図り、個性豊かな地域文化の創造に寄与する目的
で、昭和 63 年に設立。文化会館(プリズムホール)の開館当初から施設の管理運営及び地域に根ざした
事業を展開し、現在、文化会館(プリズムホール)及び生涯学習センターの指定管理者として管理運営
を行っている。
※6 指定管理者…指定管理者制度により、地方公共団体が期間を定めて指定した団体で、公の施設の管理運
営を市に代わって行う。
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