第 5 講 最古のもの:地殻の形成

地球の科学 小出良幸
第5講
最古のもの:地殻の形成
http://ext-web.edu.sgu.ac.jp/koide/chikyu/
▼
Email:
最古のものとは
[email protected]
列島
安山岩
トーナル岩
▼ 太古代はどんな時代か
1 期間
2 名称
3 時代の地質学的特徴
・大陸の形成
・海の形成
海洋地殻の形成
堆積岩の形成
H2O
サブダクション・ファクトリー
陸地(平均高さ 0.84km)
クラトン
3 大陸地殻の成長
超大陸
約 28 億年前 超大陸ケノリア
約 18 億年前 超大陸ヌーナ
約 8 億年前 超大陸ロディニアとゴンドワナ
約 2 億 5000 万年前 超大陸パンゲア
4 大陸形成の周期
造山帯
地表の高度分布
大陸
大陸棚
大陸斜面
高地
海水準
大陸地殻の形成時期と頻度
バリスカン造山
海盆
アルプス造山
大陸を除いた海洋
高まり
カレドニアン造山
-6
--8
グレンビル造山
海洋(平均深さ 3.8km)
-4
ケノラン造山
地表の平均の高さ(-2.44km)
-2
ハドソニアン造山
0
マグマの活動
高さ(km)
2
列島のマグマ作用で
新しい大陸地殻が
形成されていく
マントル深部へ
6
台地
海洋地殻
玄武岩質マグマ
沈み込み帯
8
山脈
海水を含んだ海洋地殻
マグマ混合
残存分(重い岩石)
▼ 地殻について
1 地殻とは
2 地殻の種類
4
海溝
トーナル岩質マグマ
花崗岩質マグマ
海溝
-10
40
-12
0
20
40
面積(%)
60
アイソスタシー(isostasy)
ブーゲー異常
80
30
20
10
時代(億年前)
100
・カレドニアン造山(Caledonian)
・アルプス造山(Alpine)
負のブーゲー異常大
ブーゲー異常小
島弧地殻
大陸地殻
海洋地殻
(密度:中)
(密度:小)
マントル(密度:大)
図 アイソスタシーとブーゲー異常
▼ 大陸の形成
1 太古代の大陸地殻の構成
トーナル岩:TTG
2 大陸地殻形成のメカニズム
▼
1
ス
2
3
海洋地殻
海洋地殻形成のメカニズム:プレートテクトニク
オフィオライト
グリーンストーン
▼ 太古代を特徴付けるもの
1 コマチアイト:太古代特有の岩石
2 アノーソサイト(anorthosite)
▼
堆積岩の形成
▼ レポートについて
第 1 回テーマ:あなたが考える地球史上の重大事件
はなんですか
締め切り:5 月 12 日(木)24:00(時間厳守)
0
地球の科学 小出良幸
第5講
最古のもの:地殻の形成
http://ext-web.edu.sgu.ac.jp/koide/chikyu/
Email:
[email protected]
▼
前口上:夢を実現するための方法 4:一人前になること
いったん選択した道を進む場合、その道について一通りのことを把握して、できるだけ早いうちに一人前に
なってしまうこと。その修行期間は、どんなつらいことがあっても耐え抜くこと。少なくとも数年。それをし
ないと、自分の選択がキャリアにならずに、無駄になるから。
▼ 最古のものとは
最古のものとは、一番古いものであるが、最古の「最」とは、比較して、一番古いということだから、最古
のものより新しいものがいくつかあるはずである。現在から、またはある時代から、最古のものが見つかる時
代まで連続あるいは断続的に、あるものが見つかるということである。それは、ある期間、地球の歴史のなか
で存在していたということである。そのようなもので、地球にとって重要なものとして海と陸がある。海と陸
の最古の証拠がみつかるのが、太古代からである。
▼ 太古代はどんな時代か
1 期間
冥王代の終わりから、原生代のはじまりの時期。
38 億年前から 24 億 5000 万年前の期間
2
名称
英名は、Archean で、日本語の名称には、太古代と始生代という呼び方がある。現在では、太古代と始生代
の両方が使われているが、ここでは、太古代をつかう。
3
時代の地質学的特徴
太古代以降、連続的証拠が得られる時代である。地質学で連続的に時間を扱うことができる最初の時代であ
る。
・大陸の形成
花崗岩とその変成岩
・海の形成
海洋地殻の形成
海を作っている岩石が、太古代から見つかる。グリーンストーン帯と呼ばれ岩石群である
堆積岩の形成
海でできた岩石の誕生
海底で溜まった土砂からできたもので地層をつくっている。
▼ 地殻について
1 地殻とは
地殻とは、地球の層構造中で、固体でできた一番外側の部分。
地殻は、岩石でできている。
地殻の
厚さは、一様でない
岩石は、一様でない
成分も、一様でない
できた時代も、一様でない
つまり、多様である。
2
地殻の種類
海と陸は、単に海洋があるないの違いでだけでなく、地球の起源や、地球の仕組みによる違いを反映してい
る。
8
陸地(平均高さ 0.84km)
地表の高度分布
6
大陸
4
山脈
高さ(km)
2
大陸棚
台地
大陸斜面
高地
海水準
0
地表の平均の高さ(-2.44km)
-2
海洋(平均深さ 3.8km)
-4
-6
大陸を除いた海洋
高まり
--8
海盆
海溝
-10
-12
0
20
40
面積(%)
60
海と陸の地殻の違い
海洋地殻
薄い(5~10km)
玄武岩
2.9~3.2 ×109 kg/m3
黒
細かい
火山岩
新しい
低い(平均-2400m)
80
100
表
厚さ
岩石
岩石の密度
岩石の色
岩石の粒の大きさ
岩石の種類
岩石の年代
標高
大陸地殻
厚い(30~50km)
トーナル岩
2.6~2.8 ×109 kg/m3
白
粗い
深成岩
古い
高い(平均 840m)
アイソスタシー(isostasy)
海水中に浮かぶ氷山のように、マントルの上に密度の違う海洋地殻と大陸地殻が浮いている。軽い地殻(大
陸地殻)は、密度が小さいので深くにも軽いものがたくさんある。重い地殻(海洋地殻)は、密度が大きいの
であまり深くまでものなはい。
ブーゲー異常
これに呼応して、重力にも異常が発生する。重いものがあると、ブーゲー異常は正になる。軽いものがある
と、ブーゲー異常は負になる。重力異常を測定すると、深部にどのような物質があるか推定できる。
負のブーゲー異常大
ブーゲー異常小
島弧地殻
大陸地殻
海洋地殻
(密度:中)
(密度:小)
マントル(密度:大)
図 アイソスタシーとブーゲー異常
▼ 大陸の形成
1 太古代の大陸地殻の構成
大陸地殻は、さまざまな岩石からできているが、平均値としてみると、トーナル岩からできているとみなせ
る。
トーナル岩:TTG
直径数 10~100km のドーム状構造をもつ、多数のバソリス岩体をなしている。
トーナル岩類は、トーナル岩(tonalite)、トロニエム岩(trondjemite)
、花崗閃緑岩(granodiorite)と
呼ばれる岩石からなる。 このようトーナル岩類は、頭文字をとって TTG と略称する。
TTG は、カリウムに乏しいタイプで、石英とナトリウムに富む斜長石からできているものである。列島で活
動する安山岩(カルクアルカリ安山岩という)と似た成分のものである。
2
大陸地殻形成のメカニズム
大陸地殻は、さまざまな時代の岩石が、大陸のさまざまな地域に分布している。つまり、大陸地殻は、いろ
いろな時代に少しずつ形成されている。
大陸地殻はトーナル岩ができる作用である。列島では、沈み込み帯(サブダクション)の下での複雑な反応
が起こっている。そこでは完全なゼロエミッションの工場のように、無駄なく大陸地殻を構成しているトーナ
ル岩を生み出している。このような作用をサブダクション・ファクトリーと呼んでいる。
列島
安山岩
トーナル岩
花崗岩質マグマ
海溝
マグマ混合
残存分(重い岩石)
海洋地殻
玄武岩質マグマ
沈み込み帯
H2O
海水を含んだ海洋地殻
トーナル岩質マグマ
列島のマグマ作用で
新しい大陸地殻が
形成されていく
マントル深部へ
サブダクション・ファクトリー
大陸の岩石は、いったんできると、マントルの岩石に比べて軽い岩石なので、大陸地殻の上にずっと存在し
つづける。
大陸地殻が浸食を受けても堆積岩もやはり大陸地殻と同じように軽い岩石なのでやはり大陸地殻の上に存
在し続けていく。
大陸地殻は、さまざまな時代に形成されていくが、古いものも姿を変えながら存在し続ける。
クラトン
先カンブリア紀の安定した地塊を、クラトン(craton、剛塊という)と呼ぶ。あるいは太古代ものに対して
クラトンと呼ぶこともある。
盾状地(shield)
、卓状地(platform)は、大陸に広く、平で、盾を伏せたようにわずかに傾いているよう
な地帯。古生代以前の先カンブリア紀の岩石からできている地帯。
卓状地の上には、顕生代の薄く堆積岩が溜まっていることがある。堆積物の種類は、泥岩などの細粒の砕屑
性堆積物、石灰岩、ドロマイトが多い。化石に富み、よく連続する。安定した基盤の上に、ゆっくりと堆積し
たもの。
3 大陸地殻の成長
大陸地殻は、その成長過程に、いくつかのモデルが考えられている。しかし、現在は、新しいモデルに変更
中である。
何度かのの大陸の急成長の時期があったらしい。
大陸地殻の形成モデル
大陸地殻の量
現在の大陸の量
現在のモデル
A
B
C
45 億年前
現在
時代
超大陸
すべての大陸が一箇所に集まるような時期が、何度かあった。
約 28 億年前 超大陸ケノリア
約 18 億年前 超大陸ヌーナ
約 8 億年前 超大陸ロディニアとゴンドワナ
約 2 億 5000 万年前 超大陸パンゲア
4 大陸形成の周期
造山帯
クラトンの周辺には、顕生代の地層が厚く溜まっている。その地層は激しく褶曲や変成作用を受けている。
造山帯の活動には、周期があり、何度かの造山運動がみつかっている。
大陸地殻の形成時期と頻度
アルプス造山
10
バリスカン造山
20
カレドニアン造山
30
グレンビル造山
ハドソニアン造山
ケノラン造山
マグマの活動
40
0
時代(億年前)
・カレドニアン造山(Caledonian)
・アルプス造山(Alpine)
▼ 海洋地殻
1 海洋地殻形成のメカニズム:プレートテクトニクス
海洋地殻は、中央海嶺にマントルが上昇してきて、形成される。中央海嶺で形成された海洋地殻は、化学的
に均質なもの、どの時代に似た岩石、どの海嶺でも似た岩石、が形成される。海嶺で形成された海洋地殻は、
海溝でマントルに沈み込む。
このようなサイクル、プレートテクトニクスが働くために、海洋地殻は常に更新されている。古い海洋地殻
は、海洋地域には残っていない。
2
オフィオライト
現在の地殻の断面は、深いほうから、かんらん岩(マントル)、斑れい岩、岩脈玄武岩、枕状溶岩(玄武岩)、
チャート(堆積岩)となっている。
このような岩石セットで、陸地に持ち上げられたものを、オフィオライト(ophiolite)という。
現在の海洋底では、一番古いものでも約 2 億年前のもの。さらに古いものは、大陸で探す。オフィオライト
があれば、海洋地殻であったことが判別できる。
グリーンランドのイスア地方には、セットは、ばらばらになっているが、海洋地殻のセットがある。38 億
年前ものである。
現在の地殻と同じセットである。海洋地殻を形成するメカニズムが、38 億年前から同じである。
3
グリーンストーン
グリーンストーン(greenstone)とは、緑色岩と呼ばれる緑色をした岩石のこと。緑色岩とは、オフィオラ
イトのこと。
グリーンストーン帯とよばれるものがある。グリーンストーン帯とは、同時代に形成された緑色岩と、花崗
岩、および堆積岩がセットとなった地域のこと。幅 20~100km、数百 km の延長をもつ、細長く、あるいは不
規則に分布。
30 億年より前の時代のグリーンストーン帯の堆積岩には、火山岩が壊れた礫岩(火山砕屑岩)、チャートと
縞状鉄鉱層がほとんどで、大陸起源(陸源砕屑性堆積物)が、ほとんど含まれていない。
グリーンストーン帯には、オフィオライトだけでなく、火山列島や海山、海台などが、付加、集合したもの
つまり、島孤地殻の付加体からできることがわかってきた。
▼ 太古代を特徴付けるもの
1 コマチアイト:太古代特有の岩石
グリーンストーン帯は、さまざまな時代のものがある。しかし、太古代のグリーンストーン帯には、コマチ
アイト(kamatiite)とよばれる岩石が含まれる。
超塩基性岩というタイプの岩石で、MgO が多い火山岩。かんらん石が針状に長く延びた特異な結晶である。
2
アノーソサイト(anorthosite)
太古代固有の岩石として、アノーソサイトとよばれる岩石がある。斜長石からだけからできている岩石。楯
状地に、高度変成岩(チャーノッカイトと呼ばれるグラニュライト相の変成岩)にともなって産する。
▼ 堆積岩の形成
最古の堆積岩は、グリーンランドの西部イスアからみつかった。38 億年前のものである。
堆積岩は、38 億年以降、形成されつづけている。膨大な堆積物は、海と陸があるから生成される。堆積物
とは、陸から河川によって運ばれた大陸の破片が、土砂として、海洋(大陸棚)で溜まったものである。
堆積岩ができるということは、海と陸があるということである。どの時代にも堆積岩があるということは、
どの時代にも海と陸があったということになる。
北アメリカ大陸の岩石の種類(比率%)
34~25 億年前
25~18 億年前
18~14 億年前
14~10 億年前
堆積岩およびその変成岩
5
18
2
20
時代とともに、花崗岩の比率が減り、堆積岩の比率が増えてきている。この理由は、不明。
▼
10~0 億年前
46
レポートについて
自分の考えを書くようにしてください。レポートは可能な限り e-mail で提出して下さい。紙によるレポー
トも受けつけます。充実した内容のレポートを出したものには、多くの加点をします。レポートは時間厳守で
す。少しでも遅れたら加点対象にしません。
第 1 回テーマ:あなたが考える地球史上の重大事件はなんですか
締め切り:5 月 12 日(木)24:00(時間厳守)